Chapter6-10ーChapter end
ランタンで内部を照らしながらこじ開けた奴隷商館クラトンの地下収容所でエストレア含めた現場調査の人たちはあるものを見た。
薄暗い空間の中。
息遣いも微弱で二人で肩を寄せてその空間の隅に縮こまるようにいた。特に弟と見られる男の子は誰が見ても生命の瀬戸際にいるのは明白であった。
「担架だ!担架もってこい!!子供2名を確保!」
「治癒使える奴居ないか!?」
「おい、道を開けろ!!奥に五人だ!!」
ガタイのいい男たちが厚めの木の板で二人の子供を乗せて外へ連れ出していく。
慌ただしいこの状況でエストレアは双子のいた場所をニアスに呼ばれるまでずっと見つめ続けていた。
双子のうち、女の子の方は虚げな目でエストレアをーーー見ていたから。その涙を彼女は忘れはしないだろう。
盟歴569年、光影宮の月。冬の訪れが近づく日、預言者が投じた紅い一滴は冬のキャンパスをどのように変えるのだろう?
ーーー
ーー
ー
「お待ちしていました、Dランク冒険者エレンさん。どうぞ、こちらに。」
大通りを通り、この街を誇る冒険者ギルド本部。世界中に展開されている冒険者ギルドの本部のなんとも言えない雰囲気を感じながらエストレアはその門をくぐる。
中に入ったエストレアは複数いる受付嬢のうちの一人、初日にエストレアを対応したエリーゼに今日のことを義務的に伝える。
当然、エストレアに関して彼女も知っている。ギルドの誇る竜殺し数名と職員で昨日発生した奴隷商館での泥の有無を確認するための現場検証を行うためだ。その当事者として目の前のエストレアとスラムのリーダー、元冒険者ジルを伴うことが昨日の段階で急に決定になった。
エリーゼもこのシェアトにおける状況を知っている。彼女だって家庭持ちだ。子供がいなくなる、いや泥のような何かによって連れ去られ以降安否含め行方さえわからなくなるのだ。
前まではまだ年端のない自分の子供をギルドに連れて行き中で預けては同僚と合間合間で構ったものだが、近頃は先述の通り子供は隔離同然になっている。衛兵の数も増えて剣呑な雰囲気だ。
「こちらでお待ちくださいね。ギルドマスターは今会議ですので。多分、あと半刻くらいで終わると思いますよ?」
ギルドの一室で待たされることになったエストレア。部屋はまさに待合室もしくは小会議室といったようなーーまあ、取引先と直で話し合うような感じな部屋である。調度品のセンスはレトロな感じで、存在感を出す大皿は青磁の艶めきが目に入る。普通なら。
その隣にある碗、それが多分この部屋の一番の品だろう。
前世でいう呼び名を使うのであれば国宝『曜変天目茶碗』。ただの碗であれば見たことがあるから大したものではないのだが。
違いがあるとすれば黒色の肌ではなく紫がかった深い青の天目であることか。
ほかの調度品を見ていると時間は過ぎたようで扉の向こうから気配がするとノックせず人が入ってくる。が、ギルドマスターではなかった。
「悪りー、悪りー。遅れちまったぜマスター………あれ?えっと誰だっけ?えーっと、エ、エレ……」
「?エレンだ。どうかしたのか?私はギルドマスターに呼ばれてここで待機してろと言われたのだが……」
入ってきたのはネロだ。ボッサボサに髪を乱して目元にクマができた状態でやってきたようだ。
同じくして服装だって竜殺しとして名を馳せるにはヨレヨレのくたびれた麻服オンリーで正直寝起きのまま来たとしか言いようがない。
「あー、俺もここにいろって言われてよ?例の泥調査の………現場調査の手伝いしろとさ。先日ノルマサボっていたのバレてなーーー!あはははっ!!!」
「笑い事じゃないだろう、この街の高ランク冒険者なんだからもっとこう、真面目にーー」
