表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺し屋は詐欺師に跪く  作者: 男鹿七海
25/28

同じ重さ

 瓦礫の転がる音だけが残る。夜の空気は冷たいのに、肺は焼けるように熱い。背後では、まだ戦闘の気配がしている。

 三剣は足を止めなかった。止めたら戻りたくなるからだ。

「本当勝手だよな…」

 逃げろと言ったのは七条だ。命令だ、と。

 あの男は本気で言っていた。三剣が居ると全力で戦えない、と。

「意味分かんねぇ」

 口ではそう云う。でも解っている。七条龍二は、そういう男だ。

 三剣の血が飛ぶかもしれない場所では、戦い方を変える。躊躇う。計算が狂う。あの狂犬が。

 三剣は屋根の上に飛び乗り、動きを止め遠くの闇を見つめる。七条がさっきまでそこに居た。

 ふと、自分の手を見る。そこにあるはずのナイフはない。今、あの男が持っている。

「……俺のナイフ」

 七条がそれを指先で回していた姿を思い出す。まるで自分のものみたいに。三剣は少しだけ笑う。

「汚れるぞって言ってたな」

 多分今頃、あのナイフは真っ赤だ。でも、アイツは気にしない。寧ろ笑ってるだろう。三剣は空を見上げれば、星が一つ見えた。

「負けるなよ」と呟く。いや、違う。負けるわけがない。

 あの男は、絶対に失敗しない。三剣はポケットに手を入れる。指先で、もう一本のナイフを撫でる。同じ店で買った、同じ形。同じ重さ。

「……終わったら返してもらうからな」

 そして、又走り出した。

 背後の闇の中で、きっと今も——狂犬が暴れている。自分のナイフを振り回しながら。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