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第36話

 ギフトの研究はいつの間にかルナとオズ、そしてエルミナとシグルドに分かれていた。おそらくルナとエルミナの不仲が原因だろう。もう少し仲良くできないものだろうか。


 もっとも、そのおかげか分からないが、エルミナとシグルドの距離が少しずつ縮まっているようにも見えた。二人で会っているところを見たことも何度かあった。




 そんなある日、いつものように私がギフトを調べている部屋に入ろうとしたときだった。既にエルミナとシグルドは中にいたらしく中から話声が聞こえてきた。


「王都ではルミナスのせいで相当な騒ぎになっているようですね」

「そうみたいやね。うちが出てくるときに聞いた最後の話やと、ある騎士団長が牢屋に入れられてるって聞いたわ」

「ほう、それはどのような理由で?」

「なんや、興味あるんか? しゃあないなぁ。たしか貴族に関することで隠ぺいしたって言うてた気がするわ」


 なぜバレているんだ。クラリスが制約魔法を使って隠ぺい工作を行っていたはずだ。魔法の特性からして騎士団やオズから漏れたとは考えにくい。


 加えて、私は外に出ていない。つまり、漏洩するはずのない情報が流出しているということだ。


 騎士団やオズの記憶を読み取れる魔道具やアーティファクトが存在するのだろうか。いやそんな物は聞いたことがない。だとすると別のルートがあるのか?


「…………なるほど。王都はずいぶんと混乱していますね」

「混乱? そんな感じはせんかったけど……たしか王都には騎士団がいくつもあるやろ?」

「いえ、混乱していると思いますよ。僕が出てくるときはこのルミナスに工作員を放とうとしている……なんて噂すら流れていましたからね」


 どういうことだ?


 なんでそんなことをする?


 少しの沈黙の後、エルミナの声が聞こえてきた。


「……その噂はほんまやな」

「心当たりがある、と?」

「そうやな」


 そもそもなぜルミナスへ工作員を送り込む必要があるのだ。たしかにアーティファクトは国家における切り札になるという話もあったから、欲しがるのはわかる。しかしそこまでして欲しがるのだろうか。


「その人物……聞いても?」


 シグルドが聞いたその瞬間——


「セラフィナ様!!!」

「ぐっ」


 苦悶の声が漏れる。ルナが抱き着いてきたのだ。苦しい。二人の密会が気になって周りが見えていなかった。私の声を聴いて二人が部屋のドアを開く。


「なっ!! この女狐ルナ……! あんた、セラフィナ様から離れなはれ!」

「はぁ!? なんでよ! いい!? あんたはずーっと日陰者。セラフィナ様に愛されている私を見て、影から歯噛みしていると良いわ!」

「こ、この……言うたわね……!? ええわ、どっちがええか聞いてみよか! セラフィナ様、こんなやつに抱きつかれてんと、うちと熱い抱擁ほうようを交わしましょ!」

「あのね、エルミナ? 私はセラフィナ様に受け止められたの。セラフィナ様はあえて私を避けることもせず、ただ私と抱き合っていたい……そう思ったから今こうしているのよ。ね、セラフィナ様?」


 未だに抱き着いているルナが、耳元でささやくように甘い声をかけてくる。言っている内容は一言一句、何一つあっていないけど。


「離れろ、ルナ」

「なっ!? セラフィナ様!? なんでですか!?」

「ふふん、セラフィナ様。わかってはるわ。女狐よりも、うちのほうがええに決まってるやろ」


 ショックを受けるルナから奪い取るように、今度はエルミナが抱き着いてくる。しかしどちらが良いというわけではないのだ。


 二人を振りほどく。


「二人とも、だ。どうにかなるつもりはない、といつも言っているだろう」

「なんでですか!? セラフィナ様はいつでも完璧なお嫁さんになれますよ!」

女狐ルナの言うことに同意するんは嫌やけど、その通りやわ」


 そういうところだ。そこが嫌なんだよ。ため息をつきながら二人を無視して部屋へと入る。するとシグルドが胡散臭く、笑いかけてきた。


 いつもの光景であるにもかかわらず、心に引っかかるものを感じていた。


 工作員。どこからか流出したルシアン公が死んだ真相。そして何よりそれらの情報がエルミナから出てきたということ。


 私になにかを隠しているのか?


 だがエルミナが裏切るとは考えにくい。魔物暴走スタンピートのときも私のため。だというのに、私の心はどこか晴れないのだった。

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