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この異世界が『格闘ゲーム』すぎるので荒らしをガン処理する―《まほうしょうじょ》は『魔法使い』―  作者: 待雪 妥当
第5章 魔法使い

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第45話 遺跡<1>

 ついにその時は来た。


 おれたちはこれから遺跡へと向かうのだが――


「あのさ、おれホントに行っていいのか? 今更こんなこと言うのもなんだけどよぉ……《首輪(カラー)》の色がまだ透明のまんまだぞ?」


 そういやおれ未だに《首輪(カラー)》の色が透明のままでランクはわからんし、よく見りゃルミアも首輪こそ付いているが色が無い。強さの証明はこれでは出来ない。


「構わん、トリノは私に勝っている。それにこの先に何が待っているかわからんからな……強い者に来て貰えると助かる。だがお前ひとりだと《寄生型》とやらが来た場合は無力なんだろう?」


 なんかおもっきりおれだけを対策しているかのようなクソゲーみたいな《荒使(あらし)》がいるせいで独りで先陣切って進むなんてことはできない。もしあれが出てきたらおれは拉致られて終わる。


「あの、わたしも行っていいんですか? その……《白色(Cランク)》ですけど……」


 ソアレはランクこそ上がったとは未だCランクだ。しかしそれだとルミアの《首輪(カラー)》もおれと同じく色が無く、ランクだけ見れば頼りなく見えることだろう。


「トリノが行くならついて来るだろう?」


 しかしパイセンの言葉をソアレは否定することなくコクリと頷く。


「なら好きにするがいいさ」


 なんかこうもっと軍隊的な数で攻めるとばかり思っていたけれど、メンバーはパイセンにソアレとルミア……そしておれって。いいのだろうか。


 いや、どうせ対戦するときは一対一だ。別におれが全部勝ったらええだけやし、《寄生型》が来たときだけ助けてもらえばなんとかなるやろ。


「では行くか」


 そしておれたちは町を出る。


 ルミアが先導し、森を進んで行く。樹海のようなこの森に、目印もないというのにルミアは迷うこともせず、立ち止まることもなくただ真っ直ぐと進んで行く。


「……トリノちゃん」


 ルミアの背中を追いかけるように歩くおれたちだったが、そのときソアレがふとおれに声を掛けた。


「どうした?」


「その……ルミアちゃんが、言ってたこと憶えてる? ふたりいたっていう《まほうしょうじょ》かもしれない子のこと」


「あー……」


 なんかルミア曰く、なんかおれに()()()()なやつ。そしてもうひとりはルミアはソアレにしか聞こえないようにしか言わなかったのでわからない。


「トリノちゃんと初めて出会ったとき……渡したマントあるでしょ」


 この異世界に転生したときおれは白い繭の中だった。


 そして生まれたままの姿で、服も着ていなくてめっちゃ恥ずかしい思いをしたがそのときソアレは身に着けていたボロボロのマントを貸してくれた。あれのことだろうか。


 しかも不思議なことに《まほうしょうじょ》の衣装は念じるだけで光の粒子が集まって一瞬で身を包むし、汚れも無く、いつも綺麗に仕立てられるのにそのマントだけは衣装の一部というよりは、本当に黒い布で作っただけのものだった。


 だからマントはところどころほつれていたし破れてもいた。結局おれはソアレにそれを返したのだが……次に出会ったときソアレはそのマントを持っていなかった。


「おまもり……みたいなものだったの。でも、トリノちゃんのおかげで強くなれて、弱いわたしじゃなくなったから――だから、もうだいじょうぶだと思って付けるのをやめたんだ」