「いいんだよ、真面目にやったのは故郷の腐った慣習で十分さ。適度にサボる、適度にやる。んで気が向いたら本気出す。それが多分一番いいんだよウチ的には。」
エストレアは思い出した。ネロは帝国出身だったとジッドから聞かされていた。同じく帝国から流れてきたドランも腐りきった帝国から身を引いたと。
帝国は確かに大国だった。戦役でも先頭に立って戦いに赴いては戦果の凱旋していたはずだ。
あの時だけは二分化した挙句内戦状態だった帝国はともに手を取り合っていた。
だから気になっていたことを彼女に打ち明ける。
「なあ、ネロ?帝国はそこまでなのだろうか?少なくともまともな人はいると思うのだが………?」
帝国は捨てたものじゃないと言外に言うと彼女は露骨に嫌そうな顔をする。
しまった、琴線に触れたか。
「まあ、いるといえばいるけどな。一部の将軍や官僚、ギルドぐらいだし?でも変わんねえよ。」
「すまない、忘れてくれ。」
「おう。」
そこで話は終了。特に気まずい雰囲気もなく二人は各々に勝手にやっている。エストレアは窓に手をやり城壁の外、壁と壁の隙間から見える郊外から孤児院を探すように見つめている。
吸血鬼としての視力にもの言わせて凝らしてみれば三人の男女の冒険者とこの街の衛兵だろうか、兵士で代わる代わる警備の交代をしているのが見えた。
(今頃、あの子達どう過ごしているのかな………。)
なにせ途中で打ち切られた上泥の脅威が消えない、連れ去られた子たちを取り戻さないことには何も始まらないのだ。
孤児院の内、運良く残った子カリルに稽古をつけてやると約束した事もこのままなら反故になる。
対してネロは大胆にソファーに背中を預けて爆睡である。彼女の獲物である魔剣ズツァニッグは仄かに淡い光を帯び目玉のようにも見える宝玉は陽光を浴びてキラリと光る。
上位竜戦にてとどめの一撃として用いた魔剣だ。彼女自身、雷の属性を秘めた剣である事は知っていたようだが雷鳴を呼ぶ事は知らなかったようだ。
嵐の雷竜ズツァニッグ
今の暦が生まれる前にある仮称歴。先盟歴時代というのだが、その時代つまり神代の時にいたとされる古い竜であり、魔族が一柱古竜の一匹。
まだ国々が安定していない頃、大いに暴れていた竜と言われている。神々の主神ではないのに関わらず竜でありながら神の権能たる雷の力を自在に振るう絶対者。
神々の助力と仲間の犠牲を乗り越えて英雄バモレッドは遂に嵐の雷竜を天より撃ち堕とした。そして、その尾より出でし剣こそ彼女の持つ魔剣とされている。彼女の持つ魔剣が本物の魔剣ズツァニッグなのかはさておき。
なにせ、バモレッドが持つ竜の剣は本物のアーティファクトなのだ。養父アーノルドの書斎から見つけた文献にはあまりにも有名すぎるので今の暦になるまでレプリカが作られたとある。ただ、興味深いことに本物は血筋かそれ以上の力を持つものでなければ真の力は発揮されないとどの書物でも記載されていたことだろう。
二つの帝国では民衆も政治家もこの雷竜とそれを打ち倒す初代皇帝にして英雄バモレッドとの戦いである英雄譚の第7節、【嵐の王、剣の夢】を劇とした物が特に人気を博している。
どこで手に入れたのやら、彼女はそれを武器として持っていたのだ。
コツコツ
不意に聞こえる足音。体重とは別に空気を揺らす振動から身長は小柄だろう。さらにその後から聞こえる足音から複数人。間違いなくギルドの関係者。いや、ここに来る時点でギルドの関係者なのだが。
エストレアは扉越しに近づいてくる気配を感じとりネロの肩を叩き起こす。
「ネロ、起きろ。誰か来るぞ。」
「うぅーん、苺のミルクレープぅ……」
「寝ぼけてる場合か!」
