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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第1章 目覚めの王国
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Chapter 9-7

お待たせ


「惨たらしく殺してやるわ、屍山血河の如く!」


手に持った大鎌を変形させ、軽装鎧として纏ったキュリアは、狂気を孕んだ目でエストレア達シェアトの竜殺しの冒険者達を見る。


直接やりあった経験はないが、彼女の今の姿からは覇気というかオーラのようなものが肌を焼くように突き刺さる。


豪、と吹き荒れる魔力の本流は彼女から溢れる魔力の余剰分か。








「んなこたぁどうでもいいけどよ!!俺の援護どうにかしてくれよっ!!!」


圧倒される中、魔剣を手にしているネロは涙目になりながらヒュドラの注意を引き付けている。

ネロが現れた途端、ヒュドラは執拗にネロを追いかけ始め、その巨大な顎門で飲み込まんと迫る。

今現在、ネロには三つの竜頭が追いかけているが追いつかれるのも時間の問題だ。


ヒュッ、ズダァン!


空を切る音が聞こえると、背後から迫っていた竜頭は鎌鼬を伴う風の爆発に晒されて大きくよろめいた。


「よぅ無事か、ネロ?」


「さんきゅー!オルスト!!けど、あんま無茶すんじゃねえぞ?頭切ってるの忘れんなよ」


「わーってるの!けど、んなこと言ってる場合か!!」


どうやら今の一撃はオルストによる援護らしい。

彼は、頭から夥しい量の血が流れた痕があり、血のせいで片目は見えてないのか瞑ったまま。

それでも視界悪い黒い雨の中矢を番え、確実に当てていくその技量は感嘆に値する。


「さーーて、実は俺も限界だったりしてな。けど、ここ踏ん張りどころだ。竜殺しの称号に恥じぬ我が弓技、とくと見やがれ!!!蛇野郎!!」


「頼むぜ、風精霊シルフ流星アーメン・竜殺陣コメット・ドライブ!!!」


口に複数の矢を咥え、大きく弦を引っ張る。腰溜めに構え、大きく息を吸うと同時に一気に吐き出し矢を放つ!!!


矢を放つと同時に彼の契約する風の精霊が魔力を放出し風でできた矢を生成、複製し、幾重にも展開されて、虚空に浮く。重機関銃ばりの弾幕が射出され、雨粒に見えるほどの大量の矢は一時的に雨さえかき消して流星群となって地面を抉り、ヒュドラの体表を吹き飛ばしてキュリアに向けて殺到する。


