Chapter10-8
どうかな、火力アップは十分だろうか……?
太陽と闇が対峙する。
一方は黒い、ただ黒い触手を自身の影から無数に湧き立たせ、取り込まれた化外はいくつかの竜頭と目玉をつけた翼を残してその者に取り込まれた。
手に持つ漆黒の大鎌は、もともと黒かったが更に禍々しさを備え触れるもの全てを闇の糧にしてしまう。
対してもう一方。
此方は一言で言えば神。天空に坐する大いなる神。
黄金の鎧、清純なる白の布地を溢れる魔力にたなびかせ背には荘厳な意匠を思わせる聖帝痕。
右手に回転させた、かの者の魂の形、その一部は彼女に力を与えもうた太陽の神により神の道具即ち神器となった。
回転に合わせ、呼応した無数の槍、その総軍は太陽の光を受けて闇を断つ刃と為す。
闇夜を払い、黄金色に輝く空に膨大というには余りにも途方もない力の奔流により彼女の燃えるような深紅の髪は一つ一つに命を宿すが如く強く煌く。
その双眸は天を焼く稲妻のように紅い紫電を迸らせ、常に同じ色はなく。彼女が眼下を見つめるその目は今この時、世界の全てを睥睨する太陽の視点。
ーー『闇をはらえ、光を手にせよ、深みの向こうへ進め我が娘』
ーー『私達は貴方の中で永遠に生き続ける、貴方の光で、貴方の手で未来を照らして頂戴』
亡き両親の声が己の内から聞こえてくる。
「もうこれ以上の犠牲を強いるわけにはいかない」
明日への希望をこの国は持たなければならない。故にエストレアはーーー結界を維持させたまま、戦わなければならない。
だが、この戦いが終われば全てが解放されるのだ。
「行くぞ、屍山血河の魔女。お前が築きあげた幾万の犠牲は今!ここで終わらせてやる」
「黙れぇぇぇ!!!貴様如きにぃぃ!!あの方の玉座を脅かせるものかぁっっっ!!!」
互いに同じ高度を保ちながら、お互い睨み合う。視線と視線が交差した時、両者は消え、エストレアは手刀、キュリアは大鎌をぶつけ合い衝撃波が地上を襲う。
互いに威力は申し分ない。両者とも距離を取り、キュリアが呪文の詠唱を開始する。
「惑え、瞑れ、堕ちろ!!我が意志に従え、狂い哭け『極幻』!!!狂惑演舞!!!」
闇が蠢き、そこには彼方此方にケタケタ笑いするキュリアの姿が。そして、影より無数の触手がエストレアのあらゆる方向から迫りくる。
「うそでしょ、分身全部が同じ魔力を帯びてるなんて……!!」
「魔力を等倍にして分身する?どこまで化け物なんだ、アイツは!?」
地上からは戦慄に震えた声が聞こえてくる。それを聞いて嬉しそうにケタケタと笑う。
「分身………、だが」
しかし、エストレアは「ふんっ!」と気合を一つ。
両腕を臍のあたりにクロスさせ、そのまま胸元へ持って行き垂直に揃えると黄金の粒子が周囲に集まる。
呼応した金色の粒子は周囲に散布され揃えた両腕は今度は水平に一気にスライドさせると、全身から光を放つ。
「消し飛べ、電光超撃波!!!」
光に貫かれた触手は形を保つことなく蒸発し、キュリアの分身体も悉く避けることもできず消滅した。
だが、僅かに視線が逸れたことによりキュリアは次の詠唱に入っていた。
「泣き叫べ、狂い哭く怨嗟の叫び!繁栄を否定せよ、それ即ち堕天の翼の如くなり!!」
あの影による攻撃はただの陽動。
エストレアの視野を狭めるためのものだ。
「っ!くそっ」
顔を顰めるのはエストレアではない、逆だ。今この瞬間にも黄金に彩った槍の雨がキュリア向けて降り注いで行く。更にはキュリアには当たらなかった槍達は地上や人々に当たる前に光になって消え、エストレアのもとに戻ってくるおまけ付き。
