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この異世界が『格闘ゲーム』すぎるので荒らしをガン処理する―《まほうしょうじょ》は『魔法使い』―  作者: 待雪 妥当
第■章 《まほうしょうじょ》たちへ

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第71話 汝、《荒使》の王を×せよ<6>

 この《異世界(せかい)》は《転生者》の敗北によって時間が巻き戻り、《まほうしょうじょ》たちは記憶を失い、また一から始まることとなる。


 だけど空が割れて、また一から全てが始まるはずだった世界が停止した。


 そりゃそうだ。


 《転生者》の敗北が条件ならば――おれはまだ、負けていないのだから。


「――――クリア・リヴァイブ」


 そして、七つ目の《まほう》を唱えよう。


 この世界が格闘ゲームの仕様でありながら――これを発動するためのコマンド入力は一切必要とされない。条件を満たすだけで使用可能となる。


 条件は一つだけ。


 技ゲージが満タンの状態でおれの体力がゼロになったときK.O.(敗北)にはならず、体力が回復し、そのまま対戦は継続するのである。


 なんかわからんまま体力ゼロにされたのが気に入らないから頭の中でこれを思い浮かべてよかった。実際、おれのいた世界の格ゲーで使うヤツがいたから。そいつのおかげでおれは負けにならず、戦える。


 なんのチートも与えられていないおれが、おれだけが唯一使えるまさしく《魔法》のような代物。それに名称もなければ、おれが勝手に納得して使っている力。


 おれの格闘ゲームの知識を反映させて、如何なる技を再現させることができる力。これは《まほうしょうじょ》としての力ではなく、《転生者》としての力だ。おれだけに許された力だ。


 だから、格闘ゲームにもあるから……それを使うことが許される。


 だが、この蘇生技は――おれの技ゲージが回復しなくなるという欠点もそのまま再現されてしまっている。もうおれに《まほう》に《才覚(ネーム)》を与えることができない。よって強力な技はもう使えない。


 それでも――――


「わるい、もうちょっと待っててくれ」


 虹色の光に包まれながら、再びおれは起き上がる。


 ソアレとルミアの青ざめた顔をしているから、驚かせてしまったことを詫びながら――おれはもう一度、アマツに向き合う。


 ガン処理なんて言っておきながら、やっぱ最後の相手はキツいな。


 あまりにぶっ飛んだ性能しすぎて保険でゲージを満タンのまま残しておいて、蘇生技使えたけど……もうこれでゲージを使う技は全て使えない。


 なにをされた?


 あの居合(ワンパン)さえどうにかすればいいと思っていたが、気付いたころにはヒトの腹にあんなもんぶっ刺しやがって――


 痛みがないのはゲームだからなのか、ちっとも痛くなくて良かった。もし痛みも反映されてたら、たとえ生きてても普通に辛すぎてショック死してると思う。


 居合斬りのときは刀に触れていた。


 しかし、刀に触れずに手だけ伸ばしたら離れていたのに掴まれていた。エフェクトも出ないし、もし当たり判定(ヒットボックス)でも見れるなら画面全体で掴んでそうなレベル。ラスボスやからって何してもいいわけちゃうぞ。


(ってか……なんで、それ最初から使わんのさ)


 距離関係なしで相手を掴んで、そのまま引き寄せて突き刺しておわり――それだけ使えばいいのに、なんで居合いばっかする? そういやあの黄金の三日月みたいなの飛ばす斬撃みたいなのも使ってこない。


「へぇ……そんなことまでできるの? もうなんでもありだね」


「なんでもありはそっちの方だろ。めちゃくちゃなことばっかしやがって」


 おれはそのまま構える。


 相手はこの異世界(ゲーム)の製作者だ。なんでもありで、なにもかも思い通りに出来るはずだ。だから一撃で即死させれる性能に、どれだけ離れていても掴めたり、勝つために自身を作り変えている。


 それなのに、おれはまだこうして倒れていない。


 ぶっちゃけ生き返ったところで同じことをされてしまえばすぐに決着だ。だが、アマツはそれをしない。


 だから、おれは近づく。


「まだ……続けるのか――」


「勝つまでやるんだよこっちは」


 それにまだ負けていない。


 アマツは刀に触れる。しかし、先程の見えない手でおれを掴み、そのまま無防備にさせるぶっ壊れ技は使わない、居合いは確かに最強だ。なにせ当たれば即死なのだから――しかしガードができるなら怖くない。


