27: EP3-3 ブロークンソード作戦
27話へようこそ
開かれる戦端、それぞれの思惑
コロニー協定連合体 "CAU"
ライトニングストライク作戦 ─ ブロークンソード作戦
1日目
西暦3020年3月18日、協定宇宙時16:02
火星近傍宙域
CAU連合艦隊
CAU連合艦隊が目標付近へ到達
『ブロークンソード作戦』が実行へ移された
『オーバーロードより全艦隊へ。 偵察隊によるとESF艦隊は既に防衛陣形で砲をこちらへ向けているようだ。 これより戦闘詳細指揮を各艦隊へ移譲する。 以降、オーバーロードよりは重要全体指揮のみを行う。 オーバーロード、アウト。』
決戦は目前だった
『ウィルクスよりエンスウェン、第2艦隊はそちらの援護位置に着いた。』
『了解、こちらは遊撃艦隊として行動する。 着いてきてくれ。』
セイバー2艦隊は着々と準備を進める
『ウィルクス艦隊長、正規軍より最新情報です。 ESF艦隊は9個艦隊規模で確定とのことです。』
『さすがESF...数は圧倒的ね。 ...クロノス、どうせ出てくるんでしょう?』
『ん? 艦隊長、今何か言いましたか?』
『あぁいや、なんでもない。 第3艦隊の動きを注視するぞ。 エンスウェンは時々無茶なことをするからな。』
『了解、艦隊長。』
『全隊! 最終チェック急げ! 敵も味方も待ってはくれないぞ!』
シオンハートが激を飛ばす
『ディケ、調整はどうだ?』
『ええと...よし、スラスターの出力配分は完璧のはずです、エリソン。』
『いいぞ、武装も全て異常なしだ。 とはいえ補給が必要になるかもな。』
『プロトコルを調整しておきます。』
『頼んだぞ。』
一般的に、CAU/ESFの艦隊戦においてはCAUはその長射程を生かした遠距離砲撃戦が主軸とされている
CAUの平均砲射程はESFの約1.2倍とも1.5倍とも言われているからだ
CAUの艦が高機動なものが多いのもこれに起因している
対するESFもただ手をこまねいているわけではない
限定的ながらもCAUを上回る攻撃手段は開発されていた
『オーバーロード、こちらベータ2、ESFの砲撃だ!』
『何だとベータ2? まだこちらの砲射程にすら入っていない。 何かを誤認していないか?』
『そんなわけあるか! 各艦! 回避機動!』
『状況を確認しろ、ベータ2。』
『状況!? ESFから撃たれてるんだ! ...レーザーだ、大口径レーザー兵器を使われてる!』
『...大口径レーザー? そんなものは情報にない。 ESFの新型か?』
『情報なんてどうでもいい! オーバーロード、ベータ各艦隊は距離を詰める、このままじゃ一方的にやられっぱなしだ!』
『了解... オーバーロードより全艦隊へ、ESFは何らかの長距離兵器を投入しているようだ。 警戒しつつ距離を詰める方針で交戦するようにしろ。』
『ウィルクス、聞いたか?』
『あぁ、もちろんだ。 ESFの大口径レーザーか...』
『ESFが長距離レーザーを実用化していたとはな。』
『まぁ、おかしな話ではない。 こちらにいいようにやられるのは奴らも理解していないわけではなかっただろうからな。』
『その通りだな。』
『エンスウェン、方針は?』
『プランM4、MCMBだ。 バトルワーカーも出撃させる。』
『了解した。 こちらも追従する。 ルイナ、出撃最終チェックだ!』
戦端を開いたのはESFだった
新たに実用化、投入された長距離大口径レーザー兵器『オービタル・イージス』を火星軌道に配備し、CAUに先制攻撃を加えたのだ
CAUはこれに呼応し回避機動を取りつつ火星へ急速接近した
そこでCAUにとっての2つめの想定外が起きる
『オーバーロードへ、ガンマ6だ。 ESF艦隊からの砲撃を確認! 艦隊に損害有り!』
『何だと...? まさか、ESF兵器は... 全艦隊! ESF兵器はこちらの想定よりも長射程の可能性が高い! 射程の優位はないものと想定しろ!』
CAUの砲射程とESFの砲射程は最早差がないものとなっていた
唯一の優位は、CAUの主力が弾速の早いレーザーであって、ESFの主力が弾速の遅い実体弾であるということだろうか
攻めあぐねていればESFの増援が来る恐れもある
故に、CAU艦隊は大きく方針転換する
射程優位がないのであれば、一気に距離を詰め...
