Chapter10-3
戦いが佳境に差し掛かってまいりました。
これ書いてる時、ミ○ルオ○レギオンとかイ○リートのbgm流してました。
巨人と怪物が絡み合っている。
一方の巨人は艶めいた黒のボディと人知を超えた存在を示す光背を背負う『巨神兵』。
一方は、大鎌を持ち忌々しげに顔を歪める魔女と女神像から奇声を上げてこの土地の源泉を取り込んだ、竜頭を無数にはやした異形の怪物。複数の竜頭を脇に抱え、女神像をその大きな拳を振り上げて殴りつける。
異形の怪物、ヒュドラとてこれに黙っているわけもなく女神像からは高周波と衝撃波を伴う奇声、無数にえる竜頭からは矢継ぎ早に熱線を吐く。
組み付かれた巨神兵を引き剥がすべく、逆に巨神兵の腕に巻きつき縛り上げていく。
背後に生えた目を見開く翼からは目が爛々と輝き爆発を引き起こす。
「くっ、くううううううううううっ!!!ディアス!!ハアァァァァァァっ!!!」
巨神兵を駆るジェシカは苦悶をこぼしながらも同調した巨神兵に一歩踏み込ませ、巻きつけられた片腕を逆に掴み取ると地面に叩きつける。両腕で脇に抱えた竜頭を束ねるように持つとハンマー投げのように回転させ投げ飛ばす。
投げ飛ばした後、巨神兵は大きく体を沈ませると脚部のスラスターから魔力をジェット噴射のように噴出させ距離を詰めていく。
開いた手を握り込み、起き上がろうとするヒュドラに対し追い討ちの如く叩き込むべく、その拳に力を込める。
肘にある噴出口から魔力が噴き出て突き出された拳は見事にヒュドラのボディに突き刺さり竜頭から吐血するように黒いものが吐き出される。
同じように、取り込んだ【深遠の神鉱】の欠片がキラキラと溢れて黒い雨に濡れては暗緑に光る。
「よしっ!」
まずは一撃。
ジェシカの脳裏には今尚消えることのない03:30と減り減って03:17という数字。
それは制限時間であることの証明。感じることのできる明確なタイムリミット。
召喚したそのままではタイムリミットなど分からなかったが心身同調によってジェシカはこの後どう攻めるべきか脳裏に的確に思い描いていく。
「(落ち着くのですわ、私)」
ーー警告、時計九時方向より魔女を捕捉。接敵まであと五秒。
「迎撃態勢!!不毀の光盾ディカルナ展開!!!」
ーー了解
声に出して、思う通りに武装を展開させる。この巨神兵というかゴーレム、ディアスには巨剣ラファールに加え防御用の武装も搭載している。
再起動した際、不要フレームを使い改良をした盾は、伝承において自然現象の化身、龍を相手取るときに使用された神の盾がモチーフとなっている。
【不毀の光盾】。
その意味は神の心。信仰によって堅牢さが変わるという。
巨神兵の後背が大きく輝くと左腕に円月輪に似た円盤が装着されそれを振り向きざまに振るう。
ハニカム構造状の青白い膜のようなものが半ドーム状に展開され直後に火花が散る。
「早いっ!?」
大鎌を振るうキュリアに驚きの声が漏れる。
模造聖遺物であるキリエライトのその切れ味は既に多くの英雄達を地に伏せさせた事実がある故に、この国て最速を誇るフローラの頑健たる聖遺物たたる盾さえ突破したキュリアの技量を持ってしてもこの光の盾は貫けなかった。
ジェシカに信仰心というものは薄い。
神の心を意味にする光の盾にもし明確な補正というものが目にすることがあればデメリットでしかない。しかし、それを補ってあまりあるものが一つだけある。
エストレアに対する想い、それがある種の信仰へと昇華させ光の盾の堅牢さを底上げさせている。