 そしてなにより、それしかしないのだから恐怖など感じることもない。


 だけど、はっきりわかったことがある。


 アマツは決定打を持っているのに決まったタイミングで使わない。いや使えない。


 ミソギは格ゲー経験者ではないが、それでもセンスでどうにかしていた。あれでおれぐらいの知識があればきっと王さまをやってたのはアイツだったかもしれない。


 だけど、


「好きと、上手いは紙一重だよな」


 別にゲームを作っているから、それでプロ並に上手いわけではなく――好きだから、上手いというわけでもない。


「あの居合いはまだコマンドが簡単だから使えるんだろう……」


 おれが近づくのを見てすぐに選択している時点でわかる。仮にあれが《↓↘→(236)》にレバーを入れて出せるのならおれが接近したと同時に入力するのだから間に合う。


 だがそれ以外の技……黄金の斬撃に、無限の範囲を誇る掴み技――どれも複雑な入力が必要だから慌てて入力してもコマンドミスで、発生してないんじゃないか?


「王さまよぉ……この異世界を作ったわりには、コマンド入力がおろそかなのか、それともエグいぐらい複雑な入力が必要なんじゃねぇか? そっちの技ってさぁ――――」


「そうだよ……アタシは下手くそで、対戦なんてロクにしたこともないし……それでも好きだから、だから、アタシの理想の格闘ゲームが作りたくて……始めたことなんだよ」


 それを別に責めるつもりはない。


 好きだから上手くなければならないなんておかしな話だ。だから好きであることをひた隠す必要はない。しかし勝ち負けがあるゲームである以上、その結果は受け止めなければならない。


「これは本当にアタシが最後のステージで対戦するラスボスのデザインなんだ」


 そういってアマツは手を広げて、


「でも、これも未完成……そして……居合いは確かにアタシがデザインしたけど、それ以外は勝手に作られていた。だけど、アタシは下手くそだから……きっと経験者なら簡単なコマンドだとしても咄嗟に入力するってなると出来ないよ」


(ならこの間に会話してる途中でゆっくり入力すれば……)


 時間を稼いで、その中で確実に入力して技を出せばおれの負けだ。


「喋りながら他のことなんてできないよ……ゲームしてるときにそんなことできる?」


「まぁ器用なヤツはできるだろうけど……」


 おれも正直自信はない。


「だから、トリノくんは正しい」


 おれが一度だけアマツのコマンドを許したのは、長考しすぎたからだ。相手の出方を見過ぎた。そのせいでアマツは余裕をもってコマンドを入力できた。


 だから、掴まれた。


 しかし、いまはもうここまでネタがわかってしまった以上……負けられないのだから、おれは確実にアマツを倒しにかかっている。


 必殺技は出せるけど、難しいコマンドになったら出せないし、アマツははっきり言っていた。難しいコマンドも、難しいコンボも、難しい起き攻めもいらないって――


 遊ぶためならばその難しさをゲームの一つの要素として楽しめる。だけどアマツはこの異世界で生き続けるためだけに、とにかく簡略化した。だから他の要素は全て捨てている。


 通常攻撃すら、ジャンプ攻撃も、全ての要素をかなぐり破棄して――即死を付与した《魔導技(ひっさつわざ)》しか持っていない悲しいキャラクターだ。


 勝てはできても、それはきっと楽しくない。


 でも、この世界でそんな要素必要なかったのだろう。アマツは勝つためだけにそう作り変えたのだろう。


 それでも――勝つために他の要素を捨てて、それだけで勝って来てしまったからコマンドの入力精度を上げずにおれと対峙したのは失敗だったな。


 もう、遅い。


 おれは既にアマツの(ふところ)に接近していた。

本日もここまでお読み頂きありがとうございます。


完結まで少しずつ近づいております。


もしこの先どうなるか、読んでいただけるのなら


↓↓の☆☆☆☆☆から★1から★5で評価してもらえると嬉しいです。


作品のブクマもしていただければ励みになります。


それでは次回もよろしくお願いします。

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