Case 7 : 諸刃の剣「厳しいこと言います」はこじらせの入り口
ときに作者は読者でもあります。
というかまず「読む」という行為があって、それから書き始めるのがたいていでしょう。
そうして執筆する傍ら、他の作品を読むこともある――。
『小説家になろう』さんというサイト名は書く側を主体においた名称ではあれど、そこに読みに来る読者をも表現していると捉えられましょう。
さて、「読みます企画」なるものを見かけることがあります。
SNSや投稿サイト上で作品を募集し、それを読むというものですね。
多くは募集時に条件を付けています。
例えば、"現代ファンタジーで10万文字以上"や"ミステリーで完結していること"や"主人公が女性の恋愛もの"といった具合です。
作者は自作が条件に合致していれば応募できます。
企画を通して応募者は確実に自作を読んでもらうことができ、企画主は数多ある作品の中から読みたい作品をしぼり込むことができます。
ここまでなら双方に益がありますが、募集要項にある条件を付けるとwin-winの関係は一転して危うくなります。
その条件とは、
『辛口の感想を書きます』
『感想は厳しめです』
などの読んだあとの反応がやや激しさを伴ったものです。
正直に言えば、募集している立場でどういうつもりで言っているのか? という気持ちになりますね。
これが公式のコンクールの審査員ならまだ分かりますが、たいていの場合は企画主も応募者も立場にさほど差はありません。
もちろん企画主があらかじめ出している条件なので、双方合意していれば問題は無いのですが……。
この『厳しいことを言います企画』……悲しい結末を迎えることも少なくありません。
まず企画主です。
この条件を付した時点で「いったい何様なのか? 誰からの、どんな立場からの目線なのか?」という目で見られかねません。
さらに恐ろしいことに、
「そこまで言える作者の作品ならば、さぞ面白いにちがいない」と謎のハードル爆上がり状態にもなってしまいます。
そしてこう評されるのです。
「なぁんだ、エラそうなことを言っておいて大したことないじゃないか」
こうなっては悲しいですよね…… T T
しかし悲劇はこれだけではありません。
今度は応募者です。
当然、その条件を理解した上で応募しているハズなのですが実際に辛口でコメントをされると、
「そこまで言わなくていいじゃないか!」
「粗を探す目的で読んでる。フェアじゃない」
と反駁してしまう作者も……。
これは応募する側の心理としては、辛口とは言ってもそこまでひどいコメントはしないだろう、せいぜい穿った見方をした批評にちかいコメントをしてくるのだろう、という見立てと、実際の辛口とのギャップが引き起こしているのだと考えます。
あるいは応募者に相当程度の自信があって、非の打ち所がない作品を書いているという自負があるからなのかもしれません。
いずれにしても軋轢を生む可能性が高い企画です。
企画を立てる側も、応募する側も、よくよく慎重になったほうがよろしいでしょう。
ところで読みます企画には前述のようにいろいろな条件を付けることがありますが、過去にトンデモない条件を付けた企画があったので紹介します。
題して、『ギブアップ企画』です。
企画主が応募作を読み、どこで読むのをやめたか(ギブアップしたか)を発表する――というものでした。
これだけでも相当挑戦的な企画ですが、その結果もまた興味深いものがありました。
ごく少数の作品は最後まで読んだようですが、大半が途中でギブアップ。
企画主はその理由も述べていましたが、一例を挙げると、
・固有名詞が多すぎて読む気が失せた
・展開が遅い
・難しい漢字が多い
・面白くなりそうな気配がない
などの頷ける内容も多い中、
・作者名が読めないから
・登場人物名が読めないから
・タイトルがつまらなさそう
・人物が多すぎて覚えられない
のように、もはやいかに早くギブアップできる要素を見つけられるか、という大喜利さながらの読書結果を面白おかしく述べることもありました。
企画主はもしかしたらコンテストの審査員の気分になりたかったのかもしれません。
そして不幸にも応募者の中に筆を折った人もいました。
もちろんその人はこの条件を呑んだうえで応募したのでしょうが、それにしても誰も幸せになれないなんとも後味の悪い結末でした……。
(続く)




