第40話
なんて真摯な目をするのだろう、と思った。責めるわけでも咎めるわけでもなく、ただ純粋に“知りたい”という渇望――或いは強い意思――だけが滲んだ、真ん丸な瞳。
その瞳のあまりの眩しさに、居た堪れない思いに駆られながら、ユーリスは思わず目を逸らす。そうするべきではない、と頭では分かっていても。逃げている、と己が己自身を強く責めていても。それでも、彼女の宝石のように美しい清廉な瞳を、これ以上見つめ続けることは、どうしても出来なかった。
穏やかな風が、かさかさと音を立てながら芝生を、その周りを囲う草花を渡って、アーチに茂った蔓薔薇を微かに揺らす。燦々と降り注ぐ陽光に照らされ、いつにも増して色濃く鮮やかに見えるその光景をぼんやりと眺めながら、ユーリスは一瞬だけ開きかけた唇を、すぐに閉ざした。
――貴方が今まで何を考え、何を思ってきたのかを。
そう問われても、先ずは何を話せば良いのか、さっぱり分からなかった。整理してきたはずのものは、セシリアとの思わぬ邂逅で、全て頭の中でぐちゃぐちゃに――順番も言葉の繋ぎも、何もかもがバラバラになってしまっている。そこからどう組み立て直し、彼女の知りたいことを論理的に説明すれば良いのか――初めからやり直すのには、まだ少し時間がかかりそうだ、と思った。
昔はこんなはずではなかった――そう回顧しながら、ユーリスはオークの太い幹にゆったりと背中を預ける。雲ひとつない青空は、どこまでも突き抜けるように澄み、正に散歩日和といった快晴だ。頭上に生い茂る葉の隙間から差し込む木漏れ日が、まるで万華鏡のように足元でちらちらと揺れている。
左頬からセシリアの視線が逸れたのを感じ、安堵と寂しさの綯い交ぜになった感情を抱きながら、ユーリスは胸の内でそっと溜息をつく。もし今この場所にテオドールが居れば、きっと嫌味のある笑みを滲ませながら刺々しい言葉を容赦なく突きつけられたことだろう。お前が言わねばどうする、と。何の為に時間も休暇もやったと思っておるのだ、とも――。
暫くの間、互いに口を開くことなく、穏やかな薫風や木の葉の擦れる音に包まれながら、じっと庭園を眺めていた。嘗ては仲良くじゃれ合いながら駆け回ったことを、衣服が汚れぬのも厭わずに芝生に寝転んで天を仰ぎながら、肺いっぱいに新鮮な空気を吸い込んだことも。
あの頃は、何でも話すことが出来た。どんな些細なことも。それが面白かろうが面白くなかろうが関係なく。まるで互いの秘密を共有し合うような。――あの時の、セシリアのやわらかく、楽しそうに笑う顔は、今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。その時の情景が、目の前に広がる芝生に、克明に蘇ってくるような気がした。三人で顔を寄せ合い、誰に聞かれているわけでもないというのに、ひそひそと声を潜ませて。けれども結局話し終えれば、大声を上げて笑い転げた――あの切なくも懐かしい幻影。
いつからだっただろう。“会話”というものに重石が伸し掛かるようになったのは。胸に抱いた思いも、本の感想も、或いは世間話に至るまで、何もかもに目に見えない“制約”が課せられるようになったのは。
――良いかい、ユーリス。お前の口にする“言葉”には、ほんの些細なものであっても、やがて時流を左右しかねない重さをもつようになる。相手が誰であろうと、“会話”には十分に気をつけることだ。
あれは確か、次期公爵家当主としての教育が本格化し始めた頃だったように思う。お前はもう“子ども”ではない、という烙印を押され、そうして口に出す言葉には十分に気をつけるようにと、内心どう思っていようと決して“本音”を曝け出すことはするなと、厳格だった父に釘を刺された。