「チィッ!」


キュリアは、変形させた鎌、いや剣を振るい自身に迫る矢を全て捌きつつオルストを睨む。

無数の矢の雨を受けて、ヒュドラは体を丸めて防御の姿勢をとり矢が尽きるまで耐えるつもりのようだ。


「ネロ!」


「あいよ!!」


ネロは屋根伝いに駆け抜けると丸まるヒュドラの体表に飛び乗ると一番手前の首に向けて魔剣を突き立てる。

途端にヒュドラの体を雷が走り、鱗のないブヨブヨとした肉体は黒煙を上げながらヒュドラの体中を走った。


「ーーーーーーッッッ!!!!」


途端に暴れるヒュドラに、ウルマトでの上位竜との経験があるネロは動じることもなく突き立てたままの魔剣を握り締めながら、雷を放出。そのまま、重力に任せて落下する。


突き立てられたままの魔剣はヒュドラの体表をガリガリと食い破りながら血を吹き出させていく。


「ぺっ、ぺっ!!臭え、臭え!!!」


血を浴びたネロはその凄まじい匂いに顔を歪ませてしかめっ面になる。

すぐさまその場を離れ、屋根伝いに軽々と移動していく。


何故なら、さっきまでいた場所をヒュドラの竜頭、その顎門が大きく開き真上から叩きつけるようにしていたからだ。

瞬間、破裂するような衝撃と共に瓦礫と土が放射状に散乱され市街地にも矢のように降り注いでいく。


「おいおい………」


あんなもの食らえば言うまでもなく即死だ。大きな瓦礫は残っていた建物類を慈悲なくなぎ倒していく。


『白薔薇の盾よっ!!!』


『竜殺し殿、後は任せます!!市街地は我々に!』


突如として聞こえた凛とした声。

そこにはフローラ、ではなく彼女が認める部下4名がまだ若い少女ともいえる騎士達を連れて白銀の盾をまるで魔法陣のように配置している姿が。


白薔薇騎士団は多くは聖堂に集まっていたが、市街地にも展開していた、まだ経験が浅いか入団したての騎士達が残っていたのだ。

そこへ、フローラの指示を受けて聖堂周辺で生き残っていた騎士達が合流。更にはアイアノスの兵達も合わさってネロ達が駆けつけていた頃には市街地のほとんどの獣、屍者を一掃していたのだった。

無論、この雨はほぼ無制限に生み出すが故にあまり意味がないが……。


「そういや、あの団長様。図書館で簡易的に治療しておいたけど大丈夫かな」


ネロは飛びながら、とにかくこの場に駆けつけなければという焦りから背負ってたレオを裂傷を軽く血を止めて包帯で巻き、椅子に寝かせていたがもしかして彼らに回収されたのだろうかと考えてしまう。


「うわっ!おっとっと………、いや、いやいや!!無理無理っ!!!オルスト!助けてっ!?」


回復したらしい竜頭は再び魔剣を持ったネロを追いかけ始め、しかも今度は竜頭が増え7つの竜頭が怒涛の勢いで迫ってくる。

三つでもかなりきつかったのに七つの竜頭だ。

約倍だ、倍。


「おいおい、マジかよ。あいつ、体の表面を固くしやがった!ネロ、魔剣だ!あいつお前の魔剣狙ってやがる!!それ、捨てろよ!?」


「あ”ぁっ!?出来るわけねえだろ、俺の武器だぞ?!」


「んなこと言ってる場合かっ!!食われんだぞ!?」



口論しながら、ヒュドラの猛攻を凌ぐネロ。絶えず移動しながら弓を使い、なんとか竜頭の意識をある程度こちらに向けつつ、いつまでも決定打にならない苛立ちに舌打ちするオルスト。


「(おそらく奴さんは思考は独立しつつも核となる頭脳があるはずだな。多分………)」


オルストは上空に浮かぶ未だ目蓋を閉じたヒュドラの中心を見る。目蓋の上には何やら蕾のようなものが鎮座しているがおそらくそれかもしれない。


竜頭に矢を浴びせつつ、オルストは急転換しその目蓋あたりに矢を番え、放つ。

乾いた音と風精霊の支援により貫通効果を得た矢は真っ直ぐ突き進みヒュドラの中心にぶち当たる、筈だった。


風と煙が晴れる。そこにはーーー


「マジかい。結界張れんのか、アイツ」


よくよく目を凝らしてみれば、黒い霧なようなものが蠢きながらヒュドラの周りを覆っており、先ほどの一撃はそれに阻まれていたのだ。


「おわっ!?」


オルスタの立つ屋根が突如として爆散する。嫌な予感がしたから飛び退いたがそのままいれば巻き込まれていたやも知れない。


何もないところが爆発した。つまりは魔法によるこちらへの攻撃。

キュリアが、怒りに目を輝かせて魔法を放ったらしい。


今現在、キュリアはジェシカの操る『銀氷の絶乙女』とエストレア、リムによる反撃とレンヤによる支援魔法により、苛立ちを覚えていたところだった。






●●●






「くっ、ちょこまかと!!大人しくボコられなさいなっ!!」


「ジェシカ落ち着け、無駄に戦乙女に魔力を注ぎ込むな!」


「心配無用ですわ、お姉さま。錬金術師である私にはこんなにも素材があるんですもの、道具の作成には困りませんわよ!!」


「おまっ!国家予算で建設された建物の瓦礫をーー!」


ジェシカはいい笑顔で手に持った大粒のエメラルドを投擲する。いくつかはキュリアに飛んで行ったが難なく避けていく。あらぬ方へ飛んでいったものを含め、瓦礫に埋まったエメラルドはそれを核にして無数のゴーレムが生み出される。


