第62話 汝、切断厨を×せよ<2>
「消えてしまえ、何もかも――――」
怪獣のような巨大な《荒使》から放たれる光線……フルカノンのパイセンの《まほう》を使って撃ち出しているのなら、まずはこいつをどうにかする。
しかしこの光線は回避しようがない。
だが、撃ち出された光線に対して何もできないわけではない。
だからおれは《まほう》を唱える。
ここに来て思えば一度も使っていなかったな――なんて、思いながら《↓↘→↓↘→+BCボタン同時押し》をすかさず頭の中で入力していた。
両手を合わせたおれの中で収束する光を、そのまま一気に、ミソギの操る《荒使》の口の中にぶち込んでやる。
「バカだよねぇ、なにをしようがこっちのほうが早いんだよねぇ!!」
そして開いた口からおれめがけて撃ち出された光線を前に、おれは回避するつもりなどなかった。ミソギが操る巨大な《荒使》の攻撃に対して、おれは既に入力したコマンドによって《才覚》を与えた《まほう》を撃ち返す
なら、どうしようがおれの勝手だ。
「――クリスタル・レイ」
光線には光線ぶつけんだよ。
撃ち出された光線に対して、おれも同じように手からビームを出してやる。ここで躱しても遠すぎる。回避して反撃するよりも、相手のビームそのものをどうにかした方がいい。
「重いってぇ……」
だがやはり相手の方が遥かにデカいし、質量やばすぎておれの手から出たビームの方がちょっと勢い負けてる。は? なんかムカつくんだが。パイセンの力パクってるだけのヤツに競り合いで負けてるのめっちゃ許せん。
「このまま終わってくれると助かるねぇ」
そして更に勢いを増す巨大な《荒使》の光線が太くなる。ますますおれの撃ち出す光線との差が生じてる。これたぶんこのままだったら負けるのに、ほんとなんだかおかしすぎておれは笑ってしまう。
「これさぁ……」
「どうしたんだい、命乞いでもしてくれるのかい? だったらいますぐ見てみたいなぁ。キミが頭を下げたらもしかしたら未来は変わるかもよ?」
「いやぁ……ふふ……こんなバカなことがさぁ……許されるのかなって……ほんま腹痛いわ」
さすがにおれに都合良過ぎて笑ってしまうのだけれど、これに関してはおれにそんな力を与えたどこかの誰かに文句言ってくれと願うばかりだ。
おれは相手に合わせて、必要な技をコマンドを用いて使えるのはまぁわかった。
「なに? 死ぬのこわくておかしくなった? もともとおかしいけど、更におかしくなっておもしろいよキミ」
だがおれはミソギの煽りをスルーしつつ、手からビーム出したままほくそ笑む。
「これさぁ……ボタン連打したらどうなるかなって思ったら、なんか上手くいきそうでさぁ……」
「……………………………………………………………………は?」
おれの突然のおかしな発言にミソギは頭を傾げた。
おれは脳内で延々と攻撃ボタンを連打してた。クソみたいな仕様の一つ。特定の攻撃はその動作中にボタンを連打するとヒット数が増えるとかいうおもしろ仕様。あるんだよなぁこういうの。
「は、え、だから、だからなんだって――」
「別にビームの太さはどうでもいいんだって。こういうのって結局はどれだけ長くビームだせてるかって話だから」
だからよ、このままおれはずっとボタンを連打し続ける。ゲージが尽きる限り撃ち続けれる。そしてコイツはおれを《荒使》の雑魚で時間稼ぎしたの失敗だったな。
対戦を重ねまくったおかげで最初から技ゲージは満タンまで溜まってるからこうしてずっとビームを撃ち続けるわけだ。そもそも時間稼ぎでばら撒いた雑魚はゲージを使わずに処理してる。
「この……さっさと死ねよぉ、オマエはよぉおおぉっ!!!」
「口調変わってるやん。余裕なさそうやな……まぁ、そんなもんよ」