「迎撃命令ですわ!変形機構起動!腕部砲身、拡散榴弾!!!」
ーー了解、目標捕捉。目標固定、座標合わせ完了、予測軌道捕捉
「撃てェェェェェェェェェェェェっ!!!」
「なにっ!?」
光の盾を持つ左腕が変形し、巨大な砲身へと変わる。
握り込んだ拳を包み込むように装甲が展開され、盾となる円月輪状の装備はまるでダットサイトのように並行して並ぶ。標的を圧倒させるような無数の光る魔法陣が並び、魔力が収束していく。
そのまま砲身は青白い光を砲口から漏れ出てるまま、キュリアを捉える。
閃光が迸る。
直後に、連鎖的に起きる爆発。散らばる榴片が辺り一面に散らばり、物体に触れると同時に起爆。
そのまま返す刀で、背後のヒュドラにも榴弾を叩き込むと連鎖的に爆発が発生する。
「芸術ですわね」
ーー理解不能
「うるさいですわ」
●●●
「馬鹿な………」
本日何度目の驚きか。
現魔王ヴォルバートの呟きは彼ら六闘将全員の感想を如実に表していた。
「再起動、それも最適化まで……。何故、あんな小娘が今までマークしていなかったっ!?」
「あまりの事に言葉にすることが出来ませんな」
今はここにいないマリウスの言う通り、魔力切れにより機能停止に陥った巨神兵を見て安堵したのも束の間だった。
まさか、あんな方法で再起動させるとは誰も思って見なかったのだから。
「魂魄契約………。魂を対価に結ぶ絶対契約。確かにそれであれば持ち前の魔力では足りなくても……….出来ますが魂魄契約は、そもそも我々としても人間としても行使は禁じられている代物。おそらくは必死のあまり、無意識による契約でしょう。だがーーー」
「うん、それでも」
「ねぇ、それでも」
「それでも時間制限がある。それがなくなれば」
「それがなくなれば、ガラクタに元通り。その上ーー」
「「巨神兵が傷付けば、術者もまた同じ場所に傷を負う。最悪、死ぬね」」
恍惚に、それでいて苦しむ様を見てほくそ笑むような残酷な笑みを浮かべた六闘将の双児が説明を補う。
いわば諸刃の剣。だが、代償なき力などこの世に一つたりともない。
ましてや、巨神兵を駆る少女ーージェシカは召喚の際の疲労、大量の魔力消費による負傷を押した上で魂魄契約を結んだ。
「そう。魂魄契約とは魂レベルでの密接された契約だ。繋がりは確固たるもの。傷を負えば、その分の痛みと苦しみが魂を通じて齎される」
ジュダが、堅物そうな雰囲気のあるメガネを光らせて魂魄契約を結んだ巨神兵と少女のおおよそ考えられる結末を脳裏に描いた。
「そう言った意味では………、あの少女には色々驚かされましたが俄然有利なのはキュリア、彼女に他ならないでしょう」
ーーー
ーー
ー
爆風と黒煙に包まれ、辺り一面は完全に瓦礫の山どころか焼け野原と化していた。
地面からは間欠泉の如く魔力に富んだ地下水が絶えず吹き上がり、巨神兵が一歩動かすだけで勢いよく吹き出す始末だ。
「魔力探知、対幻覚防御しつつヒュドラをマークしつつ魔女を捉えなさい」
あの魔女、キュリアは確かに爆発に巻き込まれ、爆風にも飲み込まれて行ったはずだが肝心な気配そのものがない。
あの程度の攻撃でくたばるなら、お姉さまの手ですでに死んでいる。
『(どこに潜んでいるの、あの、腐れビッチっ!!!)』
周囲を見渡しながら、キュリアの姿を探すジェシカ。脳裏に走る直感が確実に生きていると判断した。
ヒュドラが行動する前に、キュリアを探し出さないと板挟みになって勝機もクソもなくなる。
『っ!ーーそこ!』
走る直感。
