第46話 遺跡<2>
「ト、トリノちゃん? なんて??」
「いや、なんでもないです……」
つい敬語になってしまったが、こんなもん不意打ちすぎる。
さすがにこんな建造物見せられて興奮するなという方が無理がある。だって白い遺跡っていうから、もっとこう……なんか神殿チックなやつがあると思うやん。
でも森の奥に待っていたのはどう見てもおれの世界で見たであろう、そもそも建物そのものがおれたちの世界のものだ。
素材ってか材料っていうか、もう鉄筋で作りましたよみたいな……おもっきり入口も自動ドアっぽいし、おれが知っているゲームセンターそのものである。
ただ一つおかしな点と言えば石造で作った筐体が入口を塞ぐように設置されていて先には進めない。おれたちはそんな石造の筐体を前にいる。
「なんだ、これは……《荒使》が奉っているものか?」
フルカノンのパイセンがそんな風に言うから、おれは吹き出していた。でも、やっぱおれ以外の《まほうしょうじょ》たちはこれが何なのかわからないようだ。
いや、そもそも異世界になんでまんま放置されているのか謎すぎる。だが、見た目が筐体なだけで本当に石だ。とても生身では動かせられない。
「うう~……なんだろこれ……びくともしないよぉ……」
ソアレががんばって石造を押してみるが、ソアレの力でも動かないのならもうどうしようもない。
「ルミア、こんな石造置いてあったか?」
とりあえず遺跡ってかこのゲーセンみたいな建物については何も言うまい。しかし入口にこんなバカデカ筐体石造もどきを設置されていると先に進めない。だがルミアは「しらない……ごめん……」と謝られてしまった。こればっかりは仕方ない。
「壊すか……?」
なんてパイセンがめちゃくちゃ物騒なことを言っているが、
「いや……」
おれはどう見ても筐体にしかみえないその石造に近づいて、ふとコインの投入口を見てみる。
「開いてる」
全て石で出来ているのに、コインの投入口だけはしっかりと穴が開いていた。そしておれはふと五十円玉硬貨を取り出す。
(いやいや、まさか……)
息をするのと同じレベルで行い続けてきた所作。筐体のコイン投入口に入れる五十円玉硬貨。筐体の大きさとは遥かに釣り合っていないが、そこに口があるなら入れるしかあるまい。
「……おお」
投入してから少し経って、突然の地響き。
そして少しずつ石造で出来た筐体が動き出す。
「トリノ、なにをした」
「いや、前にもらった五十円玉……いや、コインを入れただけやね」
五十円玉硬貨って言っても通じないし、そこは適当に言い換える。
そして三人の《まほうしょうじょ》はおれの後ろに立っている。少しずつ動き出す石造の筐体が右方へ動いていく。そしてついに入口が姿を現す。
「いや……めっちゃゲーセンやん……」
やっぱりどう見てもゲームセンターにしか見えない。だがおれの堂々たる様子に他のみんなは驚いている。
「と、トリノちゃん……こわくないの?」
「あー……まぁ、その、なんだ、見慣れた――いや、なんだろうな。見覚えが……あってさ」
記憶喪失設定をここで活かしておれは腕を組んだまま、このゲーセンにしか見えない遺跡を眺めている。見覚えしかないこの施設が、遺跡? この中に何が待ち受けているのか。
「とりあえず入ってみるか」
ぶっちゃけ早く入りたい。まさか転生した先にもこんな施設が現れると我慢できない。
「なんかトリノちゃんウズウズしてるね」
「お、おお、はやく《荒使》のやつらぶっ飛ばしてぇなぁ」
適当な言い訳をしてそのまま歩き出すが、おもっきりパイセンに首根っこを掴まれていた。
「ぐえぇー」
「ひとりで勝手に突っ走るな。もし《寄生型》が現れたら真っ先におまえが操られるぞ」
「そうでした……」
おれ猛省。
なので、
「と、トリノちゃん……わたしのうしろにくっつくのやめて~」
「ほんとすんません。対戦以外はマジですんません」
おれはトリノの背中にくっつくようにして歩く。なおルミアが横でめっちゃドン引きしてるが見ないフリをする。
「何が待ち構えてるかわからんからな……用心しろよ」
そしてパイセンは槍を取り出し、ソアレも片手剣を構えながら進んでいく。おれとルミアはソアレの後ろに隠れるようにしてる。
だが、進んで間もなく終点だった。
外見こそゲーセンだったが、中身はただひたすら何もない空間が広がっていた。地面はコンクリみたいに硬いけど……それ以外はなにもなく、気味が悪かった。
「g,gggu……」
しかし呻き声がした途端に、おれたちの目つきが一斉に変わる。
前方から《荒使》ラグリオンが姿を見せる。しかもいつの間にかおれたちを囲むようにグルリと肉壁を形成している。ホントこいつら何体いるんだよ。もうええって。
「まぁ、ええか……おれがやるわ」
とりあえず対戦以外は役に立てないから、ここで活躍させてもらう。
そして描写も必要ないほどに簡単に処理し、そのまま辺りを見渡すと急に電気がついたみたいに明るくなる。遺跡だってのにLEDでも付いてんのか?
「やはり、当たりだったか」
そしてパイセンがおれが瞬殺したラグリオンに近付いて、そのまま槍を突き立てればバケモノの開いた身体の中には失踪したであろう《まほうしょうじょ》が中から姿を現す。
「い、いや……」
その様子を見てルミアが青ざめた顔をするが、そらルミアもこの中に取り込まれてたんだと思うと気分悪いよな。ってかなんでそんなことしやがる。
「おい、もうおまえらはええからさ……親玉? いるならそっち出せよ」
まだ周囲には同じ形をした《荒使》がいるが、こんなのが何体来てもおれたちが負ける要素はない。さっさとボスを倒して終わらせて帰りたい気分だ。
「u……ku,keeeee……」
そんなおれの挑発を前に、肉壁を作っていたラグリオンが道を開けると――これまでとは違う異質な《荒使》が姿を見せた。
ラグリオンは二本の腕が肥大しているだけで結局は《兵士型》とかいうヤツのちょっと大きいだけでちっちも脅威には感じないが、新たに現れたあれも《変異型》なのだろうか――
顔はこれまで通り蟻のような不気味なものなのは変わりないが、ラグリオンよりも一回り大きく、四本の足はまるで蜘蛛のように。そして四本の腕は手数の多さを表している。初めて見る《荒使》におれたちは構える。
「gi,gigigigigi……」
「気持ち悪い鳴き声しやがって」
耳を塞ぎたくなるような不気味な声。
そしておれはふとパイセンに目を配るがパイセンは首を横に振った。どうやら誰もが初めて見るタイプの《荒使》のようで、何一つ情報がない。
「――su」
しかし金切り声みたいに鳴く不愉快な《荒使》が突然、泣くのを止めた。
そして突然、腕の一本が胸部を突いた。なんか自決したぞ?
「ha……yaと、動ke,る――……」
そして胸部に突き刺した指先がベリベリと黒い皮をめくり上げたそこには、
「……スティル――――」
他の誰でもなく、ソアレがその名を呼んだ。
他の《まほうしょうじょ》とは違う。ルミアですら意識はなかった。しかしその《荒使》の中にいたのは突然、失踪したスティルの姿だった。
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