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この異世界が『格闘ゲーム』すぎるので荒らしをガン処理する―《まほうしょうじょ》は『魔法使い』―  作者: 待雪 妥当
第5章 魔法使い

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第43話 その先へ

「ん……それだけは、はっきりおぼえてるの。ルミア……トリノとそっくりのヒトみた」


 何か覚えていないかとは訊いた。そして話をしてくれるのもありがたい。


 でも、ルミアの言葉にフルカノンのパイセンは目を細めておれを見ているし、ソアレはなにか言いたげに震えている。


 そしてそんなことを言われた当の本人であるおれは白目剥いて立ち尽くしていた。いや、そんなん言われても……おれ、関係ないって。


 だがルミアの話は続いている。


 負け続け、《首輪(カラー)》の色が引退寸前まで落ちたとき、ルミアは絶望し逃げ出してしまった。そんなとき目の前に現われたのがあの蛇である《寄生型》――そして連れられた先。


「森の奥……白い遺跡がある」


「遺跡だと?」


 そこでパイセンがめっちゃ反応した。


「知ってるのか?」


「いや……そもそもトリノも知っているだろう? この町の周囲がどうなっているか」


 もちろん知っている。と、いうかそれしか知らない。


 何せこの世界は酷く閉鎖的すぎる。大きな壁に囲まれた町。そしてその町の外は森が海のように広がり、果ての無い樹海と化している。


 どれだけ進んでも、どこまで進んでも、ただ一面が木々に囲まれた不気味。あまりにも世界にしては()()()()()


 いまおれたちが住んでいるこの町しか生きる者がいない。そして外に出れば《荒使》が蔓延る恐ろしい森。


 白い繭から生まれる怪物と、そしてそんな繭から転生したおれ(ノリト)――


「遺跡……か、しかしどう行けば――」


「わからない、わからないけど……ルミアね、その……なぜか行けるの」


 上手く説明はできないし、なぜそんなことが出来るのかわからないけれど、ルミアはその森に隠された遺跡へ行く手段を持ち合わせているという。


「でも……怪しいでしょ?」


 結局は遺跡も、そこに行く方法も何もかもがルミアの言葉によるもの。事実の証明もできず、ただルミアを信じるかどうか。


 だが、


「いや、もうこのままだと平行線(ずっとおなじ)だろう? じゃあ、行くしかねぇよなぁ? パイセン」


「ルミアがそこへ一度連れて行かれたというのなら、失踪した《まほうしょうじょ》の行方ももしかしたら……どうせ他に情報もないし、行くしかないか」


 やったぜ。


「なんで、ルミアの話……しんじてくれるの?」


 だが、誰一人ルミアに対して疑いの言葉を掛けないことにルミア自身が納得できんずにいた。


「ルミア……こわくて逃げた――《荒使》の言うことを聞いちゃった……みんなにめいわくかけて……それで……」


 いまにも泣きそうなルミアに、おれでもパイセンでもなく――先に動いていたのはソアレだった。小さなルミアの身体にそっと手を伸ばして、


「そうだよね、こわかったよね。ひとりで……だれも助けてくれなくて――つらかったよね。ルミアちゃんは、なんにもわるくない。わるくないよ」


「……ど、うして」


「わたしも、おなじだったから……」


「ソアレ……」


 ソアレの言葉におれはただ名前を呼ぶことしかできなかった。


 おれが来るまで、ずっと独りで戦い続けていた。負けても、折れずに戦っていたが正しいやり方を知らぬままだった。前へ進んだソアレと、進むことを止めたルミア。しかしどちらの道を選んでも、独りでは何も変えられなかった。


「だからわたしもルミアちゃんのこと、信じるよ」


 道は違えど、何も変えられなかったことを悔やむ気持ちは同じだから。でも、ここからまた始めればいいじゃないか。おれなんか一生間違ってばっかだぞ。この異世界(せかい)に来るまできっと間違い続けて死んでいくだけの人生だった。


 おれは、きっとここに来て……誰かのために力になれることを嬉しく思うよ。


「そうだぞ、おれもルミアのこと信じてるからさ」


 ふたりの間に挟み込むおっさんだと死罪だが、幼女だからセーフだろう。どうも湿っぽいのは苦手なんでな……とりあえずおれはいつも通りで行かせてもらう。


「……きらい」


 なんでぇ……。


 こういう世界って出会った女の子はみんな好感度MAXじゃないの? いや、まぁ、嫌われる理由はわかってるんだけどさ。対戦して、ダメ出ししまくってたし――正解を教える前に《寄生型》に邪魔されたせいでフォローできてないな……。


