表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺し屋は詐欺師に跪く  作者: 男鹿七海
21/28

繋がる断片

「三葉蓮介……んん、中々出て来ないな……」

 煙を吐き出しながら、君下はパソコンの画面とにらめっこしている。

「ねぇ隼人、古市秋斗さんって誰か親しい友達は居るの?」

「仮に秋斗兄ちゃんが生きてるとしても、ソイツ等と今も関わりあるかは分からんが……五人は居た。よくつるんでたのは見た記憶がある」

「名前は覚えてる?」

「あー……タツミ……何だったかな……」

 煙を吸い込み、神崎は唸りながら記憶を探る。

「……そうだ、確かロクガヤタツミだ」

『はーい!殺し屋御用達、処理屋でーッす』

 スピーカー越しに、軽い調子の声が響いた。

「柊紫呉です」

『柊クン?何々、情報屋が処理屋に電話とか珍しいね』

「透さん、機密事項なのは承知の上で訊きたいんですが、本名だから通じないかもしれませんが、十五年前に古市秋斗さんという男性の遺体は回収しましたか?」

『キミ、秋斗と知り合い?』

「俺は名前しか知らないですが、友人が」

 その瞬間、神崎が君下の手からスマートフォンを奪い取った。

「透か。神崎隼人だ」

『隼人……!?チビ助……お前、こないだ見かけたけど、本当に裏社会の住人になってたんだな』

「189あるんだ、チビ助って言うな。……いや、そんな事どうでもいい。秋斗兄ちゃんについて何か知らないか?殺し屋の時の名前とか、友達とか」

『名前は硯崎柊(スズリザキシュウ)。アイツは友達っていうか……悪友、ライバルみたいな奴が居たな。六ヶ屋辰巳(ロクガヤタツミ)。伊月修二って名前で動いてる』

 神崎の指先に力が入る。

『秋斗の遺体は回収してねぇ。だから生きてる可能性は高い。仮に死んでても、噂くらいは流れる筈だ。殺し屋界隈じゃ有名人だからな』

「クソ……ッ。また伊月かよ!鹿島クンの時といい……あの野郎…」

 握り潰した煙草の箱が歪み、そのままテーブルへ拳が叩きつけられる。

『……』

 受話口の向こうで、透が一瞬言葉を飲み込んだ。

『修二と何かあった?』

「悪い、何でもない。……もう一つ訊きたい」

 神崎は一度だけ息を整える。

「三葉蓮介って、聞いた事あるか?」

『……その名前、どこで聞いた?』

「九薙伊澄が、黒瀬(クロセ)って情報屋締め上げて聞いたって」

 透が小さく笑った。

『黒瀬か……情報屋の割に口が軽いからな。三葉蓮介、それ――』

「……それ以上はいい。分かった。透ありがとう」

 言葉を遮るように、神崎は通話を切った。

 スマートフォンを君下に返す。その目は、薄っすらと涙で滲んでいる。

「雪都が処理屋に電話かけてくれたおかげだ。まさか秋斗兄ちゃんの知り合いに繋がるとは思わなかった」

 君下の両手を取り、そのまま額に当てる。

「希望が見えた……秋斗兄ちゃん、生きてるかもしれない。もっと早く連絡取ってりゃ良かった……」

 俯いたままの神崎の表情は見えないが、その声は震えていた。

「普通、処理屋って殺し屋の後処理専門だからね。俺も何で思い浮かんだのか分からないけど」

「雪都」神崎は顔を上げ、袖で目元を乱暴に拭う。「俺と伊澄──龍二は、秋斗兄ちゃんが殺し屋だったのは知ってた。だから裏社会に来れば何か分かるかもしれないって思ってた。でも、手掛かりはこの写真だけだった」

 七条が残していった写真を差し出す。

「少しブレてるな……急いで撮ったのかな」

「龍二が言うには、表側のカメラマンが撮ったらしい。秋斗兄ちゃんの近くに立ってた男は後ろ姿で、顔は分からなかったって。そのカメラマン、俺と龍二が秋斗兄ちゃんとよく一緒に居るの見てたらしくてな。それで龍二に渡してきたらしい」

「表の人間なのに、よくそんな事出来たね……」

「情報屋を片っ端から当たって、やっと分かったのが一つだけだ」

 神崎は皺になった写真へ視線を落とす。

「秋斗兄ちゃんを刺したのが、三葉蓮介って事だけ」ゆっくりと顔を上げる。「抜け目の無い奴だと思ってたが……処理屋を見落としてくれたおかげで、ここまで辿り着けた。秋斗兄ちゃんを捜す為だけに裏社会に来たけど……来て良かった」

 一瞬だけ、表情が緩む。

「雪都に出会えたし、龍二も──」

 そこで言葉が止まる。

 神崎はもう一度、写真へ視線を落とした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