22: EP2-10 流転する形勢
22話へようこそ
情勢は悪化の一途を辿る
最早、それは避けられないのだ
西暦3020年3月13日、協定宇宙時1400
海王星近傍、海王星近傍コロニー002
CAU軍本部、長官執務室
「長官、これを見てください。」
CAU正規軍長官、マクミラン・ジンデルは補佐官から報告を受けていた
「これは... やけに荒いが...」
補佐官がジンデルに見せているのは1つの画像
言う通り確かに画質こそ悪いが何となく内容は見て取れる
「...艦隊か?」
「そうです。 2時間前、偵察隊の1隊がこれを報告しました。 撮影した座標は火星付近... 同時に赤外線イメージ画像も報告されています。」
補佐官がもう1つの画像を見せる
「...相当な熱量だな。 なるほどな、つまりは... ESF艦隊の、か。」
「そうです。 参謀部が解析した結果、相当量の戦力が結集しつつあります。 恐らくは...我々への大規模な攻勢の前触れでしょう。」
「だろうな。 将軍はどうしている?」
「既に司令部、参謀部を招集しています。」
「分かった。 結果が出たらまた伝えてくれ。」
「了解、長官。」
30分後
CAU本部、大議場
「先制攻撃、か。」
「そうだな。 敵に動かれる前に一網打尽にする。 それしかあるまいよ。」
CAU軍司令部、参謀部は緊急の作戦会議を開いていた
「動ける艦隊は?」
「木星方面軍と土星方面軍の3個艦隊、それに冥王星方面軍の2個艦隊はいつでも行けるが、海王星方面軍はまだ再建中だ。 セイバーからは第2、第3艦隊が出撃可能と連絡が来ている。」
「なら2方面軍から2個艦隊ずつ、それと冥王星方面軍から1個艦隊、それで5個艦隊。 セイバーから2個艦隊を出撃させるか? 可能な限りの戦力を投入してESF艦隊を潰すべきだろう。」
全ての艦隊を出撃させるわけにはいかない
最低限、自衛用の艦隊がコロニーに残る必要がある
「ゼロとコルセアの開発状況はどうなってるんだ?」
「ゼロが最終試験段階だ。 開発局もよくこの短期間で仕上げたものだ。 コルセアも近いうちに最終試験段階に入る。」
「なるほどな。 スピットファイア、それにメッサーシュミットがどの程度かは知らんが... それでも、ないよりは、か。」
「シュトゥーカもだが... まぁあれはまた別だな。」
会議は続く
「なら戦略はどうなる?」
「ESFは当然ドライブジャマーを展開している。 偵察の情報通りなら木星、火星間の小惑星帯を通過する他ない。」
「やはりそうなるか。 その直前まではドライブで行けるとしても...か。」
「セイバーの新型艦なら話は別かもしれない...が、まぁ、全ての艦隊に配備している余裕はない。」
戦略は1つ1つ組み立てられる
「オペレーションライトニングストライク?」
「そうだ。 強襲高速爆撃戦術、ライトニングストライクから取った。」
「なるほど、強襲作戦...か。」
「そうだな。 勢いをつけて一気に火星まで攻め入る。 当然、大規模な戦闘になるだろう... 可能なら、火星地表を制圧し橋頭堡を築く。」
「火星降下か。 デカいことになるな。」
「つまり、開発局にはまた無理を言うことになるな。」
「そろそろ反乱起こすんじゃないですか?」
「...まぁ、労うのは忘れないようにしよう。」
この日、会議は夜まで続いた
それから2日後、3月15日
ESF領火星、地表攻略作戦『オペレーションライトニングストライク』がCAU連合協定標準省、連合議会へと発議されることとなる
西暦3020年3月14日、協定宇宙時1000
海王星近傍、海王星近傍コロニー002
セイバー司令部
「オペレーションライトニングストライク?」
「そうだ、エンスウェン。 ついさっき正規軍司令部から通知があった。 火星を攻略するらしい。」
「火星を? 大きく出たな。 理由は?」
サイラスはカエデ、エンスウェン、シオンハート、マルコシアスを招集していた
更には通信越しに木星圏にいるウィルクス、ルプスレフィアも招集されている
シオンハートの問いにサイラスが答える
「これを見てくれ。 正規軍の偵察隊が捉えた火星付近のESF艦隊の画像とその赤外線イメージだ。 相当数が結集しつつある。 これが俺たちに攻撃を仕掛ける前に先制攻撃、そのまま火星に橋頭堡を築く。 そういう作戦らしい。」
「なるほどな。 サイラス、続けてくれ。」
サイラスの説明にシオンハートが続きを促す
「作戦は現時点の想定では複数段階に分かれる。 第1段階は小惑星帯の通過だ。 思わぬ伏兵やら何やらが想定される。」
「伏兵か。 有り得ない話ではないな。」
エンスウェンが反応する
「あぁ。 で、第2段階...の前にだ。 今回はウィルクスの第2艦隊、それにエンスウェンの第3艦隊に出撃要請が出ている。 カエデの第1艦隊はまだ再建中だからな。」
「残念ですね、でもまぁ、仕方ありません。」
「代わり...ってわけじゃないんだが、第1バトルワーカー大隊から選抜チームを出せないか?」
「選抜チーム? 私のところからか?」
大隊を率いるシオンハートが問う
「そうだ。 特にシオンハート、お前だな。 こないだのあの白い機体が再び出てこないとも限らない。 もし現地で奴に遭遇すれば正規軍どころか俺たちも全滅しかねない。」
「こっちにまた来たらどうするんだ?」
