第65話 汝、《荒使》の王を×せよ<1>
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
最終決戦ッッッッ!!!!!!!!
これがそんなノリだったらどんなに良かっただろうか――
「うわぁ~すごいすごい! こんなに速かったらすぐにてっぺんまで行けそうだね♪」
ソアレはそれはそれは下から上に垂直でロケット噴射でもしてんのかってぐらいとんでもない速度で駆け上ってるのに、なんかエグい絶叫マシンに乗ってめちゃくちゃはしゃいでるようにしか見えない。
正直なところおれはソアレに抱き締められてないとそのまま風圧かなんかで余裕で転がり落ちて地面に向かって墜落してることだろう。《まほうしょうじょ》の体幹やばすぎやろ……。
「お、おおお、おちるぅ……ってぇ、ソアレ、おま、ちょっと……ぜったい離すなよぉ……ッ……」
これでもし落ちたらもう戻ってこれない。ってか死ぬ。絶対死ぬ。
ソアレが後ろから強く抱き締めてくれているからなんとなっているが、もしこの手を離されたらそのままおれがお星さまだ。こんな軽い身体、落ちるってか吹っ飛ぶ。
あれだけ真昼のように明るかった遊園地……いや伏魔殿がいまは遠い。
それだけ空高くルミアの操る《穢濁》が駆け上がっている。ただ垂直に、塔の頂上を目指して突き進んでいく。
「……ん、トリノ――」
ルミアは手綱を引くような動作をして、おれの名を呼びながら塔の頂上に向かって指を差す。
「なにか……落ちてくる」
「いや……」
あれは落ちてくるんじゃなくて、
「飛んできたな」
黄金の三日月がふたつ。
おれたちに目掛けて飛んでくる。
「ソアレッ!! お願いだからしっかり掴んでくれよぉ……」
遠すぎて相手の体力ゲージも何も見えない。対戦が成立していない場合、たとえ《荒使》であったとしても危害を加えることはできない。
できない、のだが……なんかおれの勘――こんなもんなんのアテにもならないはずなのに、あれには絶対当たってはいけないと、そう思った。
だから、おれは立ち上がる。やっぱそうだ。
対戦が成立すれば、おれの身体能力も向上する。体力ゲージが見えないほどに遠い塔のてっぺんから飛んでくるあの黄金の光をどうにかしないと。
「ルミア、そのまま真っ直ぐ飛べ」
「ん……、トリノ、なんとかしてくるの?」
「なんとかするために、おれがいるんだよ」
そのままおれは《↓↘→+弱攻撃》で《飛び道具》を出して、黄金に光り輝きながら強襲する刃にぶつけるが、
「クソが、消えねぇ……」
飛び道具同士がぶつかればだいたいどちらも消えるものなのだが、相手の攻撃の方が強いのか消えてくれない。おれの弾だけ消されて、いまだこちらに向かって二つの光が襲い掛かる。
だが、おれは再度撃ちこみ続ける。ミソギのシャボン玉は対して数も無かったからなんとも思わなかったが、これは違う。硬すぎる。結局五発ぐらいぶち込んでやっと一つは消えたが、光はもう一つこちらに向かってきている。
「ソアレ」
「ど、どうしよう……トリノちゃん……」
「あれに向かって、俺を投げろ」
「うん……え? え!? トリノちゃんを!!?」
「たのむ」
おれがいきなりとんでもないことを言っているのはわかっているし、当然驚くソアレだったが、それでもおれの言うとおりに腰の辺りを掴んで、
「ど、どうなっても知らないよ――」
「どうにかるするから、あとそのあとはよろしく」
ほんとめちゃくちゃなこと言ってると思う。
そしてソアレはそのままおれを黄金の光に向かって投げつける。
ソアレほんま体幹やばすぎやろ。投げキャラってみんなあんな感じ?
なんてアホなこと言ってる場合ではない。おれはガードを構えたまま突っ込む。攻撃してどうにもできないなら、防御してしまえばいい。まぁ、パイセンの技みたいにガード不能だったらそれまでだが――
「上手くいった」
おれ自身がガードして黄金の光が触れたときその光は掻き消える。どうやらこれはただの飛び道具のようだ。
「うわ~……」
そしてそのまま空に投げ出されたのであとは落ちるだけ。このままどっか飛んでいくのかな……ってちょっと怖くなったけど、ただ重力に逆らうことなく真下へ落ちた。
しかし、
「トリノちゃん!」
「トリノ……ばか」
ソアレは血相変えて酷い顔してるし、ルミアは頬を膨らませて怒ってるように見える。まぁ、その……ゴリ押しで突破しようとしたし、説明する暇もなかったし、驚かせて申し訳ないけども。
「なにしてるの……もう……ほんと、あんなことして――」
「いやぁ、これしかないなぁっておもって……」
「もう……ほんと、いっつもめちゃくちゃだよ……」
「それは、はい……そうですねぇ」
言い訳できる余地もなく、
「ばか」
「いひゃいいひゃい」
なんかルミアには頬をつねられる。しかし驚かしてしまったのでこの痛みは受け入れる。
『はは、まさか塔をのぼらずに、飛んで来るとはおもわなかったよ』
そしておれの《首輪》から《荒使》の王である……アマツの声が滲み出る。
『さすがにズルしてしまう子にはペナルティなんだけどね――』
そして再び上空から飛んでくる一筋の黄金の刃を前に立ちあがると、ソアレはすぐにおれの足を固定してくれる。そのままおれは飛び道具を連発して相殺する。
『相変わらず速いなぁ』
「何兆回入力してきたと思ってんねん」
言い過ぎである。
でも、これぐらい調子に乗ってもいいだろう。
『せっかちだね、トリノくんは』
「生憎、もう「待て」ばっかされて飽きてんだよ。雑魚ばっかでずっと退屈してんだ……そろそろトップ層と戦らせてくれよ」
それに聞きたいことが山ほどある。
この異世界のことより、王を倒せば終わることも――何もかもが半端なまま、しかもやけに格ゲーな仕様なのも謎のままだし、おれはそれでも元の世界でやり込んでたおかげでなんとかやれてしまってるわけだが。
『そうだね、頂上まで来れたら……そのとき、アタシと対戦して――勝ってみせてよ』
そしてルミアは飛翔する《穢濁》の速度を更に上げる。
「トリノ……たぶん塔の半分は超えてる。あともうちょっとだから」
「おお、こればっかはおれにはどうすることもできんしな……がんばれルミア」
「ん……がんばる」
「トリノちゃん……もうすこし、だね」
「ああ、そうだな」
百階あるとかいってた攻略する気にもなれない塔をひたすらズルして、そのままただ真っ直ぐに空を駆ける。
そして、おれの目にも……果てが見えた。
あそこか――
伸び続ける塔の終わりが見える。
ついに、此処まで――――
本日もここまでお読み頂きありがとうございます。
この先どうなるか、もし読んでいただけるのなら
↓↓の☆☆☆☆☆から★1から★5で評価してもらえると嬉しいです。
作品のブクマもしていただければ励みになります。
いつもみなさまのおかげで毎日投稿は継続できております。
本当にありがとうございます。それでは次回もよろしくお願いします。




