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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第1章 目覚めの王国
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Chapter7-1





空いている部屋も閉じられている部屋もくまなく捜査された。

鍵がかかっていればネロが蹴り飛ばして書類や資料などを回収していく。


外では既に死んでいる奴隷やこの商館の主人であるクラトン翁の遺体が運び込まれシートに包まれて安置されていた。

積み重ねられた資料をネロとルディナは一枚一枚丁寧に、素早く見ていく。商品の受領表、取引先の連絡リスト、奴隷たちの健康表、etc………。

ニアスとリムは外から見た商館の間取りとは別に存在する隠し通路等ないか奇跡と魔法を使い捜査中だ。


「なぁ、マスター?この、最近の奴隷入荷リストなんだけどよ………。」


「なに?」


「ほら、見てみろよ。ほんの二ヶ月前に売りこまれた双子の奴隷、まだ出荷されてないんだよ。だけど出荷されてないし、ましてや受け取ったという記録が一切ない。おかしいと思わねえか?」


「妙だな。受領表には記録されているにもかかわらず出荷及び管理表にはどこにも記録されてない。それ以外のものにはちゃんと記録されている。」


「…………訳ありのトンデモ物件か?」


「の、ようだな。」


「クラトンの爺さんはウチも知ってたけど取引先は見込みのある奴は貴族じゃなくて職人の弟子として売ってたみたいだな。それ以外は風俗、使用人と、結構な横手で売ってるみたいだ。あと、これ。」


「そうだ、この街の唯一の奴隷扱う商店だったからな。私も知っている人だった。だからこそ、違和感がある。」


二人は記録の中で違和感を感じ取っていた。ここまで丁寧に記録を取り、保存していたのにもかかわらず最後の双子だけは記録も何もなかった。

ネロから手渡された資料を見たルディナはしかめ面になる。


「クラトンの爺さん、ボガートと繋がってたみたいだぜ?双子以外の年若い奴隷はボガートから仕入れたみたいだな。」


「死人に口なしというが………残念だ。」


目を瞑り、ルディナは心底失望したというような表情をする。今、容疑としてかけられているボガートとここの主人と癒着している疑惑が浮かんできたからだ。そんなことをしていると2メートルくらいの大男、ジルが彼女達の背後に現れる。


「何見てんだ?」


「ジルか。このリストにある双子の姉弟の記録が一切なくてな。あと、新たな疑惑もな。」


「双子、だと?」


驚いたような、探していたものを見つけたような、そんな顔をしたジルを横目に見るルディナを他所に彼はそのリストを奪うように手元に引き寄せた。

それは自分が知っているかのような………。


「知っているようだな?」


「ああ、俺たちがクラトンの爺さんに預けた。あの騒ぎの日にどうなっているのか知りたくてな。足を運んで見ればあの騒ぎだ。」


なによりーー、ジルが言った言葉は驚愕そのものだった。少なくともこの面子においては。


「この双子はーーダークエルフ、魔族の子供だ。」



ーーー


ーー


ー



「がっ!?」


ガンっ!


ジルが勢いよく壁に叩きつけられる。胸元を締め上げられ呼吸が苦しくなる。

ジルの発言により即動いたのはルディナだ。

ネロでも目で追えぬ素早さでジルの胸元を片手で持ち上げて壁に背中に押し付けた。

残る片腕で、大斧『陥斧ルディス』を持ち今にも振りかぶりそうな勢いだ。あんな体躯なのに体格差を物ともせず怒気とも言える顔でジルを睨みつけている。


「貴様、何故それを隠してた………?この街に、私の、いやギルド本部の膝下で魔族がいた?おい、妄言をいうのも大概にしろよ?」


目が座っている。こういうのもあれだが本気(マジ)だ。


「マスター!?」


「お、おい!?ここでヤる気か!?リム、ニアス抑えろ!!」


「うん、マスター落ち着く。『魔法の鎖』」


ジャラジャラと青みのある半透明の鎖がルディナの体に巻きつき拘束する。離せと暴れるのでさらに追加で鎖が巻きついていく………のだが。


「んっ………、んぁ…くぅ!」


「ニアス、その縛り方は………色々と辛くないか?」


具体的には言えない。うまい言い方がわからないから。が、見た目は獣人の幼女で鎖に巻きつかれている様はエストレアでさえ目を背けたくなる背徳感が。

敏感なところが擦れるのか、少々苦しそうにもがく。顔が赤いのは何故なのか。

正直、亀甲縛りよりエロい。ほら、一部の兵士たちが前屈みに……


(ロリコンめ………。いや、年齢を鑑みれば……でも、やはり犯罪だな。)