その枷は、無論クロードにはつけられず、故に嘗てのような、何でも打ち明けられる仲に戻ることは、出来なくなった。その分、クロードとセシリアは親密度を増し、ふたりだけの秘密を抱えるようにもなったが、それは致し方のないことだと、無理矢理呑み込むしかなかった。
もちろん、苦しさや寂しさや遣る瀬無さを覚えなかったわけではない。けれど、“公爵家次期当主”であり、“王家の傍流の血を継ぐ一族”である者として、それを自覚すればするほど、父の言葉は決して間違いではなかったのだと、否が応でも認めざるを得なかった。
社交界へ出、或いは騎士団に入団し、そうして宰相に取り立てられてからは、なおのこと。彼の言葉は一層身に沁みた。下手なことを口にしてはならない――特に本音は。それは時として、己どころか、ひいては国の命取りになりかねないものであるのだから。
初々しい緑の茂る庭を眺めたまま、いつまでそうしていただろう。周りは確かに時が流れているのだと分かるのに、己だけが――或いはふたりだけが――まるで透明な泡の中に隔絶され、夢と現の間に閉じ込められてしまったように、曖昧だった。長い時間だったかもしれない、短い時間だったかもしれない。
一陣の風が吹き渡り、左耳につけたピアスが大きく揺れる。それの奏でる、鉱石と金属の音を聞きながら、青く瑞々しい空気を吸い込んだ時だった。やわらかな声が、アクアマリンの澄んだ音とともに鼓膜に触れたのは。
「――どうして」
夢と現の泡を破り、沈黙から抜け出して口を開いたのは、セシリアの方だった。風に靡いた艷やかなブロンドの髪が、木漏れ日の小さな光の粒を纏いながら、ユーリスの眼前をふわりと横切る。
「私を、遠ざけたの……?」
彼女は振り返ることはせず、ただただ庭を――もしかしたらそこにある幻影を――じっと見つめながら、淡々とした口調でそう告げた。それは、必死に何かを抑え込もうと、押し殺そうとしている時の癖だと、知っている。そして恐らく、尻すぼみに消えていった先には、こう続くつもりだったのだろう、とユーリスは思う。――あんなに仲が良かったのに、と。
遠ざけた――その話をするには、まずどれから口にすれば良いのだろう。ばらばらに散らばった思い出の欠片たちが、そこで見聞きしたものたちが、頭の中をぐるぐると回っている。それらの中から最適なものを拾い上げる前に、ユーリスはそっと深呼吸をしてから、ゆっくりとひとつ瞬いた。左耳で、また、澄んだ音がすっと鼓膜に触れる。
「……怖かったんだ」
何がなんだか分からなくなるほど渾然一体と化した渦の中から、漸くユーリスが手に取ったのは、恐らく他のどれよりも最も情けない言葉だった。きっと父が聞けば、顰め面をしたことだろう。当主たるものが、と、そんなことを言いながら。
けれども結局のところ、一番相応しいと思える言葉は、ただそれだけだった。何故遠ざけたのか――それはただただ、怖かったからに他ならないのだから。
セシリアは何も言わず、ただ前だけを向いている。木の幹に寄りかかっているユーリスからは、彼女の形の良い後頭部と、白い耳の後ろ側だけが見える。今彼女がどんな表情をしているのかなんて、分からない。呆れているだろうか。それとも怒っているのだろうか。
そのどちらであっても仕方がない、とユーリスはひっそりと自嘲をこぼす。もう口にしてしまった以上、全てを曝け出すしかない。たとえ彼女がどんな感情を抱き、どんな表情をしようとも。
「君が俺を見るたび、俺じゃない誰かを見ているような気がして」
敢えてセシリアが視界に映り込まないよう目を背け、ユーリスは近くに群生する、白や赤の花弁を開かせたジニアを見るともなく眺める。
