第41話 迷い子たち
笑顔でおれを見ているソアレの後ろで串刺しにされたまま破壊されている《荒使》を前におれは乾いた声を出すことしかできなかった。
いや、おれのために怒ってくれてそれで戦ってくれるのはうれしいけど、ここまで殺し切るしてんのを見せつけられてちょっとこわい。でもそんなこと言うわけにもいかず。
そして「ふぅ……」と一息ついてソアレは串刺しになって動かなくなった《寄生型》をゴミを見るような目で見下しているが、また振り向いておれが視界に入ったら、
「トリノちゃん、おわったよ」
「ああ、さすがだな。ほんと初めて会ったときとは別人みたいに強くなっちまって……もうおれ教えることないぞ」
「そんなことないよ! もっと、トリノちゃんにはいろんなこと教えて欲しいな……つよくなりたいから」
そう言ってソアレは両手の五指の先をくっつけて、おれをチラリと見てはなんだかもじもじしてるけど……確かに《まほうしょうじょ》としてはまだ《白色》だし、もっと上を目指したいというソアレの向上心が見て取れるからおれも嬉しいな。
「そうだな、教え足りないよな。よし、また今度教えたろ」
「う、うん!! えへへっ……トリノちゃん~ありがと――……」
そしてそのままギューって抱き着かれた。まぁ、これでソアレが少しでも機嫌が良くなってくれるならなんでもいいや。
「わたしのトリノちゃんを連れ去ろうなんてさ……許せないよ。だから、そうなって当然だよ。ね? トリノちゃん」
ソアレは潰れて串刺しになった《寄生型》を横目で見たが、その瞳は本当に青い澄んだ空のような色とはどこか暗い翳りを感じた。無意識におれの背筋がゾクリとしていた。
「……ん、んん??」
なんかめっちゃ不穏な物言い……なんでそんな怒って――
(いや、それよりどうなってるんだ……?)
確かに対戦は成立していなかった。
《寄生型》にもソアレにも対戦の外で戦っていた。完全に盤の外である。
ってかゲージ表示されてないけど、おれ以外はおもっきり《まほう》使えてる……しかも《才覚》も余裕とか――対戦が成立しないと活躍できないおれ……役立たずすぎて泣いた。
でも、それでも攻撃は当たらないようになっているはずなのにソアレの攻撃はおもっきり当たってるし、どうなってるんだ?
「あんな《荒使》はじめてみたよー。でもなんとかなって良かったね」
「ごめん、ソアレ……なんかほとんど任せてばっかだったな」
「ううん、わたしもトリノちゃんの役に立ててうれしいよぉ……それに――」
チラリとおれを見下ろしたまま、ソアレは口元を手で隠したまま、
「……戦、…………なら、わたし…………ト……ノ…………ふふ……、ふふ……」
ソアレは口に手を当てて小さく何か呟いているが、おれの名前が聞こえたような……いや聞き間違いだろう。なんか両目もグルグルしてるし頬も赤くて怖いから聞こえないフリしとこ……。
「あ、ごめんね。立てる?」
そういっておれを両手で掴んで立ち上がらせてくれる。
そういや初めて出会ったときもこうやって助けてくれたな。
「逃げ出した《まほうしょうじょ》の子もだいじょうぶそうだし、とりあえずフルカノン様と合流しようよ」
指差せば近くには眠るように横たわるルミアが見える。
「あー、そうだな」
しかしソアレが潰した《寄生型》はまだのそのそとミミズみたいに蠢いている。動きがキモすぎて近寄りたくない。
『はぁ、いちばんの目的果たせなかった。失敗だ、失敗しちゃった。だからおわり。ここでおわり。残念だ。無念だよねぇ。しかたない。こればっかりは、しかたないよ……でも、にばんの方はうまくいったみたい。よかったよ。ならいいか。それならいいか。じゃあ、ここでおわかれかな。はは、そうだね。ばいばい』
なんか結局最後まで何をしたかったのかわからなかったが、《寄生型》はそのまま粉みじんになって消えていった。