「出ませい、ゴーレム達!」


一般的にイメージ出来る人形のゴーレムに、鳥型、動物型、そして『銀氷の絶乙女』達。

なまじ周囲にはヒュドラによって半壊、いや全壊した聖堂の瓦礫が転がっており、彼女の言う通り素材には困らないのだろう。


ただ、素材にしたせいで聖堂のあった場所は見事に更地になってしまい吹き荒ぶ風が黒い雨に打たれて遮るものがなくなってしまったが。


それにしても、とエストレアはジェシカの才能には舌を巻くばかり。エメラルドに核となる術式を刻みこんで後は本人の魔力なしで術式が起動、ゴーレムが作れるなど一体どういう思考によって成り立っているのだろうか。

事前に用意してあるならばわかるものの、今この場で魔力を込めて即席で作り上げたのだ。

その即席の術式入りエメラルドを更に砕き、投げて数百を超えるゴーレムの群れ。


作られた多くのゴーレム達はここにやってくる屍者や獣の残党を抑え込み、飛行できるゴーレムはヒュドラの周りを飛び魔力光による照射攻撃。


ジェシカの得意とする降霊術と錬金術を合わせた傑作、『銀氷の絶乙女』11体はキュリアに向かって突撃を開始した。

単体ならば、撃破されることを警戒したジェシカの指揮により二体がかりによる交代波状攻撃が行われたのだが…………


「ふん、舐められたものね。この程度でーーーーー


私が、討ち取れるわけないでしょ」


鎌を変形させた剣、いや形状からしてハルペーに似た剣を一振り。

獲物を振りかぶらんとした白亜の乙女達は微動だせず停止し、やや遅れて体が斜めにズレ落ちすべて打ち落とされた。


「なっ………!?」


「ジェシカ、後ろだ!!」


「あっ……」


エストレアの叫びで振り返る瞬間には剣が一閃されジェシカは倒れる、その前に。


「(間に合え!)紅流、破砕双剛掌!!!」


吸血鬼としての能力をフルに使ってジェシカとキュリアの間に割って入ると剣の柄に対し両手の掌底を踏み込みと共に叩き込む!!

衝撃によるソニックブーム、キュリアの膂力が合わさり大きな破裂音を伴いキュリアの体勢を崩すことに成功する。


「蹴り飛ばされたお返しだ。ぶっ飛べ、羅漢獄突!!」


零距離から肘による浸透勁。肘はキュリアの脇腹に決まり、鞠のように吹き飛ぶ直前にフードの辺りを掴み引き寄せ大きく上へと挙げられた右足が音を超えたかかと落としになってキュリアの頭部に突き刺さる。


二連撃により大きくのけぞったキュリアを胴回し回転蹴りで元聖堂外へ叩き出すと地面に落ちていた白銀の槍を手に取り、投擲。再び吸血鬼としての能力をフルに使って投げた槍に追いつくとその柄を視点にして蹴り穿つ!


「やった!!」


凄まじい轟音をたてて、土煙を上げる激突地点。煙が晴れ、その一部始終を見ていたジェシカは舞い上がって喜んだ。


「えっ………?」


そんな言葉が漏れたのは誰の声だったか。しかし、現実は非常だ。


「ぐっ………!」


「なかなかやるじゃない。久しぶりよ、こんなにダメージ負ったのは」


土煙の向こうでは肩から血を吹き出して膝をつくエストレアとそのエストレアの髪を乱暴に掴み、不敵に笑っていたキュリア。

髪を掴んだまま、近くにあった壁に押しつけ、引き戻し、剣で服を少しずつ斬っては叩きつけて痛みつけた。

惨たらしく殺す、というのは本当であったようだ。


エストレアが弱いのではなく、キュリアの纏っていた鎧の効果だ。変形させた大鎌キリエライトは壊れる寸前で瞬時に鎧状態を解除し、大鎌の状態でエストレアの一撃を防いだのだ。

