第76話 天津祝詞
「………………………………………………………あれ?」
アタシはゲームの製作中に眠っていたようだ。
だが、画面にはコンテニューをするかどうか聞いている。こんな画面作った覚えは――いや、テントプレイ中だった。
コンテニューするかどうか……。
もちろんここは《はい》を選ぼう……なんだかよくわからないけど、なにも覚えていないけれど――――
この画面の中にいる《まほうしょうじょ》を裏切るのはなんか嫌だから。
アタシは、とあるゲームセンターの閉店の帰りにトラックに撥ねられた。
撥ねられたのだけれど……その前に、アタシより先に撥ねられた人がいて――その人のことは顔をも憶えていないけれど――
その人がアタシを庇ってくれた。
あの人がアタシを押して、それで――間に合わなかったけれど、アタシは頭を強く打ってしまって意識不明になってしまったけれど即死じゃなかったおかげで助かった。
その人は……死んでしまったけれど。
だけど、アタシはその人に助けてもらった。
意識を失ったとき、アタシはとても長い……長い夢の中にいた。
アタシがただ趣味で作っていた《Magical/Moon Act》って格闘ゲームの中にいる夢。そこでラスボスのフリして生きていた夢。
格闘ゲームが好きで、小さい頃から可愛いものよりも戦うゲームが好きだった。
そんな中で相手も同じ人間で、勝ち負けのあるゲームだった格闘ゲームが本当に大好きだった。でも下手くそで、勝ったことなんてほとんどなかった。
プロゲーマーの対戦動画を見るのも大好きだった。でもアタシはそれにはなれない。どれだけ練習しても上手くはなれない。だけど好きだから、この好きを形にしたくていつしかゲームを作る側になっていた。
ゲームを作りたい夢もあった。
だからそういった会社にも務めた過去もある。だけどやっぱり夢と仕事が両立するのはとても難しくて、自分の好きなことを実現させるもはとても遠かった。
気付けば自分は格闘ゲームを作りたい夢より、仕事を優先してしまっていて――いつしかその夢を忘れてしまっていた。
「夢の内容は……もう、覚えていないけれど――」
だけど、はっきりと覚えていることがある。
必ず完成しろと、そう誰かに言われた気がする。
だから、
「完成したよ」
結局、仕事は続けているし……趣味で作っただけのものだから何年も何年も掛けて作ったものだから――かなりの時間が経過してしまったけれど、
今日――《Magical/Moon Act》は完成した。
別に売るつもりもないし、お金のためにしたわけでもない。好きだから、ただその想いを形にするためだけの続けただけのことだ。
別にネットの海に流すのもいいかとは思っている。
アタシが夢の中で出会った《《誰か》》に未完成のままにするなって叱られたなんて誰が信じるだろうか。
だけど、アタシはずっと閉じ込められていた夢の世界から――元の世界に帰って来ることが出来た。
まだこうして生きている。
アタシを繋いでくれたこの命の分まで、誰に語ることもないであろう……この未完成の物語を、完成させるために――
そして全ての作業が完了し、最後に画面にはこう表示されている。
――なまえをにゅうりょくしてください。
「アタシの名前は――」
アマツ――と、打ち込んだ。
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