想像よりも100倍スライムが気持ち悪い
「よし、じゃあ早速だけど、使ってみたい武器はあるかい?近距離型の片手剣に大剣、バトルアックスや双剣に、遠距離型の杖や弓なんかも取り揃えてるよ」
私はミーアさんのその質問に、うーん。と考え込む。
「私、戦闘に使えそうなスキルって光魔法のスキルしか持っていないんです。やっぱり、杖が良いんでしょうか?」
「ひ、光魔法!!!?」
ミーアさんはすごく驚いた様にそう叫び、やってしまった!!と言う顔をして口を塞ぐ。
……え?
私、そんなにやばいこと言いました?
「ラルシア、あんた光持ちなのかい。……それはあんまり他の人に知られない方が良いね。光魔法は攻撃力も強く、そして回復魔法を覚える唯一の属性だ。色んなパーティに引っ張りだこになっちまうよ」
……あの。
すでにミーアさんの叫び声を聞いて、お食事をしていた冒険者さん達がざわついてるんですが……
「……ちなみにここだけの話、スキルにはレア度があるだろ?あんた、何色なんだい?」
「……プラチナです」
「プ、プラチナァア!!!?」
なんとなく嫌な予感を感じながら小声でミーアさんに教えると、それは的中。光魔法!?と叫んだ時よりも大きな声で、彼女は叫んでしまった。
酒場のカウンターにいるおじさんや色んな人が私を見ている。驚きのあまり立ち上がって私を見ている人までいた。その人の口にはしっかりとサンドイッチが挟まっている。
「あぁ、いけない。またやっちまった。……今のは無しで頼むよ、ラルシア」
「!!?」
今の無しとか聞くんですかねこれ!!?
「ま、まあ。もしかしたら偶然話を聞いていた人からパーティへのスカウトなんかも来るかもしれないが、パーティを組むかどうかは自分でしっかり、よく考えて決めたら良いさ。ラルシア、あんたは杖を使うべきだね。よし、とっておきの物を見せてやるよ」
何もなかった様に話し出すミーアさんに若干白い目を向けながらも、ミーアさんが取り出した白い杖を見る。
「これはホワイトアグイと呼ばれる木が原料になっていて、マリアクォーツと呼ばれる宝石がはめ込まれている。
光魔法の強化に特化した杖で、属性強化もされている。正直言って、あんまりホイホイと売れる様な値段の杖ではないんだが、特級の才能があるあんたには、安く売ってあげるよ。……さっきのお詫びもあるしね」
ミーアさんは、申し訳なさそうに笑う。
悪いと思ってたんですね……。
「あとはこれ。小型の剣と、解体用ナイフも持っておくべきだ。魔法が使えない様な状態の時に、小型の剣でもあるのとないのとでは全然違うぞ」
ミーアさんは、そう言って普通の片手剣の半分ほどのサイズの剣を取り出した。もしもの時の護身用、と言うことか。
「解体用ナイフは、文字通り解体に使うナイフさ。これもうちのは切れ味がいいから、オススメだ。あとは防具だね。あまり長くない丈のこのローブと、このグローブなんかどうだい?それぞれ、MP回復効果や、防御力を高める効果もあるんだ」
「えっと……わたし、あんまり高価なものは買えないのですが……」
そういった私をみて、ミーアさんが笑う。
「大丈夫さ。でも、装備はきちんとしておいた方が良いよ。レベルが低いうちは尚更だ。ちゃんと安くしておくから、安心しな」
確かに。装備をケチって殺されました。なんてなったら、笑えない。
……こんな最弱ステータスなら、尚更だよね。
「……わかりました。ミーアさんがおススメしてくれた物を買おうと思います」
「はいよ。剣を固定するベルトと鞘もつけて、全部合わせて大銀貨5枚だよ」
「……ええ!!?」
私は、あまりの驚きに叫び声を上げてしまう。
