第二章 / 勇者がやってきた①
ギュベニュー辺境伯領に、勇者がやってきた。十四、五歳の男子。たぶん、日本人。
モノクルを掛け、黒いマントを羽織り、時々右手が疼いちゃうらしい。無理に異世界に連れてこられたかわいそうな子だと思っていたら、別の意味でかわいそうな子だった。
「む、これはうまいな!」
チーズ味のスティク・パンがお気に召したもよう。
「お口に合いましたようで、なによりです」
「うむ。どうもこの国の連中は、高貴な者にはとりあえず甘味を差し出せばよいと思っておる。いかに貴重な品といえど、ああも洗練されない砂糖の塊などいただけない」
そりゃあね。現代日本では、百円台の駄菓子だって、こっちと比べたらかなり口当たりよくできている。体にいいかどうかは別だけど。
どこそこの飴玉はまだましだ、とか、もう少しで醤油味のせんべいが売り出される予定だ、なんて聞くと、なつかしい気分になる。
でも、ここで意気投合するのは、どう考えてもよろしくない。
「それは、同胞たちが失礼をいたしました」
「いや、なに。聖女殿のせいではござらんよ。はははっ」
うぉーい! 困ったちゃんのにおいぷんぷんだな。私は、聖女だなんて名乗ってないからね?
えー。本日は、私とワルサさんが結ばれた(※気持ちが)翌々日です。本当だったら、ハッピーラブラブしてるはずのに、なんでこんなことになってるのかなー?
ことの次第はこうだ。
力を使いはたした私が寝込んでいる間に、止める間もなくうわさが広まり、それを受けて王都を発した王の使者たちは、すでに領境に迫っていた。ここまでオーケー?
で、結婚の儀を執り行うための時間稼ぎに、長男のギーブ君が名乗りを上げる。山をぶった切って、使者の足止めをしてくれた。
うん。私も最初、彼が何を言っているのかわからなかったよ。