「あのマント……いったいなんなんだ?」


 誰かに貰ったものなのか、それともどこかで拾ったのか。歩きながら、ソアレはゆっくりと息を吸い込んで話すべき内容を選んでいるように見えた。


「……わたしが《まほうしょうじょ》として選ばれて――でも、ひとりぼっちで勝てなくて諦めそうになったときにね……」


 おれと出会うよりも前、ひとりで戦い続けていたソアレ。そんなある日、ソアレはおれよりも先に出会っていた。


「繧「繝槭ヤ様」


「ん?」


「繧「繝槭ヤ様――に、貰ったものなの」


「ソアレ……?」


 おれの耳がおかしくなったのか、それともソアレがおれにはわからない言葉を喋っているのか……上手く聞き取ることはできなかった。


「ああ……繧「繝槭ヤ様か――」


 だがおれだけが理解できていないだけでフルカノンのパイセンも横で聞いていたのか会話に参加していた。


「……誰なんだ?」


「私が金色(Sランク)だが……その上の虹色(EXランク)の《まほうしょうじょ》様だ。唯一……《荒使》の王と、対戦したことがある」


 俺にはその名がわからないが……そんなすごいヤツがソアレにマントを渡して、王さまと戦って――それで、どうなった?


「ひとりでどうしようもなくて、困って、嘆いていたときに繧「繝槭ヤ様に……会ったとき……全て終わらせてくるから、もう戦わなくていいって……そう言ってくれたんだけど――」


 そのときに帰って来たらマントを返してもらおう――と、ソアレに託したようだが。


 《まほうしょうじょ》はまだ戦っている。《荒使》と今日も……だから、結果はそういうことなんだろう。


「……ルミアちゃんが、見たのはそのヒトなのかもしれない――って。容姿を聞けば、その、いっしょだから……」


「まぁ、遺跡についてから考えようや。おれのそっくりさんもホントにいるのか見てみたいし」


 ここで憶測で何を言っても意味がない。そもそもおれの耳がバグってんのかソアレが呟く名前の上からノイズを足されてる感じで何もわからない。それなら遺跡に向かって、本当にそんなやつがいるのかどうかはっきりさせればいい。


「それにしても森を出て真っ直ぐ歩いてるのに《荒使》が一体も出てこなくねぇか?」


 この前はアホほど出て来て全部処理してたけど、今度は嘘のように一体も現れることなくひたすら森の奥へと真っ直ぐ進んでいる。まぁ、余計な対戦をしなくていいなら気楽だし、このままゴールまで一直線で行ってほしい。


「どうせ《兵士型》の《荒使》はトリノどころか私でもなんとかなるし……向こうもどうせ勝てないからこっちに向かって来ないのだろう」


「ああー……そういうことね……」


 ゲーセンでも遥かに格上のヤツがいたら対戦にならないし乱入してもどうせ負けるなら……対戦しないって選択。それは本人が選ぶことだからおれにどうこう言うつもりはない。おれはそいつらに勝ちたかったから容赦なく対戦したわけだが。


「……ここ、だよ」


 そしてついに先導していたルミアがピタリと足を止める。


 ひたすら前へ前へ進んでいただけだというのに、まるでそこに最初からあったようにおれたちは気が付けば遺跡の入口に到着していた。


 到着――した、のだが……、


「え? こ、これが遺跡??」


 おれはそれを指差してルミアに問い掛ける。ルミアは「うん……」とそう呟くのだけれども、


「いや……え? あの、あれ、あれぇ……????」


 おれは二度見した。いや三度見して、四度見したってレベルで何度も何度も遺跡を見ていた。いや、ここ本当に異世界なんだよな?


 白い遺跡と呼ぶのは確かに間違いではない。



 でも、入口を塞ぐように置かれていたのは――


「めっちゃ見覚えのある筐体(きょうたい)やんけ」


 それは誇張とかそういうのではなく本当に親の顔より見た《《ミディタイプ筐体》》――に、似た石造……の、ようなものが遺跡の入口を塞いでいる。


 いや、この遺跡――、遺跡っていうか……。


「これゲーセンでは??」


 だが、他の三人はおれの言葉を前に小さく首を傾げていた。

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