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この異世界が『格闘ゲーム』すぎるので荒らしをガン処理する―《まほうしょうじょ》は『魔法使い』―  作者: 待雪 妥当
第■章 《まほうしょうじょ》たちへ

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第68話 汝、《荒使》の王を×せよ<4>

「たぶん知らないと思うけど……製作中だった《Magical/Moon Act》って名前の格ゲー……作ってる途中だったんだよアタシ」


「まじですまん……初耳やわ――」


 そこそこ格ゲーしてたと思ってたけど、やっぱ知らない作品が出てくるとなんか申し訳なくてショックだ。


「知らなくて当然。ってか誰も知らないよ……個人で作ってたんだから」


 なんてアマツは自嘲気味に笑っている。ただ趣味で――長い時間をかけて密かに作っていた格闘ゲーム。ステージが少ないのもキャラも少ないのも、何もかもが未完成に近いのはそれが原因だった。


 そしてそれを周囲に発表することなく、ただ時間を掛けて合間に作っていただけなのだから誰も知らないのも無理はなかったと……そう言った。


「いつものように眠って、目を醒ませばアタシの作っていたこの《Magical/Moon Act》の世界に転生してたわけ」


 ゲームの世界に転生するのだって別におかしな話ではない。舞台がゲームの世界のまま転生する主人公も何人もいるのだから。


 だが、それなら――


「なんでラスボスやってんだよ」


「最初はトリノくんと同じだったんだよ?」


 なんて「《まほうしょうじょ》だったのに……ねぇ?」と、首を傾げたままアマツは言う。


「アタシが作ったゲームの世界だから、アタシは全て知ってるはずなのに……でも、このゲームは未完成だったんだよ」


 未完成だから、ところどころ製作者であるアマツですら知り得ない不可思議な力が働いてしまっている。


 都合よく世界を繋げるための人ではない別の力が働いているという。


「それが神さまなのか、女神さまなのか……転生したら普通はいろいろ面倒みてくれるはずのそんな存在がいないまま――アタシの作っていたこの未完成の《格ゲー》の世界に放り出された」


 だからアマツは目指した。


 《荒使(あらし)》はアマツが用意したCPU用の対戦相手。しかし《王》なんてものは作った覚えがないのに――


「未完成だったから勝手に脚本付け加えられたのかな……ほんと失礼だよね。アタシの趣味を汚すようなことしてさ」


 神さまがこの世界を作ったのなら、未完成だった《Magical/Moon Act》を補完するように勝手にラスボスまで用意されて、


「しかもそれをアタシにするんだから酷い話だよね。そりゃ転生したときはアタシだって喜んだんだよ? アタシの作った世界で、アタシがその世界の人物になって戦えるんだから」


 でも、


「アタシはこの世界のラスボスにされてしまった。ずっと、ずっと……やって来る《転生者》はアタシを倒すことすらできずに――」


 異世界は作品の数だけ無数に存在する。


 よって異世界は無限に存在する。


 このアマツの作った未完成の格闘ゲームの世界もその一つで、《転生者》が別の世界で新しい生を始めるとして、けれどその世界は選べず強制される場合もあるのだろうか。


 おれもトラックにはねられた死んだわけだが、死の間際に生まれ変わりたいとか、転生――なんて言葉は頭によぎることもなかったのに――気付けば、この世界におれはいる。


「おれが来る前にも他の《転生者》はいたんだろ?」


「それ前にも言ったでしょ、もう覚えてないんだって……アタシのとこまでそもそもたどり着けないんだから。数える意味、ある???」


 《転生者》がどこで脱落するかはわからない。


 ましてや格闘ゲームもしたことない《転生者》なら詰んでる。


「ミソギ……あの子がほんと厄介だったよ――《転生者》はみんな《まほう》とは違う都合のよい能力があるけど、あの子はね……《荒使》を操れたから」


 《王》を倒すために転生した《まほうしょうじょ》が、《王》のために後に来るであろう《転生者》を一人残らず破壊してるのは最悪である。


「他の異世界は知らない。この世界での敗北は……元の世界に戻ることを意味してるからね。ミソギは厄介な能力を持ってるかもしれない《転生者》なら手段を選ばずに勝ち続けていた」


 しかし、アマツはおれを見つめたまま、


「でもミソギもトリノくんの能力はわからなかったみたい――ってか、アタシも未だにわかってない。ほんとすごいよ、《チート》とかもらってないの?」


 おれの能力はおれ自身の頭の中にある格ゲーの知識をそのまま技として反映させることができるものだ。だからどんな対戦相手が現れても、その相手にとって効果的な技を使って勝つことが出来ている。


「この異世界(せかい)に最初に生まれたのがアタシ。この塔に最初に辿り着いたのもアタシ。《まほうしょうじょ》を作ったのもアタシ。《荒使》を作ったのもアタシ――」


「なぁ……」


 けれど、ラスボスにされて――元の世界に帰りたいのに、アマツは帰れぬまま。


 だが、ラスボスはいつか倒さなくてはならない。それでもずっとアマツを倒す者は現れず……ずっと、ずっとこの塔にいた。


 だから、おれは聞きたかったことをここで聞く。


「気になってたんだよな。もしも……おれが負けたらどうなる?」


 おれが元の世界に戻るのはわかる。


 そして元の世界におれはいない――死んでるからな。でもそれはどうでもいい。またおれとは違う別の《転生者》がやって来るとして、その場合……()()()()()()()()()()


「なにって……()()()()()()()()


 キョトンとした顔で、アマツはそう言う。


「この異世界(ゲーム)にコンティニューなんてないよ??」


 そしておれから視線を逸らしたまま、


「アタシと……それにミソギは《荒使》として振舞ってたから大丈夫なのか、理由なんてもうそんなのわからないけれど――それ以外は全て何もかも消えて無くなって、また……次の《転生者》が現れて……トリノくんも白い繭の中で目を醒ましたでしょ? だからね……()()()()()()()()()


 だから《転生者》の敗北は、全ての《まほうしょうじょ》の存在の消失となる。

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