「しかしトリノ、弁解はしなくていいのか?」


 そこでジロリとおれを睨むパイセン。


 いやそれってさっきのおれにそっくりの《まほうしょうじょ》がいたって話ですよね? そんなこと言われてもおれじゃないし……弁解もなにも、なんて言ったらいいのか。


「いや、いやいやいや、おれにそっくりなだけで別人ですって。ちゃいますって……だって、おれ……」


「フルカノン様」


 だが、そこで助け船を出してくれたのはソアレだった。


「あのときトリノちゃんは繭の中にいました……《荒使》が出てくる白い繭の中に――そしてわたしがトリノちゃんを助けてすぐに《変異型(ラグリオン)》……そう、ルミアちゃんを取り込んでいた《荒使》が現れたんです」


 ルミアが遺跡にに連れて行かれて、そこでラグリオンとかいうバケモンに取り込まされて、おれはまだ白い繭の中にいたのなら……瓜二つだとしても、他人ってことにしてほしい。


「わかってるよ。からかっただけさ……おかげでおもしろい顔がみれたぞ」


 だがソアレの発言を聞いてではなく、最初からパイセンも疑ってはいないようで。


「ひでぇ……」


 でも顔がマジすぎて冗談かわからんのですよ。


「だが、トリノと同じ顔の《まほうしょうじょ》か……」


 そもそも《まほうしょうじょ》なのかも怪しい。もうなんでもいいや。ミラーマッチ(同キャラ戦)も別に慣れてる。相手がおれと同じキャラでもぶっ飛ばせばええだけやろ。


「……じー」


「る、ルミアちゃん?」


 ふとルミアはずっとソアレのことを見つめていた。ルミアからもたれ掛かるようにソアレの胸に身体を預けているように見える。どけ、そこはおれの居場所だぞ!! とは、言えない。あとがこわい。


「あ、あの、ね……」


「うん」


「おねえちゃん……って、よんで、も、いい?」


 上目遣いでルミアがそう言うもんだから『きゅーん♡』って効果音が聴こえてきそうなぐらいソアレの顔はにんまりしていた。


「もちろん! わたしなんかでよければ」


「なんか、じゃ、ない、……おねえちゃんがいい――」


「うん、いいよ。なんでもいいよ! うれしいなぁ……」


「お、おれは?」


 ってことでこのタイミングでおれは切り込んでいく。


 しかし横目でジロリと睨んだまま、恐ろしく長考しておられる。


「……()()()()()


「なんでやねん」


 ここに来ていちばんゴリッゴリの関西弁でツッコミ入れさせるな。


「だって……かくげー? おじ……って、いってたよね……?」


「ああ、それは……」


 確かにいってましたけど……聞かれてたのね。ってかこの世界に本物のおじはまだ見たことがないな。そもそも男性が一人もいないぞ。


「かくげー? 《まほう》かなにか?? そういや、トリノちゃんって《まほう》のことなんでも知ってるけど、どこで勉強したの?」


 突然のソアレの質問に対して「ゲーセンだよ」って言っても絶対通じないし、言えるわけがない。


「おじ……とは?」


 パイセンそこには触れないでください。


「えー、昔そう呼ばれておりましてね」


 ゴリ押し。


「むかし……? あれ?? トリノちゃん、何も思い出せないって――」


 まずい。誤魔化そうとすれば墓穴を掘ってしまう。やはり格ゲーの知識はあっても、それ以外は一般人以下なので上手い返しが思いつかない。喋れば喋るほど何かやらかしてしまいそうだ。


「……うう、なにそれ――かくげー……おじってなに……?」


 とりあえず頭を抱えて(うな)ってみせる。無理がある。これは無理があるぞ。酷すぎる。


「ご、ごめんね……」


 しかしソアレは謝ってくれてそれ以上は詮索してこなかったのでセーフ。パイセンはめっちゃ怪しんでるけど、ここは誤魔化すしかねぇ。


「……はぁ、たのむから私たちのことは裏切らないでくれよ」


「それは、もちろん……そんなことしませんって」


 パイセンは溜息を吐いているが、それでもおれのことは信用してくれているのでそこには感謝している。裏切るつもりなんて毛頭ない。ってか裏切る要素ないやろ。


「………………ん」


 ルミアがチラリとおれを見ているが、おれと目が合うとプイっと目を逸らす。


 やはりおれのことはめっちゃ警戒してる。うう……おれはルミアにいろいろ教えてやりたいのだが、こんなに不信感バリバリで見られているとたぶん無理そう。


「あの、ね……おねぇちゃん……」


「もうひとりいた《まほうしょうじょ》のひとのこと……」


「え? もうひとりいたの??」


 ここで新情報解禁。


 どうやらおれとそっくりの《まほうしょうじょ》とは別にもうひとりいるようで、そのことについて話してくれるようなのだが――なんでかおれには聞こえないように、ソアレの耳元で呟くせいでおれには何にも聞こえない。


「え……?」


 ソアレは目が大きく開いて、そして両肩に触れたままガクガクと震えていた。


「……ソアレ、だいじょうぶ?」


「だ、だいじょうぶ……うん、だいじょうぶ、だよ――」


 心配そうにのぞき込むルミアの頭を撫でて、ソアレはいつものような優しい笑みを見せた。しかしその表情は明らかに(つくろ)ったものだった。

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