第23話 おれが、勝つだけの話<2>
「まて、まってくれ……」
だが、そんなおれとパイセンのせっかくの対戦の間に割り込んでくる不届き者がいる。
「もう、いちど……もういちどだけ、ソアレと対戦させろ! 認めねぇ……ワタシは――」
もう負けたんだから邪魔だしどっか行けって思ったが、フルカノンのパイセンの視線はまるで汚物を見るかのごどく冷え切っている。
「ソアレは正々堂々とお前に真正面から立ち向かい、そして勝った。お前はなにをしていた? どうせ勝てるとあぐらをかき何もせず、油断し、慢心し、その結果がこれだ」
そしてパイセンはスティルの胸倉と掴んで、
「銀色まで上がったのも、実力だけでなく……他の《まほうしょうじょ》と組んで、不正に勝ち数を稼いだからだそうだな」
パイセンも聞いていたのだからそりゃ知っているだろうよ。スティルは何も言い返さなかった。
「いや、別に何をしてもいいさ。私は別に構わない――」
だがパイセンはそれに関しては怒りを露わにすることはなく、
「だがその首輪に見合った実力ではあるべきだ」
そしてパイセンはおれを見て、
「構えろ。矯正してやろう……なに、すぐ終わる。トリノ、暫し待て」
せっかくやる気MAXだったのに、自身の負けを認められないおれも最も嫌いな立ち回りをするスティルには正直もう関わりたくはない。ここはパイセンに任せよう。
「私に一発でもその糸を当てれば今回の件は不問にしよう。しかし当てる前に私がお前に触れれば……おまえも一からやり直せ。ソアレのように……灰色から――」
「ほ、ほんとう……ですね?」
「周りも聞いているだろう? 嘘など言わん――どうする??」
その言葉にスティルは今ま散々と絶望していたくせに、スイッチが入ったように糸を展開するのだが、
「だれがあんな落ちこぼれと同じ首輪なんかぁ!!」
しかし糸を振り回すよりも先に、パイセンは何かしていた。
フルカノンのパイセンの手が光ったころには、何が起こったのかもわからずスティルは地面の上に横たわっていた。
「去ね――せっかくの対戦に水を差すな」
瞬間で決着はつき、横たわるスティルは放置されたままパイセンがおれに向き合う。
「すまんな、これは私のせいだな。勝つためなら何をしてもいい――だが、それは勝つために反則行為をしても、というわけではない。今後はもっとそのあたりの監視も怠ってはいけないと痛感した」
対戦は勝つか負けるかの二つしかない。そして勝つためにおれたちは日々考え、動いている。純粋な勝ちに対する望みを叶えるために――真っ直ぐに相手を見据えて戦う。勝ち負けがある以上、対戦は相手がいて初めて成立する。
「おれの世界にもいた。段位を上げるために、わざと勝ち数を稼ぐためだけに中身のない対戦を繰り返すやつも。数字を稼ぐためだけに……そんなことをして、何になるんだってな……」
しかもついにはもうゲームセンターではなくネットを通して対戦できる環境も整ったことで第三者の見えないところでそれが出来てしまうおぞましいこともあった。
おれたちはただ勝つか負けるかを楽しみたいのに――称号だの段位だの、そっちの飾りもののために悪手に染めるやつもいたが、この世界にもいるのはやっぱり残念だ。
「さっさと連れていけ」
そして倒れているスティルを取り巻きの《まほうしょうじょ》たちが慌てふためいて連れて帰った。
「……本当に、反吐の出る横槍を入れられてしまった」
「まぁ……切り替えようぜ。おれたちは違うだろう?」
「ああ、まったくだ」
そしておれは拳を構える。
対戦が成立していなかったから、パイセンがスティルを瞬殺した方法はわからなかった。だが、そんなものは実践でわかればいい。
おれはただこの目の前にいる最も強い金色と戦いたいだけなんだから。
だが、負けるつもりもない――ここからが、やっとおれの出番だ。