種は土の中にいる限り安全だ。けれど芽吹こうとするならば、自らを覆う土を押しのけなければならない。光へ向かう者にとって、安らぎの場所は時に檻となる。
テオドールが言っていた言葉を思い出し、この花もまた、光を目指して殻を破り、土を押しのけて芽吹き、美しい花を咲かせたのだろうか、とユーリスは思う。殻の中はきっと、安寧に包まれていただろうに。それでも光を目指し、その先にあるものを得る為に――幾つものあたたかな花言葉を持つ花として花開く為に、一生懸命這い出てきたのだろうか。
「だから俺は、初めから決めておくことにした。一種の線引きとして。戒めとして。――君を愛しても、愛されることを求めはしない、と」
そう告げると、一拍ほどの間を置いて、セシリアがぎこちなく振り向いたのが視界の端に見えた。ユーリスもまた、ジニアから逸した視線を彼女へと向ける。色の白い小さな顔には、言葉を失ったかのように唇を微かに開いたまま、薄紫色の瞳が今にも零れ落ちそうなほど大きく見開かれていた。まるで呼吸の仕方を忘れてしまったように、彼女が息を詰めているのが分かる。
どうして、と問いかけているのが、その眼差しからでも容易に感じ取れた。彼女が困惑するのも無理はない。そう思い、胸の内で密かに苦笑をこぼす。セシリアはきっと――いや、間違いなく憶えているのだと、青葉の弾いた光できらりと小さく輝きながら揺らめく瞳を見つめながら、ユーリスは確信する。彼女はあの夜――結婚したあの夜のことを、あの時に告げた言葉を、今も確かに憶えている、と。
君を愛しても、愛されることを求めはしない――。それはあの時の言葉と似ているようで、まるで別物だった。思えば、彼女に"愛している"と告げたのは、これが初めてかもしれない。結婚式で、誓いを交わし合った時に紡いだ、儀礼に則った台詞ではなく。ただただ自分の想いをそのまま口にしたのは、これが初めてかもしれない、と。
どこからともなく羽音が聞こえ、オークの枝に鳥がとまった気配がした。愛らしい囀りが耳に届き、芝生を濃く染める影に、黒い小さな塊がふと映り込む。寄り添い合う、ふたつの小さな黒い影。
「……君には、想う人がいると思っていたから」
その言葉を絞り出すには、暫く時間が要った。穏やかな風が彼女の髪を何度も靡かせ、枝葉がかさかさと音を奏でながら揺れ、心音が、鼓膜の裏側で数え切れないほど繰り返されるほど。
漸く口にし出した言葉に、初めのうちこそ茫然としていたセシリアは、まるで弾かれたように目を瞠らせ、それからふっくらとした唇を半開きにしたまま、長い睫毛に縁取られた瞼を何度も瞬かせた。
「ま、待って、ユーリス……。それはいったい、何、というか……どういうことかしら。その……私に想う人がいる、っていうのは」
まるで身体を縛っていた糸がぷつりと切れたかのように、それまでじっとしていたセシリアが急に、身振り手振りを交えたり、顔を上に左にと忙しなく動かし始める。明らかに狼狽しているその姿に、ユーリスの胸を言いようのない複雑な気持ちが覆い尽くす。全く身に覚えのない故の戸惑いだろうか。それとも、真実を言い当てられたことによる焦りだろうか。
そのどちらにも見えるセシリアの様子を慎重に見つめた後、ユーリスは小さく溜息をついて、風で微かに乱れた前髪を軽く掻き上げた。敢えて彼女から視線を逸らし、暫し逡巡した後、ゆっくりと口を開く。ただそれだけのことなのに、唇はまるで鉛のように重く、声は喉に引っかかって思うように出てこない。
本当のことを知るのが怖い――これを言ってしまえば最後、彼女の反応次第では、変えようのない確信、つまり“真実”に変わるのだから。
