1001③
少女は目を伏せ、少し考えるような素振りを見せる。
視線が再び、混じると静かに寄ってくる。
互いに一歩も退かず、歩み寄る。
「正義の味方だよ。ただし、間違え続ける正義の味方だ」
「正義の味方? なら、何故俺を殺そうとする。人殺しが正義の味方だっていうのか?」
「場合によってはなるさ。───────話しすぎた」
「最後の質問だ。お前にとって、俺を殺すのはどんな意味がある」
「意味ならある。───────正しい未来に、人類を連れていくため」
正しい未来。
今あるこの時間、数秒後の自分、彼女は全てを知っているとでも言うように真っ直ぐな目をしていた。
疑う事すら、侮辱と言えるほどに。
だが、思わず口にしてしまう。
「訳が分からない」
命を狙われて自分が死ぬことで人類が正しい未来に行ける、それが偽りか真実かなどさ程重要ではない。
単に理解はできなかった。
「死んで」
言葉を囁く。
静かに近づく刃。
そこで思い出す。
自分の生殺与奪の権利はこの少女に握られていたことを。
急に血が下がり、鳥肌が立つ。
息が思うようにできない。
今、避けないと死ぬ。
この人は冗談で動いてない。
意識が向いてはいるが、体の反応が追い付かない。
どうすることもできない。
逃げたとしても、逃げ切れるなんて浅はかな考えなんて捨てた。
奏は強く瞼を伏せる。
何かが衝突したような鋭い金属音が弾ける。
「はーい、そこまでー」
聞きなれない声がし、奏は目をゆっくり開く。
そこには、また別の少女がいた。
少し小柄で空のように澄んだ青い髪、吸い込まれそうな黄金の瞳を持つ少女がそこにいた。
そして、横から銃を伸ばし、奏に向けられていた刀を受け止めていた。
忘れていた呼吸が再開され、状況が入ってくる。
「何のつもり」
「瑞葉、私は言ったよ? 白と分かったら、攻撃を止めて解放することってさ」
「面倒だ。退いて」
「いやいや、黒だったら既に抵抗してるだろうし」
「不意打ちだってするかもしれない」
「いつからそんな戦闘民族みたいな思考になっちゃったのー?」
「元からだ。最悪のケースを視野に入れるのは当たり前だ」
「はぁ……」と、静かにため息を漏らす。
白い少女、基瑞葉は少し不満そうに刀を収める。
「うん! 理解のある子は大好きだよー愛してるみーずーはー」
少女は瑞葉に抱き着き、唇を近づける。
そして、後ろに回した手を瑞葉の背中を舐め回すように動かしていた。
だが、瑞葉は近づけさせないようがっしりと頭を掴む。




