Case 8 : ランキングに不満があるのは……
世の中には、多くの事柄に順位が存在します。
売上、人気、フォロワー数、口コミ、成績……。
数値で表せるものには順位が永遠について回るのかもしれませんね。
そしてたいていの場合、ランキングはたんなる序列ではなく、良か悪かの基準にもなってしまうのです。
言い換えれば勝負――勝利と敗北と置き換えてもよいかもしれません。
小説投稿サイトにもランキングがあります。
「この作品は他の作品より多く読まれています」
「この作品は他の作品よりも評価が〇〇ポイント多いです」
これが数値で明らかになってしまうのですから、Case 3のような人にとってはたまったものではありません。
……というのは場合によります。
Bという人がいます。
Bはごくたまに自作品がランキングの上位に来ます。
するとSNSや作品のコメント欄で、
「ランクインありがとうございます! 引き続き応援お願いします!」
などと謝辞を述べます。
とても健全です。
思わず応援したくなりますね。
ところがその人気に翳りが見えはじめます。
新しく入ってきた作者がランキングの上位に食い込んできたのです。
しかもその作者はプロフィールや言動からBより年少です。
さあ、Bは面白くありません。
最初こそなんとか努力しようとがんばりますが、やがて二度と返り咲くことがないと悟ると、
「あいつは不正しているにちがいない!」
「ランキングなんてクソ!」
「読者は上位しか読まないから、ランキングという仕組みは投稿サイトに実装すべきではない」
などと言い出すのです。
不思議ですね。
自作が上位であるうちは"ランキング"そのものを好意的に評価し、不正の差し挟まれる余地など微塵も考えません。
むしろその時点では、ランキング制度に苦言を呈する人に対して、"読まれない人による嫉妬"とさえ捉える人もいます。
しかし望む評価が得られなくなった途端、ランキングを否定し、まるで不正の温床でであるかのように唾棄してしまうのです。
手のひらを返すという言葉がありますが、その瞬間を垣間見ることができる貴重な瞬間といえましょう。
しかし、このように一度ランキングの暗黒面に堕ちてしまうと、光明面に帰還するのはきわめて難しくなります。
否定の対象がランキング制度に留まるならまだいいほうで、こじらせてしまうと最後にはなぜかweb小説批判に行き着いてしまいます。
もったいないと思うのですよね、こういうの。
読者というのはもちろん作品を読みに来ているワケですが、SNSで誰もが気軽に発信できる今では、作者の言動が一度気になってしまうとなかなか抜けません。
「小説は面白いけど、作者のこういうところが嫌だから読まない」
なんて思われたら損ですよね……。
ところで暗黒面に堕ちてしまい、光明面に帰還できなかった作者はどうなるでしょうか?
これにはひとつ傾向がありまして、彼らは遊牧民へと姿を変えます。
小説投稿サイトは老舗大手だけではありません。
次々と新しいサイトが生まれています。
彼らは古巣を捨て、新しいサイトに移って投稿を始めます。
生まれたてのサイトなら登録している作者も少なく、比較的カンタンにランキングに載ることができます。
さらにいえば読者も少ないので、1PV増えただけで『注目されている作品!』みたいな感じでピックアップされることもあります。
この下にも置かない歓待は、すさんでしまった作者の心を癒してくれます。
そして「前のサイトのランキングはおかしいが、ここのランキングは正常」なんて思ってしまったりします。
しかしその勢いも最初だけ。
やがて作者や読者が増えてくると、やはり競争に負けて最初の快感を味わうことができなくなってしまいます。
そうなればまた新しいサイトに移住し、以下これを繰り返すのです。
なんなら一度見限ったサイトに復帰することもあります。
(新規登録扱いになりますから、過去に投稿していてとうに完結した作品を再度投稿しても「新着作品」として読者の目に留まります。)
自作の露出を増やすため、多くの人に届けるため、複数のサイトに同じ作品を投稿することは珍しくありません。
というか僕もそうしています。
しかし望む結果が得られなかったからといって、自分がお世話になったサイトに悪口雑言を叩きつけて退会する……なんなら忘れたころに何喰わぬ顔をして戻ってくる……という姿勢はいかがなものかと思いますね。
(続く)