――傷つくことを恐れる限り、何も変わらん。お前を閉じ込めているのは、牢獄ではない。過去のお前自身だ。
それでも、と、ユーリスは右手を握り締め、力なく閉じかけようとしていた口を、再びはっきりと開いた。喉に引っかかった声を、無理矢理押し出して。
「君は、クロードのことが好きなのだと、思っていた」
「……えっ?」
はっきりとそう告げた瞬間、セシリアの、驚きと困惑を孕んだ、言葉にならない声がぽつりとこぼれた。今まであたふたと動いていた身体を、指の先に至るまでぴたりととめて。
「クロー……ド?」
無意識に、というふうに、セシリアのやわらかな唇の間から、実弟の名がまろびでる。ユーリスはそれにただ静かに頷いて、今まで頑なに頭の奥底――深い深い闇の底――に隠し続け、常に見えないようにしていた記憶を、ひとつひとつ掘り返した。それはとても胸を疼かせ、締め付けるものだったが、しかしそうしなければ、前へは進めない。
幼い頃、クロードとともによくじゃれ合い、遊び回っていたこと。やがて満面の笑みは彼だけに向けられるようになり、自身にはどこかよそよそしく、控え目な笑顔しか見せてくれなくなったこと。クロードが遊びに来ると今にも飛び跳ねんばかりに喜び、けれどユーリスに対してはまるで他人行儀のような、淑女然とした対応をとることが多くなったこと。そして何より決定的だった、小部屋の前を通りかかった時に偶然聞いてしまった、あの遣り取り。
それらを順番に語ってゆけばゆくほど、セシリアは何故か、細く整えられた眉を下げ、唇を噛み締めた。哀しんでいるようにも、苦しんでいるようにも見える顔で、木漏れ日を浴びた薄紫色の瞳を揺らめかせながら。
「だから、俺は思った。……君は俺との婚姻を望んでいないのだ、と」
それを認めることが、受け入れることが、どれほど辛く、惨めなことだったか。今でも忘れられない。身体の芯まで灼けるような激しい痛みと、足元が崩れ落ち、昏い奈落へと落ちてゆくような絶望。騎士団時代に散々激しい稽古をしたけれど、その時に負った傷などまだ生易しいといえるほど、胸を貫いた傷は容易く癒えるようなものではないほど深く、重く、いつまで経っても赤い鮮血を流し続けていた。
「君は俺ではなく、クロードと結ばれるべきなのだと、思った。……そう気付いた時に、俺は身をい引くべきだったんだ。そうすることが正しいのだと、自分に言い聞かせた」
ゆるく吹き抜ける風を深く吸い込み、ユーリスはゆっくりと吐き出す。胸をきつく締め付ける鈍い疼きを、少しでも和らげるように。
「だが……俺にはそれが、出来なかった」
今でも鮮明に憶えている。グランベール家の借金について知らされた時のことを。何よりも真っ先に考えたのは、無論セシリアのことだった。彼女の行く末。金に物を言わせてアクセサリー感覚で、或いは貴族との繋がりを求めて若い娘を買うブルジョワジー。或いは、何処の馬の骨とも分からない男どもに素肌を晒し、身体を売る娼館。それらが怒涛のように頭の中に浮かび上がった時、身体を駆け巡ったのは、火傷しそうなほどに熱せられた血潮だった。
「借金を肩代わりすると決めた時……馬鹿な俺は、己の本心から目を逸らせなくなった」
セシリアが、僅かに目を伏せる。今にも泣き出しそうな顔をして。その繊細な、今にも脆く崩れてしまいそうな肌に触れたい、とユーリスは強く思う。衝動のままに手を伸ばし、彼女が壊れてしまわないように、消えてしまわないように触れたい、と。
けれど、そんなことが出来る資格など己にはない、と、ユーリスはひっそりと苦笑を浮かべながら、握り締めた掌に爪を喰い込ませる。
「君を助けたいだけなら、借金を返し終えて、それで終わりにすれば良かっただけだ。そしてその時に婚姻を解消し、クロードと結ばれる道を示せば良かった。……それが、一番正しい選択だったのだから」