そこからは早かった。瞬時にその方向へ振り向き右手を握り込み勢いよく叩きつける。
『(っ!避けられた?)いえ、これは……!!」
殴りつけた場所には何もない。さっきまであった何とも言えない感覚がない。
『(あの化け物は…………くっ、もう復帰してしまったのですの?)』
「どこ見てるのかしら?」
『なっ!?』
ガガガガガッッッ!!!と殴りつけた右腕に連撃というべき剣閃が走る。
しかし、黒曜石に艶めく黒色の装甲には僅かなヒビが入っているだけで大したダメージは見受けられない。
「あら、思いの外硬いわね?じゃあ、これは?」
姿がないのに、声だけは確かに聞こえる。
だが、そうこうしているうちに右腕に巨大な大鎌のような黒いものを幻視した。
『っ!!(不味いっ!)ディカルナっ!!』
「遅い」
ヴゥン、と低く鈍い音が姿なきキュリアの言葉と重なる。
それは装甲のヒビに沿って振るわれ、次の瞬間右腕の装甲が砕け散る!そして同時にジェシカの右腕から激痛が走った。
『ーーーーーーーっ!!!!ぐうぅ〜〜〜〜〜っ!!!』
ブシャァァァァァァァァァッッッとジェシカの右腕から切りつけられた形のまま傷が生まれ、そこから鮮血が吹き出す。
『く、くぅうっ、な、なんの!!せぇぇぇいっ!!』
残った左腕、拳を握りそこへ思いっきり振り下ろす。
砂塵が舞い、轟音が鳴り響く。
しかし。手応えはない。
ジェシカは冷静に状況を把握する。今、残り制限時間は3:00を切って2:56と感じとる。
そして、損傷した右腕から血が滲む己の右腕と比較してまだ動けると判断すると、周囲の瓦礫から装甲がわりに補填し、修復させる。修復したからと言って自分の右腕の痛みと傷は治るわけではないから未だ激痛が走る。
「はぁ、はぁ…………!(手応えが感じませんわ。けど、攻撃してきたからどこかにいる筈なのに)」
ジェシカは瞬時に体が動くまま左腕のディカルナをその方向へ向ける。そこへ突き刺さるはヒュドラの竜頭。大きな顎門を開き、飲み込まんと迫ってきていたのだった。
大きな激突音を鳴らして、巨神兵の足元が陥没する。
『テェェェイっ!!!』
大きく、弾くように左腕を振るうと脚部のスラスターを噴かせてヒュドラとの距離を詰める。
距離を詰めながら、修復させたばかりの右腕に巨剣ラハールを持たせ、スラスターによる突進の勢いを利用しながら渾身の突きを放つ!
大きく突き刺さる巨剣に苦悶をあげて竜頭が暴れる。それでも、手にする巨剣ラハールを手放すことはなくそのまま突き刺した状態で下へと斬り下ろす。ブチブチブチィ!と音を立てて血を吹き出させ、ある一点の所で横へ薙ぎ切る。
『ハァァァァーーーっ!!!』
ジェシカは気合籠る声を上げて、その声に答え巨神兵は巨剣を大きく大上段に構え、右脚を踏み出しながら振り下ろす。
「あら、させると思って?」
『なっ!?うそ!?』
巨神兵の足元から声が聞こえる。
同じようにヴゥン、と低く鈍い音を立てて右脚の脛に黒い剣閃が走る。
その際、ジェシカは見た。
黒い雨の中、黒いモヤのような状態になったキュリアを。
それは空間に溶けるようにして姿を消し、異なる場所へ姿を表す。
「(捉え所がない……、これでは……!!)」
ジェシカがそう感想を持った瞬間、右足に感覚がなくなるのを感じ取る。
「っ!?」
ズゥン……と膝をつく巨神兵。そしてーー
「っ!ーーーーーーー!!!!」
声にならぬ悲鳴。
己の右足から右手を同じように血が吹き出し、コクピット内を赤く染めていく。
衣服を裂き、口で縛り止血するも既にかなりの出血で力がろくに入らない。
