勇者がやってきた②
私、誤解してたんだけど。ケセラサ人は、放出系の魔法が苦手なだけで、九割近くの人たちが《身体強化》の魔法を使えるらしい。貴族も平民も関係なくだよ。それって、すごくない?
結婚直前に、ワルサさんの双子の息子、ユキム君とホステ君に「私があなたたちのもう一人のお母さんになります」ってあいさつしたら。わきゃーっ! ってよろこんでくれて、その勢いのままに二人で私を担ぎ上げて、猛ダッシュ。慌てたワルサさんに捕まえられるまで、走り続けた。
えぇぇぇ! あきらかに三歳児の力じゃない。魔法? 魔法なの? この年齢で使えるなんてすごい! 別の意味でも大興奮する私。
しかし、彼らの間では、そうめずらしいことではないそうだ。もともと身体能力が高いところからの延長ってかんじなのかな?
これから使うぞって身構えることなく、息をするように自然に使うよね。おそるべしケセラサ人。
「うきゃぁー!」「むきゅー!」
全力で体当たりしてきてくれるのが最高にかわいくて、私はテンションマックス。お返しに二人を両腕に抱えてダッシュしたら、大喜びしてくれた。
この時点で気付かない、私もワルサさんも、ちょっとどうかと思うけど。そこは似たもの夫婦って考えればね? きゃっ!
そう。どうやら私も《身体強化》の魔法が使えるみたい。
まっさきに気付いたのが、クク先生。きぬぎぬに「さあ訓練の時間だ」って容赦なく迎えにくる、すてきなウサ耳のお姉さん。領内一の槍の使い手で、言ってしまえば脳筋な騎士様だ。
与えられてる木の棒を教わった通り振り抜いて、首を傾げる私。
腕組みして見守っていた先生は、ぱぁ~っと顔を輝かせた。表情変わらないのに器用。
「先生。なぜか、とても軽く感じて」
技のワの字もない段階で、筋肉がついてきたって言っても、あくまでそこそこ。無心どころか、朝のイチャラブできなかった苛立ちを、思いっきり込めちゃった一撃。
「うむ。力強い、よい振りだ」
嬉々として、本物の槍を持たせようとする。ええっ? それ総鉄製でめっちゃ重いやつですやん?
「技術うんぬんなど、後からついてくる。さっきの調子でやってみろ」
「は、はい!」
問題なく持って、振って、突けました。いったい、どこへ向かってるんだろう、私。
まあまあ、そのおかげで他の人たちの当たりがやわらかくなったのは、うれしい誤算。力は正義ってわけじゃないよね? 大丈夫だよね?
そうそう、ギーブ君の話だった。
彼ももちろん、《身体強化》が使える。っていうか、常時その状態? もう、ほとんど意識もしてないみたい。
山の端、崖になってるところをちょっと崩して、街道を軽く塞ぐつもりだったらしいんだ。
ケセラサ人の強みは、もう一つ。放出系の魔法が苦手な分、魔法陣の研究に熱心で、その超小型化に成功。武器に刻んで性能をアップさせたり、生活に便利な魔道具を作ったりできるらしい。もちろん、なんにでも刻めるわけじゃなくて、ミスリル製の業物や、規格にかなった基板限定だそうだけど。
で、その愛用の剣を振るったギーブ君の言い訳。
「や、そこら一帯、母さまの魔法の影響受けててさ。あとから思えば、空気中の魔力が濃かった? いつも通りに剣一振りしただけなんだが。こう、ぐっわー! ドンッ! がらがらーって」
私のせいかい。orzだよ。




