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この異世界が『格闘ゲーム』すぎるので荒らしをガン処理する―《まほうしょうじょ》は『魔法使い』―  作者: 待雪 妥当
第4章 迷い子たち

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第30話 迷い子<1>

「えへへ、トリノちゃんの手……ちっちゃくてかわいいね」


「あ、はい」


 ニギニギ。


 布団の中でモゾモゾしながら、ソアレに手を握られている。


 こわいよ。いつの間に入ってきた。


「トリノちゃんもわたしたちと同じ《まほうしょうじょ》なのにこんな檻の中で過ごせって……ひどいよね。ひとりぼっちでさみしくないかなって思って……だからね――」


 そもそも転生前もずっと独り身だったので別に寂しいとかそんな気持ちになるわけないんだが。


「きちゃった」


「こないで」


 初めて出会ったあの日、おれが代わって《荒使(あらし)》を倒して――そして勝つためにいろいろ教えてあげた。日に日にソアレの様子はおかしくなっていく一方だった。


「ねぇ……トリノちゃん、わたしね――」


 近い近い近い近い近い近い近い近い!!!!?


 グイっといきなりおれに近づいて、ニギニギしていた両手をそのまま掴んで離してくれない。


 心臓の音がすごいことになってる。だってぇ……おじさん、いい歳して結局死ぬまで女の人と付き合ったこともなかったしぃ……。


 金の髪が揺れて、息は少し荒くて、唇が震えている――対戦が起こらないとおれはただの幼女なのでソアレに腕を握られるだけで振り解けない。もうだめだぁおしまいだぁ。


「ほら、みて」


 そういってソアレは自分の身体を押し付けてくるのだが、


「あかんって、あきませんって」


 クソみたいな関西弁が出ている。しかしソアレは自分の首を差し出すようにおれに向けている。その《首輪(カラー)》の色は――白く変色していた。


「あ……もしかして……」


「うん、トリノちゃんのおかげで《白色(Cランク)》になれたの」


 それは大変喜ばしいことだ。


 あのソアレが、勝ちを重ねてついに昇格(ランクアップ)しているのは普通に嬉しい。是非にその瞬間には立ち合いたかった。


「やっぱソアレは才能あるよ」


「そんなことないよ、わたし……トリノちゃんに出会えなかったら、いまごろはここにはいなかったよ」


「でも、おまえは諦めなかったからここにいるんだろうが」


 ペチっとおれはソアレのおでこに優しくチョップ。そりゃあおれが教えたことを守って、その通りに動いたから上手くいった――なんて、結局は自分で考えて、動かなくてはならない。


 迷いあれば動きは遅れる。


 考えなく動けば間違える。


 けれどソアレは一切の躊躇(ためら)いなく行動した結果――こうしていまは白色(Cランク)にまで上がれたのなら十分すぎる。


「おれもはやく対戦してぇ~」


 本音はこっちだけど。


 もうずっとおあずけを喰らってて暇で仕方ない。


「でもほんとうにトリノちゃんのおかげなんだよ。わたしに勇気をくれて……ありがとう」


 そしてソアレに抱き着かれたが、今までのような締め付けるレベルのエグい抱擁(ほうよう)ではなく本当に壊れものを扱うように優しくゆっくりと抱き締められたので素直に受け入れた。


(うう……でもやっぱはずかしいねぇ……)


 そしてソアレの熱を感じながら、このまま眠りに落ちてしまいそうで――


「それで、いつまでそうしているつもりだ?」


「……………………………………………スゥ~」


 息を吸い込み、おそるおそる振り向けば檻の向こうにはフルカノンのパイセンが立っている。


「おはようございます」


「ああ、おはよう」


 とりあえずあいさつしたら普通に返ってきた。


「……一応、お前のことは敵ではないと言ってはいるがそれでもまだ納得できない者もいる」


「でしょうねぇ」


 そしておれは布団から出て、衣装を生成する。もうなんか頭ん中で服でてこい~みたいな感じで光ってそのまま着れるので便利だ。どうなってんのかは知らん。


 おれは《荒使(あらし)》の繭から出てきたのだからそりゃあそんなバケモノと日々戦っている《まほうしょうじょ》から見ればすぐには納得できないだろう。


 だが金色(Sランク)であるパイセンをおれは倒している。


 実力は確かなものだと周知させているし、もしそれでおれが《荒使》ってなったら今のところ倒せる《まほうしょうじょ》がいないわけで。


「だから、今日は森に行って……《荒使》を狩りに行ってもらえるか?」


「やったぜ」


 やっと対戦できる。これほど嬉しいことはない。


「じゃあ今から行こう。すぐ行こう」


「おい、待て……ひとりで行けるのか?」


「行けません」


 方向音痴とかそういう話ではなく、どこに何があるとか全くわからないのでナビしてくれるヒトがいないと迷子確定だ。


「ソアレ、頼めるか」


「あ、は、はい! もちろんです!!」


 パイセンの頼みをソアレはなんかビシっと敬礼したままおれの横に立っている。いつの間にかソアレもちゃんと衣装を着ていた。


「ってか、これおれに渡したままでよかったのか??」

 

 だが森に向かう前に、おれは(ふところ)からパイセンに渡された五十円玉硬貨を見せる。


「調べたところで何も答えはでないからな……それより、おまえはそれを見たとき明らか反応していた。何か知っている……だろう?」


「いやぁ……」


 正直に答えて、おれの立場がまた怪しくなるか不安なので黙っていた。


 おれはそもそもこの世界の存在ではない。しかしこの硬貨はどう見てもおれが生きていた世界で使っていたものだ。


()()()()()……」


 硬貨に刻まれた年号――それはおれの世界の年号だ。だが、この世界には関係のない年号であり数字だ。特に意味はないだろう。


 そしてパイセンには「おまえが持っておけ」と言われ、返す必要はないようなのでおれはそのまま預かっておく。


「そういや、前のさ……《荒使(あらし)》の中から出て来た子ってどうなったんだ??」


 前に訊いたときは信用されていなかったので教えてもらえなかった。


 しかし、パイセンは少し考え込んで、


「そうだな……いまのおまえになら、隠す必要もないからな――森へ行くまえに寄っていくか」


 そのままおれはパイセンに連れられて檻を出るのだった。


 それはそうと頼むから今度戻って来た時はまともな部屋に変えてくれよぉ……。

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