「うん。やりすぎかと思うけど……面白いからこのままで。」


「ギルドマスターはキレかけると並みの英雄ではないのでこうしないと止まりませんから……。」


愉悦気味に口を歪ませるニアスとこめかみを抑えてため息をつくリム。


「やべぇ、マジで死ぬかと思った……。てか、俺悪くねえよな?ギルドなんてとうの昔に辞めてるから関係ねえよな?」


「いや、流石に衛兵に届け出ろよ。不法入荷になるだろうが。」


ネロは解放されたジルに近寄り介抱している。

ちゃんと届かなかったことに対して元冒険者に注意もかけている。

エストレアは未だ雁字搦めになっているギルドマスターを他所に辺りを見渡す。


建物の作りとしてはこのフロアすべてケヤキという贅沢なもの。

木造建てはいい。火に弱いという弱点はあるが湿気を適度に吸い、吐き出してくれる。

奴隷たちがいた場所はランク付けごとに部屋が決まっておりランクが高いほど相部屋だがベッド付きの六畳の部屋があり低ければ檻の中だ。が、檻でも地べたではなくきちんとそれなりの広さのある部屋の中でケージの中で暮らしていたようだ。


それも、今では荒れ果てているが。

おびただしい血痕、引っかいたような爪痕とイカ臭さある体液の匂い。

資料によれば、男女ははっきり分けていたらしく惨たらしさに差があるのは明白だった。

スン、と鼻を嗅いでみると僅かな空気が地下に流れるのを感じ取った。

地下があるのはここに踏み入れた時と捜査を行っていた時に既に把握済みだ。


手当たり次第に壁や床をノックしていく。

外に面している部分を除き柱と柱の間の壁を念入りに。

床は流石に勘に頼るしかない。建築様式が職人によって違う為基礎は〜とか地盤がどうのこうのとかいうレベルになるので変に考えるよりなんとなくでいい。


「なにやってんだ?」


「見ればわかるだろう。隠し通路を探してる。」


「でも、ここの中にはそれらしいものはなかった。」


ネロが問い、答えるとニアスはエストレアに対して重ねて答える。


魔法を使ってまで探したのに見つからない。

それもそうだろう。音響等使っていて見つからないならないのだと主張するがまだそれは早計だと思う。


(壁にはないな………。となれば床しかない。)


埃塗れの床だが比較的新しいものだ。張り替えたのだろう、少なくても一年を超えてはいまい。

膝をつき、感触を手で確かめる。


ーここでもない


ーーここでもない


ーーーここでもない


感じろ、違和感を掬い取れ。

そう念じながら、商館の床を叩いていく。

ギィと軽い音がなると軽く押してみる。固い感触、ハズレだ。


それを繰り返す都度、変化があった。

何か、音が聞こえたからだ。敏感な耳はすぐさま捉える。床に耳を当て、周りに『静かに』とジェスチャーを。

浅い、けれど早い呼吸音がかすかに聞こえた。同じように掠れるような咳も捉えた。

そして、本当に微かだが………ビチャッという咳と一緒に吐き出す音が聞こえた。

呼吸の音の響きからしてこの真下だ。変に折れ曲がるような音の感触からして入り口はエストレアから見て右隣、ちょうどそこに書斎室がある。

資料が置いてあった場所なので一度は入ったはずだ。


「なにか見つけた?」


「ニアス、リム、書斎だ。書斎を念入りに調べて欲しい。」


「え?『早く!!手遅れになる前にだ!!』わ、わかった。」






●●●








結果から言えば書斎を調べに調べたところ、本棚の一部が妙に突出していたのを軽く押してみると本棚が移動して移動した、露出した床が重々しい音と一緒に開き階段が出現した。