高速かつジクザク飛行で飛んでくる槍を躱しながら詠唱を紡ぐキュリア。
魔法に込められたその言葉の一つ一つの意味を解している魔法使いはどれほどいるのだろう。
少なくとも、このキュリアはそれを理解する死霊術師にして魔法使いだ。
キュリアの周りに小さな魔法陣がいくつも展開されそこから黒い、呪いを帯びた魔力弾が降り注ぐ黄金の槍群に向かって発射され爆発をもって相殺する。
視界が見えなくなるほどの弾幕の嵐、エストレアは緋門天による視点でキュリアを観測する。
が。相手も知ってか知らずかは不明だが、この状態でも同じ魔力量の分身体をなお複数生み出しており、なお撹乱させてくる。
不意に背後から感じる強い殺意。
「解き放て、『死纏奔流』!!」
ギラつく目をエストレアにむけ、大鎌を突きつける。大鎌より、闇の波濤がエストレアに向かって放たれた。
直撃。
「エレンっ!!!」
アグニルの悲鳴が地上から聞こえてくる。
だが。
だが、しかし。
纏わり付く闇が霧散され、そこには黄金に一切の汚れが見えないエストレアの姿がある。
手にした稲妻が回転するそれを頭上に投げ、円環はエストレアのみなからず領域をすっぽり覆うほどに巨大化する。
エストレアの天の輪と同調するようにいくつもの魔力が複雑に入り混ざり一つの魔法陣がエストレアの天の輪として機能する。
「無駄だ。その程度の闇などに、我が光潰えず!!!」
「開門!【天威の円輪】、我が敵を討ち滅ぼす力を示せ!!!」
天空に接続した【天威の円輪】から目が眩むほどの光が放たれ、地上のみならず遠く離れた海洋連合の港からもその光は観測できた。
光が晴れるとキュリアは異形化した顔からでも分かるように驚愕に染めている。
剣の形をとった、黄金の稲妻。迸る雷光はまるで天に絡みつく竜を連想させ、また竜の咆哮が轟いてくるようだ。
それが、黄金の槍と同じぐらいの数が空に浮かんでいる。
「なん、だぁ、ありゃぁ…………!」
誰かがそう言った。
天を埋め尽くす、無数の武器。稲妻を纏い、その黄金光が暗闇を消しとばす。
死んだもの達を安らぎの向こうに、生きる意志に勇気を与える暖かな、それでいて冷徹な力。
「いや、待て、待て待て!!!あれ全部、俺たちの武器………!!?」
オルストが冷や汗を流しつつ、その優れた目で無数の武器達を理解する。
どれも黄金の輝きを放つ故に、優れた目を持たなければ分からなかったろう。
槍から始まり、剣は魔剣、長剣、曲剣。斧槍、大槌、短剣、etc、etc…
更には、聖遺物でさえそこに含まれる。
【陥斧ルディス】、【魔剣ズツァニッグ】、【硬剣ヴァルナ】、果てには【巨剣ラハール】まで。
「……………ッッッ!!!!」
「目標捕捉、付与『永久追尾』、敵外透過」
逃しはしない。この武器は、武器達はヒュドラに飲まれた時、必然的にエストレアに記録された者達。オリジナルには程遠いが、この神威の底上げによりより近いものになる。
右手を掲げる。武器群はカタカタと揺れ、いつでも敵を撃ち砕く用意がある。
ーー『天よ、耳を傾けよ、わたしは語ろう。地よ、聞け、わたしの語る言葉を』
『わたしの教えは雨のように降り注ぎ、わたしの言葉は露のように滴る。若草の上に降る小雨のように、青草の上に降り注ぐ夕立のように』
『わたしは主の御名を唱える。御力をわたしたちの神に帰せよ。
主は岩、その御業は完全で、その道はことごとく正しい。真実の神で偽りなく、だからこそ大いなる光は主であり、闇を砕く者である』
