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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第1章 目覚めの王国
46/205

Chapter6-4

やっぱ7000文字キツイ………。だれか文才分けてください。(切実



朝。


カーテンの隙間から朝日が差し込み二人の眠るベッドを照らす。


「んんぅ…………。」



日差しを浴び、身じろぎするエストレア。昨夜のアホの相手をしていたせいで疲労が回復しきれずいつもなら起きているはずの時間帯に起きれずにいた。


日差しから逃げるように掛け布団を寄せようとするが何故か重くて動かない。加えて、何やら暖かい。


ーーはて、布団は一枚しか無かったはずだ。


では、何故少し重く暖かいのか。それと同時に眠気な目で布団をたくし上げる。

見れば、スケスケのネグリジェを纏いエストレアの引き締まった太ももに抱きつきヨダレを垂らしながら寝ている、ジェシカの姿が。



「はぁっ!?」



一気に覚醒。眠気など何処へやら。しかも寝言で「うへへ、お姉様ぁ、もっと、もっとお情けをぉぉ………」などとのたまいツー、とよだれがふくらはぎを伝う。

タチの悪いことに股を擦り付けてくるからぞわぞわした感覚が襲う。理解不能な状況に、ジェシカが身じろぎし、とろんとした目が覗く。


「んぅふぁ………?おはようございます、お姉様。」


「何故ここにいる、ジェシカ……………?」


目が笑わない笑みでジェシカに問う。



「来ちゃった♪」


「彼女かっ!!」


ガシッ!ギリギリギリ…………………


渾身のアイアンクローを見舞う。無論、手加減した渾身である。本気でやれば、こんな幼き少女の頭はザクロどころかミンチになることは容易に硬くない。


「い、痛い、痛いです!!お姉様!ごめんなさい、ごめんなさい!」


「いい加減自重しろ!これだからお前はっ!」


流石にここまでされればこうされてもしょうがないだろう。片手で宙ぶらりんになったジェシカにクドクドと文句を言う。


「だいたい、鍵をかけていただろう!どうやって入った!?」


「愛ですわ!」


答えになっていない。それと、巧妙に隠した金ぐし二本の存在に気づかないと思ったのか。鍵の構造上、単調な噛み合いなため不安だったが、まさか本当にピッキングして侵入したとは。


「うっさいわね!!朝早くから喧嘩するなら外でしなさいよ!朝から騒ぐなっ!」


どうやら、アグニルの機嫌を損ねたらしい。当然だ、誰が朝がけに同じ部屋の中で騒ぐ奴を放っているだろうか。

ジェシカを連れ出し、隣のマグスの部屋を訪れる。


コンコン、とノックし相手が起きているか確認する。貴族というのは朝起きるのが早い傾向がある。

チェックしなければならない書類の整理、武に秀でたのであれば鍛錬、そうでなくても領内の視察することもある。

細かなスケジュールの元に行われるので時間には大変マメだ。


「どなたかな?」


扉越しから声が聞こえる。良かった、起きていたようだ。私だ、といえばガチャ、と鍵を外す音が聞こえて中からマグスが出てくる。


「まただ。これを頼む。」


「ジェシカ………………。ありがとう、娘がまたやらかしてしまったようだね。さて、朝食までじっくりお話ししようじゃないか。」


「お、お父様、どうか、どうかお許しを…………」


返答はただニッコリと笑いながらうなづくだけ。慈悲はない。ジェシカが、こちらに助けを求めるような目で見てくるが無視して自分の部屋に戻る。背後から「お姉さまあああああアアアアァァァァッッッ!!!」と泣きべそかいた声が聞こえパタンと閉じた戸の向こうへ消えていった。


南無なり。




●●●




騒々しい朝を迎え、部屋に戻ると不機嫌に頬を膨らませるアグニルに先ほどのジェシカのこともあり頭を抱えるエストレア。気分を切り替えるためにサッサと着替えを終え、アグニルと一緒に厨房に向かう。