人一人通れる程度の入り口。わずかに湿った空気。風が弱くも存在し地下にいるであろう彼ら(・・)が酸素不足で死ぬことはないだろう。

階段を降りる。階段の下に直接部屋の入り口があり、ノブをひねってみるとすんなり入ることが出来た。


そしてーーー


薄暗い空間の中。

息遣いも微弱で二人で肩を寄せてその空間の隅に縮こまるようにいた。特に弟と見られる男の子は誰が見ても生命の瀬戸際にいるのは明白であった。




「担架だ!担架もってこい!!子供2名を確保!」


エストレアは叫ぶ。それを後ろから見ていたルディナは状況を知るや上にいる衛兵や冒険者達に指示を飛ばした。

エストレアは彼らの前に屈み込み、元気のない一人の首に手を当て脈を取ろうとする。直後に弱々しくも払いのけようとするもう一人。

二人のボロ布越しに見えたのは濡羽色のショートにやや黒ずんだ茶色毛のある肌。

妖かしく光る鬼灯のような赤い瞳は知性と隠された狂気を内包する。そして、特徴的なエルフ耳と言われる尖った耳。

白磁のようと言われるエルフとは対照的な姿はまさしくダークエルフという存在に他ならないだろう。


エストレアは先日出会ったマリウス・シオンの別れ際の言葉を思い出した。


ーー『お願いがあるんだ。あの場所の地下深くに匿われているはずだよ、良くも悪くもね。

願わくば、君が所有権を手に入れるといい。これは僕からの最初の導きだ。同胞の双子を探しなさい。きっとこれから君の力になってくれるはずだよ。』


(この子達が………私の力に?)


「心配しなくていい、もう大丈夫だから。」


払いのけられた手を優しく掴んで頭を優しく撫でてやる。その直後に大きな板を運んできた屈強な男二人が弟と思われる弱った方を抱き抱え板に乗せて地上へ向かっていった。

戻ってきた彼らにエストレアも「大丈夫だから」と語りかけながら抱き抱え同じように板に乗せられていった。

この部屋は彼らしかいなかったのだろうか?こんな場所に監禁みたいに隠すとは。

ただ放置とはいかなかったようで粗末ながら食べ物はあったようだ。



ーーだが、保存のきく干し肉、干しパンだけであったようだ。




当然、そういう環境に置かれればいざ体調を崩した時悪化しているのは目に見えている。だから、男の子の方は生き絶え絶えの状態だったのだから。



『治癒使える奴居ないか!?』


『おい、道を開けろ!!奥に五人だ!!』


書斎の地下のことがわかったことで改めて片っ端から調べていた衛兵や冒険者達の声が聞こえてくる。

まだ、無事な奴隷達がいたらしい。


周りを見渡していると背後からギルドマスターのルディナがやってくる。


「エレン、今日はここまでだ。よくやってくれた。」


最後の言葉の意味はなんだろうか。

疑惑だけで終わるはずだった、調査が生き残りがいたことで進展したことか、それとも単純に協力に対してか。

階段を上りながら、ダークエルフの双子がいた部屋をもう一度視界に収めた。詳しい真相は、彼らから聞くことが出来るのだろうか。

いや、子供とはいえ魔族とされるダークエルフだ。魔族があると聞いてブチ切れかけたルディナが穏便に聞き込みをするとは思えない。


もやもやした気持ちのまま、現地の検証は終わりを告げた。

これからギルドに戻り、報告書を書くことを帰りの馬車で聞かされた。

更にルディナの話によれば生き残りの奴隷達は全員子供だったそうだ。最近の泥事件とも無関係とは到底思えないのは明白だ。

ただ、全員疲労困憊で、三人ほど今すぐ治療を施さねば死ぬ可能性があるらしい。そのため、ギルドの一室を治療室にし、治癒の使える者や薬師、医師を集める予定らしい。

死亡していた奴隷や、クラトン商会の主人に関しては衛兵達が回収して後日埋葬するとのこと。遺体の検査をしようにも状態が悪いため完全に悪霊化する前に法的に埋葬するそうだ。


ギルドマスター、ルディナとの会話が続いているがエストレアは既に窓に目を向けて別のことを考えていた。無論、あの双子のダークエルフのことだ。

あんなに幼い子供が、自分の力になると言ったマリウス・シオンにも詳しく聞かねばならないと一つ心に決めた。


西日が傾いて、オレンジ色の空がただちょっと眩しかった。




●●●





「んぅ……………。」


明け方。昨日のことを終えて下宿先である恰幅亭には戻らずギルドの宿直室で報告書をまとめた後、寝落ちしたらしく、宿直室でエストレアは目を覚ました。

外はまだ薄暗く、わずかに日の光が差す。


「寝て、しまったのか……。んっ!」


肩や背中がバリバリと音を立てる。 その際に毛布が足元に落ちパサッとわずかに埃が舞った。誰が掛けてくれたのだろうか。植物をモチーフにした刺繍は何処かアラビアンな感じがする。

