Chapter8-5
チャプン………
湯けむりに包まれ、湯船に身を預ける少女が三人。
一人は赤い髪、翡翠の瞳を持ち、しなやかであり完成された肉体を持った少女。
もう一人は青みのある黒髪、褐色の肌、長く伸びたエルフの耳。いわゆるダークエルフと言われる種族。
もう一人は……金色の髪、深みのある慈悲深き蒼の瞳を持った、一部が異様に大きく実ったものを持った妙齢の女性がいた。
「風呂に入るのは何日ぶりだろう………」
「こ、これが風呂……なんですね」
「ふふふ、お疲れ様エレン。私も教会勤めでなかなか湯船に浸かることができないから今はいいわね」
上から順にエストレア、イザルナ、リムの三人である。
彼女らは泥関連の一連の事件が終息したことを知り、疲れを取るため、銭湯にイザルナとイルナを連れてやってきたのだ。因みにイルナは同じように同行していたジッドらに預けて男風呂の方にいる。
問題を起こさぬよう言いつけてあるから大丈夫だと思うが、人間とダークエルフだ。間違いなく何かしらやらかすだろうなとほぼ直感で感じ取っていた。
「でも、子供とはいえダークエルフを引き取るだなんて私青天の霹靂ですわ。エレンさんはスゴイのね」
「あ、そうか。リム殿は……神聖国、元七聖女出身でしたね、やっぱりそういうことがあるんですか?」
「ええ、建前は上司のセクハラに嫌気がさして七聖女を抜け出しましたが……実際は耐えられなかったのです。ご存知ですか?15年前の戦役で囚われになったパンドラ側の魔族陣営のその後の事」
「いや、知らない。でも、聞いてもよろしいか?」
ポツポツと語られる出来事。
そもそもパンドラ戦役の発端は終戦から3年前、時の聖女が魔族の王、アレクサンドル王に連れ去られたことが始まりだった。
連れ戻そうと、教皇と枢機卿らが各国に軍を出すよう通達を出して連合軍が結成された。
軍の筆頭として、まだ若き剣聖アーサーが総大将を務めアレクサンドル王がいるパンドラへ進行を開始した。
当然、魔王側も何もしていないわけがなく海岸線に砦を築き防衛を開始した。これが始まり。
その後は何故か連合軍に都合の良いように魔王側の戦線が崩れ始め、最終防衛戦線である白亜城アクベンスにまで後退したという。
「魔族と言われる者たちは、かなり曖昧でした。その頃の私はまだ10になるかならないかの頃でしてあまり当時は知りませんでした。しかし、捕らえられた魔族の一人が当時、私のいた本国の教会に連れてこられて来たのです。終戦間近のことでした」
彼女は語る。
連れてこられた魔族は皆『女性』でした。それも、軍に将校としている者たちではなく、パンドラでも集落として生活していた獣人が主でした。
彼女は見てしまう。
悍ましい、聖職者を名乗りながら欲に身を任せ、拷問の名を借りた肉欲の宴を。
その頃から彼女の体は周りの子たちと比べてかなり早く成長しており、早くから加えて奇跡を行使出来、このままなら自分もいつかこうなるのではと危惧した。
幸いなことに、聖女が連れ去られ祭祀の役がいなくなったことで『奇跡の使える』者たちを教皇庁が探していることを知り、教皇庁へと赴き『聖女』の後釜として自分を含めた七人がその役に立つことになり後の世に七聖女と呼ばれることになった。
が、それで終わればよかった。
何故なら、七聖女と呼ばれた彼女たちも既に闇に飲まれていたから。
唯一、リムだけはそうではなく僅か一年ほど聖女を務めたが急激に成長した己の体に向けられる獣欲に耐え切れず当時神聖国に訪れていた白薔薇騎士団団長マルガレーテに匿われるように、逃げるように神聖国を出た。
