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この異世界が『格闘ゲーム』すぎるので荒らしをガン処理する―《まほうしょうじょ》は『魔法使い』―  作者: 待雪 妥当
第4章 迷い子たち

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第38話 おれピンチ?

「……うう、急に重いぃ――」


 ルミアをお姫様だっこしてカッコよく決めていたが、対戦が終われば本当にただの幼女だ。ルミアのような小さな身体ですら支えられない。


「あかんっ……このままやと、落として……」


 ギリギリまで踏ん張って、おれはゆっくりと屈んでルミアをゆっくりと地面におろす。


「ふぃ~……さすがにこれで落っことしてケガでもさせたらシャレにならん」


 なんとか落とす前にルミアを地面におろすことに成功。しかし両腕はプルプルしてる。たぶん次の日は筋肉痛。しゃーないここは我慢や。


「それにしても……この子はどうして《荒使(あらし)》に振り回されてるんですかねぇ」


 しかし答えが返ってくることはなく、


「とりあえずソアレとパイセンに来てもらおう。おれひとりじゃどうすることもできんし」


 そして、ルミアの横に立っていたのだが――


『おわったと、おもった???』


 グワっとルミアの両目が開いて、光の無い琥珀の瞳がおれを射貫(いぬ)いていた。びっくりさせんな。ジャンプスケア。


「おまえ、びびらすなや!!」


 めっちゃ焦った。心臓が今まででいちばん跳ねたと思う。ルミアの口から這い出るように姿を見せる《寄生型》は三つの頭にわかれていたが、崩れて消えたのは一つだけだった。


 まだ二つの頭が残っている状態で、おれに話しかけてくる。


この子(ルミア)もやっぱダメだなぁ……ダメだったなぁ。もうちょっと扱いやすい子がいいね。それがいいね。そうだよね。あれは? それは? そうだ。そうしよう。そうしましょう』


「いや、対戦しないんで」


 こんな気持ち悪いのと対戦は拒否。一戦抜けさせてもらう。


 相手が《荒使》であろうが、この世界は互いに同意がなければ対戦は成立しない。だからどれだけこのクソ蛇がやる気あっても、おれが対戦拒否すればいいだけのことだ。


「って、わけでお帰りください」


 ただこっちからもこいつを殴ることはできないので、残念だがこれで終わりだ。


『ん? んん?? いやぁ……え? ああ、そうだね。うん、わかる。わかるわかる。対戦が成立しなければ、どうしようもないね。どうにもならないね。でも、だけど、それでもね――』


 残ったもう一つの頭が口から煙を吐いた。墨のような真っ黒な煙。


 町の中で対戦していたから、この状況を見ているのはおれだけじゃない。他の《まほうしょうじょ》もいる。しかし《寄生型》が吐いた黒い煙はおれとルミアを包み込んだまま、


『もういいや、きみでいいや。きみのほうが強いし、強かったし、ってか、きみがいい。きみしかいない。ほかはもういいや。きみにする。きみを連れて行く。それがいね。それしかないね』


「うるせぇ~!!!!」

 

 まてまて対戦はまだ続いているのか? 《寄生型》はいかにもおれに襲いかかろうとしている。


 ほんとやかましい。もういい、まだ対戦が終わってないなら……このまま今度こそ消し飛ばしてやるよ。おれの《まほう》で――


「あ、あれ????」


 しかし、ここで違和感。


 そりゃそうだ体力ゲージはやっぱり表示されていない。おれにも、《寄生型(こいつ)》にも。


 頭の中で↓↘→(236)とレバーを入れていた。そのまま飛び道具で残ってる蛇の頭だけを吹き飛ばせばさすがに黙るだろうと思っていたのに、


「あ、あれ????」


 出ない。


 おれの《まほう》でないよ?


『あは、あははは、おまえ、へん。おかしなやつ。なんで、なんでなんで? 対戦じゃなけりゃ《まほう》つかえない? つかえないんだ。なんだ、だったらこのままでいいや。これでもういいや』


 おれが《まほう》を使えない様子を目の当たりにした《寄生型》はケタケタと(わら)う。しかし、どういうことだ。対戦させ成立すれば、おれは幼女の姿でも戦える。こんなクソ蛇なんか一瞬で倒せるはずなのに、力が使えないのだ。


 表示されない体力ゲージ。


 使えない《まほう》に強化されない身体能力。


 まずい、これはまずい。このクソ蛇、なにをしやがったかわからないが――これは対戦が成立していない状態だ。


 おれは対戦さえ起こせばこれまでの知識と経験でどうにかできる。


 だが、対戦が発生しない限りそもそもこの幼女の身体が、本当に幼女のままなのである。ルミアひとり持ち上げることも叶わない。遠くまで長く走れもしない、飛んだり跳ねたりもできず、何一つ常人以下の能力。


 おれは『格闘ゲーム』の仕様の上でなら戦えるが、それ以外はただの幼女でしかない。


『だいじょうぶ、だいじょうぶだよ。なんだよ。こわくない。こわくないよ。こわがらないでいいよ、そっちも、こっちも、あっちも、どれも、それも、なにもかも、そう、危害を加えることはできない。できないから、こわいことはしないよ。できないからね。そうだよね。そうそう。だから安心して――してして、して』


 しかし《寄生型》は這うようにルミアの口から出てくる。


 そしてゆっくりとおれの方へ近づいてくる。


 対戦が成立しない限り、決して攻撃を当てることはできない。


 寸止めになったり、通り過ぎたり、なんかそういう不思議な力が働いて危害は決して加えることはできないようになっている。それは《まほうしょうじょ》であろうが《荒使(あらし)》であろうが――


「まって、これ……おれめっちゃピンチやん」


 しかし《寄生型》の蛇の頭の一体がおれの足に巻き付いていた。ぬるりと気持ち悪い触感。おれは足を動かして、解こうとしても縄のように巻き付いて離れない。


「おい、まて……おまえさぁ……」


『あんしんして、あんぜんだよ。だいじょうぶ、そうそう、きっとだいじょうぶ。きにしないで。こわくない、こわくないって、さきっちょだけだから、ね? どう??』


「嘘つけ……もろに喉奥まで突っ込んで来るやつやろ……」


 そのまま転んで、もう一本の蛇の頭がおれの首元まで近づいている。いや、おれのサービスシーンいるか? いらんやろ。


「そもそもなんで《まほうしょうじょ》を操るようなことしてんだよ」


 ルミアを操って、わざわざ戦わせて何が目的なのかと。


 おれもこの蛇の頭を口の中に突っ込まれたら好き勝手にされてしまうのか? あれ、そうなるとおれどうなるんだ? え? やだ、めっちゃこわい。


『弱い《まほうしょうじょ》に意味を持たせるためだよ』


 そこで初めて《寄生型》から違う感情が見えた気がした。支離滅裂な壊れたおもちゃみたいに言葉を濁流させて、会話するつもりなと毛頭ないような一方的すぎた言葉とは違う。


 おれの問いに、しっかりと答えたのである。


 いや、これおれピンチのまんま? え?? まじで???

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