バトルワーカーによるESF艦隊への白兵戦を仕掛ける、ということだ
砲撃の応酬をしながら両艦隊はついにバトルワーカーを展開可能な距離に近づく
こうなると最早レーザーも実体弾も関係がない距離だ
CAU、ESF両艦隊は次々とバトルワーカーを出撃させる
どちらがこの攻防戦を制するか...
ついに戦いは本格的に動き始める
その混乱の最中、彼らも出撃する
『オーケー... オメガ各員、出撃するぞ! ESFを食い破ってやれ!』
『よし、行くぞ、ディケ!』
『了解、エリソン。 オペレーティングシステム、オンライン。』
対するESF艦隊の中にも彼らがいた
『ライデン隊! 出撃だ! ここは我らの星だと思い知らせてやれ!』
『了解!』
『それじゃ私は... シオンハートを探そうかな。』
Side: ローランド/ディケ
火星宙域
CAU-ESF艦隊交戦宙域
『敵艦隊、バトルワーカーが出撃しています。』
「まぁそりゃそうだよな。 ただでやられてくれる奴は普通いないさ。」
戦いはいつもそうだ。
例え相手がテロ組織だろうとESFだろうと関係ない。
『シオンハートよりオメガ各員へ、陣形を維持しつつ敵部隊と交戦せよ。 それから... ローランド、これはお前への個別通信だが...』
「俺に? 何ですか、准将?」
『お前は好きに動け。 半分本気の私に模擬戦でいい動きができるんだ。 そこらの奴には勝てるさ。』
「...了解、准将。」
『よく言った。 それじゃあ...私は少々用事がある奴がいるんだ。 以後通信は困難な可能性もある。 ...頑張ってくれ。』
『了解、准将。』
好きに動け、か。
つまりは...
『報告、CAU正規軍バトルワーカー隊が交戦開始。 セイバー第2艦隊、大隊長機、アルティアが出撃、続けて第3艦隊、大隊長麾下ネイヴィガー隊が出撃完了。 我々第1艦隊オメガチームもバックアップチーム含め全機出撃完了。』
「オーライ、ディケ。 早速だが俺も少々無茶する。 頼むぞ?」
『お任せを、エリソン。』
ライブラのスラスターは...出力正常、ディケの言う通り完璧だ。
「ディケ、こっちの艦隊中枢からESF艦隊中枢までを5つにエリア分けしてくれ。 こっちから順にゾーン1,2,3,4,5だ。ゾーン1がこっちの艦隊、5がESF艦隊だ。 後は中間宙域を3つにだ。」
『了解、戦域レーダーにアップロード。』
「いいぞ。 いいかディケ、まず俺達はゾーン4まで前進する。」
『ゾーン4、いきなり攻めますね。』
「できるだろ?」
『ライブラにならもちろんです、エリソン。』
頼もしい限りだな。
「よし、行くぞ!」
『いつでもどうぞ、エリソン。』
いつものように背中のスラスターを意識する。
即座にそれにEWE反応炉から出力が供給された。
後は...進むだけだ!
───
『ゾーン4に到達。 周辺は...ゾーン3境界付近にシオンハート大隊長機、マリエルのみです。』
「やっぱり規格外だよな、あの人。」
『それを言うならエリソンもです。 ここまでに既に3機撃墜しています。』
「そうか?」
...というかたしかに3機もこの数分で撃墜してたらそりゃそうか。
『...まぁ、ということで周囲は敵だらけです。 帰還用のエジタイト残量を設定。 規定値に近づき次第通知を行います。』
「了解...それじゃ、暴れるか。」
ESFのバトルワーカーで後方と言えば...
『確認... ESF第2世代バトルワーカー、アーチェリーが多数この宙域に存在。』
「やっぱアーチェリーか。 いい的だろうな。」
ESF軍の特殊バトルワーカー... それも鈍重な重狙撃機だ。
この艦隊交戦距離だと背中の168mm機対艦徹甲榴弾砲が艦隊の脅威になるな。
「ビームライフル異常なし。 突撃するぞ、奴らは懐が留守になるからな。」
『微調整はお任せ下さい。』
敵はこっちに気づいていない。
それに、まだこの距離に敵がいるとも思ってないだろう。
つまり、確実に先手を取れるわけだ。
「スラスター全開、突撃開始!」
一気に機体が加速する。
見る見るうちに敵機が迫ってくる。
『エリソン、敵がこちらに気づいたようです。』
「そうかもな、だが遅い!」
既にこちらの射程内だ!
