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宝花の軌跡 〜目指せ、最強スローライフ〜  作者: 逢坂ひより
病に倒れて異世界転生!?
18/22

不思議な青年

 



 突き刺されたスライムは気持ちの悪い断末魔をあげ、動かなくなっていた。



 よく見ると、スライムを突き刺したそれは日本刀によく似た物だった。



「おい!!大丈夫か?」



 どうやら、この男の子が助けてくれたらしい。



 顔周りは少し跳ねのあるクセ毛が特徴で、後ろ髪は下の方で一本に束ねている。私はこの世界で初めて、和服を着た男性と出会った。



 デザインは多少違うけど、コレは間違いなく私の元いた国の民族衣装だ。



 あまりの驚きに固まっていると、男の子は不機嫌そうに焦げ茶色の髪の毛を揺らした。



「……聞いてんのかよ」



「あ、あの……助けて頂いて、ありがとうございます」



「ったくよ、スライム相手に腰抜かしやがって。俺が来なかったら、今頃酸で焼かれてブッサイクな顔になってたところだぜ」



 和服姿の男性は、深いため息をつく。



「あの、本当に……ごめんなさい」



「ったく。謝んなくて良いよ。いってぇな、ちょっと酸食らってるし。あんた、大丈夫なのか?スライムの酸は弱いから死ぬことはないけど、ちょっと当たっただけでも軽く火傷するから気をつけな」



 男の子の腕には、しっかりと酸の跡が火傷になって残っていた。



「あ……どうしよう、火傷になって……。あの、私多分火傷治せるので、治させてください!」



「なんだよ、急に。別にこの程度の火傷くらい、痛くも痒くもねえっつーの」



「いいから見せてください!」



 私は男の子の腕を軽くつかみ、状態をみる。男の子は心底嫌そうな顔をしてるけど、今はそんなの無視だ。確かに傷は酷くないし、これなら初級の魔法でいけるかも。


 傷口に手が触れないように、そっと火傷を手のひらで覆う。


「──汝の傷を癒したまえ。ヒール」


 呪文を唱えると、小さな光の粒子が私の手から溢れ出し、男の子の腕の傷をみるみるうちに癒していく。


「……これで、大丈夫」



 なはず……。



「──ふぅん。本当に治ってやがる。お前、すげえな。回復魔法が使えるってことは、光魔法のスキル持ちか」



「あ……はい。実は、そうなんです」



「なんだよ。いいスキル持ってるくせに、スライムなんかにビビってたのか?」



 クックックと笑う彼の言葉に、言葉が詰まる。


 ……何も言い返せない。



「まあ、なんだって良いけどよ。お前、名前なんていうの?」



「ラルシアです。ラルシア・フローラ」



「そ。俺はラルフ。ラルフ・リンドグレーンだ」



「名前……似てますね」



「……思ったけど言わなかったんだから、言うなよな。まあ、いいよ。俺のことはラルフって呼んで。どうせお前、クエスト初めてだったんだろ?」



「……はい。初めてで、想像してたスライムより何倍も気持ち悪くて、びっくりしてしまって」



 ラルフは、深いため息をつく。



「ったくよ。まあ、俺も昨日冒険者になったばっかりだから、あまり偉いこと言える立場じゃないんだけどな。折角だし、このスライムの解体の仕方とか、倒し方とか教えてやるからちょっと見てろ」



 私はラルフに導かれるまま、さっき倒されたスライムを見ていた。



「ラルシア。お前、解体用ナイフは持ってるのか?」



「あ、はい。持ってます」



 私がそう言うと、ラルフがこっちを不思議そうな顔で見てきた。



「っていうかずっと思ってたんだけど、なんで敬語なわけ?どうせ歳近いだろうし、タメ語でいいよ。なんか敬語使われるの、好きじゃないんだよな」



「……わかった。ありがとう」



「じゃ、解体の仕方な。スライムからは、魔石とスライムゼリーが取れる。このスライムのてっぺんから3センチ下。この辺りに横にナイフを入れると、この中身はもうスライムゼリーだ。スライムゼリーは小瓶1本分しか取れないけど、ポーションの材料になったりする。これは良く売れるから絶対採取するべきだ」



