23: EPI-1 Intermission-Ⅰ "アリア"
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西暦3020年3月16日、協定宇宙時1800
木星近傍、木星近傍コロニー002
セイバー連隊支部、第2艦隊宿舎、高級将校棟
─Side: ウィルクス
「...何の用だ?」
艦隊長という立場上、自室のセキュリティは否応無しに堅牢なものになる。
そして、勿論ドアのロックは今もかかったままだ。
にも関わらず『それ』は現れた。
突然現れたが、驚くには値しない。
よく見知った顔だから。
「こんばんは、ウィルクス。 それとも、アリア?」
クロノス。
頭の上に浮かぶ薄く光りながらも暗い漆黒の輪、そしてそれと同じほどに暗い漆黒の翼はいつ見ても変わらない。
「どっちでもいいか。 ま、ほら、うちの主人が戻ってきて欲しいって言っててさ。」
クロノスの主人...ハデス。
知らない顔ではないが特段仲がいいわけでもない。
そんな事よりも...
「隣は誰だ? 見たことが無いな。」
「やっほー先輩、カマエルだよー! よろしくー。」
アッシュブルーの髪、銀の瞳。
特徴は初期...それも最初期のだ。
つまりは、クロノスの同期。
「...で、どう? 戻ってきてくれる?」
クロノスが私のベッドに座りながら聞いてきた。
「その気は無い。 やるべき事がまだある。」
クロノスがそう言うと思ってた、とでも言うかのような表情をし、話を変えてきた。
「ふーん... で、じゃあ、いつまでその人間ごっこを続けてるつもりかな、ウィルクス...アリア...いや、星の神ステラさん?」
「その名前はやめて。」
つい口調が戻る。
何十年ぶりだろうか、その名前で呼ばれたのは。
「まぁ、冗談も程々にしてさ。 ...何考えてんの? これまでの貴女の行動からするに... 意味もなく人間ごっこしてるわけじゃないんでしょ?」
「今はまだ言えないよ。」
そのまま黙って作戦資料を見る私に、クロノスは立ち上がり、私の方に身を乗り出し、耳元でこう言った。
「...で、あの子は...その目的のために手に入れたってわけ? さっきもその右手の中指の爪、磨いてたけどさ。」
「...!」
違う、そう言い返したかった。
だが、できない。
事実を否定はできない。
「まぁ、いいや。 それよりもさ、この世界ほんと危ないよねぇ... こっちは主人の命令で来てるだけなのにさ。 はーあ、何アレ、ちょっとちょっかい出しただけなのにヤバすぎる。」
クロノスの声は気の抜けたやる気のない声だ。
だが、目は違う。
明らかに危惧の色を浮かべていた。
「...というよりクロノス、あなたは何をしに来たの?」
ここに、という意味ではない。
クロノスは少し悩んでから口を開く。
「問題が起きてるの。 私と主人とカマエル、それに少しのニンゲン達だけが認識してる。」
クロノスの表情から笑顔が消える。
つまりは、相当な問題だ。
「...Dか?」
「ううん。 何が黒幕か分かってない。」
アイツではない。
となれば話は別か。
「とりあえず把握した。 早急に戻れるようにはするよ。 けどね、この世界では常に気をつけて動いて。 私達とは格の違う奴らが潜んでる。」
「分かってる、分かってるってー。 アレにちょっかい出したから理解はしてるよ。 ま、所詮私なんて一端の天使にしか過ぎないし、私が消えてもこのカマエルがいるし。」
「あ、先輩、私に戦闘教えてくださいよ!」
「暇があったらね。」
カマエルは...少しばかり血の気が多いタイプか。
つい油断すると口調が戻ってしまう。
気をつけなければ、いつかボロが出るだろう...
まだ、私は、アリアだ。
アリア・K・ウィルクスだ。
2021/09/18 クロノスのイラストアートワークを本文中に追加: Illustrated by Twitter @Illust_riotya