寝ぼけて寝言をこぼすネロにツッコミを入れつつ。肩をゆさゆさと揺らしているとバンッ!と扉が開く。
加えて鼻先に迫る熱。
「「うわっ!?」」
上体を逸らして間一髪で避ける。通過していく熱の塊は窓に直撃する事なく霧散する。
ネロも直前に感じた熱で目を覚ましたようだ。
「なにをするっ………ギルドマスター?」
「貴様ら、いい度胸しているではないか?」
下手人はギルドマスターのルディナだ。黒髪から覗く狐耳は不機嫌そうにピコピコと動き、眉間に皺が寄っていることから………怒っている、と見ていいのだろう。ふざけていると思われたようだ。
まあ、ネロに関しては爆睡してたし言い訳はできないだろう。自分、……エストレアに関してはどうだろう。ないとしても連帯責任かあるいはネロと一括りにされたか。
「ごめんなさい。」
とりあえず、先に謝る。相手はギルドマスターだ。彼女がその気になれば冒険者の一人や二人は片手間で消せる。ましてや低ランク帯から抜け出したばかりの新米なら尚更。
「悪りぃ悪りぃ。」
頭をガシガシと掻きながらネロも申し訳なさそうに言葉にする。
「全く………ダラけすぎだ。さっさと準備を済ませろ。目的地に直で向かう。そのつもりでな?」
ギルドマスターのため息と共にエストレアの耳に馬車の音が聞こえてきた。
ようやく、クラトン商会での出来事が明るみになる。あの日は夜であり、エストレアですらわからない事も多かった。
蛇が出るか鬼が出るか。
マリウス・シオンとの事といいエストレアが絡むと何故かこうも事が大きくなっていくのだろう。
●●●
出発するまでに以上の出来事があったが馬車内では静かだった。
ネロだけではなく、既に向かう場所にニアスとリムが待っているとの事だ。他にもフレニアやバイドも招集したかったようだが別の依頼を受けて旅立ってしまっていなかった。
ネロは護衛、ニアスとリムは魔法と奇跡を使い魔力の流れと可能であれば逆探知が役割だそうだ。
それと、ボガートについてだが彼とその仲間は今回の検証で裏が取れ次第、ギルドマスターの名の下に指名手配と冒険者カードの逆探知で追跡するということが決まっているようだ。
身柄を確保次第、尋問と冒険者資格剥奪が決まっている。
ガタンガタンと馬車の車輪の音がほぼ無音の中に存在する。
腕を組みながらなにも言わないギルドマスター。ピコピコ耳と尾が動いているためただ目を瞑っているだけだろう。ネロも………いや彼女はいびきこそかいてはいないが寝ている。ご丁寧に鼻提灯を膨らませて。
残念ながらこの場には野郎は一人もおらず傍目からは美女3人がいるようにしか見えない。
男性だった記憶というか感覚があるエストレアでさえ既に夢の中のような、胡蝶の夢だったのはないかというくらい染まってきている。
「ギルドマスター、冒険者殿、もうすぐ規制領域に入ります。」
御者の声が聞こえてくる。
ギルドに報告したあの日、ギルドマスターは事の重大さに気づいていた故か嘘か真かはさておきクラトン商会周辺を衛兵に命じて封鎖するよう指示したのだそうだ。
封鎖と聞くとkeep outのテープのようなもので一帯を塞ぐみたいなイメージがあった。
この世界では一帯を仕切る際には結界を用いる。結界は魔法の一種。空間の隔離、切除、保存に一時的に展開させる。この手の魔法は規模が大きければ大きいほどに発動難易度が低い。複雑な術式が必要とせずに適当な配列の魔法文字入り陣でも展開できるくらいに。
うっすらと見える魔法文字と上空を覆う半ドーム状の薄く貼られた魔力の膜。
拙い魔法知識から劣化防止用の保存と人払いの術式である事は読み取れる。
馬車の窓から張り付くようにエストレアは結界を見続けた。
