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第21話:視点【クラリス】

 セラフィナとギルドで別れた後、クラリスはルミナスへと戻ってきていた。全て順調、全て予定通り。完璧であった。


(さすがセラフィナ様です。まさかここまでの筋書きをえがいていたとは……)


 クラリスは廊下を歩きながら、思考を巡らせる。


 エルミナに指示し、ウィロウ村を傘下に入れる計画が他でもないセラフィナ自身によって妨害されたのには、クラリスも混乱した。しかし、セラフィナと話してすぐに意図が分かった。


(そう、あのウィロウ村も――エルミナの傘下についている盗賊たちをルミナスの戦力とするためのもの。彼らも順調に鍛えられています)


 クラリスは、そんな風に考えながら、鍛錬場へと出向いていた。一歩中へ踏み入れば、屈強そうな男たちが、それぞれの適正にあった訓練を行っていた。


 クラリスは監督であるホムンクルスへと近づき、声をかける。


「順調に仕上がっていますか?」

「クラリスお姉さま! まあ筋は悪いですが、使えなくはないレベルになってきました!」

「そうですか。それは良かった。セラフィナ様から直々《じきじき》のご指示です。くれぐれも落ちこぼれなど出ないよう、気をつけなさい」

「もちろんです!」


 その様子に満足したクラリスはニコリと笑い、鍛錬場を後にする。


(これで多少なりとも軍として機能するでしょう。さて、軍の方は順調——では次の準備も始めなければなりませんね)


 クラリスは次にルミナスの中で最も大きな大広間へと足を向ける。彼女の中心には常に一つの大きな願いが潜んでいた。


 ――エルフの国の再興。


 それはクラリスが信じて疑わないセラフィナ様の望み。たとえそれが、セラフィナ自身の言葉として語られたことが一度もなかったとしても。


 クラリスは思考を巡らせながら、自らの指先を見つめる。セラフィナが彼女に与えた身体――それは特別の意味を持っている気がしてならなかった。


 セラフィナは最後のエルフで、クラリスはそのエルフであるセラフィナをもとに創り出された唯一無二の存在。


 セラフィナの手によって様々な種族のホムンクルスが生み出されても、エルフ型として存在するのはクラリスただ一人。


 最初こそ疑問に思っていたが、クラリスは一つの結論に達していた。


(セラフィナ様は、私を創ったことで力を失い、他のエルフ型のホムンクルスを創れなくなってしまった)


 クラリスには、それを信じる理由があった。彼女には他のホムンクルスたちとは違い、最初のホムンクルスとしてふさわしいだけの、多くの力を備えていたのだ。


 それがセラフィナにどれだけ大きな負担をかけたのか、クラリスは考えるだけで胸が痛んだ。


(私を創ってからの状況、セラフィナ様はお辛い状況だったのでしょう。まさか外に出てギフトを探しに行くまで行き詰っていたとは……)


 クラリスは胸を痛めたが、落ち込んでばかりもいられない、と気を取り直して歩く速度を上げる。


(たとえセラフィナ様が直接お話しにならなくても、私には分かります。だからこそ――私はセラフィナ様をサポートせねばなりません)


 そう決意し、クラリスは大広間の扉を開ける。


 そこには50人余りのホムンクルスが待っていた。


 クラリスはそのホムンクルスたちの前に立ち、鈴の音のような声を張り上げた。


「皆さん、ご存じかと思いますが、これからこのルミナス・フォートレスは、ルミナスという街として人を受け入れ始めます」


 シンと静まりかえった大広間にクラリスの声が木霊する。


「セラフィナ様は、ルナとエルミナに的確に指示を与え、魔物暴走スタンピードを引き起こすことで自らの力を示されました。そして、その結果として冒険者としての地位と名声を得られたのです」


 クラリスが一度息をついてから続ける。


「さらに、その地位と名声を活かし、地下の冥界の迷宮(ネクロス・ラビリンス)を利用して冒険者たちを受け入れ、このルミナスを巨大な街として機能させるお考えです」


 ホムンクルスたちは、ひそひそと話をするが、クラリスが再び口を開くと、ぴたりと声がやんだ。


「そして街として無視できなくなるほど大きくなり、さらにセラフィナ様自身が、国家として認めざる得ないほどの名声を得たとき——このルミナスは国として独立を宣言するのです」


 クラリスは続ける。


「これこそが――セラフィナ様の計画です。さあ皆さん、未来の国民を受け入れる準備を始めましょう」


 ホムンクルスたちは、クラリスの言葉を受け、一斉に敬礼した。

 そして、それぞれの持ち場へと散っていく。


(さあ、さいは投げられました)


 クラリスの計画は――進む。

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