「混沌」とした「地」とそれを覆う「闇」、底なしの「深淵」。そこにあるのはただただ恐ろしいばかりの力を振るう魔女。恐れ、震える民に、しかしそこに言葉があった。神は言う。『光あれ。』こうして、光があった。下界に届く光を見て、良しとした。
「ーーーーーーっ!!!」
その場をキュリアが飛行で逃げると同時に、エストレアの手が振り下ろされ再現された聖遺物含めた武器が雨あられとなり、光の矢となってキュリアを追う。
大鎌を振るい、撃ち落とし、魔法で相殺を試みるが圧倒的な物量により被弾が増える。
血塗れになりながらも致命傷を避け続けるキュリア。地上スレスレに飛行して民間を盾にしようとするが光の矢は当たることなく、寧ろ軌道を変えてキュリアを追い続ける。
「っ!!」
突然に脳裏に走る警鐘。鎌を振るい、眷属の巨人を呼ぶ。その影に隠れ、そして上昇。
巨人は、空間が歪むほどの魔力塊から放たれた光に穿たれ、力なく倒れる。続いて、爆発、衝撃波。
雲を消し飛ばし、瓦礫を粉々にさせ、衝撃波が寄せ集まって竜巻を生む。
ちらりと見れば、エストレアの右目から周囲の空間が異次元ばりに湾曲しておりそこから放たれた光であると知る。
そう、先程放った緋門天の光と同じものだ。
「ならっ!!」
遠距離による攻撃、迎撃が無駄であるなら取れる手段は二つ。恥を晒して逃走するか、近接戦闘、超火力でのゴリ押しの三つのみだ。
だが、だが。
逃げようにも、エストレアがこの王都一帯を神域に変えてしまった。つまり、エストレアが外敵であるキュリア、ヒュドラを討ち取るか、キュリアがエストレアを撃退するしかこの領域から脱することはできないのだ。
伸び縮みする影で出来た触手を球体にしてまとめ、魔力を溜め、解き放つ。
「散華しろッッッッ!」
黒く染まった顔を歪めて暗黒球体を特大のビームのように放つ。
追い討ちとばかりに影から触手を伸ばし、ヒュドラの残滓である竜頭を伸ばして暗黒の光線を吐きまくる。
やがてバラバラだった攻撃は束ねられ、極太の黒い光線を形成、エストレアを飲み込まんと迫る。
(これは………防がないと皆が危ない)
「閉じろッ!!!」
直感でこの攻撃は危険だと判断すると、両肩に付けられた巨大な肩鎧を脱着。
そしてパラポラ状に前方に開くとハニカム構造で出来た光の膜が形成されそこへ直撃する。
光の膜に当たった闇の極光は周囲に残留エネルギーを撒き散らすが、まるでシートで包むように覆われて、逆に放たれる。その攻撃で分身が尽く塵となって消えていく。
「では返してやろう、『雷穿』照射」
「くっ!?(攻撃をそのまま反射させた?!冗談でしょッ!?)」
受け止めるのは不味いとキュリアは判断する。
しかし、逃げるにも直撃する方が早い。ならばーーー
(飛び越えるしかない!!)
キュリアはギリギリまで引き付けて、一気に魔力を足に集中、上体を大きく逸らし、その背中ギリギリに反射された黄金の稲妻を纏った闇の極光が通り過ぎていく。
やがて極光は結界をモロに突き抜けて、国境を越えて帝国との境の一つである白銀山脈で知られるツァラトラファ山脈の山頂の一部を貫通し、彼方へと消え去った。ぶつかった箇所には火山が爆発したと思われるほどの大爆発を引き起こし、山脈が溶け落ち、岩石が蒸気化する程の威力を叩き出した。
「嘘でしょ………?私でもあんな威力は出ないわよ………!!?」
ーーあんなのまともに食らえば跡形もなく消し飛ぶ………!?
