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マナ・スクランブル!〜借金返済のため、天才魔術銃士と脳筋剣士は今日もノンストップで大暴れ!〜  作者: 牧野ハル


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第29話:マールのフルバースト! 借金なんてクソくらえた!

【残り時間:一秒】


レオンの規格外の筋肉が、厚さ数十メートルの古代合金を真っ二つに叩き斬った。


彼がこじ開けた、コアへと続く完璧な射線。


その道を、あたしは風の魔法を足元に纏い、文字通り弾丸のようなスピードで駆け抜けていた。


両手には、愛用の二丁の魔銃。


銀色の『カノン』と、漆黒の『フリューゲル』


そして、そのチャンバーに装填されているのは、あたしの文字通りの全財産だった。


森を更地にした賠償金。


カジノを吹き飛ばした借金。


清掃フロアを丸ごと溶かした追加ペナルティ。


そして、この旅の道中で買い集めた、超高額・特級カートリッジの残り二発。


「……あーあ。これを撃ち切ったら、あたし、本当にスッカラカンだわ」


極限の集中状態の中で、あたしは自嘲気味に笑った。


王都を守って英雄になったところで、残るのは天文学的な数字の借金だけ。


絶品ケーキを食べるどころか、向こう十年間は塩水とパンの耳をかじる生活が確定する。


『馬鹿な……! たかだか一秒! その距離から、この巨大なコアを破壊しきれるものか!』


ゼオン皇太子の幻影が、崩れ落ちる鋼鉄の山の向こうで、焦りと狂気に満ちた声を上げる。


彼は残された魔力を振り絞り、コアの表面に急造の防御障壁を展開しようとしていた。


『私は神になる男だ! この世界の支配者になるのだ! 貴様のような、金にしか興味のない底辺のゴミ虫に、私の崇高な野望が止められてたまるかァァァッ!!』


「……うるさいわね」


あたしは、限界まで魔力を充填した両手の魔銃を、ピタリとゼオンと巨大なコアの中心へと合わせた。


「世界支配? 崇高な野望? ……そんな寝言、自分の部屋のベッドで言いなさいよ」


あたしの脳裏に、黒い煤となって砕け散ったナビコの丸いボディが浮かんだ。


いつもエセ関西弁で、憎まれ口ばかり叩いてきたポンコツAI。


――『頼ミマシタヨ、二人トモ! 王都ノケーキ、絶・対・ニ食ベニ帰ッテクダサイネ!!』


「ナビコの修理代も、あたしの失われた未来の豪邸も、ケーキ代も、全部……!」


あたしの体内の魔力回路が、かつてないほどの熱と光を放ち始める。


装填された二発の特級カートリッジが、あたしの怒りと共鳴し、銃身がひび割れるほどの青白いマナの奔流を巻き起こした。


「借金なんて……クソくらえよッ!!」


あたしは、これまでの人生で最も美しい、そして最も金のかかったトリガーを、両手同時に引き絞った。


「全部まとめて……あとでアンタの帝国に請求してやるわああああああああああああああああああああああああッ!!!!」


ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!


銀の『カノン』から放たれた、星をも焼き尽くすほどの極大の爆炎。


黒の『フリューゲル』から放たれた、空間を切り裂く極大の暴風。


二つの特級魔法は空中で完全に融合し、超高熱の『炎の竜巻、フレア・トルネード』へと変貌を遂げた。


それは、もはや魔法という枠組みを超えた、純粋な破壊の化身だった。


レオンが切り開いた鋼鉄の谷間を、一直線に、そして圧倒的な暴力となって駆け抜けていく。


『な……なんだ、この熱量は!? 止めろ! 止めろォォォォォォッ!!』


ゼオンが展開した急造の障壁など、薄紙のように一瞬で蒸発した。


炎の竜巻は、ゼオンの幻影を悲鳴ごと跡形もなく飲み込み、そして――。


山のように巨大な、純度百パーセントの古代の魔力結晶のド真ん中へと、真っ向から激突した。


ピキッ……!!


一瞬の、静寂。


すべての音が消え去ったかのような真空状態の後。


パキィィィィィィィィィィィィンッ!!!!


世界で一番高価なガラスが割れるような、甲高く、そして美しい音が、巨大要塞の中心で鳴り響いた。


あたしの全財産を乗せた一撃が、無限のエネルギーを誇ったコアの中心を完全に貫き、その構造を内側から粉砕したのだ。


ズズズズズズズ……ッ!!


コアがひび割れ、そこから漏れ出した青白いマナの光が、雪の結晶のようにパラパラと崩れ落ちていく。


同時に、王都を踏み潰すために振り上げられていた要塞の巨大な足が、ピタリと動きを止めた。


機械の駆動音が止み、不気味なほどの沈黙が訪れる。


【システムエラー:中枢核コアの致命的破損を確認】


【絶対防衛プロトコル……停止】


【自爆シークエンス……停止】


【全機能、シャットダウンシマス】


無機質なアナウンスと共に、コントロールルームの照明が次々と落ちていく。


「……やった」


あたしは、銃口から白煙を上げる魔銃を下ろし、そのまま床に仰向けに大の字になって倒れ込んだ。


「やったわ……! 要塞が、止まった……!」


「ガハハハハ! 見事な一撃だったぞマール! まるで花火のようだった!」


満身創痍のレオンが、大剣を杖代わりにして歩み寄り、あたしに向かってサムズアップをする。


「アンタの筋肉もね……。はぁ、疲れた。全身すっからかんよ。……これで、ようやく王都に帰ってケーキが食べられるわね」


あたしは煤だらけの顔で、天井を見上げながら笑った。


借金は増えたけれど、生きていればなんとかなる。


ナビコの残骸を回収して、スナイダーをギルドに突き出せば、少しは報酬がもらえるはずだ。


――すべてが、終わった。


誰もがそう思った、その時だった。


『……警告……。警告……。』


完全に沈黙したはずのシステムから、先ほどとは違う、ひどくノイズの混じったアナウンスが響いた。


「え?」


『中枢核コアノ完全破壊ニヨリ……内部ニ圧縮サレテイタ魔力エネルギーノ、制御ガ不能ニ陥リマシタ。コレヨリ、未臨界状態ノメルトダウンヲ開始シマス』


「……は?」


あたしとレオンは、ゆっくりと首を巡らせて、粉砕したコアの跡地を見た。


割れた山のような結晶の奥深く。


そこで、行き場を失った超高濃度の青白い魔力が、まるで風船が限界まで膨らむように、ブクブクと嫌な音を立てて膨張を始めていたのだ。


『大爆発マデ……アト、六十秒』


「ちょっと待ちなさいよォォォォォォォォォッ!!!」


あたしの絶叫が、機能を停止したはずの要塞内に響き渡る。


自爆は止めたはずなのに。


要塞は止まったはずなのに。


どうして、爆発のカウントダウンが始まってるのよ!!


「ガハハ! どうやら、デカい氷砂糖を叩き割ったせいで、中身が全部こぼれ出しちまったみたいだな! こいつは急いで逃げないと、黒焦げになるぞ!」


「笑い事じゃないわよ!! なんで最後にこういうお約束が待ってんのよ!!」


あたしは涙目で床から飛び起きた。


世界を救う戦いは終わった。


しかし、本当の生存競争は、ここからだった。


「走るわよレオン!! 王都まで全力疾走!! 借金背負ったまま死んでたまるもんですかァァァァッ!!」

最後まで読んで頂いてありがとうございます!

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