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この異世界が『格闘ゲーム』すぎるので荒らしをガン処理する―《まほうしょうじょ》は『魔法使い』―  作者: 待雪 妥当
第5章 魔法使い

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第50話 汝、■■■を×せよ<4>

「じゃあ、ボクが勝ったから……ほら、早くそれ持ってきてくれる??」


 対戦が終わったらモノのようにパイセンを指差して、蜘蛛の形をしたスティルを取り込んでいる《荒使あらし》に声をかけるミソギ。


 そのままカサカサと動きながら《荒使》スティルは四本の腕を伸ばして、パイセンを掴むとそのまま後方へと下がっていく。


「おい、待てや……どうするつもりだ?」


 聞く必要はない。どうせ厄介なことをするに決まってる。だがおれは声を出さずにはいられなかった。しかしゆっくりと振り向いて、おれと瓜二つの顔をしたミソギは目を見開いたままこう言う。


「ん? ちゃんと()()したでしょ?? ボクが勝ったんだからさぁ……このまま玩具(おもちゃ)になってもらうんだけど??? それさぁ……いま訊く意味ある????」


「……テメェ」


 キョトンとした顔でミソギは呆気なくそう言うものだから、今にもおれは手が出そうだった。


 しかしおれを見るミソギの目が少しずつ不気味な光を放って、


「それで、つぎはボクにそっくりなキミが相手をしてくれるの??」


「ああ、そっくりなおれが相手してやるよ」


 髪と服の色が真逆で、袖口がダボダボなとこぐらいは違いがまったくないおれとミソギ。もし、何かしらこいつが知っているならそれも答えさせてやる。


 その前にまずはさっさとこいつに勝ってパイセンを返して――――


「ううっ…………」


 だが、いきなりルミアが小さく呻き声を上げて、胸を押さえてそのままぐったりとそのまま倒れている。ソアレがすぐにルミアの身体を起こすが……ルミアの全身から血管が浮き出している。


「ああ、やっと効いて来たんだ。うーん、ほんとならもっと早く効き目が出るはずだったんだけど……キミら、その子を治療するようなことした??」


 治療はした。こっちの住んでる城の地下にあったフラスコみたいな入れ物の中に入れて回復させた。しかし、どうもそれがよくなかったようで……、


「うーん……傷ついた状態ならたぶんもっと早く《《発芽》》するはずだったんだけど、何か余計なことしたっぽいなぁ。たぶんキミらがこの子を回復するようなことしたから種から芽が出るのが遅れたのかな? うーん、ボクにもわかんないや」


 そんなことはどうでもいい。


 早かろうが遅かろうが、原因がなんであろうが――間違いなくこのクソッタレが何かしらルミアにしたから、こうしてルミアはいま酷く苦しみもがいているのだから。


「何をしたかだけ言え」


「口封じだよ。こっちが連れて帰った《まほうしょうじょ》には全部ボクは種を植えてあるんだよ。もしまたキミたちのところへ帰ったらややこしくなるだろう? だから時間が経過したら中から喰い潰せるように細工したんだけどねぇ」


 しかし「タイミングずれちゃったよ。やっぱ上手くいかないもんだねぇ」って悪気もなく、舌を突き出してそんなことを言っているが手が届くならその舐め腐った表情をくの字になるまでぶん殴りたい気分だ。


「……ゲスが」


 幼女の姿をしているのはおれもだが――おれも大層酷い顔をしていることだろう。


 しかしルミアを見ると震えたまま目を閉じて、ソアレに全身を預けている。なんども咳き込みながら、浮き上がる血管が痛々しい。


「と、トリノちゃん……ルミアちゃんのからだ、つめたくなってる――」


「おい、ミソギっていったか? このままだとルミアはどうなる??」


「どうなるってさっき言ったでしょ? 喰い潰すんだよ。外見はそのままに、中身だけを空にね」


「はぁ……わかった、もういい――」


 訊くんじゃなかったと後悔するおれ。


 久々に()()()()()()()。ここまで熱いのは久しぶりだ。顔も知らんやつにネット対戦で煽られても感情殺して処理できるのに、いまはもうダメだ。こいつの顔面の原形がなくなるまで殴りたくて仕方がない。

 