意識が消しとんだ山脈の山頂に向けられるその隙に、キュリアの体は穴だらけになる。
「、こふっ!?」
落ちていく体、その目が映したのは今なお空間が捻じ曲がる程の魔力を溢れ出す眼から連弾された魔力弾だった。
同時に、黄金に彩られた武器達も光の矢となってキュリアの異形の身体を撃ち砕く。
「どこまでも落ちてゆけ、それが貴様にお似合いだ」
「化け物めっ……!」
●●●
「キュリアっ!!!」
バンッ!と机を叩き、立ち上がるダークスーツを着込んだ悪魔ジュダ。
先程連絡を入れ、警告したにもかかわらず戦闘へと移行してしまった同僚が落ちていく様を見て歯を食いしばる。
映像越しに見える神の姿を、こればかりは残虐にして気紛れな『双児』ですら目をひん剥いて凝視している。
「こりゃ、死んだかな?」
「不謹慎な発言は控えろ、サイキ。曲にも盟主の前だぞ」
「悪りぃ悪りぃ。けどよぉ、事実だろ?側から見て分かりやすい実力差で仕掛けたんだ。経緯に関しちゃぁオレにはアレだけだけどな?オレは認めるぜ、アレがオレ達パンドラの覇王だって」
だがーーー、と誰の口が紡がれるよりも先にサイキ・ノーグと呼ばれた邪鬼は真面目な顔で発言を潰す。
「戦役の続きだ。人とオレらじゃねえ。盟主を王と崇めたオレらと正当なる覇王との戦争が今、結ばれた。そうだろ、不可の魔法使いマリウス・シオン!!」
興奮したまま、円卓を叩き割るサイキ。そして、彼の口から自分たちの陣営の中で最強の殲滅力を持つ存在が帰還したことを本能で知り、叫ぶ。
空間がぐにゃりと曲がってそこから後頭部をガリガリと掻いて現れる。
「帰って来ていたか」
「ホント、なんで誰も彼も気配消してる僕に気づくのかなぁ。そんなに分かりやすい?」
「「「「「勘だ(な)」」」」」
本当はわかってないが、何となくである。そう言われてますます凹むマリウスの姿があったとか。
「でも、でも、僕」
「でも、でもね、私」
「「この戦いで、キュリアが死ぬ、というか六闘将脱落は決まったんだじゃないの?」」
『双児』が互いに顔を見合わせて映像先のキュリアを指差して笑う。
「静まれ、貴様ら」
彼らが盟主と呼ぶ僭主ヴォルバートはただ一声で全員を黙らせる。
その姿から発する威圧感は、悪魔でありながら王と呼ぶにふさわしいものを持っている。
「余はまだ諦めるつもりはない。まだ、時はある。ジュダよ万が一はアレを用意をしておけ」
「は」
ヴォルバートのその言葉はキュリアをまだ見捨ててないことを示していた。六闘将はただの烏合の衆ではない。彼、ヴォルバートの『絶対の信頼に値する』歴戦の戦士達だ。だから、女神の器の覚醒という失態があったとしても彼はキュリアを咎めるつもりはない。
誰も予想はできなかったし、予見されていたとしても誰が、御子なのかも不明なところで把握しておくなど自分でも不可能だからだ。憶測など億の数並べようとも所詮は憶測だ。
「キュリアよ、余の戦士であるのならば生まれたばかりの神を喰らい尽くす、それ程の気概はあるのだろう?ならば、示してみよッッッ!!!死ぬことは許さんッ!!!」
ーーー
ーー
ー
(盟主の声が聞こえる。まだ、あの方は私を信頼してくださる………!)