そして、この状況ではヒュドラに大きな隙を晒したことに他ならない。
無数の竜頭が巨神兵に巻きついていく。
腕はあらぬ方へ引っ張られ、首を絞められ、胴をあらんかぎりに締め付けていく。
「がっ、ぐ、ぼぁ……お、ねぇ、さまぁ………!!」
魂魄契約を結んだジェシカにもそのダメージはそっくりそのまま齎される。
骨は砕け、内臓はひしゃげる。喉は絞力によってすでに潰れ、意識が朦朧とする。
反射で血を吐こうにも、締めつけられているから吐くこともできず喉に溜まり、呼吸が困難になる。
伸ばした手は空を切り、意識は深遠へとーーー
●●●
空間からモヤのような状態になったキュリアは素の姿に戻ると拘束される巨神兵を見る。
「本当に、もったいないわね。けど、諦めなさい。この私に、半分本気にさせたことは誇るべきよ」
あの爆風で油断したせいもあってかなりのダメージを負ったのだ。
そのせいで少々本気を出さざるを得なくなった。あの少女の才覚は危険だと警鐘が鳴らしていたこともあり、また少女が経験不足としてもそれを駆る、神話の兵器たる巨神兵相手に手を抜いて勝てるほどキュリアは耄碌してない。
彼女がやったことはごく単純なものだ。
夢魔の強化形態、異次元空間を操る力をほんの少し引き出し己の体を異次元へ滑り込ませた。ただそれだけ。
それを繰り返し、巨神兵の攻撃をかわしつつ己の持ったキリエライトの渾身の力で切り裂き続けた。
思いの外装甲が硬く、突破するのにかなり時間が掛かったが切り裂くたび中から悲鳴のようなものが聞こえくる。
「魂魄契約を結んだのね、召喚したことに驚いたけれどただの小娘になんの代償もなしに出来るわけがないもの」
掌をヒュドラに向けてグッ、と握り込む。
形態変化を繰り返したが、今の自分であれば支配権を取り戻すのは容易い。
握り込まれた拳に反応して、ヒュドラは竜頭による拘束を強める。
か細い悲鳴が、まるで小鳥の最後のようで耳を楽しませる。
ーーー
ーー
ー
「ジェシカちゃんっ!!!」
「待て、どこ行くつもりだぁっ!?」
王都の宮殿からヒュドラと魔女キュリアを引き剥がすべく巨神兵を起動させ見事に引き離したジェシカが今、窮地に陥ったのは誰から見ても明らかだった。
一縷の希望を抱いていた市民らは絶望の顔を浮かべ膝をつき項垂れるものを現れた。
そんな中で、アグニルは焦るようにその場を離れようとしてネロに羽交い締めにされる。
「ネロ、離してっ!!!」
「馬鹿、今行った所で俺たちにできることなんてねえだろ!!死にてえのか!?」
「見捨てるっての?!」
「ぐっ………」
「見捨てられるわけないじゃない!もう何も出来ずに待っていても何もいいことないっ!!やれることがない!?違うでしょ!!やれることを作るの!!そうでしょ!!?」
ネロを振り解き、駆け出そうとしたアグニルは不意にヒョイ、と持ち上げられ、その額にデコピンを喰らってしまう。
「よく吠えた、冒険者のお嬢ちゃん。そうとも、やれることがないなら作る。やれることをやるだけは餓鬼でも出来るしな。だが、それはお前さんの仕事じゃねぇ」
持ち上げた人物はこの国の軍部を束ねる元帥アイアノスとその背後には何やら人形を抱えたズオーに、イザルナとイルナの二人。
「いやぁ、年寄りにこんなことしとぅないわい。手間取った手間取った。こんなじゃじゃ馬などと相手したくないわい。こんなのは15年前に終わらせたかったのぉ」
ドカッ、と鈍い音を立てながら地面に転がしたのはまだ白さが残るが素の黒髪が見え始めた、気絶したルディナと傷だらけながらもしっかりと地面に立っている