そのまま帰す刀でエストレアを袈裟斬りに切り捨てた。



「お姉さま!!」


「おい、あんた!!突っ走るな!えぇい、速度向上!!反応強化だ!」


大型の鳥型ゴーレムに騎乗したジェシカがエストレアを助けようと向かい、舌打ちしながらもレンヤが魔法による援護がかけられる。


「あら、慕われてるのねぇ。返してあげるわ、さっきのお返しねっ!!!」


髪を引っ張ったままキュリアはエストレアをジェシカの方へ思いっきり投げ飛ばし、受け止めたもののジェシカの小柄な体では抑えきれず、そのままきりもみに転がってしまう。


キュリアは片手を掲げると黒紫色の魔力の塊が生まれ、渦を巻き、術式が起動する。


呪怨ヘイル・黒炎弾ブラックアウト


やがて黒紫色の球体は徐々に小さくなり、ピンポン球サイズになると上へ放り投げ、大鎌キリエライトで斬りつける。

そして、指で弾くようにジェシカの方へ向けると無数に分裂した闇色の弾幕が押し寄せる。


「迸れ、銀槍!!生命育む庇護の十字架(マルガレータ・ペイル)!!!」


ギュッと目を瞑ったジェシカの背後で祈りを捧げ独特の魔法文字ルーンを纏ったリムが手に持った十字銀槍を奇跡の詠唱と共に投擲。

複雑な軌道を描き、無数の闇色の弾幕は十字銀槍に集中する。


リムの持つ銀槍マルガレータは彼女らの後ろでゴーレムによって守られている枢機卿アナトが亡命する際に授けた聖なる槍。

初代白薔薇騎士団団長マルガレータが持っていたとされる槍は神々の一柱、生命の育みを司る豊穣の女神に捧げられた武具の一つであると言う。

守るべきものを守る、その意思の強さに比例して槍の鋭さは増し、その矛先は盾となって一条の流星となって走る。


互いの一撃は相殺され、再び複雑な軌道を描いてリムの手元に槍は戻ってくる。


「っ!」


自身の魔法を防いだ相手を見たキュリアは驚きの顔をしたが直ぐ様歪んだ笑顔を浮かべる。


「じゃあ、こんなのはどうかしら!!」


大鎌キリエライトは空を斬りつけるとそこから湧き出るように屍者達が地面から這い出てくる。

キュリアは湧き出てきた屍者達を再び発動した闇色の魔力の塊に引き寄せてぐちゃぐちゃに混ぜ合わせた。


「『冒涜の風、怨嗟の叫び。欠けたものを埋めてあげましょう、生きた生者の悲痛の叫びで空虚を満たせ』」


詠唱を伴う魔法の行使。先程とは違って対“軍隊”用の大魔法。いや、下手をすれば対“城塞”にも及ぶやもしれない。

見るだけで、精神が犯されるような冒涜な魔法。

クトゥルフとは言わないが、弱い人間が見たならば発狂するような、暗黒の球体がそこにある。ヒュドラもそこそこ不気味な存在だったがこれはそれを一つ超えている。


「『禁じられた冒涜の杯(パンドラズ・グレイル)』。あげるわ、聖女様?」


キュリアの指示により弾けた冒涜の杯は無数の青白い手に変わり、波動の如く押し寄せる。


「逃げろ、リム!!それを受けたら死ぬぞ!!!」


「駄目!避けたら、後ろのアナト枢機卿閣下に、フローラ殿に直撃するわ!!ジェシカちゃんのゴーレムでも防げないわよ!!」


迎撃するつもりなのだろう、リムは再び十字銀槍マルガレータを持ってエストレア、ジェシカの前に立つ。

渾身の力を振り絞り、槍を持つ袖が弾け飛ぶ。


「今一度っ!神よ、守護の力を私にっ!!」


「運命をここに定める!『円環の極矛マルガレート・ドラヴィタ』ッッッ!!!」


雄叫びを上げて今渾身の一擲。

槍は無数の手の中に吸い込まれ、激しい光を伴いながら突き進む。押し寄せる呪いを突き破りながら呪いと聖なる光が拮抗するものの、やがて押し返されて聖なる光を奪われカランと乾いた音を立てて地面に突き刺さる。