ソアレは《首輪》に触れて、目を閉じて何か考え事をしているように見えたがあれが念話みたいなやつか? 使い方あとで教えてもらおう。
それからソアレがルミアを介抱して十分も経たずしてフルカノンのパイセンと数人の《まほうしょうじょ》が現れるが、
「まさかここまで《荒使》が入り込むとはな」
いちおうおれは《寄生型》のことについてパイセンに伝えたのだが、どうも信じられないような顔をしていた。こっちは対戦を拒否したのに、それでも襲い掛かってきたのだから。
「いままではなかったのか?」
「ああ、見たこともない。しかも対戦の同意を無視して襲うのは恐ろしいな……」
「あ、でも、なんか攻撃してみたら当たって倒せたんで見つけたらとりあえず叩けばなんとかなる……かもですかね?」
おもっきり物騒なことをソアレは言っているがたぶんそれがいちばん有効なんだろう。
《寄生型》は無敵ではなく、ソアレの攻撃を避けていたし結局は掴まれて投げられた。対戦の同意とは関係なく襲えるのはルール無視で終わってるが、逆にルールを無視してる以上《寄生型》も同じ状態なので、ワンパンされる模様。
だから無理やり操るようなことはしなかったのね……対戦外で襲って無理やり身体を奪う……なんてこともできるけどそんなことをすれば当然は《まほう》で反撃できる。
また今度現れたらベラベラ喋ってるとこに《まほう》ぶち込めばええってわけ。ね? 簡単でしょ?? と、言いたいけど……、
「ほんまなんでおれだけ……対戦が成立しないと《まほう》使えないんだよなぁ……」
しかし、おれはそれを実行できないわけで。
だから《寄生型》はおれに対して完全な対策である。なんかおれを連れて帰るってのがホントの目的だったらしいけど、これについては黙っておこう……いや、なんで狙われてんの?
「なら、ますますおまえは単独で行動するのは危険だな」
「ほんまそれ」
対戦さえ成立すれば問題ないが、《寄生型》のような盤外から奇襲してくるような真似をされるとおれは無力だ。くそう、なんでそこだけ上手いこと調整してんねんこの異世界。
「それでこれからどうすりゃいいんだ?」
失踪した《まほうしょうじょ》に関しては何の情報も手に入っていない。何の成果も得られていない。とりあえずルミアは連れ去られずにこちらにまだいるので、目を醒ませしたときに話を聞かせてもらうしかない。
「いや、その前に……面倒なことが起きてしまってな」
「まーじ? ってか、ずっと面倒事ばっか続いてるけどなぁ……」
現状ややこしいことになったまま、解決にはまだ遠い。なら更に一つ厄介が増えてもあんまり気にならない。
しかしそんなおれに対してパイセンは言葉にするのも億劫なまま、
「スティルが、失踪した」
おれとソアレが顔を合わせる。
「厄介事ぉ増やすなよ」
あいつ謹慎で待機してるって話だったろうに、それをなんで突然他の《まほうしょうじょ》みたいに失踪って……絶対、面倒なことになるって。
「スティル……どうして……」
そしてソアレは知っている名の《まほうしょうじょ》の失踪を知り、唇と小さく噛み締めていた。ソアレの手の中ではルミアがまだ眠ったまま。
とにかくいまはこれ以上どうすることもできない――ルミアが目を醒ますまではおれたちも身動きが取れないでいた。
「………………なんだ?」
キラリ、となにかが地面の上に小さく光ったように見えた。
近づいてみれば《寄生型》が崩れて消滅したところにまたいつぞやの五十円玉硬貨が転がっていた。しかしどうしておれの世界の硬貨が転がっているのか、その答えもまた未だ知ることはできずにいる。
こうしておれは二枚目の五十円玉硬貨を手に入れた――いや、使うとこないやろ。
第4章はこれでおわりです。
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