巨神兵がヒュドラと戦っている間、王宮の一角で爆発を伴う戦いがあったがもしかしてーーー
「全くだ。あぁ血が滾る。15年前の事思い出すぜ、お前の援護と俺の一撃で上位竜をバカスカ撃ち落としたのは今でも覚えてらぁ」
「あんまり、ワシをこき使うな。ニアスちゃんとイチャイチャしてたいのに「黙れ変態ジジイ。年寄りのヴェルダンにして欲しいならそう言えばいいのに」待、まて、まて!!!」
ニアスに杖でゴンゴンと叩かれたズオーは、その見た目で涙目になりながら必死である。
「おい、ネロって言ったか。お前、その魔剣ぶっ放せるか?」
構えながらアイアノスはネロに問う。
何を言っているのか、最初は困惑したがおそらく魔剣の大技のことを言っているのだろう。
「あ?や、やれんことはねえけど、魔力足りねえ。第一、ありゃ俺の奥の手だぞ!」
「つまり、魔力があればいいのだな?」
「まぁ、そうだけどよ……。うわ、おっとっと……」
アイアノスは懐から何かを取り出すとそれをネロに投げ渡す。
「あ、それって………」
アグニルがネロが受け取ったものをまるで知っているかのように反応する。
「ん?知ってんの、これ?」
「地下回廊の……、純魔力の地下水、よね?これ」
「へぇ………」
地下での出来事をざっくりと説明するアグニルの話を聞きつつ、ネロはその入れ物の中の液体を一気に煽る。
途端に湧き出る魔力。酒に酔ったような不思議な感覚で少し気持ちいい。
「地下回廊のことをどこで知ったかは今は聞かないことにしてやる。ネロって言ったか、どうだ魔力は大丈夫だろう?」
「あぁ!これならぶちかませる!!!」
はっきりと答える。
これなら、もう一度あの天を衝く稲妻を、竜王の咆哮を放てる。
通用するかはわからない。けど、今のままでは確実にジェシカと巨神兵は負ける。
「ネロ、俺のなけなしの魔力と風聖霊の魔力でギリギリのところに送ってやる。確実にーーーー決めてこいよ!!」
コク、とうなずき、魔剣を構える。
ふわ、とした感覚、空を舞う感覚。不思議と恐怖は感じない。
「行くか」
魔剣に魔力を注ぐ。同時に詠唱する。
「天は堕ち、地は跪き、人は仰ぐ」
パリィ………と魔剣が帯電する。
「我が真祖バモレッド、子孫たる我をご照覧あれ」
ズドォオオオォォォン!と暗雲より、稲妻が魔剣に落ちる。
流石にここまで来ればキュリアもヒュドラも気付く。しかし、もう遅い。
「受けよ我が必殺。天空を駆ける虹の天霆を見るがいい!!!」
バアァァァァン!!と稲妻がネロを照らす。
その魔剣は、碧雷ではなくオパールのような淡い虹色である。
かつて、バモレッドに討たれたズツァニッグはその断末魔の叫びとして稲妻は虹となって世界中を駆け巡ったという。
その逸話の再現。神々でさえ到達し得ない。ズツァニッグだけの大雷霆。
市街地で放った大技が全体の2割であるならば。これはおよそ6割。全力で放つにはまだまだ足りないがそれでも一人の人間が放つには強大過ぎる一撃であろう。
「是非もなし。天霆の力は遍く世に轟かん!!!伝説再演!【震えろ神代、咆哮する竜鳴】!!!!」
大きく振りかぶり、うねる力を感じるままに解き放つ。雷は極大の奔流となってヒュドラへと突き進む。
『ーーーーーーーーーーッッッ!!!』
巨神兵ごと巻き込んでしまったが巨神兵の頑丈さを信じての一撃。
それは確かに功を成した。地を覆す嵐の竜王の雷はヒュドラを飲み込み、地を抉るどころか融解せしめ暗雲を一時的に吹き飛ばし、月が顔を覗かせる。