今は同期である彼女らがどうなったか定かで話はないが恐らく教皇自身はこのことは認知していないと思われる。司祭らの独断行為であると見ていた。
道中、マルガレーテより槍術を伝授してもらい十字銀槍クシャナ・マリルを譲り受けた。
その後はエストレアの、ジッドらから教えてもらった通り、城塞都市シェアトに冒険者として登録。
ネロやフレニア、ジッドらの今の竜殺しの称号持ちと同期として冒険者として、或いは修道女として働く日々を送っている。
「い、いや、なんというか大変、だったのだな。それしか言いようがない」
「ふふ、昔のことです。今は、今で楽しくやれてますし………丁度いいおも、もといお話相手もできましたし」
「今おもちゃと言わなかったか!?」
「うふふふふ」
「ひ、姫様、この人怖い」
今、リムは目の前にいるダークエルフの少女にキラキラしたものを向けていてそれがギラついているからイザルナはエストレアの後ろに隠れてしまう。
「まぁ、それはそれで置いておきましょう。ここから女同士で少し真面目に聞きたいことがこちらにあります」
ニコニコと笑えない話をした後で真面目な顔でこちらに対して眼差しを向けてくる。
先ほどのような、変態的な人物ではなく一人の竜殺しとしてエストレアに聞きたいことがあるようだ。
「件のクライアでの出来事についてです。ジッドさんやオルストさんに聞きました。地下遺跡最深部にて泥の獣と戦ったと。そして、冒険者ギルドの裏手に幻影魔馬を己の乗馬にしている。はっきり言いましょう、貴方は何者ですか?ウルマトで私が貴方を運んでいる時明らかに重傷だったのに既に治りかけていた。奇跡も魔法も行使していない貴方が、です」
「何者、か。何者………なんだろうな。分からないんだ、何せ生みの親は死んでいるし養父母の元を去ってしまった。自分は何をするべきなのか何もわかってない」
自分はどういう人物なのか。吸血鬼という種族なのは知った。だが、自分に与えられた役割が自分な見つけたものではなくマリウス・シオンという胡散臭い魔法使いに示されたもので、はっきりとしたものが未だ分からない状態だ。
「それにもう一つ気になっていることがあります。背中向けてくださいますか?」
リムに言われ、彼女に背中を見せる。湯けむりに包まれ湯船に浸かっている状態だが縁に体を預けるようにして背中を彼女に見せた。
「やっぱり………。これは……」
「私の背中に何かあるのか?」
「ええ。クライア以降、貴方の体から不思議な力を感じていまして。この際確かめたかったのです。貴方は……貴方の親のどちらかは聖職者だった可能性がありますわ」
「一度鏡で自分の背中を見てみるといいですね。貴方の背中には聖痕が刻まれているのよ」
●●●
「ちっくしょおおおおおおォォォォォォォォ!!」
バン!!!
「どういうことよ!!!!」
「ギルドマスター、落ち着いてください」
「これの!どこが!落ち着けるというのよ!!!」
城塞都市シェアト、冒険者ギルド本部ギルドマスターの部屋で半狂乱で喚く黒い狐人の女性ルディナは怒りで我を忘れかけている。
既に届けられた報告書を見たその瞬間に真っ二つに引き裂きその上で地団駄を踏む。
秘書を務めるルイはビリビリに、グシャグシャにされた報告書を手早く回収して修復の魔法をかけ元に戻す。
「まあ、気持ちは分からなくはないですけど………」
「分かってたまるか、馬鹿ぁっ!!」
ゴシャァンッ!!!