「なあ、ギルドマスター。クライアの巨人騒ぎはどうなったんだよ。全然音沙汰ないじゃんか。」
「何も分かっていない。仮に知っていても、機密事項だ。」
「おいおい、そりゃねえよ。少なくてもシェアトの竜殺しは殆どこの件に関わってんだ。最低限の情報は提示してくれよ。」
「………先鋒からの連絡が一切ない。ギルドでは冒険者カードから逆探知で生存自体はしているらしいが………連絡が取れない以上掲示できる情報がない。強いて言えば、最後に聞いた連絡が地下に向かうということのみだ。」
「地下かぁ。確か、あそこって………先盟歴時代の遺跡があったよな?」
「ああ。危険な魔物などが生息する『吹き溜まり』だ。」
いつの間に起きていたのか、ネロは真面目そうな顔でギルドマスターのルディナにクライアに調査に出かけた面々の確認を聞いていた。しかし、ルディナも険しい顔をしてネロに対して答えにくそうだった。
聞き捨てならない会話が聞こえる。クライアに向かった竜殺し達と連絡が取れないとはどういう事だろうか。
ジッド達やネロの兄君のレンヤ、オルストなど彼らはクライアに向かったはずだ。相応の実力を持つが故に簡単にやられるはずがないのだ。
だが、ここで喚いたところで何かが変わるわけがない。無事である事を信じることだけ。
考え事をしているとキキィと馬車が停止させる事を示す音を出して止まる。若干、ガタンと揺れたものの大した事じゃない。
御者が扉を開けると数人の衛兵とギルドで見かけた事のある中堅クラスの冒険者達、そして竜殺しの称号を持つニアスとリムの二人が馬車の外で待っていた。
どうやら私達が最後らしい。
重役出勤だが、ギルドマスターが一緒なので致し方ない、のだろう。
結界の外では野次馬が集まっていて一部の冒険者が「危ないから離れて。」と誘導をしている。数人の衛兵といったが残りの衛兵たちは聞くに衛兵達はクラトン商会近辺に住んでいる住人には屯所に仮テントを設けて調査が終わるまで暮らしてもらうため説得に向かったようだ。
当然、一悶着はあったようだが………。
「揃ったようだな。スラム街の連中、ジルはどうした?」
ジルはギルドに赴く前は恰幅亭でステーキをたらふく食べていたはずだ。流石に既にいるはずなのだが……見渡せど姿はない。
「呼んだかよ、ルディナの姉御?」
「衰えてはいないようだな?『不動』の。」
「はっ!冗談はやめてくれよ、一度は引いた身だ。前みたいには行かねえよ。」
「戯け。どこの世界に刃渡りが長剣並みの両刃剣を扱える人間がいる。この世界は化け物だらけだな。」
「いやいや。思いっきりブーメランじゃねえか。逆に言ってやるよ、どこの世界に重さと重力操作を自在に操れる大斧を片手でぶん回す見た目だけの年増幼女がいるんd……ごへえっ!?」
「死にたいらしいな、こいつめ。」
不意に頭上から影が指す。見上げればかなり使い込まれた腕甲を装備し、背中にはおそらく長剣サイズの一対の双剣を背負っている、大男の姿が。
いや双剣というかあれは仕掛け武器か?柄の両端に剣が付いて折り畳み式の、両刃剣。アニメとかゲームでしか見ないような武器を持っていたのか。
そして地雷を踏み抜いたために大斧の投擲を喰らい無様に落ちてくる。
ドランから彼がかつて帝国の冒険者でこの地に流れ着いたときに身を引いた冒険者だという事は聞いてはいた。露出する肌から見える筋肉はまさしく脳筋という表現がピッタリで2メートル超えの長身も相まって巨人のよう。
首にかけられた砕けた冒険者カードから以前はBランク冒険者であることがうかがえた。
実力もその姿に裏打ちされたものだと判断できる。