「...最悪の場合だが...本部に応援を頼む。 幾ら相手がお前と同等の存在だろうと、本部の戦力ならどうにかなるはずだ。」
「...究極の手段だな。 だがそういうことなら分かった。 ...待て、そういえばサイラス、どうして小惑星帯をワープドライブで突破しない? 小惑星帯程度なら行けるはずだろう?」
シオンハートがふとした問いを投げかける
「あぁ、説明していなかったな。 1つは今までに実例のない艦隊が7つにも及ぶ大規模出撃で事故の危険性がある、ってのだな。」
「言われてみればノウハウも何もないか。 まだあるのか?」
「ある...というかこっちが原因だ。 詳細は不明だが、ESFは、言うなれば、ワープドライブジャマーとでも言うべきものを小惑星帯に展開しているようだ。 正規軍偵察隊がそう報告してる。」
「ワープドライブジャマー...? また厄介なものが出てきたな。 だが、分かった。 それならば通常航行で抜けるしかないな。」
シオンハートが1歩下がる
「で...だ、第2段階は火星軌道上、あるいは近傍宙域のESF艦隊との艦隊決戦だ。 当然、バトルワーカー隊も入り乱れての戦闘になるだろう。 便宜上これをブロークンソード作戦と呼ぶらしい。」
『艦隊決戦か。 私の第2艦隊を後衛にエンスウェンの第3艦隊、それに正規軍が前衛か?』
「そうなるだろうな、ウィルクス。 第2艦隊の長距離砲撃には期待する。」
『もちろんだ。』
サイラスの説明にウィルクスとエンスウェンがそれぞれ応じる
「そして...艦隊を十分に撃破出来れば地表への攻撃が開始できる。 目標は火星の2号軌道エレベータの基部にあるESF軍火星軌道エレベータ基地だ。 しかし、この基地は潜入偵察の情報によると高度な対空防衛網にカバーされている。 そのままバトルワーカー隊を降下させれば致命的な被害が出るだろう。 よって、第3段階はこの対空防衛網を破壊すべく、新型のEMP弾を決死隊によって地表付近まで降下、発射する。 この作戦はブロークンアロー作戦だ。」
「新型のEMP弾? こっちに被害は出ないのか?」
マルコシアスがもっともな疑問を投げかける
「そこも織り込み済みだ。 元々この新型EMPは調整された特殊なパルスを用いる。 専用の対策をしたバトルワーカーなら問題なく稼働できる。これで敵基地のシステムと電力グリッドを破壊するんだ。」
「...だいぶ無茶を言うな、だが、分かった。」
マルコシアスが説明に納得する
「で、だ。 作戦最終段階は...ブロークンフォートレス作戦。 軌道上から一斉に戦力を投入する。 ま、地上決戦って言うわけだ。 正規軍のファイターもこの作戦に参加できるよう最終調整を進めてる。」
「ファイター?」
カエデが疑問を呈す
「そうだ。 長らく開発中だった例の新兵器が投入目前、というわけだ。」
「あぁ...アレ、ですか。」
「ゼロ、それにコルセアか。 大昔も大昔、大戦以前の兵器ではなかったか?」
「記録が正しいなら1000年は前だな。 カエデの実家の頃からじゃないか?」
「多分そう...というか、ゼロはもしかすると... いえ、やっぱりなんでもありません。」
サイラス、エンスウェン、カエデがそれぞれ会話を続ける
「まぁ、そういう訳でだ、正式に決定次第追って伝える。 それまでは各自備えて準備をしておいてくれ。」
それぞれが了解と口にし退出する
...あれ、そういえばルプスレフィアは...
「で、艦隊長。 どういうこと?」
「...えーっとだな...」
...どうしてこれで大隊長が務まっているのだろうか。
確かに指揮する第2バトルワーカー大隊の戦果は素晴らしいものなのだが...
もしかすると...ウィルクスの存在が重要なのかもしれない
ともかく、形勢は流転しゆく
瞬きの間に変化していくこの時代...
彼らは...何を得るのだろうか?
「閣下。」
「お、続報はあるかい?」
「緊急の報告含み幾らかなら。 まず情報部から。 トラベラー、エル・シオンハートのセイバー管轄下におけるクロノスと思わしき存在との交戦記録が上がってきています。」
「交戦記録か。 それで?」
「観測データと所見からして... 恐らくですが、クロノスの持つ能力は時間操作技術と推測されます。」
「...時間操作? そんなバカな。 今まで確認されたことは無かったはずだ。」
「他元因子です。 交戦記録からコード・Kとの類似データが確認されました。」
「Kの? まさか...」
「事後報告で申し訳ありませんが、自分の独断で緊急事態と判断してハウスオブバーディクト副団長に情報を転送、緊急の解析を依頼しています。」
「構わないよ、総帥の権限はこういう時のためのものだ。 それに私からメープルにも連絡する。 ...そうだね、第3種非常事態を発動する。 時間操作技術は私達でも手が出ないからね。 それにクラスB権限解放も準備してくれ。 デイモスに加え...時間操作技術を持つ可能性のある未知のトラベラーが奴らに着いているのはここしばらくでも最悪だ。」
「了解、閣下。」
「ところで...他にあるのかい?」
「あぁ、ええと...監査室から1件。」
「なんだい?」
「...トラベラー、アリア・K・ウィルクスについてです。 クロノスの交戦記録と...複数のデータ類似が確認されました。」
「...はぁ?」




