種まきとクエスト
翌日、私は早速カカイモの種を畑にまいていた。ジャガイモのように種芋を使うのかと思ったけど、カカイモの種は普通の種と同じだった。
畑の半分くらいがカカイモで埋まり、その種に水をやる。育て方の本は昨日のうちにしっかり読んだし、これで間違いないだろう。
「ふぅ〜」
軽く一息つき、背中をグイッと伸ばす。畑仕事は、腰にくるのだ。
「よし、これでオッケー!!ちゃんと芽が出てくれるといいなぁ」
畑を見ていると、ゴーン、ゴーンと、鐘の音が響いた。
この街では、朝6時から8時、10時、12時といった様に、2時間おきに鐘が鳴らされている。夜の0時から朝の6時までは、唯一鐘のならない時間帯になる。
時計などの時間を正確に測るものは一般に流通していない。街の大広間にある時計台には大きな時計が設置されているので、みんなその時計と鐘の音を頼りに生活をしているみたいだ。
私は農具関係を全て片付けて、家の中に入る。身だしなみを整えて、しっかりとウエストポーチを腰に巻いておく。
これから、農業者ギルドに行ってハーブの相談と、後は冒険者ギルドに行ってクエストを受けてみようと思う。
昨日の買い物や魔獣の餌代などで、結構なお金が飛んで行った。今日はもうやる事がないのでこのまま何もしないのは気がひけるし、少しでもお金を稼がなきゃいけない。
「さて、カミル〜マリー!!エーデル、ルスワール!!行ってくるね〜!」
魔獣部屋のみんなに挨拶をすると、カミルとマリーはダーッと近寄って来てスリスリ攻撃を始める。
行かないで〜と言っている様で、家を出たくなくなってしまう。一方エーデルとルスワールは、はいはい、言ってらっしゃい。とでも言いたげに太陽の下でくつろいでいた。
「も〜。みんな可愛すぎるよぉ〜。帰ってきたらいっぱい遊んであげるからね、いい子で待ってるんだよ〜!」
カミルとマリーのもちもちほっぺにスリスリしながら、ぎゅーっと抱きしめる。
2匹はきゅい、きゅい!と嬉しそうに鼻を鳴らし、暴れている。
「さて。行かないとなぁ」
2匹を離し、家を出る。
今日は天気に恵まれていて、朝から暖かい太陽が大地を照らしている。時々吹く風は、草花の香りを乗せて流れていく。
「春だなぁ〜」
そう呟きながら、私はこの平和な街を歩いた。
「あぁ!ラルシアさ〜ん!おはようございます!」
農業者ギルドにつくと、カウンターに立っていたサリサさんが真っ先に声をかけて来てくれる。
「サリサさん、おはようございます!」
「あれれ、もしかして早速ハーブを見に来たんですか?」
「実はそうなんです!ハーブの栽培にとても興味があったので」
「成る程、そうなんですね!!では、ハーブの種と苗を少し持って来ますので、待っていてくださいね!」
そう言って、サリサさんはカウンターの奥へ消えていく。少しすると、種が入っているであろう袋と、芽の生えたハーブのポットを何個か持って姿を現した。
「はい!こちらがハーブの種と苗になります。こちらはマザーハーブとも呼ばれている、ララミールですね。こちらはレモーブと呼ばれるハーブで、爽やかな柑橘系の香りを出す物ですよ〜!」
サリサさんは、持ってきたハーブの種と苗を見せながら、一つ一つ説明してくれる。
「ハーブはですね、植えると量を自分で増やしていくので、大量生産する予定がなければ種は一袋で十分ですよ〜。発芽まで時間が掛かるタイプの物もあるので、苗で買うのがおススメです!苗だと、三つほど買えば自宅用、販売用として十分な量が手に入るのではないでしょうか?」
そうか、だから苗の状態の物も置いてあるんだ。
「そうなんですね……。それじゃあ、そのララミールとレモーブ、後はロイマリーの苗を三つずつください」
「おおお〜!3種類一気に育てるんですね!ハーブは丈夫で育てやすいものが多いので、大丈夫だと思いますよ!簡単な説明書もあるので、付けておきますね!ハーブが収穫できるようになったら、ぜひギルドに持ってきてください〜!!」
「わかりました!必ず持ってきますね!」
「それでは、全て合わせまして大銅貨45枚になります〜。これは、例のウエストポーチに入れて持って帰りますか?」
サリサさんは、昨日一緒に買い物をしたのでこのウエストポーチのことを知っている。あまり人前で使わないほうがいいですよ、マジックアイテムは貴重なので!と、彼女は言っていた。
「はい、入れて帰ります!」
まあ、便利だから使っちゃうんだけどね……
「かしこまりました〜!あ、はい。大銅貨45枚ちょうどお預かりします!」
サリサさんから受け取ったハーブを、次々にウエストポーチへ入れていく。
恐らく、このララミールと呼ばれているハーブは前の世界でのカモミールに当たる物だろう。そして、ロイマリーがローズマリー。
レモーブはあまりピンとこなかったけど、仕方ない。
カミルとマリーの元になっているハーブが買えて、私はご機嫌で農業者ギルドを後にした。
そして、たどり着いたのは冒険者ギルド。
「おや、ラルシアさん。お早いですね」
声をかけてきてくれたのは、60代くらいの男性。このギルドの案内役である、ゴゴットさんだ。
「おはようございます、ゴゴットさん。今日は用事がなかったので、クエストを受けてみようと思ってきたんです」
「成る程、成る程。ラルシアさんは、クエストを受けるのは初めてだと思います。なので最初はクエストボードではなく、受付で詳しく説明を聞きながらクエストを選んでみてはいかがでしょうか?」
ゴゴットさんのその提案に、頷く。
「ありがとうございます、そうしてみます。一人でクエストを受けるの、実は不安だったんです」
小さく笑うと、ゴゴットさんが云々、と頷く。
「恐らく、そうではないかと思いました。女性の冒険者の方には、多いのですよ。最初は皆、わからなくて戸惑うものです」
「やっぱり、みんなそうなんですね」
「はい。その為の案内役ですから。それでは、右手にあるカウンターでクエストの受注が出来ますので、早速話を聞いてみては如何でしょうか?」
「ありがとうございます。そうしてみます」
私はゴゴットさんに軽く頭を下げ、カウンターの方へと進んで行った。




