第24話 おれが、勝つだけの話<3>
対戦が始まり、おれとパイセン……いや、いまは敵同士だ。いまだけは呼び方はフルカノンに戻そう――まずは両者ともに様子見のまま攻撃は仕掛けない。
お互いに初見でのやるべきことはどれだけの情報を引き出し、相手の戦い方を理解するか。
おれなんか見た感じ両手には手甲をはめて、両脚には脛当てみてぇな板がくっついてるし、しかも他の《まほうしょうじょ》と違って何も持ってない。
こんなんモロに接近戦主体のキャラだってのは明らかだ。だが、フルカノンのパイセンは騎士みたいな甲冑に、やけにゴチャゴチャした自分の倍以上ある槍を持っている。
しかしあの槍でスティルを瞬殺したわけじゃなかった。突いているようなモーションは見せていない。ただその場に立ったまま、気が付いたら吹っ飛んでいた。
「来ないのか?」
「そっちこそ」
明らかにリーチ差はこちらが不利。
だがあの大きな槍を振り回すなら、先端ギリギリ届く位置にをキープしたいのかおれが一歩前に進めば、フルカノンは一歩下がる。
確かにリーチ差を考えればフルカノンが有利だが、おれが前に進む度に、フルカノンが後ろに下がることで状況はおれが有利になる。
(このまま下がり続けてくれれば相手は画面端を背負うことになる)
前回も言ったが格闘ゲームにおける戦うフィールドは決して無限ではない。
見えない壁でもあるのか一定の距離を進むと必ず画面端に到達し、それ以上進むことができなくなる。
まぁ特定の格闘ゲームには場外のルールがあって体力差に関係なくリングの外に出た者は強制的に敗北するものもあるが。
だから対戦が始まれば周囲には見えない壁で覆われている。そしてそれを逃げればいつかはそれを背に戦わなければならない。
画面端に追い詰められた側が逃げ場を失い、それどころか画面端でしか繋がらないコンボがある。
もし被弾した場合はそこから中央でコンボを決められるよりも更に画面端でのみ繋げられるコンボを喰らうことになり状況は絶望的なものになる。
「ふっ、言葉の割にはよく見ている」
「こう見えて慎重なもんで」
おれもフルカノンもまだどちらも攻撃を行うことはなく歩いているだけだ。
だがフルカノンが後ろに下がり、おれが前へ進んでいることでラインが上がっている。
格闘ゲームにおける消極的な行動は状況的不利に繋がる。とある格ゲーにいたってはネガティブな行動を行い続けると強制的に不利な状態になるものもある。
そしてフルカノンが完全に画面の端に到達し、おれはそれを起点とし攻めに転じた。
「ほう、ここで動くか――」
しかしダッシュで一気に距離を詰めるおれを前にフルカノンは未だ余裕の表情のまましかも巨大な槍を構えることはせず、だが槍の先端は光っていた。
「あぶね!?」
だがおれは槍が光ったと同時にガードを入れ込んでいた。両手をクロスさせ、手甲で不可視の衝撃を受け止めた。
(対戦中だけはおれの五感は強化されるはず……それでも見えねぇのか)
スティルを一瞬で倒した不可視の攻撃は、対戦が成立し強化されているはずのおれの目でも捉えることはできなかった。
何か飛んで来たわけでもなく、いきなりその場に現われて襲い掛かってきたような感じ。
(……まぁ、ネタはわかってるが)
おれはガードを解き、再び疾走。
「ふっ……」
不敵な笑みを浮かべたままそしてフルカノンはやはりそのまま動かず、しかし槍は光っている。
だがおれの足が止まることはなかった。