見れば同じくしてネロとニアスがソファーで仲良く寝ている。妖精族であるニアスの頬はマシュマロのように柔らかそうでツンツンと突っつきたくなる。


……欲望には勝てませんでした。エストレアは少しだけ悪戯心が働きニアスの頬を指先で軽く押してみる。


「んー、ん。」


触られたのが嫌なのか一緒に寝ているネロに更に抱きついていく。


「ううん、ん。」


嫌がるようにネロは体を動かすものの、抱きつくニアスは居心地良い場所を求めてグリグリと頭を押し付ける。最終的にネロのお腹のあたりに頭を埋めてスースーと寝息を立て始めた。


「あんまり意地悪はしてはダメ。慣れないことをして疲れているから休ませてあげて?」


背後からかけられた声に振り向けば修道服を纏った美女、リム・カタールが替えの毛布をいくつか抱えて入ってきた。

それにしても、本来大きめに作られている修道服を押し上げる双丘はいつ見ても圧巻。女性として複雑な気持ちだ。感覚的に残る男性の感性が目に焼き付けろと訴える。そんなことをしたところでこの身は既に女性なのだし第三者から見れば百合の花が開きかけているだろう。


「ふふ、エレンちゃんも飲む?実家(教会)から送られたのだけれど香り高い紅茶が手に入ったの。眠気覚ましにどう?」


「有り難く頂戴しよう。」


リムは慣れた手つきで紅茶を入れていく。

芳醇な香りが室内を満たしていく。ほのかに甘い香り。けれど紅茶らしいお茶特有の香りが鼻腔を通り抜けていく。

彼女が持ってきた毛布を膝にかけて白磁の質素なカップに十分に蒸らした紅茶を注いでもらい受け取る。


「これは………。プロイソンの一等茶葉、か?」


「惜しいですわ。プロイソン&ルリンメリアの熟成一等茶葉だそうですよ?」


「なぁっ!?」


プロイソンもルリンメリアも地名を表す言葉でこの世界における紅茶の産出地でもある。他にも産地はあるものの、とりわけ有名どころだと上の二つしかない。

コーヒーという似た飲み物のライバルがあるが大昔から伝統を受け継いだ二大筆頭に敵うわけもなくトップシェアとなっている。


プロイソン産の茶葉は香りが高く、上品な渋みがありまた癖のないフレーバーな清涼感を持つのが特徴だ。


ルリンメリアの茶葉は神聖国が抱える紅茶産出地ルリンメリアから。香りは弱いが甘みがあり独特のモルティーさと口に含むと舌に転がる黒糖のような甘みが上がる。

さて、エストレアが変な声を出したのは彼女が持ってきたこの紅茶の茶葉。上二つの二大茶葉を産出し、商いをする商会が年に一度だけ合同で共同製品を作るのだがその商品はわずか30個のみ。

それだけではない。その値段も法外だ。茶葉100グラムに対して金貨250枚というとんでもない価値がつけられている。

紅茶にも旬というものがある。その時期に合わせて作るのだが、こんな値段だとしても富裕層の皆々は大安売りに群がる主婦方のように飛びつき先着順に買っていくのだ。なんでも、この茶葉が買えなかったから戦争を起こそうとした小さな国もあったらしい。


「よくそんなものが手に入ったね。実家からって言っていたがもしかして……?」


「いえいえ。エレンちゃんが考えているようなものではないわ。………父が枢機卿を務めているのは事実ですけれど。」


「話は逸れるけど、昨日の件は結局どうなったの?」


さらっととんでもない台詞が出てきたような気がしたが気のせいだろうと紅茶を飲みながら問うた。

喉に抜けるたびに清涼感あるモルティーさを持った香りの良い風味が心地よい。


「ボガートは指名手配がされたわ。今朝早くよ。冒険者資格は既に破棄されて全ギルドに通達されているはずよ。冒険者資格にあるカードに織り込まれた魔力計で追跡が始まっているわ。流石にどこにいるかは機密で現段階ではわからないけど。」


「そうか……。子供たちは、生き残った奴隷の子達は大事ないか?」


「そうね。今朝早く私がみてきた限りだと峠は超えたわ。問題視していたダークエルフの双子も栄養失調気味だけど命に別状はないくらいには回復の兆しがある。魔族は回復能力が高いと聞いてはいたけど、治癒かけるだけであそこまで持ち直すなんてね。」


「そんなにか?」


「ええ。」


それっきり会話は途切れた。後は紅茶を飲みながら既に登った日の光が窓から差し込みぽかぽかと暖かく感じながらゆっくりと過ごした。

その頃になると日差しを浴びたせいか、ソファーからゴソゴソと物音が二つ。


「んぅ………いい匂いがする。」


「朝っぱらからいい茶入れんなよ。飲みたいけど。」


「おはようニアス、ネロ。よく眠れたかしら?」


「うん。」


「ああ。」


リムはポッドにある紅茶を二人分新たに注いでいく。赤みのある深みの水色から湯気を立てて宿直室を香りで満たしていく。

二人は寝起きとはいえその所作は美しい。まあ、高位の冒険者ともなれば貴族などからの依頼も舞い込むだろう。その際に身につけたとも言えるし、或いは作法としてきちんと叩き込まれたか。