気持ちを鎮めようと、もう一度深く吸い込んだ息を、ユーリスは細く長く、ゆっくりと吐き出す。過去を掘り返せば掘り返すほど、心はどんどんと抉られてゆく。当時の感情が、そのまま蘇って襲ってくるような感覚に囚われる。あまりにも生々しいそれに言葉を奪われそうになるが、ユーリスは最後に再び深呼吸をしてから、ゆっくりと唇を開いた。
「だが、俺には出来なかった。……君を、失いたくなかったから」
微かに睫毛を震わせながら、セシリアが瞼を持ち上げる。上目遣いで向けられる眼差しには、涙こそないけれど、深い悲しみが浮かんでいた。クロードと結ばれる道があった――それを知った故の哀惜だろうか。彼女からしてみれば、きっとひどく残酷な言葉だったろう。
「だからこそ俺は、君との結婚を選んだ。……己の胸を埋め尽くすエゴに負けて」
悲哀の浮かんだ瞳から逃げるように頭上を仰ぎ、ユーリスは心地よさそうに風にのってゆれる枝葉を、見るともなくじっと見つめる。そこにあるのは、生い茂った緑の葉ばかりだというのに――何故か、結婚した日の夜に見た、あの夜空が広がっているような気がした。無数に鏤められた星々と、ぽっかりと浮かぶ丸い白銀の月。
「初夜の時に、俺は君に言った。愛することはない、と。そして、俺を愛さなくて良い、とも。……あの時の俺は、それが君の為になるのだと、本気で信じていた。エゴに負け、“結婚”という契で縛り付けた俺を愛する必要はない。だから、君が想う相手を想い続ければいい。……それが、君へのせめてもの償いになると、そう思っていた」
だが、と、そこで言葉を区切り、ユーリスはゆっくりとひとつ瞬いてから、セシリアへと視線を戻す。ひどく情けない自嘲を浮かべながら。
「それは、違った。今ならば分かる。俺はただ、自分自身にそう言い聞かせ続けていただけだった。君に愛されない現実を受け入れるくらいなら、最初から愛されることなど望まない方が、ずっと楽だったからだ。あの言葉は、君は君の為だと信じていた。……だが、その奥底には――俺自身の弱さがあった」
弱かった。ただただ、弱かった。つくづくそう思わされる、と苦笑を滲ませながら、ユーリスは今度こそ逃げることはせずに、セシリアの瞳を真摯に、真っ直ぐに見つめた。この世で誰より愛しいと想う、たった一人の女の、何より美しい薄紫色の瞳を。
「……すまなかった」
セシリアの瞳が僅かに見開き、何かを言いかけようと開きかけた唇は、しかし微かな吐息をこぼすだけで、すぐに閉じられた。歯で皮膚を割いてしまうのではないかと思うほど力強く噛み締めて。
「少しでも君が幸せでいられるなら、困ることがないでいられるなら……その気持ちに嘘はない。その為なら、何だって出来ると思っていた。――けれど、それは君から選ぶ自由を奪っていた」
セシリアが本当は何を望んでいたのか。彼女にとっての本当の“幸せ”とは何だったのか。それを確かめもせず、エゴに呑まれ、結婚を強行した。彼女の人生にとって最も重要な分岐点を、自らの意思で選ぶ機会すら与えなかった。愛することはない。だから愛さなくて良い――あんなものは、償いでもなんでもなかった。あれで償えるなどと考えていたこと自体が、間違いだった。
あまりにも愚かだった、と、ユーリスは思う。ただ幸せにしたかった。それならば、早々に身を引けば良かったというのに。彼女を失いたくない一心で、己に言い訳を重ね、真実から目を逸らし続けた。呆れるほどに愚かに。
「だから今度は、君自身の意思で選んでほしい。俺と歩む未来でも、俺のいない未来でも構わない。セシリアが心から望んだ答えなら……俺はそれを、受け入れる」




