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12,恋人よりも家族になりたい

 ……終わりの見えない道を歩くっていうのは、誰にとっても楽な話ではなくて、それは私や多救も例外じゃない。しかも階段を下りたり上ったり下りたり上ったり、かと思えば長い廊下を延々と歩かされて……。

 しかも壁のどこにも窓がない。気分転換も何もあったものじゃないからただただ、徒労感と疲労感が蓄積されていく。あの傀儡王が建てたのこの城?

 流石に設計が頭悪すぎるでしょ。

 しかも回数数えてたけど私達合計で十二回も階段下りてるんだよね。こっちの世界に召喚されて、王の間に案内されたときに下りた分と合わせると……、十四回なんだけど。本当にこの城何階建てなの。


「窓がないのは外からの不意の襲撃を回避するためです。外部と繋がる穴は少なければ少ないほど危険性がなくなりますから。まあ、ここまでとなると病的ですが」

「……何をそんなに恐れてるんですか? そこまで神経質になるほど外って物騒で危険に溢れてるんですか?」

「あまり大きな声では言えませんが、エトランゼル様のお父様は、ここ数百年で最高の愚王と呼ばれていました。エトランゼル様がこの国を統治するようになって、その呼び名も徐々に風化してきてはいますが」

「ああ、暗殺ってことですか……。いや、こんな意味のわからない城建てられたら暗殺の一つもしたくなりますよ。国のお金使って建ててるんでしょう?」

「はい。……こんな城を建てるなら、貧しい者への施しが先だと、私の祖母も訴えたらしいのですが……」

「聞き入れられなかったと……」

「エトランゼル様のお父様は歴代の王の中でも、特に『鎮魂の社』を嫌っていましたから、時期的には最悪だったのです。むしろ、祖母の言葉をはね除けた後の方が酷かったと言いますか……」

「余計な反発を招いてしまったわけですか……、精神年齢低すぎますよ。やってること暴君じゃないですか」

「ええ、エトランゼル様も我慢の限界だったということですよ」

「…………」

「お二人なら気づいていたのでは? 王座にいた人物に、自我が無いことに」

「……それはまあ、魔族が来ても静かに座ったままでしたから。おかしいなあと思ってはいましたけど。というより、そういうのってそんな簡単に話しちゃっていいんですか?」

「お二人でしたら他言しないでしょう? 私は貴方達を信用しています」


 そんなこと言われた後に信用してるって言われても困る。だってもうそこそこ重要な情報を与えて行動を制限しようっていう企みが透け透けだし。流石にこの暴露が巫女様の純粋さから来ているとは思えない。

 信用という名の束縛だ。毒親かよ。

 いつまでも堅苦しく話すのも嫌だけど、急接近が過ぎる。共犯者とはいえ、こっちはただの学生で、彼女は巨大組織の長だ。なんかもう、一つの失言が命取りになりかねないのだから、もう少し色々と控えてほしい。

 面倒なことになったら国家反逆罪とかで私達を殺す気じゃないだろうな。疑うぞ私は。

 というか愚王が愚王すぎる。暗殺を恐れるあまり暗殺されても仕方無い王になってしまっているというのが本末転倒すぎる。

 なんだ。王族は本末転倒の血を引いているのか。

 こんなことお姫様に言ったらまじで抹殺されそうだけど。父親とはいえ一国の主を傀儡にしているのだ。下手に怒らせると命がないのは真剣な話だし――って言うか実際にクラスメイトの半分は死んでるし。

 ……クラスメイト、か。こういうことを言うと薄情に思われる――って言うか、自分でも実際薄情だと思うんだけど、本当に何も感じるところが無いんだよね。どうしてだろ。


「……巫女様からそこまで信用されているのは嬉しいですけど、巫女様のお傍にいる方々から私達はどう映るんでしょうかね? 私達を引き抜いたのって、完全に巫女様の独断でしょう?」

「三本柱の事ですか? エトランゼル様が話すわけないですし……、兵士の方から聞きましたか。その言い方的に、恐らくは結構悪いように言われていたんでしょうけれど、心配はいりませんよ」

「……そう言われましても」

「会ってみれば分かります。一階に待たせていますから、早く城を出ましょう。そろそろ城内の重苦しい雰囲気にも疲れてきた頃じゃないですか?」

「いえ、とっくに疲れてはいますけど……」

「そうですよね。多救さんなんてさっきから一言も喋らずに私の踵を見続けていますもの。代わり映えのしない景色は精神を削るなんて、この城に入ったことがあるものなら全員知っています――あら、お勤めお疲れ様です。頑張ってくださいね」


 巫女様は廊下ですれ違った兵士さんにそんな風に気さくに挨拶する。美人だからというのが関係あるかは知らないけど、兵士さんの方もまんざらじゃないっぽい。

 まあ、終止気を張ってるお姫様の下で働いてたら、どことなくおっとりした癒し系の巫女様についつい目が行ってしまうのも仕方ないだろう。これは男女関係なく、それぞれの人柄の問題だ。

 上司にしたい女性と、友達にしたい女性。

 この二人はまさしくこんな感じだと思う。お姫様は過激だけれど、上に立つ人間としては非常に優秀だというのはさっきからずっと続けている盗聴で分かったし、目の保養的に巫女様を見たいと思っている兵士さんも少なくないっぽい。