食材を確かめると、手作りで編み込まれた籠には生みたての卵が五つ、ハーブ類がいくつか。更には既に〆られた鶏。肉の感触を確かめると大体生後五ヶ月。


ちなみに〆たのはここにいるシスターの一人、メアの仕事だ。


「うん、いい鶏だ。これなら……………。」


更には昨日買ってきた食材の残りを合わせると朝の朝食は決まりだ。


「エレン、決まった?」


「ああ。アグニルは鍋用意してくれないか。シスターメアは油を。オリーブオイルでもいいけど植物性の油がいいな。」


朝食は、そうみんな大好き唐揚げだ。

カラッと揚げるために片栗粉や小麦粉は既に用意されてある。鶏、ももの部分を切り取ると一口サイズにカット、片栗粉をまぶし、小麦粉を軽くまぶして準備完了。

暖炉に置かれた、泳ぐほどの油を熱する。火傷防止に手袋をつけ、カケラを入れて揚がるのを確認すると一つずつ菜箸を使い鶏肉を入れていく。


カラカラカラ………という音に懐かしさを感じながら手慣れた手つきで揚がった唐揚げを和紙代わりに羊皮紙の上に乗せていく。本当は羊皮紙なんてものに乗せたくはないが変わりがないので妥協する。

ふんふーん、と鼻歌を歌いながら振り向けば二人は涎を口から出してポカーンとしている。

やけに静かだと思えば、エストレアの揚げている唐揚げに夢中のようだ。

アグニルに至っては何やら口を動かしてーーー


「なあっ!?いつのまに!?」


揚げたばかりの唐揚げを数個ばかり足りなくなっていた。要はつまみ食いだ。ついでにシスターメアも揚げたての唐揚げに視線が釘付けだ。子供たちの分なのに。


「ん〜〜!!やっぱエレンの料理最高っ!」


そう、彼女は半月ほど前のウルマト復興作業の依頼で厨房で働いていた時、賄いで作った唐揚げを食べたことがあった。

ほかの竜殺し達も客も、果ては聞きつけた女将だって凄まじい勢いで食べていき、エストレアの手元に残ったのはたったの一個。あの後、エストレアは静かに泣いた。怒りをぶつけるのは筋違いだし、だけどやるせなくて………。


そんなわけで唐揚げ作る準備したのを見たアグニルはエストレアに気配を悟らせずに揚がった唐揚げを颯爽と奪い頬張っていた。食欲には勝てない。


「アグニル、後で追加あるから。サッサと仕上げてしまおうじゃないか。子供達が起きてくる時間じゃないかな?」


「わ、わ、大変!エレン、ここ任せたっ!」


外を見れば充分日は登り、子供達が起きてくる時間帯。そして、血気盛んな男の子達が腹を空かせて待っていることだろう、ご飯だよー、という声を。


アグニルは慌てた様子で厨房を出ていった。出ていった際の扉はキイ、キイと揺れて。


「メア、仕上げていこう。後でいくつか取っておくから、ね?」


「はい。」


エストレアは再び揚げ物を再開する。メアは野菜等を担当してもらいつつ豆スープを作っている。

エストレアは揚げ物を人数分揚げ終わると、余った分をこっそり揚げ、タレに浸し南蛮漬けを作った。


「ふふ。久しぶりだ、南蛮漬けにするのは。」


誰にもあげるものか、私のおやつだと一人愚痴ると静かに洗った陶製の小さな瓶に入れて自分にしかわからない場所に置いておく。

そして、味などの劣化を防ぐために魔法をかけて保存も万全。


魔法って便利だな、とエストレアの顔は主婦そのものだった。








「「「「「いっただきまーーーすっっっ!!!」」」」


「「「いただきます。」」」


ここの孤児院での食事は子供達と席を共にする。

その事実にマグスもジェシカも知らなかった顔をしていた。投資はしていたが、詳しいところまではしらなかったようだ。

彼らは貴族だから共に食事するとすれば家族くらいなもの。こうして、大勢の子供達と席を共にするということは特にジェシカには初めてだろう。


エストレアが開いた茶会に参加していたことのあるジェシカも一緒にいたのは侯爵とか男爵家の令嬢ばかり。同じ目線で、或いは上には敬意を払って行かねばならない貴族にとってこういう微笑ましい、騒がしさは新鮮だろう。記憶だとジェシカはまだ庶民の暮らしや孤児院の生活などは知らなかったはずだ。


