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人機のアストライア  作者: 橘 雪
幕間

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23/129

23: EPI-1 Intermission-Ⅰ "アリア"

23話へようこそ


[データ削除済]

西暦3020年3月16日、協定宇宙時(STC)1800

木星(ジュピター)近傍、木星近傍コロニー(JPC)002

セイバー連隊支部、第2艦隊宿舎、高級将校棟



─Side: ウィルクス



「...何の用だ?」


艦隊長という立場上、自室のセキュリティは否応無しに堅牢なものになる。

そして、勿論ドアのロックは今もかかったままだ。

にも関わらず『それ』は現れた。


突然現れたが、驚くには値しない。

よく見知った顔だから。


「こんばんは、ウィルクス。 それとも、アリア?」


クロノス。

頭の上に浮かぶ薄く光りながらも暗い漆黒の輪、そしてそれと同じほどに暗い漆黒の翼はいつ見ても変わらない。


挿絵(By みてみん)


「どっちでもいいか。 ま、ほら、うちの主人が戻ってきて欲しいって言っててさ。」


クロノスの主人...ハデス。

知らない顔ではないが特段仲がいいわけでもない。

そんな事よりも...


「隣は誰だ? 見たことが無いな。」

「やっほー先輩、カマエルだよー! よろしくー。」


アッシュブルーの髪、銀の瞳。

特徴は初期...それも最初期のだ。

つまりは、クロノスの同期。


「...で、どう? 戻ってきてくれる?」


クロノスが私のベッドに座りながら聞いてきた。


「その気は無い。 やるべき事がまだある。」


クロノスがそう言うと思ってた、とでも言うかのような表情をし、話を変えてきた。


「ふーん... で、じゃあ、いつまでその人間ごっこを続けてるつもりかな、ウィルクス...アリア...いや、()()()()()()()()?」

「その名前はやめて。」


つい口調が戻る。

何十年ぶりだろうか、その名前で呼ばれたのは。


「まぁ、冗談も程々にしてさ。 ...何考えてんの? これまでの貴女の行動からするに... 意味もなく人間ごっこしてるわけじゃないんでしょ?」

「今はまだ言えないよ。」


そのまま黙って作戦資料を見る私に、クロノスは立ち上がり、私の方に身を乗り出し、耳元でこう言った。


「...で、あの子は...その目的のために手に入れたってわけ? さっきもその右手の中指の爪、磨いてたけどさ。」

「...!」


違う、そう言い返したかった。

だが、できない。

事実を否定はできない。


「まぁ、いいや。 それよりもさ、この世界ほんと危ないよねぇ... こっちは主人の命令で来てるだけなのにさ。 はーあ、何アレ、ちょっとちょっかい出しただけなのにヤバすぎる。」


クロノスの声は気の抜けたやる気のない声だ。

だが、目は違う。

明らかに危惧の色を浮かべていた。


「...というよりクロノス、あなたは何をしに来たの?」


ここに、という意味ではない。

クロノスは少し悩んでから口を開く。


「問題が起きてるの。 私と主人とカマエル、それに少しのニンゲン達だけが認識してる。」


クロノスの表情から笑顔が消える。

つまりは、相当な問題だ。


「...Dか?」

「ううん。 何が黒幕か分かってない。」


アイツではない。

となれば話は別か。


「とりあえず把握した。 早急に戻れるようにはするよ。 けどね、この世界では常に気をつけて動いて。 私達とは格の違う奴らが潜んでる。」

「分かってる、分かってるってー。 アレにちょっかい出したから理解はしてるよ。 ま、所詮私なんて一端の()使()にしか過ぎないし、私が消えてもこのカマエルがいるし。」

「あ、先輩、私に戦闘教えてくださいよ!」

「暇があったらね。」


カマエルは...少しばかり血の気が多いタイプか。

つい油断すると口調が戻ってしまう。

気をつけなければ、いつかボロが出るだろう...


まだ、私は、アリアだ。


アリア・K・ウィルクスだ。

2021/09/18 クロノスのイラストアートワークを本文中に追加: Illustrated by Twitter @Illust_riotya

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