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この異世界が『格闘ゲーム』すぎるので荒らしをガン処理する―《まほうしょうじょ》は『魔法使い』―  作者: 待雪 妥当
第5章 魔法使い

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第53話 汝、■■■を×せよ<7>

 ミソギの願いが果たされることはなかった。


 ガードしても体力ゲージを削るか形で、おれを倒すつもりだったのだろうが――おれが使った《まほう》によってそれは(さえぎ)られた。


 おれが使った技は、発動したとしてもそれはただ構えるだけの一見は何の役にも立たない技。だがその構えた状態のおれに攻撃をすることで発生する。


 本来は決まった属性……上段のみとか下段のみとか決まった攻撃にしか成立しないようになっているのだが、わざわざこっちもゲージを吐かないと使えない分、性能も良くなって全ての判定を取れるのは強すぎるな。


 まぁ、発生が1F(フレーム)のクソヤバ当て身使うヤツが元の世界にもいるからさ……あっちはあっちでホント修羅すぎるな。


 構えたおれに攻撃したミソギはおれに掴まれてそのまま宙を舞っていた。そして光に包まれたまま地面に墜落したと同時に爆発して吹き飛んでいた。


「どうせおまえ……ルミアのこと操ってたときにおれのこと見てたんだろ?」


 《寄生型》を操ってたのがミソギなら、おれが操られたルミアと戦っていたのも知っているだろう。そのときに使っていたおれの攻撃がなんなのか既に知っているはずだ。


 その中にはガードしてから反撃する《ガードキャンセル》による攻撃手段も知っているはずだ。あれもガード中に割り込める反撃手段だから強力ではあるが、ガードしてからでないと発動できない。


 だからこそミソギはゲージを使用した攻撃手段を選び、それを封じようとしたのだろうが――


「どうなってる……んだ、キミは、キミはおかしい……おかしいよ。いくらなんでも()()()()()()()――ここに来るまでずっと、どれもさぁ……」


「こればっかりはおれもわからねぇんだけどさ……おれが使いたいって思った技がゲージを吐く技に限っては使えるんだよな」


 いままでずっと思っていた違和感だ――なにせ()()()()


 格闘ゲームで、対戦中に自分の使いたい技がもしあったとしてもそれが使えるようになるなんてことはない。


 作られたキャラクターのコンセプトがあって用意されたカードだけで戦うのが普通だろうに。


 なのにこれまでずっといろんな相手と戦っていたときに、おれは自分の使えたらいいな……なんて、そんな風に相手の行動に合わせてもっとも有効な攻撃手段があればと思い描けば、それを創造していたのである。


 だから後出しで相手の行動に対してこちらは選択できる。


 そう、これがおれの本当の《まほう》だ。


 もしこんな格闘ゲームのキャラがいたら速攻削除されるだろうな。


 これが本当にちゃんと調整された格闘ゲームならおれもすぐに削除してくれって運営に問い合わせるけど、いまはただ《荒使》を名乗るヤツらを全員ガン処理するためにこの力は有効活用させてもらう。


「オマエみたいなヤツを全部吹っ飛ばすまではおれもズルさせてもらうわ」


 対戦はまだ終わっていない。


 おれの反撃によってミソギの体力が一気に削れて消えたが、こっちの体力は未だミリ残しのままだ。


「何者……なんだよ、キミ……キミさぁ……ほんと、なに?」


 肩で息をしながら、パイセンのときはわざと攻撃を食らってダメージを負っても笑ってごまかしてたくせにおれにぶん投げられたダメージは唐突すぎて精神的にもダメージがデカいのか汗を(にじ)ませている。


「――ただの《魔法使い》や、覚えとけ」


 他のどの《まほうしょうじょ》よりも、よっぽど好き勝手してるだけにきっとおれの《まほう》は《魔法》のようなものだろう。


 おれの頭の中のイメージをそのまま形にしているのだから。


 だから、次にイメージするのは――この目の前の偽者の終わりだ。


「は、はは……ふざけた魔法使いめ……もうあと一発攻撃当たったら終わりなんだから、さっさと負けろよなぁ!!」


「あのなぁ……勝ち負けあるゲームでわざと負けるヤツがどこにおんねん」


 あと一発攻撃を食らえば終わり。


 だからジっとしてる。だから黙って受け入れる。


 そんなわけがあるか。


 いま、おまえはおれに反撃されてそのまま倒れてることになぜ気付かない。


起き攻め(セットプレイ)……いくぞ?」


 信じられない顔をしているが、こっちが有利なんだから攻めるに決まってるだろう。読み合いだ。体力が1だろうが、あと一発当たれば終わりだろうがそんなことは関係ない。


 ならおまえはどうする?――だから、おれは問い掛けるようにそう言ったのだ。


「どうせ……あと一回攻撃当たれば……こんなやつ――――」


 そして闇雲に攻撃を繰り出している。おれがわざとこいつの起き上がりにジャンプ攻撃を重ねることすらせず歩いているのが気に入らないんだろう。

 

 自分がなぶるような真似をするのが楽しいと言っていても、逆をされるのは嫌なようだ。なら、そりゃあ同じ目にあわせた方が楽しいよな?