だって、陳列されてるシンプルな剣には、大銀貨1枚と書かれている。さっきの説明を聞いた限りでは、決して大銀貨5枚で買えるような内容じゃないはず。
「アッハッハ、驚き過ぎだよ、ラルシア!大銀貨5枚以上は、あたしは貰わないからね?さっきの詫びと、門出祝いだよ」
「そんな……!!でもさすがに、そこまでして頂くわけには……!!」
「ん〜。それじゃ、たまにあたしの娘とパーティを組んでやってくれよ。光魔法が使える子がパーティにいれば、クエストも安定してクリアできるだろうからね」
「それは構わないですが……」
「よし、じゃあ決まりだ!大銀貨5枚だよ」
私はミーアさんに大銀貨を5枚支払い、購入した装備をその場で身につける。
「なんだい、やっぱり似合うじゃないか。ああ、そうだ。あとはこれだね。どうせあたしはもう冒険になんて出ることないし、良かったら使っておくれ」
そう言ってミーアさんが取り出したのは、様々なサイズの麻袋や瓶が入ったケースだった。
「スライムの討伐に行くんだろう?魔石はその麻袋に入れておくと良いよ。小瓶なんかは、液体系の素材採取にも使えるから、絶対に持っておいた方が良い。数は結構入ってるから、自由に使っておくれ」
至れり尽くせり。本当にその言葉の通りだと思う。
「ミーアさん、ありがとうございます。とっても良くしていただいて……」
「良いってことさ。その代わり、武器や防具を新調する時はうちを使っておくれ。此処と、大通りに本店を構えてるんだ。ジョルド武器屋と覚えておいてくれ」
ミーアさんが嬉しそうに笑い、私はそれに返事をする。武器や防具に詳しい知り合いができたのは、素直に嬉しかった。
「じゃ、頑張るんだよ!!」
そう言うミーアさんにお礼をいい、私は冒険者ギルドを後にした。幸い、私に話しかけてくる冒険者はいなかった。
地図を頼りに街をうろつき、大きな門の前に出る。きっとこの門の向こう側にあるのが、スライムの森で間違いないだろう。
杖を握る手に力が篭る。
正直、めちゃくちゃ怖い。自分が生きるために仕方がないとは言え、この手で生き物の命を奪わなきゃならないのが、何よりも怖かった。
門を出ると、すぐ近くに森がある。あんまり深い森ではなく、道もきちんとあるため迷うことはないだろう。
私は、勇気を振り絞って森に入った。
しばらく歩いて行くと、足元に気になるものが見える。薬草採取のクエスト用紙に書いてあったイラストにそっくりだったので、きっとこれが薬草だろう。6個ほど生えていたので、全て採取し麻袋にしまい、さらにそれをウエストポーチに入れる。
もっとうじゃうじゃスライムがいるのかと思ったけど、そうではないらしい。
「……」
と思った矢先に、丸くてヌルヌルしたような生き物が、ゆっくり近づいてきてるのに気づいてしまう。
「……き、気持ち悪っ」
つい、心の声が出てしまった。スライムの体は半透明で、薄水色。中に魔石のようなものが透けて見えた。
「ブッヂュアア!!」
「ヒッ!!」
きき、き、気持ち悪い!!!
ものっすごく気持ち悪い声を出しながら、近づいてくる。
やばい、どうしよう、攻撃しなきゃ!!
杖を握る手はガクガクと震え、遂には腰が抜けてその場に座り込んでしまう。
「ブヂュアアア!!」
スライムがもう一度奇声をあげた瞬間、変な液体を飛ばし攻撃してきた。
……よ、避けれない!!!
どんなに動こうとしても体に力が入らず、私は思わず顔を背ける。
「あっぶねえな!!!何してんだよ!!」
ああ、終わった。そう思った瞬間の出来事だった。
誰かが私とスライムの間に割って入り、スライムに何かを突き刺したのだ。