背後の窓ガラスが彼女の癇癪による拳がぶつかり粉々に砕け散る。
はー、はー、と荒く息を吐きながらガラス片が突き刺さる拳を振る。
キラキラとガラス片が太陽の光に照らされて虚空に散る。
「泥が解決したと思えば!泥の痕跡を残して霊廟の遺体が持ち去られ!?それが原因で懲罰委員会で私が出席しろと!?ふざけるのも大概にしろ!!」
「実際、私もこの件は既に終わったものだと認知していましたが………唐突すぎますね」
「アーノルド卿には悪いけど、懲罰委員会はボイコットさせてもらうわ。王宮にも既にこの件は、『子供の失踪した事件を追う』事に関して既に終わってるもの」
「モートハク公がうるさいと思いますが?」
「無視よ、無視。そもそも冒険者ギルドは王宮の、貴族の傘下ではないもの。冒険者ギルドは冒険者ギルドとして機能しているから王宮の要求に応える必要はない」
言っていることはわかる。相当共に。
だが、ギルドは泥に関して明確に分かっていることしか解決に乗り出さなかった。
ボガートが泥に関わり、あまつさえ実際に子供を誘拐しようとしたことが判明している。
そのボガートがクライアに逃げ込み、その前に巨人騒ぎで冒険者が駆り出されていたためにまとめて収束を図ったに過ぎない。
実際に、地下遺跡最深部にて泥の獣を倒した後行方不明になる子供たちはなく、解決したと思っていたのだが………。
「今回の墓荒らしで見つかった泥と私たちが集めた泥とは同じものなのかしら?」
「どうでしょうか。ですが同じである可能性は低いかと。地下遺跡での研究設備で見つけた実験体およびその泥は皆始末したはずです。漏れ出したとは考え難い、かと」
「うーん。となると厄介ね。否定できる要素が揃っていても、しらばっくれてもここぞとばかりに痛くない腹を突かれるわね。癪だけど、出席せざるを得ないかぁ」
「仮に出席されますと……仮面舞踏会兼合唱鑑賞会に被りますね。良かったですね、舞踏会に出る必要なくなりましたよ?」
「損な役回りだわ……」
ゴン、と机に額を打ち付けてそのままグデーと伸びる。舞踏会に出るのも嫌、懲罰委員会に出席するのも嫌、どちらも嫌なので不貞腐れてしまった。
「諦めてください。どのみちこの事件は泥沼にはまったようなものですから遅かれこうなると思いますよ?」
「なら、何人か巻き込むか。泥関連で三人ぐらいか?」
「それならリストはまとめてあります「いつ作ったの?」今ですが、何か?」
有能なのは結構なのだがこうも涼しげにこなされると逆に怖くなる。
というか作る暇あったの?という疑問は捨てる事にする。この女、少し目を離すだけで書類作るのはお手の物だからだ。会議の資料から決算書まで、王都に送る書類や逆に地方のギルドに連絡まで本当に『少し目を離すだけ』でやりこなす。
加えて戦闘能力も引退したとはいえ折り紙つき。
見目もいい、所作もいい、良いところづくしである。
そう言えば、他人の背後に立つのは良いらしいが自分の背後に立たれると反射的にぶちのめしたくなるとか言っていたような……。
特に背後に立たれた上に衣擦れの音や金属音などが聞こえるともう体が勝手に動くと言っていた。
「一流の中の一流たる隠密は、なんでもこなせないといけないですからね」
「今、隠密って言った?!言ったよね!?」
「さぁ?何のことでございましょう?」
「私の耳、舐めんな!今、バッチリ聞いたかんな!?」
「まぁまぁ、どうどう。はい、こちらがリストになります。とは言え、竜殺しの方々が泥に当たりましたので必然的に絞られましたが……この三人が宜しいかと」
「釈然としないわ………。ふぅ…………、どう思考しても彼女だけは連れて行く必要があることは変わらんな。後は……怪我の程度を考えて、精霊契約してる弓使いと………」
リストを見るルディナは、既に確約されたエレンとオルストの名がある。