あの夜、一撃でボガートの連中の一人を素手で倒していたし与えられた音から骨は砕けているどころか粉砕しているに違いない。
「今度こそ、揃ったな?では、始めるぞ。」
ギルドマスター、ルディナが結界の中をくぐり抜けていったのを見てエストレア達はそれに続いていった。同じくして、冒険者は数人、衛兵は結界内にいるものを除いて結界の外を見張りに着いたのだった。
●●●
「酷い有様。収穫は期待できそうもないわね。あの馬鹿も切り捨てる頃合いかしら?………そうは思わない?不可の魔法使いさん?」
水晶に映されたクラトン商会近辺を調べるエストレア達を眺める女。
黒いローブを身に包み青みのある白い肌がのぞく。
「いきなり何をいうかと思えば………。君のやり方に関して僕は何もいうことはないさ。キュリア・ノイマン君?」
青いポリゴンが突如として発生しそこから一人の男が現れる。
癖っ毛の髪、片眼鏡と意匠施されたローブを着た魔法使い。そう、マリウス・シオンだ。
「何しにきたの?からかいにでもきた?」
「いやいや。近況を知りに来たのさ。ヴォルバートが探って来いってね。」
「まぁ。あの方が?」
「ほんと、君は彼を愛してるんだねぇ。見向きもされてないのに『黙りなさい。いくら不可の魔法使いでもこれに関しては譲れないわよ?』やれやれ、女は怖いなぁ。」
手を振り嘆息するマリウス。それを見てため息一つつき再度、水晶を覗き込む。今度はクラトン商会ではない。
場所は牢の中のようだ。気絶しているのか、数名の男女が横たわっている。
青い髪の魔法使いと精霊つきの弓使い、折れかけのクレイモアを気絶しても握り続けるチェインメイルの騎士。
他にも数名の男女が倒れており顔色はわからない。
「彼らはどうするんだい?」
「そうねぇ………魂の分解はできないわね。既に成人というか大人だもの。使い魔の餌か、他の実験の被験体かしら?」
「じゃあ、僕の見解を告げよう。彼らはこのまま五体満足で返すほうがいい。」
「何故?お得意の未来予知だとしても理由くらいは教えてほしいわ。私の工房に侵入してきたのだから。」
「もう間も無く、ギルドマスター以下数名がここを襲撃する。これは確定未来だよ、生かしたほうがいい。そのかわり、君の………泥を使った人形を切り捨てる予定の馬鹿に預けてギルドマスターのルディナにぶつけるほうが良い。もう、十二分に素材は確保したのだろう?」
そうね。キュリアという女は安楽椅子に背を預け手元にある瓶を片手でもて遊ぶ。
この中身こそ、数ヶ月以上かけて費やした努力の結晶。己の求める結果の必要な一部。
後は、母体と膨大な魔力補給源。母体に関しては使い魔を飛ばしてこの大陸に渡ったはずのある人物を探させている。最後に見てから15年経っているためか朧げだが。
「ねえ、不可の魔法使いさん?この計画は成功すると思うかしら?」
「どういう意味かな?」
「閣下の肉体変生計画。閣下自身には知らせてない、私達6闘将のみ知る計画よ。勿論、あなたも関わっている例のアレ。」
「十二種族全員を納得させるための強制進化計画のことかな。難しいと思うよ、発想は悪くないと思うけどね。さて、君のこともある程度知れたしお暇するよ。君の計画が成就することを祈っておこう。」
そうして、マリウスは消えた。気配もない。
ふふ、と女は笑う。視界を閉じ使い魔と共有する。
ーーさて、どこにいるのかしら。ナターシャ妃?
「やれやれ。疲れるよホント。」
マリウス・シオンは彼女、キュリアにひとつだけ伝えていないことがある。意図的に、だ。
「彼女が真に覚醒した時見ものだなぁ。クックック…………!変生などさせるわけないだろう、何のために血脈を繋いできたと?全く………………」
ーーー笑えない話だ。