「いやいや、最後まできいておくれよぉ~。こっちもちゃんと仕事しないと怒られるんだってぇ。ねぇ……トリノ……ちゃんだっけ? ん??」


「黙っとけ。あとおまえのその喋り方……どっかで聴いたな……」


「そうだっけ? まぁ、そんなことよりもさぁ……対戦、する?? しようよ」


 拒否するつもりなどない。


 逃がすつもりもない。おれはこいつと戦わなければならない。


「……どうする?」


()()って言ったな……なら、おれがおまえに勝てば言うことを効くのか?」


「効くよぉ? もちろん……でも、それってトリノちゃんがぁ負けたら――」


 ミソギは蛇のように舌を出して、新しい獲物を見つけたと目元を細めている。


「おれが勝ったら――ルミアを治せ」


「ん? いいの?? 同意で叶えられるのは一つだけだよ??? それだとさっきのお姉さんはそのまま連れて帰ったままになるけど――」


「おれもひでぇヤツだよ。恨まれるかもしれねぇけど……今すぐにでもどうにかしないといけねぇのはルミアの方だ……おれが勝ったらルミアを元に戻してもらう」


「んー……別にキミがそれでいいなら、ボクはどっちでもいいけどぉ……それでキミが負けたらどうなるかわかってるんだよね??」


 歪んだ表情を浮かべて、ミソギは邪悪な笑みを見せる。


「おまえの趣味に付き合ってやるよ」


()いッッッっっっ!!!!」


「……きみ、すごいね。たましい賭けちゃったねぇ」


「ああ、賭けるには安いもんだからな」


 賭ける命の重さなど知ったことではない。


 いまここで戦わなければ、救えないのなら――おれは命を賭けれる。


 こわい? いや?? なんでだろうな……きっと転生する前にこんな選択を迫られたらどうしていただろう。ビビって逃げてたかな? もうそんなことわかるはずもなく。


 でも、だけど……転生したからなのか、生まれ変わって別の身体になったからなのか、理由はわからないけど、いまのおれはちっとも怖くない。


 だって、


「おれの命を賭けるだけで――おまえをぶっ飛ばせる」


 理由はたった一つ、こいつの歪んだ笑顔を、ボコボコにして歪みに歪ませて元に戻らなくなるまで殴ってやる。


「いいよ、いいね、すごくいいっ!! そうか、そうだね、そうなんだねぇ!!!! 覚悟してるキミがいま、とっっっっっても輝いて見えるよ! 煌めいて見える!! どうしよう、どうなってしまうんだろうっ!! そんなキミがボクに負けて、負けちゃったあと、なにもかも台無しになって、カッコつけたのに終わってしまう姿を見てしまったら、ボクぅ、ボクはさぁ――――」


「……ああ、やっぱ聴いたことのある鬱陶しい喋り方だ」


 あのタコと同じ……あのときは機械のような声でわからなかったけど、


「《寄生型》を動かしてたのも、おまえか……」


「ああ、そう、そうだよ、でもどうでもいいだろう? そんなこといまはもうどうだっていいじゃないか。やろう、はやくやろう、いますぐ、いまここで、キミと、ボクがぁ……どっちが勝つのかなぁ……どっちが、どうなるのかなぁ!!」


 そしてピタリとミソギは動きを止めて、頭を掻き毟りながら興奮したまま叫び散らかす。


「ひひひひひ、ひ、ほら……ほら、ほらほらほらぁあッ!! 同じ()()()としてさぁッッッ!!!!」


「――――――――なに?」


 合わせ鏡のように、お互い全く同じ形をしたまま……髪と服の色と手元が違うだけの身体。


 おれも、ミソギも……この世界の住人ではない……。そして、こいつはなんでおれが転生していることを知っている? こいつは転生して、どうして《荒使(そっち)》で敵役を担っているのか。


 何もかもわからぬまま、そして知りたくても、いまはただルミアを助けるためにおれはミソギに勝たなくてはならない。


 だからおれは両頬を叩き、余計なことは考えない。


 そうだ、いまはまず……こいつを処理することだけを考えろ。




本日もここまでお読み頂きありがとうございます。


この先どうなるか、もし読んでいただけるのなら


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いつもみなさまのおかげで毎日投稿は継続できております。


本当にありがとうございます。それでは次回もよろしくお願いします。

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