後一人、誰にしようかと悩んでいると一人の名を見つける。ちょうど、帰ってきていた頃だろう。
「ジウスティアの妹を連れて行くか」
魔剣を持つ彼女なら、奴隷商館での出来事も報告できるだろう。
それならリムやニアスが適任だろうが………あいにく彼女らは別件で王都に行く事が決まっている。
フレニアか、バイドなんかを考えたがフレニアはタイミング悪く依頼で発った後で、バイドは極度の疲労を理由に教会で治療中だ。
となると消去法でネロかジッドかのどちらかになるが……ジッドのパーティーは泥の獣との戦闘で休養が要する状態なためしばらく依頼が受けられない。
なので、どう転んでもネロに行き着くわけだ。
目配せすると、彼女ルイはリストを回収し退出する。
しばらくすると下の方から「はぁっ!?俺が!?」という声が聞こえてくる。受付を任せてあるエリザの声も聞こえることから依頼を終えた後、手続きの時に手渡したのだろう。
机をトントンと指で突きながら、散乱するガラスを見る。
「………。」
癇癪を起こして散らばった床であるが流石にギルドマスターの部屋としては如何なものか。
手をかざして修復をかける。
みるみるガラス片は時間が巻き戻るように、窓に吸い取られるように集まり元のガラス張りの窓に早変わり。
「はぁ…………、次から次へと…」
もう何日このギルドマスターの部屋を自室がわりにして寝て起きてを繰り返したか。
自分の家にもう何年も帰ってないくらいの感覚さえある。しかし、家に帰っても出迎えてくれる家族があるわけでもない。
黒色の艶のある狐の尾を揺らして不満げにドアの向こう側を見ていた。
●●●
「はあ………」
エストレアは恰幅亭の自室にある姿見に背中を丸出しにして己の目で自分の背中を見る。
その背中には確かにコンパスの針のような形に、具体的には右肩の下あたりに刻まれていた。
僅かにそこを意識して魔力を込めると青い粒子のような光が形を縁取るように光り輝き、やがてガスバーナーのような吹き出る感じに魔力光が迸る。
魔力を込めるのをやめると光が収まり、ただの刻印のみが残った。
「聖痕、か」
そう呟くとネグリジェに着替えてベッドに横になる。
イザルナとイルナの二人はアンナの元に預けてきた。
少し、一人になりたかったのかもしれない。
(マリウスは何も教えてくれなかった………)
そう思うと同時に頭をブンブンと振り否定する。
それはただの甘えなのだと自分に言い聞かせる。
あの魔法使いは、こちらが聞いてもないことを勝手に言うことはしない。つまり、訪ねてないことをベラベラ言わないことは自分が質問しなければ何も言わないことと同じ。
いや、今回は遅かれ早かれ己自身で気づくだろうと算段していたに違いない。
リムの、彼女の言う通りならばクライア以降で気づいたなら。
恐らく、アールヴ・アグル神で貰った贈り物の可能性が高い。
豊かな胸元から金属製の円盤を取り出す。
九曜紋の彫られた中央が二等辺三角形にくり抜かれた燻し黒のそれ。
贈り物の一つ。彼は、同じような存在から受け取り完成させろと言った。
だが、エストレアはこれに見覚えがあった。
(どう見ても刀の鍔だろう。そして、ああ。この、欠片になってなお衰えぬ、禍々しさを覚える負のエネルギー……覚えているぞ)
今手にして確信に至る。
遠く遠い彼方に置き去りにした、自分が継承した紅の祭祀品。
この世界に生まれ、刀がないことに落胆はしたが完成させれば己の手に戻ってくるのか。
「旅の果てに手に入れられるのか。あの祟刀を……、舟切兼嗣よ」
戦国の世でかの織田信長の鉄甲船を真っ二つにした希代の切れ味を持った呪われし刀。
その鍔をコイントスするように指で弾き宙でクルクルと回り出す。
パシッと掴み、それをベッドそばにある机の上に置くと背後に人の気配がする。
振り返れば、思った通りの人物がいた。
「私の心が読めるみたいじゃないか、マリウス」