「ぐっ………!朝露に煌く御光よ、照らしておくれ……」


リムは槍の攻防が負けたと認識した瞬間、瞬時にタリスマンを取り出し、奇跡を発動していた。

瞬間、ドーム状に光が周囲を覆い冒涜の杯から漏れ出た手を阻む。


だが。


パリン、とヒビが入るとそこから蜘蛛の巣のようにヒビが入っていきやがてドーム全体がひび割れる。

ガシャァン、と砕け散る結界。

押し寄せる呪いの手。ここまでか、とリムは目を瞑り痛みを受け入れる。

冒涜の呪いの手は、リムを包みこむ。


「あ”!あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ーー!!!!!」


瞬時に全身を走る痛みと精神を侵して行くような感覚がリムを襲う。

粘着性のある液体の中で、強酸をかけられ、全身を切り刻まれればこんな感覚になるのだろうか。


膝をつき、崩れ落ちるリム。修道女の服はボロボロで見えてはいけない部分が今に見えそうなぐらいに原形がない。


「くそっ!」


レンヤは杖を持って走り出す。

この魔女は強い、自分たちだけじゃ勝てない。リムもエレンもあのお嬢ちゃんも助けなければ、と体が瞬時に反応した結果だった。


「あら、そのままいればよかったのに」


黒い魔力の塊がいつのまにか形成されていて弾幕の如くレンヤを襲う。


「ちぃぃっ!!」


「はい、ゲームオーバー」


「ぐあぁっ!!」


民家の壁に背中を強く叩きつけられて、口から空気が漏れ出ていく。

朦朧とする中、キュリアがとどめとばかりにまたも冒涜の杯を生み出している。

奇跡の使い手であるリムだからあれで済んだが自分が受けたら間違いなく死ぬだろうな、とレンヤは一人口愚痴る。


だが、いつまでも痛みがこない。いや、すでに死んだのか?と思うくらいにあっさりだったのかもしれないが、それにしても何も変わらないのはなぜなのか。


「ヒヒィーーーーーーン!!!!」


「なにっ!?」


冒涜の杯はレンヤの前に広がる空間の歪みにより止められている。そこから聞こえるのは魔獣の嘶き。

馬の形をしているが、体格はがっしりしていて黒い体を持ち、毛並みは女性の髪のようで美しくもある。


「幻影魔馬だと!?」




●●●





キュリアが苦々しく顔を歪める。彼女の魔法はお世辞にも魔法とは言えない。彼女の魔法は厳密に言えば物理法則に則った呪い、呪術である。

そして、幻影魔馬は物理法則を無効化する体質なため呪いの力はともかく物理的に効かない。


思いもよらぬ形で塞がれたキャリアを他所に空間を破って出てきた幻影魔馬はレンヤのそばで倒れていたエストレアに近寄るとその頬を舐めとる。


「ん、んぅ………。ラム、レイ………?」


その名を呼ぶと、ラムレイと呼ばれた幻影魔馬は嬉しげに鳴き、空間を湾曲させて敵であるキュリアを睨みつける。


「魔獣、予想外だわね……!っ!?馬鹿なっ!!」


キュリアは驚きを見せる中、突如として別の方向に視線を向ける。

そこでは体中から黒煙を上げて地面に落ちていくヒュドラの姿。その巨体が落ちたことで周囲に地震を思わせる衝撃が来た。


キュリアが目を話した隙にラムレイはエストレアとジェシカ、リムとレンヤをその背中に乗せてキュリアの前から消える。

直後に雨の如くキュリアに向かって矢が集中的に押し寄せた。


「調子に、乗るな!人間がっ!!」


大鎌キリエライトを振るい続け矢を的確に全てはたき落とし、屋根に登ると間合いを瞬時に詰めて射手であるオルストの首を狙わんとするが


「とっととくたばりやがれ、クソ野郎!!」