 起き上がるミソギはおれの体力をとにかくゼロにしたいという一心からかガードはせずただひたすらに腕を振り回し触手を伸ばし、攻撃を当てようとしている。だが、おれは起き攻めに選んだのは――


「スターマイン・エッジ」


 密着状態のまま打撃でも投げでもなく、《→↓↘(623)+強攻撃》で蹴り上げ、花火のように激しく光りながらミソギは宙に浮いていた。


 この攻撃は最初におれが戦った《荒使》にも使っていた発生に無敵が付与する攻撃だ。


 それをミソギは暴れずに素直にガードすればこの攻撃は発生してから、おれはクルリと三日月を描くように蹴り上げるモーションが終わるまで一切行動不可能なのだから、隙だらけになったおれを叩いて終わりだったはずだ。


「言動から何するか見えるからさ」


 いやそれなら素直にこっちは打撃を埋めてしまえば、暴れても意味はないのだがそこからフルコンなんてしてもおもんない。リスクを背負ってでも、ミソギが勝てる要素を潰す方がいい。


「おま、え……おまえは……なんで、そんな平気で、いられる……あと一回、一回でも攻撃を食らったら終わりなのに――」


「何千、何万と対戦してるとな……なんか麻痺するのかな。だって、負けても死なないからな。格ゲーはさ」


 その感覚でおれはこの異世界でも戦ってしまっているから、恐怖という感覚は既に死んでいるのかもしれない。


 体力が『1』であろうが、負ければそこで終わりだろうが――だって、命までは奪われないから。そんな状態でもう数え切れぬほどの対戦回数を重ね続けてきたおれは、体力ゲージがミリになって戦うことも幾度と無く体験してきた。


 絶望的状況で、相手は有利なまま……なんて状況で戦うことだってあった。それで絶対に負ける――なんてことはなかったから。


 だってこの体力がゼロにならない限りは負けではない。ならゼロになるまえに(つぶ)してしまえばいい。そういう環境下で二十数年と戦い続けているおっさんがブレるわけなだろうに。


「負けだ、ボクの負けでいい」


「いいわけねぇだろ」


 格闘ゲームに降参なんてねぇんだよ。


 体力がゼロになるか、制限時間が切れるまで決して終わりはない。


 だから、おれは容赦はしない。


 おまえが周囲に容赦しなかった。


 だから、おれは容赦などするわけがない。


「あ――――――――――――――――」


 おれが一歩近づいたとき、不安が、恐怖が、ミソギを蝕んだのだろう。また同じように……暴れても無敵技をぶっぱなしてくるように思えたのだろう。


 だから一瞬出遅れた。


 攻撃を出すことはせず、様子を見たのだ。


 遅い。


 おれはミソギの胸倉を掴んでいた。


 そして力いっぱいに巴投げしている。今度は動かなくなってガードを固めたミソギに地上投げを重ねることで放り投げる。ミソギの脳が破壊されていく。


 なにをしても、その逆を突いてくる。


 投げられたあと、ミソギはまた一歩近づくおれに対して暴れたが今度はこちらはすでに攻撃を重ねている。


 ミソギの攻撃が出るよりも先に、おれが既に放っている肘鉄が重なっていることで喉にそれは刺さり、声にならない声で――その場に倒れていた。


「なんだよ、もう終わりか?」


 重なった打撃はミソギを仕留め、そしてそのままコンボに移行するはずだったがおれの『1』の体力を『0』にすることが出来ないまま、ついにミソギの体力が逆に『0』になっていた。


 本当はここから新しいコンボ試して、めちゃくちゃにしてやろうと思ったのに……体力が『0』になってしまえば終わりだ。


「おれの勝ちだ。同意したろ? ルミアを元に戻せ……」


「……もう、もとに、もどってる」


 喉を押さえたまま、大きく肩で息をするミソギはおれを睨んだままそう言った。そしてすぐにおれはルミアの方を見れば、


「ルミアちゃんの顔色……よくなってるよぉ。よかったぁ……息も、ゆっくりしてる――」


 ソアレが安堵した声色でそう言う。


 どうやら嘘ではないらしい。


 確かに遠くから見ても、さっきまでは呻きながら小さく震えていたけれどいまは静かに眠っているように見えた。


「同意すれば……なんでも言うとおりにできるってか――」


「同意すれば……ね。強制は、できないよ……」


 対戦を成立させるだけではなく、まさか互いの要求を呑ませることが出来るのはヤバイだろ――まぁ、互いに同意してこそなので、拒絶すればいいだけだろうが……。


 それでもリスクを背負ってでも叶えたいものがあるなら、こちらも覚悟しなければならない――ルミアを治すためとはいえ、おれが負けていればどうなっていたことか。負けるという未来はまるで想像できないが。


「ならもっかい対戦しろ。今度はパイセンを返してもらう」


「……はぁ?」


 こいつが奪ったものをここで全て取り返してやる。だが、ミソギは下唇を噛み締めたまま、


「やるわけないだろ……キミみたいな規格外……やってられるかよ――来るヤツ、どいつもこいつも大したことないし、ボクはこれまでずっとたのしくやってこれたのによぉ……キミのせいで台無しだ。キミが来たから台無しだ!!」


「どういうことだよ、来るヤツって……おれ以外にもいるのか? 《転生者》がよ……」


「いたよ、いたけどキミほどじゃなかった。いや、むしろキミのようにここまで来れたヤツすらいない」


「……じゃあテメェはなんなんだよ――《転生者》なんだろ? なんでおれらの邪魔してんだよ」


「いったろ……たのしいからさ、この異世界がさぁ……」


 狂ったように笑いながら、ミソギはおれを見上げて、


「だから……キミにさぁ……このまま脚本(シナリオ)を進められると困るんだって」


「どういうことだよ」


「《まほうしょうじょ》が……《王さま》を倒すと、この世界が終わっちゃうからさぁ!」


 ミソギは叫ぶようにそう言った。

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