「うーん。ほんと、ドッキリが通じなくなってきたなぁ。まぁ、いいや。ちょっと真面目な話がある。聞いてくれ、王女殿下」
いや、彼の登場は初めてあった時からしばらくは心臓に悪かったが、今では気配と言うよりは空間が歪んだかな?という違和感で判別している。
それはさておいて。
こちらも聞きたいことがあったと言えば彼はこちらを先に聞いてほしいと言ってきたので承諾する。
そして彼は懐から一つの水晶を取り出し、魔力を注ぎ映像が映し出される。
ーーー
ーー
ー
『キュリア、首尾の方は?』
『えぇ、順調よ。白薔薇の騎士団が節穴で助かったもの。お陰で『母体』は手に入ったわ。後は、『深遠の神鉱』を『母体と組み合わせて』………』
『ふむ、そちらは順調か。こちらもほぼ完了している。ただ双児が遊んでいるみたいでね、必要魔力リソースが足りない。転移装置が使えないから万が一、何かあっても私らは助けに行けない、そこは留意してくれ』
『勿論よ。完成した暁にはこれを使って転送するわ。後はそれを使って貴方の仕事になるわね』
「ならばよし。仮面舞踏会までおよそ5日後だ。宝物庫へのルートは下々に命じて影から調査している。君は彼らの案内に従い、宝物庫に進め』
『私からは以上だ。ヴォルバート閣下より言伝を預かっている。『良き結果を期待する』と、それに恥じないようにね』
『えぇ。分かっているわ』
ーーー
ーー
ー
「これは………」
「見ての通り、現魔王派の幹部が今度開催される舞踏会で何かやらかすつもりだ。5日後には君も王都にいるはずだから注意してくれ。その時僕は君の助けになれない。まだ、その時じゃないからね」
水晶を霧散させながらマリウスは目を伏せ首を振る。
彼はエストレアの補佐をするといいながら実は現魔王の側近中の側近としての面がある。
つまり、ここで下手に介入すればエストレア自身にもマリウス自身にも悪影響を及ぼすことを考慮した上であった。
「待て、そもそも私は王都に行くなんて一言も………!「いや、君に縁のある子が明日に来ると思うよ」えっ?」
「まあ、王都に関しては以上だ。えぇと、後何が……、あ!そうだ。殿下、君は身体のどこかに刻印があるはずなんだけど、気づいたかな?」
そして、王都の話題が終わるとすぐさま次の話題へと移る。ちょうどエストレアが聞きたかったことが彼の口から出たことで少しだけ荷が降りた気がした。
「これのことか?」
彼に背を向けて、魔力を込め、魔力光が漏れ始める。
「そうだよ。いやー、良かった、良かった。発現しなかったらどうなるかと思ったけど無事発現したんだね」
エストレアは彼に尋ねる。これは一体何かと。クライア以降で他の人から指摘されたことを言うと彼はにっこりと笑う。
「それはまさしく聖痕だよ。正真正銘、遺伝による本物さ」
「読んで字のごとく、親から子へと血の繋がった、確かな縁だけしか発現しない特別なものさ。それをアグル神が少し書き換えたけどね。そしてーーー
それは君の母君より受け継いだものだ。アグル神は発現を少し早めて目覚めを促しただけさ」
もうついていけない。
だが、この聖痕が今は会うことさえできない亡き母の証であると知ると自然と目尻に大粒の涙が浮かぶ。
「マリウス……、聞きたいことを変えたい。頼む、少しでいいから……母について教えてほしい」
「御意、殿下」
マリウスは結界を貼り音が漏れないようにこの空間を遮断する。
そして、机近くの椅子に座るといつの間にか取り出したキセルを吐き静かに語り出した。
「そうだね、僕もあまり彼女と彼の出会いはよくわからない、けど…………先ずは彼女の名前からだね」
「彼女は、聖女と呼ばれていた。しかし、そう呼ばれても民衆は誰も彼女を崇めたりしなかった。彼女の名前は『アナスタシア』。灰を被った修道女なんて呼ばれていたかな。
そして、父親の若い頃に一度きりの過ちで生まれた子こそが彼女『アナスタシア』なんだよ」