横合から詰めてきたネロが魔剣を振るい鍔迫り合う。

迸る雷光がキュリアの体を焦がしていく。


「おっりゃあああああっ!!」


「くそっ!!」


「呪怨黒炎弾っ!!」


ピンポン球のサイズの魔力球が至近距離でネロに打ち込まれるが魔剣に魔力を注ぎ込み発生した雷により相殺される。


「な、める、なぁっ!!!」


一閃。ただそれだけだがネロの体を崩すには十分過ぎ、加えて蹴りが魔剣の持つ手に突き刺さったことで遠くに飛んでいく。魔剣は聖堂奥にあった【深遠の神鉱】近くに突き刺さる。


「ネロっ!」


オルストが放つ矢をキュリアは弾き飛ばしオルストとネロの頭を掴み、立っていた屋根ごと下に叩きつけた。


「ごはっ!!」


「ぐがっ!?」


「終わりね」


パラパラと埃と瓦礫の一部が落ちる中、キリエライトを手に持って二人の首を断たんと振るうがまたしてもそれは防がれる。キュリアが感じたのは圧倒的な熱だ。

飛び退き、距離を取るとそこにいたのは小柄な妖精。

竜殺しのメンバー、ニアスだ。



「「ニアスっ!!」」


「今度は何っ!?」


「お待たせ、援護に来たよ」


「宮廷魔術師にして、研究術師の私がみせてあげる。焼き焦げなさいーー!‥‥‥‥いくよ‥、焔の魔手(フレイムバインド)焔環大嵐フレアストーム魔術式合成!魔導術学の深奥よ!『その手はあらゆる敵を引き寄せて、極熱の渦へと誘わん、天壌を焦がす熱の奔流よ現れろ!!』



ーー『火砕業焔(ヘルナ・セプト)天の柱(ヴァルグ)』!!!」



地を走る炎の火柱はあらゆるものを飲み込み、屍者達さえかき消してキュリアの体を包み込み、やがて大爆発を起こしたのだった。














ーーー


ーー




暴力的な破壊が市街地の一角で起きている。

キュリアがエストレア達と戦う中、メドラウトは目の前の怪物を相手にしていた。


「くそっ!!」


「ガアッ!!!」


何せ一撃一撃が桁違いなのだ。例えるならばメドラウトは木刀、相手のルディナは走行速度を超えて突っ込んでくる大型トラックぐらいの差がある。


少しでも触れようものなら全身の骨が砕けることだろう。

今のルディナは化け物だ。

爪による引っ掻きは遠く離れた建物ごとその爪痕が残る。

拳を叩きつければ、衝撃波は舗装した地面が大きく波打ち、砕け津波の如く破壊をもたらす。


生物としての反応速度も臨界を超えて目にすら映らない。


「ぐっ!!」


不意に横から来た衝撃で大きく吹き飛び、またその衝撃で市街地はクレーターが増えた。

鎧のおかげではあるがなんとか体勢は取り戻せたが受けた箇所の装甲が砕けている。おまけに腕も遂にイッタらしい。


「(潮時か………)」


メドラウトは時期的に引くべきだと判断した。

チラリと聖堂……今はもう形すらないがその方角を見、誘導することを考えた。


片手で大剣を待ちつつ、なんとか受け流すことを繰り返し、聖堂近くまで引き寄せることを成功させたメドラウトは思いっきり挑発すると、転移を行う。

空を切ったルディナは敵がいなくなったのを本能で感じ取り、次いで感じたのは敵意を基に地面を砕きつつ聖堂方面へと飛んでいった。







壊獣化ルディナは今回描写こそ少ないけど、単騎で王都の六割を破壊してます。え?弱い?土地が頑丈なだけ………ほら、神話世界作れるアイテムある土地だし………





主人公覚醒いつになったらいけるかな………


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