あまりの威力に思わずヒュドラは拘束を解除し、巨神兵は締め付けから解放された。
しかし、巨神兵ーージェシカが意識を失っているからか動かず力なく倒れるのみ。
空中に投げ出された状態のネロはクルクルと回転しながら屋根へと着地。そして、剣を真横へ振るう。
金属同士の乾いた音を立て、大鎌の一撃を防ぐとバク転をしながら距離を取るネロ。
「へ、どんなもんだい。生憎、まだあのデカブツにはうちらには必要なんでね。助太刀させてもらったぜ」
「っ、余計なことしてくれたわね」
「ハッ、ここに来たのは俺だけだがまさか忘れたわけじゃねえよな。てめえが俺に集中してくれたおかげで、あいつらの魔法は唱え終わったぜっ!!!」
バッ、と後ろへ向かって飛び降りると追撃しようと追いかけてきたキュリアに無数の魔法が降り注ぐ。
「ぐっ!!これは………!」
大鎌を振るい続け、弾き、落とし、防ぐ。
だが、一連の攻撃を防いでいるうちにキュリアは攻撃がフェイクであることを直感で悟る。
今すぐ離れなければと警鐘の導くまま空間を割って逃げようとしたがーー
「逃さんよ」
聞き覚えのある声。忌々しい、大魔導ズオーの気配。
空を見上げれば、大小様々な魔法陣。幾何学的に並び、一種の曼陀羅のように空を彩る。
「とっておきじゃ。まぁ、お主なら避けるじゃろうがな、あのデカブツにはどうしようもあるまいて」
ズオーの口から紡がれた言葉はキュリアにとって大誤算であった。それは、自分たちの陣営であればマリウスだけの魔法。すなわちーー、極醒魔法である。
「御使の洗礼よ、敵を焼き払え!!極醒魔法、【天の柱】ッッッ!!!」
空一面を覆う無数の魔法陣から雲の隙間から漏れ出る天使の階段と呼ばれるような照射、薄明光線が破壊を齎す。
それはランダムに、変則的に照射されヒュドラを焼き切っていく。
一方で、ズオーの言う通りキュリアは間一髪でモヤのような状態になって逃げ込むことに成功した。
ヒュドラの近く、巨神兵を盾にしてやり過ごそうとして。
壮大な音を立てて立ち上がり拳を振り下ろす巨神兵にキュリアは初めて虚をつかれた。
ーーーこんなところで。
こんなところで、終われるわけが
終わっていいはずがない。
もっと。
もっとだ。
もっと、火を焚べなければ。命の炎を。
ダランと垂れた腕に力が籠る。ドクンッと止まった心臓が動き出す。カッと見開いた目からは紫電が如き眼光が灯り、決意と敬愛が己の精神を支える。
ネロの放った大雷霆。それは意識を手放したジェシカの心臓を動かし、尽きかけていた魔力をその電力で賄い、制限時間はとうにバグをおこした。
「まだ………!」
そう、まだ。
「まだ、ですわ」
一度死にかけたがなんだというのだ。二度死にかけたがなんだ。
その程度で自分が、敬愛し、愛するお姉様を殺した相手に止まる理由にはならない。
「えぇ、そうですわ。まだ、まだだッッッ!!!!」
降り注ぐ光の柱。その中で、巨神兵とジェシカは再び立ち上がる。
「う、ウオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!」
繋がりを強くしたジェシカと巨神兵は獣のような咆哮を持って答える。
宴は終わらない。黒い雨が降り注ぐ中、巨剣ラハールを握りしめる。黒き体は赤熱させ、戦いはこれからだと主張する。
眼下にいるキュリアに向けて拳を振り下ろす。手応えのなさから逃げたと理解するとブースターとスラスターを同時に噴出させヒュドラと同時に現れたキュリア目掛けてラハールを振り下ろした。