取り込んだ屍者共、ヒュドラの残滓の超強力な再生力で穿たれた穴は修復され、学習する。
これほどまでに変貌を繰り返しながら、なお理性を失わないあたり、流石はキュリア・ノイマン、屍山血河の魔女と呼ばれ恐れられた死霊魔術師。
「……!」
エストレアは瞬く間に再生し、この天に登ってくる敵をまじまじと見つめその両の手の拳を強く握り込む。
「よく分かった、お前は強い。外道で、下衆ではあるがその強さ、真のもの。この国の誰もが死力を尽くしてもお前には決して勝てない。最初から本気ではあったがーーーーー」
己の右眼が魔力を生み出す。溢れ出た余剰な魔力が空間を歪める。
ただ、その規模は先ほどのものより濃密で、強力だ。
「許せ、というのは間違いだ。私がアグルより受けた力は神の1割にも満たない。その中で私が出せる全力が1割未満の六分程度、それ以上は結界が問答無用で砕け散る」
神の力というものは人間の認識では測れない。神に最も近いエストレアでさえ、アグルより受けた力は1割程度しか認識出来ず、またその中でも全力で出すことが出来ない。それが神というものであり、またエストレアという女神の器の現時点での限界である。
「だが」
そう、だがーー。
「それでも構わない、最善を尽くしつつ、貴様をこの世から断罪する。貴様がいかに高名な使命を浴びようととも、貴様は悪であり、外道であり、下衆だ。
ーーーだから故に、汝怒りの雷火に焼き尽くされるがいい」
この宇宙に牙剥く故、その犠牲で織り交ぜた屍肉の蝋翼を今、エストレアは太陽として焼き尽くす。
エストレアの右眼から前方に向かって大小の魔法陣が展開される。
だがその魔法陣も一瞬のこと、次の瞬間には飛び立とうとするキュリアの頭上にて光の柱が突き刺さるようにして照射された。
「ガアアアーーーーーーーッッッ!!!??」
人とは思えぬ悲鳴を上げるキュリア。しかし。
キュリアは堕ちていない。アレほどの神威に晒されてなお、黒い魔女は空に浮かんでいる。
そして、溶ける。空間に溶けるようにして。
「っ!!!消えたっ!?亜空間転移かっ!」
ーーー
ーー
「うまい!」
元々キュリアは夢魔である。そして、ジェシカ操る巨神兵との戦いで彼女は自身の体を亜空間に潜ませることが可能だ。
一度だけ行使したが出たところを出鼻を挫かれる形で襲われたために使わなかったが、相手が宙に浮かぶようにして遠距離戦を仕掛けるのであれば距離が無意味である亜空間からの奇襲を仕掛ければ。
「やるじゃねえか」
何より相手は緋門天と呼ばれる高度の視点を持つのであれば死角がないように見えるが、確実に一つだけ死角と言える箇所がある。
「「ふうん」」
「狙うは一点、奴の、懐のみだ」
腕を組み、沈黙していた六闘将の一人ボルテ・アルキオネは片目だけ開けて水晶の映像先のエストレアの懐に転移しその大鎌を突きつける、その瞬間を読んだ。
「切っ先を内側から、防げない間合いから見舞えばいかに神の器であっても防げまい」
ーーー
ーー
ー
切っ先がエストレアの喉元にあった。最初からそこにあったかのように。
泥ついた悪意に、冷たい殺意に、底知れない邪悪を帯びた鎌の切っ先。
外道であれどその技量は本物で、あとコンマ一秒足らずにエストレアの首を撥ねるであろう。
「死ね」
ヴゥン、と音を立てて、大鎌の刃はエストレアの首を捉え、取った!と確信した。
幾度も狙ってもビジョンが浮かばなかったこの瞬間。この手応え、この感触。全て、我が経験から考えても致命の一撃になる。
後は、斬られたことさえ分からずその首はゆっくりとズレ落ちてーーーー
ーーーガキンッッッ
「は?」
間抜けた声を漏らす。
【馬鹿だな、彼女が持ってるそれこそが本当の神器の姿なんだってば】
座に座るアグルが下界での出来事を失笑する。
漆黒の、闇に包まれた大鎌の刃を留めている、その正体は。
それは先程まで無数の武器を召喚した、回転する円輪。黄金の稲妻を絶えず発して回転するそれはキュリアを大鎌を済んでのところで受け止めている。そして、その回転がより激しくなり、とあるものをこの世に呼び出す。
「な、なによ、それ…………!!」
怯えるキュリア。地上もまた例外ではない。
「あ、…………あぁ、あ……!!」
「あの武器、格が違う………!!!」
そして。愚か者を見るような目でキュリアを睨むエストレアがいた。
「【天威の円輪】形態変化、真体解放。顕現せよ、汝の銘はーーー【天穿】ガラティーン」
一つの柄の両端に付けられた剣先、両刃剣と呼ばれた異剣が黄金を放ってそこに存在する。その持ち手を左手で持ち、キュリアの大鎌との鍔迫り合いを強引に振り解く。
「終わりにしよう」
振り払われた剣閃は、キュリアの腕を斬り飛ばした。