エストレアとて公爵令嬢として恥ずかしくないよう叩きこまれたもの。

だから口には言わないが余計なことを考えてしまう。


「あのボガートもついに指名手配犯か。以前ならそうは思わなかったんだけどなーー。」


「ほんとだね。」


「ええ、ほんの数年前の駆け出しだった時は頼り甲斐のある殿方でしたね。」


「私は彼についてよく知らないんだが、どんな人だったんだ?」


彼について言えるのは初めてここにきた時にねっとりと絡んできたのでお灸をすえるのうに顔面を蹴り飛ばしたことと、泥事件について関与していること、犯されそうになったことぐらいだ。

彼女たちは彼についてよく知っているようなというより今リムが言ったように昔は良い人柄だったのだろうか。


「あいつはなー、兄貴も含めて駆け出しだったとき……いつだったかな、5、6年前か。その頃なんだよ、今の竜殺し称号持ちの人が揃ってここに所属したの。まだ新米だったうちらが面倒見てもらってたのがボガートだったんだ。」


へえ、そんなことが。が、どんな人だって、英雄だってはじめは何もない状態からスタートだ。今の彼女だってその例にもれない。


「当時はボガートと今はもう亡(い)ないけどアリアという人とパーティー組んでギルド最強と言われてた。恋人だったみたいで仲睦まじかった。」


これ、とニアスは水晶を取り出す。記録封じの水晶だ。魔力を込めて念じるとそこには綺麗な杖を持った女性がいた。彼女がアリアか。というか彼女に関しては見覚えがある。


(元白薔薇のリアンノン・アリアじゃないか!記憶が正しければ現騎士団長のフローラの従姉だったはず。諸事情で騎士団を抜けて何処か消えたと聞いたことがあった。)


「彼女とボガートは昇格をかけて上位竜に挑み、彼だけが戻ってきたんです。そして、逆鱗に触れた上位竜がシェアト近郊に現れかなりの被害を出しました。」


その話は知っている。ほんの4年前だ。冒険者ギルドの本部のある都市近くに竜が暴れだしギルドの冒険者達によって倒されたと。


「その功労者がジッド達。深く感謝はしていたよ彼。けど、ちょうどその頃だよ。私たちが頭角を現してすごい勢いで昇格していったのは。」


それも知ってる。ギルド本部に黄金時代が来たと王子ジェラルドと交わした話だ。

茶会に参加してはしばらくはその話で持ちきりだったことも。

その後、彼は以前のような成果を出せず降格処分。恋人を失った事も含めてかなり荒れたようだ。

そこに後輩だった彼女達がぐんぐん上がっていけば彼には面白くないだろう。先輩としての面子も無くした事だろう。



ーー『おい、ボガート。白昼堂々何やってんだ。新人にここで絡むったぁいい度胸じゃねぇか!』


『ジッドか。てめえは引っ込んでろ。俺は先輩らしくこの新人に教えてやろうとしてただけだぜ?ヒッヒッヒ。』


『聞いたぜ?お前新人の女性だけ・・・・を引率買って出た後、『突っ込み』やってるってな。公になってないがお前いい加減にしろよ?』


『は!どこにそんな証拠あるんだよ!』



以前のジッドとボガートとのやりとりを思い出す。ほんの少し、先輩として振る舞いたかったのだろうか。恋人を失った反動で荒んだ心を癒そうと求めた結果犯罪に手を出したのかもしれない。到底許されない行為に違いないが堕ちていった者が辿る末路の一つ。

今回の一件で、ボガートは完全に犯罪者として問われる身となった。

エストレアは何も知らない。故に可哀相とは思わなかった。


話が終わった頃には紅茶も飲み終わり身の回りの片付けの時間だ。

そんな時だ。ドアが開かれギルドマスタールディナが入室してきた。


「お?」


「ん?マスター?」


「全員いるな?追跡結果が今でた。例の巨人情報先、クライアでボガートの反応が止まった。



ーー急ぎ準備しろ。遠出になる。明日の朝出るぞ。」






50話で一章終わるはずが………!

やりたい事が沢山あってキリがない。






ところで……………キャライラストあった方がいいですかね?今から書こうと思うのですが。

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