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第34話

 訓練場に到着する。オズは周囲を見渡しながら、感心したような声をあげた。


「ふーん、ここが訓練場ね」


 広々とした空間には、訓練用の武器や的が整然と並んでいる。加えて少しばかり熱気もこもっているように感じた。さきほどまで誰かが使っていたのだろうか。


 クラリスとシグルドも、自分たちがいるべき場所を把握しているかのように訓練場の端に行き私たちを見守っていた。


「さて、私はいつでも構わないぞ」

「ずいぶん余裕ね」


 そりゃあ余裕だろう。たしかギルド騒動のときに私も魔法阻害ディスタブマジックで対処していたのだ。


 相手が魔法使いとわかっている以上、魔法阻害ディスタブマジックで完封できる。


「じゃあ遠慮なく試させてもらうわ!」


 言い終わるか、終わらないかという瞬間。オズは身体強化をし、私のほうへと突っ込んできた。


 悪くない戦法だ。たしかに直接的な攻撃であれば魔法阻害ディスタブマジックでは防ぎきれない。なかなか良い判断だが甘い。


 身体の軸をずらしオズの拳を最小限の動きでよける。


「なっ!」

「避けられるとは思っていなかったかな?」

「……そうね。でも、これから、よ!」


 今度はどこからか短剣を取り出す。そのまま私に肉薄する。


 先ほどよりも早いところを見ると、こちらが本命か。攻撃の速度に強弱をつけることで陽動を狙っているらしい。


 とはいえ私の相手ではない。身体強化にはかなり粗がある。どう見ても魔法阻害ディスタブマジックを想定した戦い方を無理やり仕込んできた、という感じだ。


 オズの短剣を見切りながら避けつつ、この後の組み立て方を考える。


 たしか私のちからを知りたいんだったはずだ。それならばオズの為になるようなことをしつつ、最後にちからの差を見せるのがいいか。


「避けてばかりじゃ私に勝てないわよ!」

「たしかにそうだな。ではそろそろ悪い点を指摘しつつ……反撃とさせてもらおうか」

「このっ、余裕ぶって!」


 オズの手を掴み、横にずらす。その動作にオズは動揺を隠しきれず、目を見開いている。


「一つ、短剣の使い方が荒い。教科書とおなじ軌道だよ」

「こ、このっ!」


 すかさず殴りかかってくるオズだったが、私はその手も受け止める。


「二つ、身体強化が荒い。短剣の使い方も同じだが、旅の最中もこんな戦い方をしていなかった。つまりこの戦い方は付け焼刃だ。当然だがその分、浅さが出る」


 そう言うと私はオズの手を放して、後方に下がる。


「な、ならいつもの私の戦い方で行ってやるわよ!」


 オズは複数の火球を空中に展開し旋回させ、私を取り囲む。


「エンブレイズ・インフェルノ!」


 オズは旋回させている火球を徐々に大きくしてきた。


 動きを封じつつ、一気に焼き尽くすつもりか。悪くはない、がまだ甘い。


 私は手をかざし、冷気の魔法を放つ。オズの火球は一瞬で凍りつき、動きを止めた。


「三つ、確かに基本に忠実。しかもそれを高度にこなしている……がこの魔法は――しょせんはファイアボール」

「……そ、んな……私の最強の魔法が……」


 オズはそう言うと自分の持っていた短剣を落として、凍り付いた火球を見て呆然ぼうぜんとしていた。


「四つ」


 手をかざす。すると空間にゆがみが生じた。そして夜空の星のような無数の光の結晶が現れ、その一つを手元に残し、残りをオズの周囲に配置した。


ちからの差を見たい、だったか。よく見ておけ、これが今の私とオズ、お前の差だ」


 私の言葉が終わると同時に残した一つを凍った炎にあてる。


 炎の形を模していた氷は跡形もなく消え去った。しかしそれだけでは終わらない。吸収しきれなかった衝撃が訓練場内を揺らす。


 まるで街全体を揺らしているかのように。


「さて、これくらいで良いかな?」


 そう言ってオズの周囲を取り囲んでいた結晶を全て消し去る。


「……こ、こんなことって……」


 その場に座り込んでしまったオズの前まで歩いていく。私が近づいたのを知ってか知らずか、呆然とした様子で呟くように口を開いた。


「は、ははは……わかってたじゃない……私が足元にも及んでないって……」


 ……少しやりすぎたか?


 しかしちからの差を見たいと言われた以上、手加減をするわけにもいかないと思う。いや、やはりやりすぎか。今にも泣きだしそうなオズを見て後悔する。


 励ましてやるべきだろうか。いや、だがオズの性格を考えると私が励ますと嫌味ととられかねない。どうするべきか、そんなことを考えているとシグルドが手を叩きながら近づいてきた。


「いやいやいや……素晴らしいですね。セラフィナさん」

「素晴らしい、か?」


 たしかにかなり魔力を使う上級の魔法だったのは確かだ。加えて光と闇を融合させた魔法なので珍しさもある。とはいえ昔はわりと使われていた魔法だ。


 ……もしかして今の時代では珍しいんだろうか。


「ええ、もちろんですとも。本当に……《《予想以上ですよ。これは骨が折れそうだ》》」

「《《骨が折れる》》? どういうことだ?」

「いえいえ、こちらの話です。それより、オズさんもギフトについて詳しいようですし、皆で研究しましょう」


 八重歯を輝かせて言わなくても、そのつもりだよ。そのためにオズの要求を飲んだのだ。


 もっとも、まずはどうにかしてオズを立ち直らせないといけない。どうすれば立ち直ってくれるのか私はオズの顔を見ながら考えるのだった。

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