目覚めたら④
二人して、いたずらっ子の顔で話し合う。
どうせ王様の話は、私の力を利用しようとするろくでもないものだろうから。とりあえず、別の婚姻を勧められる前に、さっさと結婚してしまおう、ってね。まさか、王子の婚約を破棄、なんてことはしないだろうけど。ことがことだ。何を申し渡されるか、わかったものじゃない。
ワルサさんも覚悟が決まったみたいでよかった。いままでは、養女にとか、十年後に婚姻をとか、一見かっこいいけど日和ってたんだ。打算でいいから結婚してよ、って言う前に、真摯にプロポーズされた。もちろん、オッケー!
幸い、婚姻の日程は、三カ月前に決めた通り。ケセラサ王国では、満月の夜と決まっているそうで、一度時期を逃すと、ずっと逃すことになりそうだ。
そうと決まれば、こうしちゃいられない。ひらめきのままに、自分に《回復》魔法をかける。最初っからこうすればよかったんだ。バッカだな、私。
ついでに光を浴びたワルサさんが、なんかすごく困った顔をしてた。
私にとっては急な話だけど。まわりの皆はすでに動いていて。荒れ地のど真ん中に、いつの間にか十二本の柱を立て、白い革製の幕をめぐらせてた。まるで、円形の陣幕だね。
いやー、いくらなんでも、初夜が青カンだとは思わなかったよ。びっくりだ!
まわりに立つ十二人の護衛騎士が、立会人でもあるんだって。見えないけど聞こえちゃう、ひぇー、はずかしい!
夕刻になると屋敷でも、使用人たちがひとり、また一人と姿を消す。まあ、物陰に隠れるだけで、常に控えているわけだけども。
ワルサさんが一人で、私を部屋まで迎えにきた。
婚礼衣装は、シンプルなつくりのローブ。だけど、想像してみて? 髪と同じ色の毛皮だよ? 彼の野性味が引き立って、すっごいゴージャス!
同じように思ってくれたら、うれしいな。そしたら、その強い視線にも耐えられる。もちろん、全然いやだなんて思ってないけど。あ、脚が震える。
安心させるように微笑んで、軽々抱き上げられた。お馬に乗って、ゆったり進む。
気付くと、護衛の騎士が一人ずつ増えてるって具合で、何度もびくっとしちゃったよ。
そのたびにワルサさんが、声をかけたり、髪を撫でたりしてくれるんだけど、時々、胸が震えてた。
べ、べつに怖いわけじゃないから。こう、条件反射でね?
なーにもない荒れ地に、唯一の人工物。
護衛騎士の手で、幕の一部が持ち上げられる。ワルサさんに抱かれてくぐると、それは静かに下ろされる。
中央には真っ白い毛皮がゆったり張ってある。トランポリンと、ハンモックの間くらい?
真ん中に、二人して丸まると、あったかい雲の上にいるみたい。
見上げると、きれーなお月様。その皓々とした輝きでも隠せない、たくさんの星。
おっきな体のワルサさんが丸まってるのが、何とも言えずかわいらしい。その腕の中に、すっぽりおさまっていると、なんにも怖いものなんかない。
心臓は、ずっとドキドキしてるけどね。
ちょこちょこ犬歯が当たる。くすぐったくて笑っていると、もう笑えないようなキスをされた。
あとはお預けなんて、ひどいなー。ちっちゃい自分の体がうらめしい。大好きな耳をさわって、がまんがまん。
「何を考えてる?」
「うーんとね、昔聞いたおとぎ話を思い出してたの」
「へぇ、どんな? 聞かせてくれ」
「むかしむかし、あるところに」
って、すごい鮮明に思い出せるよ! おかげで声色つかいわけたり、演技に集中できる。
ワルサさんは、その話が思いのほか気に入ったらしく、赤い頭巾をつくらせるって。
遠くない未来、そんなプレイをさせられそうです。
私のすべてはあなたのため、なんてね。照。