結局ゲームの仕様を知らないおまえと知っているおれでは、そこで差が出る。だから、少しずつおれの出してる光線よりも、光線を吐き出し続ける《荒使》の方が勢いがなくなってきている。光線の太さもなんか段々細くなってるし。
「あら?」
そして拍子抜けのまま突き破り、巨大な《荒使》の頭部を貫通していた。真っ黒い風船が弾けたように、そのまま首から上がなくなっている。えらいことになってますね。
「な、な……な……」
首に触手でブランコみたいに揺られて調子乗ってたミソギが最後の切り札まで台無しにされてもう声も出ないようだ。
そして、まぁ……そろそろ、店じまいだ。
「……弱点丸出しやねんそれ」
胸部に埋まったパイセンを見せびらかして人質にでもしてんのかわからんけど、パイセンの《まほう》を使って勝ちに来るのはまぁやる気あっていいけども――でもしつこい。
そして切断までするようなやつはもう逃がすわけにはいかない。
「に、にげ……」
「逃がすか」
そしておれはまだ残っている一本のゲージのおかげでそのまま地面を蹴り、空中へと飛ぶ。
相手がどれだけデカかろうが、おれの身体が小さくても関係ない。一気に突っ込んで、一気に終わらせる。
脳裏で空中に飛んだまま《↓↙←↓↙←+|BCボタン同時押しすれば……、
「フリューゲル・ストライク――――」
パイセンに決めたあの《まほう》で、どれだけ届かない距離にいようがまるで背中に羽根でも生えたみたいに――ハヤブサみたく突っ込んでいく。
蹴りの構えをしたまま矢のように放たれたおれがそのままミソギ目掛けて突っ込んでいくが、
「ひぃ――――――――――――――――」
情けない声を上げて、その場から逃げ出すミソギ。いまはまだそうやって延命しとけ。そのままおれの矢先のような伸ばした足先が触れたとき《荒使》の胸部を突き破った。
「よっしゃ、うまくいったで」
巨大な《荒使》をぶち抜いたと同時にしっかりパイセンをキャッチして着地する。そのまま崩れるように溶けていく《荒使》――これで完全にミソギの切り札は処理した。
「……おい」
そして背中を向けてまた逃げようとするミソギにおれは声をかける。
「また逃げるか? 受け入れたくない現実からは目を逸らすか? なら、オマエはここまでだよ。おれの後ろにいる子らは受け入れて、立ち向かった。オマエはそれをしなかった――だから、オマエは本当にここで終わりなんよ」
なんか必死に叫び散らかしているがもう耳を傾ける気すらない。だってここまで散々周りを振り回し、そのくせ自分だけは逃げ続けているやつにこれ以上関わるのも鬱陶しい。
オマエはさ、蠅と同じだ。
だから、ここで×ね。
「い――――――」
切断して逃げるのかと思った。それならもう世界の果てまでこいつを永遠に追い続けて、諦めるまでボコしてやればいい。それだけのことをこいつはしたんだ。逃げるなら逃げろ。
その代わりおれは……王さまとやらをぶっ飛ばすまでに、こいつの心が折れるまで処理し続けてやる。
だから逃走されるのを承知でおれは指の骨がバラバラになってもいいレベルで力を篭めてぶん殴ってやる。
溜めジャンプ強攻撃――ジャンプしたまま強攻撃をぶちこむとき、ボタンを押しっぱなした状態で威力と性能が変化する。
それにより振り下ろした鉄拳がミソギの後頭部にめり込んだとき……ミソギの身体はくの字に折り曲がったまま虹色に光ってスーパーボールが跳ねたみたいに吹っ飛んでいく。
そのままおれのジャンプ強攻撃がヒットしたのを確認したと同時にさらにジャンプキャンセルして同じように溜めジャンプ強攻撃をもう一度ぶち込む。
こんなので終わるわけねぇだろ。フルコン完走まで当然ボコる。これまで散々おれを、おれたちを、舐め腐ったその性根ごと叩き折る。