 ラルフは、手慣れた手つきで和服の何処からか小瓶を取り出し、スライムゼリーを小瓶に入れていく。



「詳しいんだね」



「まあ、色々と教えてくれた人がいたからな」



 ラルフの顔に、一瞬の翳り。



 聞いてはいけないことを聞いてしまったのかと焦るけど、彼は何もなかったような顔で小瓶と魔石を麻袋にしまった。



「よし、じゃあ次、お前の番な。あそこにちょうどスライムいるし、なんか攻撃してみろよ」



「え、ええ!?」



 突然の指示に、私は思わず驚いてしまう。



「……何驚いてんだよ。クエスト受けてきたんだろ?倒さないと、報酬なんか貰えないぜ」



 ……それはそうだ。ラルフは決して間違ったことは言っていない。



「大丈夫だ。さっきみたいに腰抜かしてたら、俺が危なくなる前に助けるから」



「う、うん……。やってみるね」



 私は深呼吸をしてから、スライムの前に立つ。



「ブヂュルルルアアア!!」



「うわぁ……」



 気持ちの悪いスライムに怯みそうになるけど、ラルフが見ていてくれてる安心感があるお陰で、何とか先ほどの失態を取り戻せそうだ。



「ライトボール!!」



 私のその言葉に、光の玉が一つ杖から放出される様に浮かび上がる。


 それは勢いよくスライムにぶつかっていき、スライムは痛みからか奇声をあげた。



「ギヂィイイイ!!!」



「うわあああ!!!さっきよりも気持ち悪い声になった!!」



「焦んな!!何でこんな弱いスライム一撃で倒せねぇんだよ!!早くもう一発食らわせろ!」



「う、うわっ!!ライトボール!!気持ち悪い!!」



 私が放ったライトボールは、次こそ確実にそのスライムの命を奪っていた。



「……お前、気持ち悪いとか言ってやるなよな」



 ラルフが呆れた顔で私を見ている。


 だって気持ち悪かったんだもん、仕方ないじゃない。


 私は、スライムに向かって手を合わせる。



「あんた、何してんの?」



 それをラルフは不思議そうに見ていた。



 ……その言葉で、もしかして日本を知っているのかも。と言う淡い期待は消えていった。




「えっと……私が生まれた場所では、命が失われた者に対して手を合わせるの。安らかに眠れますようにって、思いを届けるために。おまじないみたいなもの、なのかな」


 自分で説明しながら、わからなくなって苦笑いをする。



「ふぅん。じゃ、俺の生まれた国ではこうだな」



 ラルフはそう言って、平たい小石を二つ、スライムの横に積み重ねた。



「理由は知らねえけど、人やペットの愛玩魔獣が死んだときに、遺体の横に平たい石を二つ積み重ねるんだ。意味合い的には、そっちと同じ感じだと思うけどな」



 ……そうなんだ。お墓、みたいな感じなのかな?ちょっと違う気もするけど。



「ま、こんなこといちいちやってたらキリがねえけどな。お前のそれなら石がなくても出来るし、俺も今度からそうすっかな〜」



 ラルフは笑いながらそう言う。

 何だかその言葉が、少し嬉しかった。



「じゃ、解体な。ほら、やってみな」



 私は腰から解体用ナイフを抜き、スライムの一番上の部分から3センチしたにナイフを入れていく。ナイフは、スーッと綺麗に通った。



 ウエストポーチから大きめのケースを取り出すと、ラルフは驚いた顔をする。



「な、お前それどうやって出したんだよ」



「あ〜。えっと、これマジックアイテムなんだ。このウエストポーチよりも大きいものを入れたり出したり出来るの」



「マジックアイテムか。スライムにビビる割りに、凄いもん持ってんだな」



 感心した様に頷かれてるけど、出来ればそのスライムにビビるって言うのはやめてください……



 恥ずかしいですそれ……



「これで大丈夫かな?」


 私はラルフがやっていたのと同じように小瓶にゼリーを入れ、魔石を麻袋にしまう。



「おう。思ったより筋がいいんだな。死んだスライムも気持ち悪がって触れないのかと思ったぜ」



「う〜ん。なんか、大丈夫だったみたい」



 何だそれ、とラルフが笑う。



「ま、これも何かの縁だし、今日はこのまま一緒にクエストしようぜ。依頼受けてるのは別々だから、スライムいっぱい探さなきゃなんねぇけどな」


 彼の提案は、私にとってとてもありがたいことだった。


 ……一人であんなスライム倒して回るの無理だからね。



「ラルフが良いなら、お願いしたいな。見ての通り私、すっごく弱いから」



「ああ、本当にな。何で冒険者目指したかわからないくらい、やばいな」



 それは言い過ぎじゃ……




 私達はその後しばらく、スライムの森の探索を続けた。





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