第25話 おれが、勝つだけの話<4>
「なに……?」
「それ、相手の立ち位置に合わせて落とすタイプの飛び道具だろ。なら発生する前におれの立っている座標をずらせばいいだけだ」
だからどれだけ目が良かったとしても頭の上に落ちて来るのだから見えるわけがない。
格ゲーにおける飛び道具は右から左、左から右へと横へ流れていくものが殆どだが、時折特殊なものもある。
それがフルカノンが使っているような真上からこちらの立っている位置に照準を合わせて雷のように上から下へと落下してくるものだ。
絶対に相手の頭上に落ちてくるのなら脅威だが、そうではない。発生した際にこちらが立っている場所に落とすだけだ。
ならば動きを止めずに進んでしまえば必ず照準はズレる。
発生と同時に瞬間で落ちてくるのなら、おれでもどうしようもないが――槍が光ってから、落下までにタイムラグがある。なら止まらず動いてしまえばおれの頭の上に落ちてくることはない。
「いいのか? 余裕ねぇぞ??」
槍から放出した光の弾はおれが止まらず走り続けているせいでおれの背後に落ちていた。そしてもうおれの手が届くところまでフルカノンとの距離は詰まっている。
「それはどうかな?」
しかしフルカノンは槍を両手で構え、突きを繰り出している。
その突きをおれはガードするが、さすが金色だ……これまでの見て来た《まほうしょうじょ》と違って、適当に技を振ってはいない。確実にこっちの動きを見て的確に攻撃を振っている。
さすがにそれを避けて反撃することは出来ずガードするしかできなかった。
「なら、これなら――」
突きをガードさせたのを確認し、そのままフルカノンの槍の先端が再び光り、
「至近爆破光《バースト・ゼロ》」
フルカノンは通常攻撃をガードさせてからすかさず《魔導技》をキャンセルして撃ってきやがった。
槍から空の薬莢のようなものが排出される。
すると赤く光った槍はたちまち爆炎を噴き出し、おれの視界が遮られる。こっちは生身だというのに、普通はこの炎をガードしたところで両腕どころか全身は大やけどだ。
しかし格ゲーのすごいところは本当にガードが成立すれば、素手で防いでいるのに斬撃だろうが、爆炎だろうが、摩訶不思議パワーだろうが、なんだろうが体力が少量削れるということはあっても五体満足で無傷ってところだ。
「えらい派手な攻撃だな……だが……」
ガードしている上からわざわざこの爆炎をぶち込んできた。それはガードさせることに意味のある技。
爆炎で視界を遮り、おれの動きを封じながら、その爆炎に紛れ込んでフルカノンは空中から姿を現し、槍を振る。
だが奇襲は通じない。フルカノンのジャンプ攻撃は立ちガードする。そしてフルカノンは着地する。そのまま彼女は一歩だけ進んで――
「やる……」
フルカノンは地上投げを選択していた。
肩を掴まれていたが、それを払い除けてフルカノンの投げを抜ける。ジャンプ攻撃をガードさせてから着地……一歩進んで打撃か投げかの択だった。
これを焦っておれがすぐに投げ抜けの一点読みで地上投げを押していればフルカノンが通常攻撃を選んだ場合、おれは地上投げを漏らしてフルカノンの槍を喰らって負ける。
しかしおれはフルカノンの槍による攻撃を警戒しつつ地上投げを抜けた。フルカノンは自身の地上投げが通らなかったことに目を見開いていた。
「投げを……読んでいたのか?」
「いや、これはちょっとした技術……みたいな?」
そんな大層なものでもないが。
これは地上投げの一点読みではない。おれは通常攻撃も地上投げもどちらも対応するための方法を取った。
――遅らせグラップである。
ガードしつつ遅らせておれは投げを入力し、フルカノンの地上投げを抜けた。だが万能ではない。
仮にこれがバレていれば垂直ジャンプなり、後ろに下がるなりされてしまうと結局おれが地上投げを出してしまい空振りから致命傷を受けるのでこれだけすればいいというわけではない。
そういう絶対が存在しないのもまた格闘ゲームの読み合いがおもしろいところだ。
「やはりこれまでの《まほうしょうじょ》よりも次元が違うな」
「そっちも……おれが見てきたなかでいちばん強いのはわかる」
《まほうしょうじょ》の中で金色とされる存在。使って来る《魔導技》も遥かに強力。
「では、次はこれだ……」
再度、槍が空の薬莢を吐き出せば――今度は槍の先端が開いた。あの槍……文明レベルどうなってんだよ。
「噴出爆石光《エラプション・ゼロ》」
今度は槍の先端を床のリングに突っ込めば、シャベルみたいに掘り返しておれの頭上にそのまま燃えた岩となって落石が襲い掛かる。
続けて、槍の先端をおれに向かって構えている。槍の刃が四つに開いてまるで大砲みたいな形をしていやがる。
「どうするか見せてくれ――いまから私はお前の防御を貫通する《まほう》を撃つ」
「いいのかよ……ネタバレしてよぉ」
「どうすることもできない。だから私は金色の首輪をつけている」
それはきっとおれだけではなく、これまで戦ったであろう《まほうしょうじょ》にも同じことをしてきたのだろう。
眼前に迫る燃える落石を対処している間に、あの大砲みたく変形した槍から飛んでくる《まほう》が直撃して終わりってわけか。
構えてから開いた口から光を溜めている。すぐ撃てないからこそ燃えた落石で時間を稼いで、チャージが完了したらビームでも飛び出すのだろう。
しかもフルカノンのセリフを聞く感じ防御を貫通するってことはガード不可能。なるほど詰みだわ。
見るからに物騒な禍々しい形をした大砲みたいな槍からは空の薬莢が何個も落ちている。ああ、間違いなく《才覚》とやらを得た《まほう》でおれを確実に倒すつもりだ。
「星すら焼く救い無き炎、魔を貫く弾を撃つ――」
詠唱が、開始まる。
「――故に《魔砲》を放つ」
詠唱が完了したと同時に、吸い込まれていく集束した光が――
「終炎流滅光――」
光が濁流となっておれに襲い掛かる。後ろでソアレがおれの名前を叫んでいた。これまでの《まほうしょうじょ》はどうしていいかもわからず終わっていったのだろう。
「……まぁ、でも、対応させてもらうわ」
だがおれを呑み込もうとする光よりも速く真上に飛び、空中で落石をガードした。
じゃあそろそろ《金色》を処理させていただくとしますか。




