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この異世界が『格闘ゲーム』すぎるので荒らしをガン処理する―《まほうしょうじょ》は『魔法使い』―  作者: 待雪 妥当
第5章 魔法使い

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第49話 汝、■■■を×せよ<3>

 ルミアとソアレは座ったまま、おれは腕を組んでベ〇立ちをしながらフルカノンのパイセンと《荒使(あらし)》ミソギとの対戦を観戦していた。


「おお、こわいこわい……そんな物騒な武器を振り回して、ボクみたいな非力な《荒使》じゃ勝てる気がしないや」


 口ではそんな弱気なことを言っているが、ジリジリと槍を構えたまま近づくがあえて歩くのをやめて槍の先端だけが光った。


(あれは……)


 おれとの対戦でも使った相手の立っている場所に向かって見えない衝撃波を放つ攻撃。


「うわぁ……!? いったぁ……」


 その場から動かないミソギは頭部に衝撃波を受けて、そのまま苦悶の表情を浮かべて痛みに耐えていた。体力は確実に減っている。


「……いったいなぁ――そんな初見殺しみたいな技つかうのやめてよねぇ」


 それにしてもミソギの発言のひとつひとつはどうも引っかかる。


「はぁ、このままだと負けちゃうかもしれないし……」


 ミソギはブカブカの袖口から飛び出している触手の口が開いて、


「――紫の泡沫(ヴ・オルタンシア)


 ミソギがそう呟くと、触手の口から吐き出される花の形をした紫の泡がゆっくりと浮いていた。ただ浮いているだけだが、パイセンはそれをガードする。


「邪魔だ」


 ニヤリと、ミソギは(いや)らしく微笑み、パイセンは攻撃が届く範囲まで接近していた。


 パイセンは槍で突き、ミソギはガードすることなくその槍の先端が確実に捉えていた。おれの目にもしっかりとミソギの体力ゲージが映っている。徐々に減っていくミソギの体力。そして槍の先端がヒットしたと同時に――


至近爆破光バースト・ゼロ

 

 ヒット確認から放たれる爆炎。これは別にガードされていても爆炎で相手の視界を塞ぐことができるから、そのままガードを崩す二択に迫れるから出し得の《魔導技(まどうぎ)》だ。だが直撃している。ミソギはそのまま吹き飛び、床の上に転がっている。


「あっつぅ……ほんと、容赦ないなぁ――」


 ミソギの体力ゲージは半分近く削れている。このままいけばパイセンが勝てる……はず、なのだがおれはそこでパイセンの体力ゲージを見てハっと二度見した。


(パイセンの体力ゲージが……紫色に――)


 それ以外の情報は表示されていないが、パイセンの体力が紫に変化しそのままゆっくりと少しずつゲージの残量が減っていっているのがわかる。


(これまた面倒な……)


 おれはそれでミソギの攻撃手段を理解する。このままだとマズい……早く決着をつけないとパイセンがヤバい。


 本当なら声をかけたいのだが、これまでも何度もそう思ってソアレや他の対戦を見たときも声を出したことがあったのだがどうも届かないのだ。だからおれはパイセンに早く決着をつけるべきだと伝えたいのだがそれは叶わない。


「ほら、ほら? はやく攻撃してきなよ。ボクは弱いからさぁ……ちっともキミを傷つけることができないよ?」


 そして再び大きな紫色のシャボン玉を浮遊させているが、パイセンはそれをしっかりとガードしている。ガードしたのだから体力が減るはずがないのにその体力ゲージが紫色のままゆっくりと、しかし確実に減少していっている。


 その間、ミソギはパイセンが近づけばわざと後ろに下がりとにかく逃げ続ける。


 絶対に自分からは攻撃することはなく紫のシャボン玉を設置してはパイセンがそれに触れる度に、体力ゲージはガードしているはずなのに少しずつ時間経過で減少していく。


 何が起こっているのかパイセンにはわからない。しかし確実に、ゆっくりと終わりが近づいている。ミソギは決して自分から戦うことはせず、シャボン玉を飛ばしては後方へ逃げるを繰り返し、ガン逃げでパイセンの攻撃範囲の外へ逃げ続ける。


