8話! 温度は下げないです!
「あ〜つ〜いぃ〜」
「柚ねぇ!暑い暑いうるさいです!」
「だって暑いんだから仕方ないだろぉ〜」
「暑いのは仕方ないです!でもそれを言ったら余計に暑く感じるです!」
「じゃぁ杏は暑くても暑いって言わないのかよ!?」
「…言わないです多分」
「多分てなんだよ!絶対言うっての!」
「言わないです!」
「言う言うっ!」
「もう!柚ねぇうるさいです!しかもクーラーついてるのに暑くないです!」
「え?これクーラーついてるの?」
「ついてるです!快適温度です!」
「本当かよぉ…何度設定?」
「27度です」
「なんで27度なんだよ!最低値まで下げろ!16度にしろ16度!」
「凍え死ぬです…」
「死なねぇよ!リモコンかせ杏!」
「ダメです!環境省は28度を省エネと快適性の目安としてるです!お国のおすすめより1度も低くしてるです!」
「なんだよ環境省って!関係ねぇわっ!早くかせって!」
「ダメです!絶対渡さないです!」
「……杏、私はお前のお姉ちゃんだよな?」
「そうです…多分」
「多分ってなんだ!?柚ねぇって呼んでるじゃねぇか!ねぇって!」
「それは実姉ちゃんも果音姉ちゃんにも言ってるです!」
「うるせぇ!戸籍上、お前の姉は私だけなんだよ!だから言うこと聞け!」
「ぬぬぬ!明らかに妹ハラです!」
「なんだよ!なんでもハラつけたら良いって思うなよ!しかも妹ハラって語呂的に言いにくいわっ!」
「それはちょっと思ったです…でもリモコンは渡さないです!」
「仕方ない…この手は使いたくなかったが…杏、冷蔵庫にクリームプリンあるぞ」
「なっ!クリームプリンです!?」
「あぁ、私のだけどリモコンと交換ってのはどうだ?」
「ぬぬぬ…姉ながら、あこぎな取引を持ちかけてくるです…」
「さぁ、どうする!」
「…私は今日アイスを食べたからいらないです!」
「ほんとかぁ?ほんとぉ〜にいいのかぁ!?」
「…良いです」
「こんなチャンス滅多にないぞ?リモコンを渡すだけでプリンが手に入るんだぞぉ?」
「……」
「アイスを食べた!?結構じゃねぇか!さらにプリンが食べれる!こんな幸せな日はなかなかないぞぉ!」
「ぬぬぬ…」
「さぁ、リモコンを貸したまえ杏」
「…だめ!ダメです!誘惑には負けないのです!」
「このクソ真面目小学生!大人しく温度下げろ!」
「柚ねぇはしつこいです!絶対渡さないったら渡さないです!」
「んだよぉ、騒いだら余計暑くなりやがった…」
「そうです!静かにするです!動いたら余計体温が上がるです!」
ピン ポォォォン〜
「柚ねぇ、誰か来たです」
「杏が出てくれよぉ。言われた通り静かにじっとしてるんだから」
「ほんとぉぉにダメダメお姉です!」
「うるさい!」
「はい〜誰です〜?」
「杏〜!遊べるかぁ?」
「秋ちゃん!遊べるです〜入るです」
「お邪魔しま〜すっ!って涼し!」
「よぉ秋、涼しいってどこがだよ。暑くて仕方ねぇわ!」
「家からここ来るまでが暑すぎたからかな?」
「はっ!!それです柚ねぇ!一回外出てみるです!」
「いやだよ!なんでわざわざ溶けに行かなきゃダメなんだよ!」
「…溶けてしまった方がみんなのためです!」
「うるさいよっ!」
「違うです!秋ちゃんが言ったみたいに、この部屋より暑い外に出て、汗かいてから入ってくるです!」
「マジで言ってるのか?」
「マジです!体の温度センサーは柚ねぇなみにバカです!」
「私なみってなんだよ!」
「あはは!温度センサーってなんだそれ!?」
「秋ちゃん!秋ちゃんが経験したのがそれです!」
「そうなんだ…」
「さぁ早く!柚ねぇ外へ行くです!早く!は〜や〜く!行くです!」
「わかった!わかったから引っ張るな!Tシャツが伸びる!」
「そんなくたばりかけた子犬のプリントシャツ選ぶやつの気がしれないです…」
「悪かったな!んじゃ庭に出るよ!」
ガラガラガラ
「暑い!死ぬ!もういいか!?」
「まだ10秒しかたってないです!せめて5分は出てるです!」
「5分も…本当に死んでしまうよ…お前は大切な姉が目の前で溶けて無くなっても良いってのか!」
「……」
ガチャ
「おい!鍵閉めるな!」
「あははは、杏めちゃくちゃだな」
「いいです秋ちゃん。柚ねぇはもう少し世の中の厳しさを知らないとダメです」
「柚ねぇも大変だわ…」
「おい杏!開けてくれ!頼む!」
「あと3分で〜す」
「頑張れ柚ねぇ!」
「おい秋!杏になんとか言え!」
「やだよ、人が溶けるところ見てみたいし」
「溶けんわ!杏〜、頼むから開けてくれ〜」
「あと3分です!」
「3分から進んでねぇじゃねぇか!頼むから!プリン食って良いから」
ガラッ
「はぁはぁ…暑くて息できんかった…てか涼しっ!」
「ほら、言ったとおりです!だからもっと外で我慢してから入ってくるです」
「わかった!杏も一緒に出ようぜ!」
「いやです。私は暑くないです、ちょうど良いです。それにプリンを食べるです!」
「…いや、プリンは私のだからだな」
「食べて良いって言ったです」
「それは気の迷いというかだな…」
「嘘ついたです?」
「いや、嘘をついた訳ではないんだよ…暑すぎて命と引き換えるならプリンぐらいって思ったんだよ…」
「なら私は死にかけにプリンと引き換えに扉を開けたってことです!」
「……まぁそうなんだけどさ」
「いただきます!秋ちゃんはアイスで良いです?」
「え、くれるの、ありがと!」
「ちぇっ、この妹は…一体誰に似たんだよ…まぁ、頑固で文句ばっかりなところは母さんだな…」
「あら、そうなの?杏って私に似てるの?秋ちゃんいらっしゃい」
「………母さん、いつから…いらっしゃいましたのでございますですか?」
「あんた暑さで日本語忘れたの?」
「いえ、そんな事はございませんでありますですから…」
「そ?それで頑固で文句ばっかりについて聞かせてもらえる?」
「いや…なんの事でございまするですか…」
「ちょっとキッチン来てくれる、私も柚に言いたいことあったの。学期末テストについてね」
「ああぁ…かしこまりましたですます…」
「柚ねぇ…涼しくても死んだです」