二度、地面に叩きつけられては跳ねて飛んでいくミソギ。もうその顔面はただ蒼白したまま、自分がどうなってしまうのかその先に待つ結末に絶望しているのだろうが、
「……怖いか? でも、オマエはずっとそうやって楽しんでたんだろ?? だから、今度は自分の身体で楽しめや――なぁ?」
二回跳ねるミソギの身体を追いかけるようにおれは地上に着地したと同時に《ダッシュ》で急接近し、溜め立ち強攻撃をすることでこれまた性能が変わってタックルすればそのままミソギはお手玉みたいに空中にまた跳ねている。
だがそのまま落ちて潰れてもいいが、もちろんそんなことで終わらせるわけがない。新しく見つけたけどまだ実践で使えてなかったコンボ――ここで使うか……。
<しゃがみ強攻撃→立ち中攻撃→立ち弱攻撃×3→立ち強攻撃……
格闘ゲームは《弱→中→強》と決まったルートでしか攻撃はキャンセルできないと思いきや作品によっては別にその逆もいけたりするものもある。だからしゃがみ強攻撃から中攻撃~弱攻撃と逆のルートで繋いていける。
これはなんのためにするのか……次の《魔導技》で更にコンボを継続するためだ。
おれの《↓↙←+強攻撃で使える《クリミナル・ムーン》――空中でくるりと一回転してから踵を落とす《魔導技》だが、本来ならこれは空中時のみ使える技だ。地上にいる状態では使えない。
の、だが――コマンドの入力でそれを強制的に発動する。
《↓↙←》を――《↓↙←↖》で最後の部分が斜め上にレバーを入れて攻撃ボタンを押せば最速で空中へ移行し、《魔導技》が出せる。
最低空で《クリミナル・ムーン》を最速で発動し、半月を描きながら撃ち出される踵落としはミソギをそのまま地面にめり込ませる。
が、一回で終わったらもったいないだろう?
とにかく限界ギリギリまで痛めつけなければならない。
そのまま地面にめり込んだミソギを最速で追いかけ、《しゃがみ強攻撃→立ち強攻撃》で足払いからの掌底でミソギの全身を浮かせたまま――
「何回いけるかな」
再び↓↙←↖+強攻撃だ。再度、おれは最低空を浮き、それと同時に踵落としを決め続ける。
悲鳴を出し続けるミソギだが、容赦なくおれは踵落としをミソギの脳天にぶち込んでいく。これを同じように決め続ける。
このコンボレシピをループさせていき――四回決めたあたりでもはやこれ以上続ける意味もなく、ミソギ体力はほどんと残っていない。
だが、
「シックス……マジック――」
とりあえずギリギリまで回転しながら踵落としを食らわせ続け、これ以上は体力がゼロになってコンボが繋がらなくなってしまいそうだっだ――だから、これで最後だ。
なんども地面にめり込んでは、叩き起こされ、そしてまた地面にめり込み、ついに動かないミソギに対しておれは《まほう》に名を与える。それは《才覚》を与えし六個目の《魔法》
既に《↓↙←↙↓↘→+BC同時押し》と入力されている――そして右腕に集う虹色の光――その光を右手の中で閉じ込めたままおれは地面を叩く。
「アーク・クリミナル」
そして地面から虹色の光の柱が噴き出せば、十字に爆発し、そのままミソギは声にならない声を上げたまま空中できりもみ回転して、やがて墜落し今度こそ動かなくなった。
「処理……っと」
やっとすっきりしたわ。もう二度と荒らすんじゃねぇぞ。
本日もここまでお読み頂きありがとうございます。
この先どうなるか、もし読んでいただけるのなら
↓↓のレビュー☆☆☆☆☆から★1から★5で評価してもらえると嬉しいです。
作品のブクマもしていただければ励みになります。
いつもみなさまのおかげで毎日投稿は継続できております。
本当にありがとうございます。それでは次回もよろしくお願いします。