 実際、今すれ違った二人の兵士さんも。


『やった! 今の聞いたか!? 巫女様が俺らに頑張ってくださいだってよ! 絶対なんか今日いいことあるぞ! あー、明日からも頑張れる気がするー!』

『お、おう。そうか、良かったな……』


 ……二人の温度差はちょっと悲しいものがあるけれど、聞いての通り、城と『鎮魂の社』の対立はそこまで根深いものではないようなのだ。というか、どうも兵士さんたちって普通の一般人みたいなんだよね。

 そういう家系とか、貴族とかじゃなくて、一般からの志願でここで働くことを選んだ人たち。

 その人たちからすると、『鎮魂の社』って別に忌避するようなものじゃないらしくて、むしろなんで城の上層部がそこまで関わるのを嫌がってるのかが意味不明って感じみたい。

 勿論そこまで信憑性のある情報として提出できるほど大勢からデータ取ったわけじゃない――盗聴したわけじゃないから、城内の何割がそういう考えなのかは分からないけど。


「お二人は、皆様に挨拶はしてこなくて良かったのですか? ここまで来て今さらではありますけれど」

「……大丈夫です。今の皆はまともに話を聞ける状態じゃないし、私達がこうなった経緯を訊かれても答えられない。だったら、私達に出来るのは、一刻も早く帰る方法を見付けて、皆を安心させることだけです」

「……下手に、連れていってくれとか言われても困るしな」

「他の十四人の方々には、それなりに戦えてしまうスキルがありましたから、連れていってほしいと言われても、叶わなかったと思います。あくまでも、お二人だから引き抜けた。この状況下でも、冷静なお二人だったから、私は共犯者になったのです」

「……冷たく見えますか?」

「いえ。むしろお二人は暖かく見えます」

「はい?」

「貴方達は、この余りに突拍子のない、命の危機が目前に迫っている状況でも、仲が良い。それが共犯者になった最大の理由ですよ。お二人が冷静でいられなくなるのは、お互いに関する時だけでしょう?」

「……うぅ」

「ふふ。私にはそれがとても眩しく見えたのです。眩しく、暖かな光」

「……恥ずかしいことを連呼するのやめてくれませんか?」

「護るべきもののある方は強い。私はそう思います」


 私はそう言った巫女様に今すぐ抱きつきたい気分だった。いや、疚しい気持ちとかじゃなくて。呻き声をあげたり、力無く抗議する多救は非常に珍しいのだからして。

 だってそんなの言われること滅多に無いもん。私が外でいちゃつこうとすると自然な流れで多救逃げちゃうから、誰かにこの仲の良さを見せ付けたことって今のところ皆無だったりする。

 多分、お互いにスキルの件で庇いあってたのが相思相愛な風に見えたのだと思う。おー、そうかー、まじかー。

 いやー、見えちゃいますか。やっぱりそう見えちゃいますか。見せ付ける気は無かったんだけどそう見えちゃったならー、しょうがない。まあ、事実というのを隠し続けるのは簡単ではないしね。いやー、褒めたいね。今まで多救の照れ隠しに付き合ってた自分を褒めたい。まったく恥ずかしがりやなんだからこの思春期ボーイは。


「……巫女様が余計なこと言ったから葉雪がおかしくなったじゃないですか。責任取ってくださいよ」

「あら? 責任を取るのは多救さんの役目では?」

「今の会話のどこに俺が責任を取る要素が? もう、本当に勘弁してくださいよ。受かれた葉雪って本当に面倒なんですから」

「ふふふ。照れ屋さんですね。葉雪さんの苦労が偲ばれます」

「……女子に口じゃ勝てない。……ん?」

「ようやく着きましたね。ここが一階です。そういう構造になってしまってるとはいえ、もう少しでいいので近道とか作れないものでしょうかね」

「不審者を警戒しての構造なのに近道を作ったら意味がないのでは……」

「それもそうですが、時間が勿体無いのは確かです。そのせいで毎回三人からの苦情が私に寄せられるのも困りものです……」

「──巫女様、終わりましたか──んん?」

「……終わりましたかって」

「失言ですね。まあお二人が来ることは当然あの三人は知らないので、寛大な慈悲の心で、出来れば許してあげてください」

「別に責める気は無いですよ。ただ少し、気を付けた方が良いと思っただけです。……あの三人が、三本柱ですか?」

「はい。私の頼れる家族です。そう言うと、あの三人は嫌がるでしょうけれど」

「……初めまして、不和多救です。『鎮魂の社』の活動に感銘を受け、巫女様に頼み込み、入信させていただきました。至らぬところはあるでしょうが、宜しくお願いします」

「……なるほどね。この子が、か。よろしく、俺はギル。ギルセット・メイ・ホールドスクエアだ。ギルでいいぜ」

「……宜しくお願いします、ギルさん」

「おう、よろしく。ところで……、そっちのクネクネニヤニヤしてる子は、大丈夫なのか?」

「…………駄目です」


 もうこうなってしまった以上多救には責任を取ってもらって、私をもらってもらうしかない。うん。別に多救だって嫌じゃないだろうし、悪い話じゃない。誰にとっても。ほほほ。お母さん、お父さん、私幸せにしてもらいます。というかもうほぼ幸せです。

 ハッピーエンド! 完!

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