 だがパイセンは顔色一つ変えず、槍に力を篭めている。そうだ……攻撃が届かないのなら、どれだけ離れても届く攻撃をすればいい。


 パイセンの《才覚(ネーム)》によって《まほう》に名を与えれば――もっとも強力な《終炎流滅光アグニス・ゼロ》を撃つことができる。


 右から左へと一直線に放たれるあの光線。しかも飛び道具なのにガード不能とかいうぶっ壊れ性能という凶悪さ。


 あれさえ撃てれば十分勝算はある。


 だが、ミソギも無邪気に笑いながらピョンピョンと飛び跳ねたと思えば、すかさず地面に着地したと同時に、


白き救済(ホ・ヘレボレス)――」


 そしてだらんと垂らした触手が地に触れれば、今度は白い水たまりがパイセンの道を塞ぐように設置される。だがパイセンの槍は砲へと変化している。


 パイセンの技ゲージが最大まで溜まっていた。パイセンの攻撃が当たらずとも、体力が減ると技ゲージが増えていくのは仕様だろう。


 だがそれよりも伸ばした触手はパイセンの足元まで伸び、再度その白い水たまりを生成していた。水を流して作るのではなく、触手が触れた部分に突然と現われる不気味な水たまり。


 それにパイセンの足が触れていた。足の先が水たまりに浸かっている。それで更に体力ゲージを減らし続けるのか……ミソギ自体が攻撃を行うことはせず、ただひたすらに触手が吐き出す攻撃しか使わない。


「終わりだ……」


 そして槍を砲へと変えた、パイセンの一撃が射出される――


 ――はず、だった。


「なに……?」


「残念でした」


 おれは再びパイセンを見る……パイセンの体力ゲージは紫色。そして、技ゲージは白色に変色している。


(それはマジで終わってんだろ……)


 もし元の世界でこんなのあったら荒れることは目に見えてる。まぁ……似たようなものはあったけど、それでもここまでノーリスクで《《そんなこと》》ができるのは不愉快極まる。


 ミソギが扱う触手の口から出すしゃぼん玉は、それ自体に威力はないのに触れればガードしていようが関係なしに《《毒状態》》にする。だからパイセンは攻撃をしっかりガードしているというのに体力が少しずつ減っているのだ。


 そしてあの設置される白い水たまり……あれに触れた状態だと、今度は技ゲージが減っていく。格闘ゲームで状態異常してくるやつ……だいたい嫌われがち――これは最悪だ。パイセンのいちばん強い技である《魔砲(まほう)》が封じられた。


 あれは強すぎるけど技ゲージが三本まるまる必要になる。少しでもリソースを奪われれば使用できない。撃つ瞬間に触れてしまった白い水たまりのせいでパイセンの技ゲージは見る見るうちに減っている。


「あれ? なにもしてないのに……もうそろそろ終わりじゃないおねえさん??」


 一度としてパイセンはミソギの攻撃を喰らっていないのに、しっかりガードしているというのにいつの間にか満身創痍(まんしんそうい)だ。地に膝がついている。


 格ゲーで毒になろうがプレイヤーがおかしくなるわけではないから何とも思わなかったが、目の前でおれの知っているヒトが苦しんでいる様を見せられるのは……気分が悪い。


「……」


「もう喋る余裕もない? じゃあ、もう終わりかな??」


 そして触手を伸ばして、軽く小突くだけでパイセンはガードが間に合わずにそのまま被弾してしまいミリ単位にまで減らされてしまった体力ゲージを空にされてしまった。


 そのままその場に声を出すことなく倒れる様子を見せられて、おれたちは声を上げることすら出来ずただ結末を見せつけられる。


「はい、おしまい」


 そして対戦が終わり、ミソギは倒れたまま動かないパイセンを静かに見下ろしていた。おれの指先は手のひらに食い込むほど強く握り締められていた。

本日はこのまま二話投稿の予定をしております。


数分に続けて投稿しますのでよろしくお願いします。


この先どうなるか、もし読んでいただけるのなら


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いつもみなさまのおかげで毎日投稿は継続できております。


本当にありがとうございます。それでは次回もよろしくお願いします。

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