俺は努めて冷静にトリガーを引いた。
放たれたビームは真っ直ぐに敵機に刺さり、それを爆散させた。
『警告、周囲の敵機がこちらに向いています。 さすがにこのライブラも168mmの直撃に耐えうる装甲はありませんよ。』
「だがアーチェリーは近接防衛手段をほとんど持っていない、だろ?」
『そうです。 アーチェリーの他の武装は12.7mm対人機銃しかありません。 その程度ではライブラの装甲には傷すらつきませんよ。』
「なら動き続けて168mmの照準を撹乱する。 後はどうとでも料理できるからな。」
『了解。 最適化はお任せを。』
「よし...」
スラスターを再び全開にし、変則的に軌道を変えつつ近場の敵機に詰め寄る。
あらゆる方向から168mmの砲弾が飛んでくるがそのどれもがかすりすらしない。
十分な距離に近づくと敵機が12.7mmを撃ってきたが、機体を叩いただけに終わった。
トリガーを引いたその瞬間...恐らく幻覚の類だろうが、恐怖に慄く敵兵の顔が見えた気がした。
...それに躊躇うことはなかった。
『撃墜を確認。 続けましょう。』
「もちろんだ。」
さて...次は...
───
『報告、残存しているアーチェリーがゾーン5方向に撤退を開始しました。 恐らく撤退命令が出たのでしょう。』
「これ以上の損害は許容できないってか。 ディケ、追撃のリスクは?」
『計算中... ESF艦隊の対空防衛網にもよりますが、シュミレーションの80%においてライブラでも回避しきれない可能性を算出しています。』
「了解、追撃はやめよう、もうあのアーチェリーはこっちには出て来れないだろう。 ディケ、俺達はこれからゾーン3に移動して敵の背後を突く。 ゾーン3の状況はどうだ?」
『...確認、CAU正規軍、及びセイバー第2、第3艦隊が展開中、戦況は膠着状態にあります。』
「最前線ってか。 主戦線は?」
『最前線には第3艦隊、ネイヴィガー隊が展開しています。』
「ネイヴィガーの連中か。 さすが艦隊長の懐刀ってか?」
『でしょうね。 逆に第2艦隊のルプスレフィア大隊長機、アルティアはゾーン2で第2大隊砲撃隊を率いているようです。 120mmレールガンはさすがですね。』
「別名経理泣かせ、か。」
『ウィルクス艦隊長に聞かれたら怒られますよ。』
「どうせ聞かれないさ。 さて、お喋りも程々にしよう。 ディケ、エジタイトは?」
『残量70%、まだまだ行けますよ。』
「了解。 移動する。」
艦隊の脅威は排除した。
次も続けるぞ。
Side: シオンハート
私は今、艦隊交戦区域から少し離れた位置にいる。
目的は1つ。
...それは迷いなく、当然かのように来た。
「...待ってたぞ。」
『やっぱりいるよね、シオンハート。』
「名前ぐらいは教えてくれないのか?」
目の前の白い機体に問う。
『名前かぁ。 確かに私だけ知ってるのもズルいしね。 いいよ、私はクロノス。 しがない天使だよ。』
「やはりか。 ...天使?」
『そうだよ? 見せてあげようか?』
通信ウィンドウが開く。
映ったのは恐らくかなり長い灰色の髪、それに特徴的な青と橙のオッドアイの少女だ。
...頭の上に黒いリングがあるが。
「...言わせて貰っていいか?」
『何かな?』
「...堕天使か?」
『察しがいいね、シオンハート。』
「褒められても嬉しくないな。」
『こんな状況じゃなければ仲良くしたかったんだけどね。 ま、それじゃお互いの最高戦力らしく一騎打ちでもしよっか。 シオンハートもそのつもりでしょ?』
「望むところだ。」
こんな奴を他の連中に相手させるわけにはいかない。
クロノスから提案されるとは思ってもなかったが。
『じゃあ...始めようか。』
「...」
こうして、誰も気づかない場所で最高峰の戦いは始まった。




