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人機のアストライア  作者: 橘 雪
EP6 『オペレーションシージアース』
100/121

100: EP6-6 オペレーションシージアース: 仮の翼

座標ロック、転移ビーコンを射出。

トリガーをセット、デイモス艦隊が投入され次第、ジャッジメント艦隊は出撃する。


ブラック君、B-αの最終許可を承認。

マナテックキャリア、ホーライのアンカーを解除する。

オペレーションシージアース

1日目

西暦3020年12月5日[STC]

協定宇宙時(STC)14:25

地球の衛星、月、ルナ・ゲートウェイ・ステーション上空、艦隊交戦宙域



──Side: 三人称視点



『エリソン、こちらの戦域にルプスレフィア大佐が出撃します。』

「ルプスレフィア大佐が?」

『...確認しました、重装フルアーマー仕様のアルティアです。』

「あれか...」


ローランドの脳裏にかつて見た映像が浮かぶ

バトルワーカーでありながら、大きな外装パーツにより装甲や機動性、火力などの全てを...圧倒的な運用コストを犠牲に実現したものだ

何より、CAUにおいて、それまで存在することのなかった制宙戦闘機のような構造なのだ

また、設計はセイバーのエンジニアがウィルクスの無茶な要望を聞き取った上で実現したものでもある



『目標確認。 ...敵戦闘機。』


コックピットの中、ルプスレフィアが小さく呟く


『ウィルクスよりルプスレフィア。 長距離センサーが敵艦載機母艦から発進する制宙戦闘機を捉えた。』

『うん、こっちでも見えたよ、艦隊長。 接近するよ。』

『注意しろ、相手のほうが機動性は上だ。 それに正面に6機いる。』

『分かってる。』


20メートルサイズの1人乗り兵器としてはかなりの大型である重装フルアーマー装備のアルティアはお世辞にも戦闘機より機動性があるとは言えない

もちろん、バトルワーカー相手であれば圧倒的ではあるのだが...


『相対速度差は... すぐに接近できる。 』


コックピットのモニターにはいくつもの表示が連続して増えていく

そして、モニターの強化ビジョン上には敵が強調表示されていく


『さすがにあまり多くは相手にしたくない。 相手の設計思想は... 』


ルプスレフィアが以前カエデが話していたことを思い出す


──ESFの制宙戦闘機は、古い思想を比較的そのまま受け継いでいるんだ。

──分かりやすく言うなら... そうだな、ESFの制宙戦闘機はそのままESFの制宙攻撃機を仮想敵にしているんだ。

──我々はその手の兵器を運用していないからな。 とはいえ、将来的にどうか分からない。 つまるところ、こちらが同じような思想の兵器を投入した場合に備え、カウンター策を考慮はしているようだ。


『...機動性に劣る大型目標、それこそがあれの獲物。』


制宙攻撃機は制宙戦闘機に比べ、大きな機体サイズとそれに伴う積載量が売りだが、それ相応に鈍重だ

制宙戦闘機の設計思想はシンプルであり、同程度の機体への対抗、あるいはより大きく鈍重な機体への迎撃を目標としている


『...無理はしない。 生きて帰る。』


そう呟き、手にしたレバーを、スロットルを全開にする

機体は、アルティアは最大限に加速し、敵に接近する


『...レーダーロック! ECM展開、回避行動...』


電子的にロックオンされたことをシステムが察知し、警告する

それに素早く対処し、接近を続ける

接近してきたミサイルは電波妨害の影響で目標を見失い、明後日の方向に飛んでいく


お互いの相対速度からして、目視は困難かもしれない

それ以上に、ESFの制宙戦闘機も、アルティアも確かに機首機銃は搭載しているが、宇宙空間での凄まじいスピードでは狙って当てるのは困難なのは事実だ

故に、搭載された誘導兵器が頼りだ


『熱源誘導が有効... 何も対策していない可能性は? 試してみる価値はある。』


以前に火星でCAUの制宙戦闘機部隊がESFの制宙攻撃機部隊と交戦した時の報告をルプスレフィアは思い出す

それによれば、敵機は熱源誘導式ミサイルの回避に失敗していたそうだ


『敵との距離...10キロ。 もう目の前。 ミサイルセット、ロックオン...』


発射筒を起動し、誘導システムをセンサーとリンクさせる

機体の強化されたセンサーシステムは敵機を既にロックしようと敵機の熱源を捉えつつある


『...ロック! ミサイル発射!』


アルティアの機体下部、正確には翼の下部に装備された発射筒からミサイルが射出され、一瞬遅れてスラスターが起動する

小型のEWE反応炉を搭載したよくあるシンプルな設計だが、それ故にCAUにおいては信頼性も高い


『終端誘導をセット、赤外線パッシブホーミング。』




そして、相対している敵はというと...



『前方に敵機を確認した。 単機で行動中だ。』

『CAUは本当に実用化していたのか。 火星からの報告は聞いていたが...』

『だが単機での行動とはまだまだの運用はお粗末なようだ。 ...ん? 妙に大きくないか...?』


レーダー上に現れたCAUの戦闘機を確認した彼らは報告や感想といったものを通信で交わし合う


『これは... まさか、海王星の報告にあったものか?』

『バトルワーカー同士の戦闘に介入してきた大型攻撃機の話か?』

『そうだ、生き残りが言うには、多数のマイクロミサイルにより甚大な被害を受けた、だそうだ。』


事実、あの介入、あの攻撃があの戦いのターニングポイントの1つだっただろう


『待て! センサーがミサイル様のものを検知した! カウンターメジャー展開!』

『ECM展開、フレアを射出する。』


電子的妨害、そして高熱を発する燃焼材を放出する


アルティアが発射したミサイルは燃焼材の放つ強い赤外線を捉えてしまい、それを追跡してしまう


『...フレアは有効だ、ミサイル回避。』

『赤外線誘導というのは事実だったか...』

『教科書が変わっちまうな、今時こんなのがあるとはな...』


その様子を見て、ルプスレフィアが表情を引き締める


『...時間稼ぎだけでも。』


決して簡単な作戦ではない、それは分かっていた

重要なのは敵を倒すことというよりも、敵戦闘機部隊を少しでも足止めすることだろう

これは艦隊戦であり、重要なのは艦隊を守ることだ

ルプスレフィアはそれを分かっていた

今はそれが重要だ




『アマテラスより全ユニット司令官へ! ムラクモの発射準備完了、射線より至急退避せよ!』

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