「ふむ、一人静かに食べるのもいいがこういうのも悪くないね。妻にもたまには席を一緒にするようかけてみるかな。」


「ふわぁっ!?こ、こら、それは私のですわ!」

「ヘヘーーン、いただきーー!!」


ドタドタ、とおかずを取られたジェシカは取り戻そうと躍起になって部屋を走りまくる。無論、とった子だって走り回るから椅子を巻き込んで他の子も巻き添えに。見かねたアグニルが2人の肩を掴む。


「はいはい。食事中は静かにね、ジェシカお嬢様もお嬢様らしくなさってくださいな。ロランも人のを取っちゃダメよ、おかわりはちゃんとあるんだから。」


「だってよ、待てないんだもん…………。」


ロランは大食いで、早い。その証拠にいただきますしてから既に完食してるからだ。


「それでもダメよ、エレンーー、おかわりはあるーー?」


「ああ、そうなるだろうと用意してあるさ。」


追加を運ぶエストレアに子供達が歓喜の声を上げる。唐揚げをはじめて食べた子供達の反応は追加を運んだ時に出た声で十分伝わるはずだ。

無論、肉だけじゃダメだ。群がる子供達の皿に刻んだ香草類などを盛り付ける。嫌がる子もいたが、エストレアは「なら、おかわりは無しだな?」と言えば渋々受け入れていく。


「うん、シンプルで実に美味しい。いい鶏肉だけじゃないな、エレン君後でレシピ貰えないかな?領内に帰ったらシェフに作ってもらおうと思う。」


「いいですよ、後で羊皮紙に書いて手渡そうと思います。」







●●●





そうして朝食を終えて、日が大体10時頃に差し掛かるまで食休みを兼ねて休憩だ。まあ子供達が、だ。

依頼として受けているエストレアたちはジェシカたちとは別で院長室に呼び出されていた。

なんでも、どうしても伝えたいことがあるとのこと。


どんなことだろう、と院長室の戸を叩き反応を待つ。

どうぞ、の声がかかりガチャ、と戸を開けるといつものように座る院長の姿が。


「院長、呼ばれてきましたがどういったご用件で?」


まずはアグニルから呼び出された要件を聞き出した。それを聞いた院長は引き出しから二枚の羊皮紙を取り出しエストレアら2人に手に取るよう促す。


1枚目は職員の復帰時期が確定したこと。二日後には復帰するそうだ。もう一つはーーこれは良くなかった。


それはこう書かれていた。


「「『不特定多数の7〜15歳の児童達の失踪に関する通達書』??」」


こくん、院長がうなづく。詳細を読むと、ここ三ヶ月にかけてシェートリンド王国の町や村で子供達が謎の失踪が相次いでいるという。

失踪だけなら町の保安を務める衛兵の仕事だ。いつものように迷子だろうと捜索を続けていた時のことだ。


ある日には七人の親御さんが子供がいなくなったと屯所に押しかけてきた。これもいつものように迷子として兵士たちに探させたところ、裏路地にて何者かと争った跡と、大人が持つには幼すぎる服の切れ端や荷物が発見された。事態は王都にまで及んだ、らしい。


浮浪者の子供が何者かに攫われる瞬間を目撃した市民が王都屯所に通報。治安を守る白薔薇騎士団が派遣される事態になったそうだ。

間違いなく、広範囲に及ぶ誘拐事件。なんでも、半月前でも“ウルマト”でさえ行方不明になった子供が5人も出たという。避難していたというのにいなくなったのだ。

脳裏に蘇るウルマトからシェアトに戻る途中で出くわした白薔薇騎士団。あれは、竜種討伐ではなく前から出ていた誘拐疑惑濃厚の行方不明の子供達の確認のためだった。ギルドも陰ながら調査を開始。調査の結果、圧倒的に多かったのはなんといっても“孤児院”出身か在籍する子供達が大半を占めていたのだ。


「嘘でしょ………!?」

「馬鹿な、そんなことがあれば例え冒険者でもギルドから通達があってもおかしくないぞ……!」


書面に書かれた通達書に驚愕する2人。幸いにも冒険者ギルド総本部の膝下であるシェアトではまだ行方不明者が出ていないが、出ていてもおかしくないはずだ。


「院長、今ここにいるマグスさんには既に……?」


再度の問いにうなづく院長。なるほど、投資している貴族に先に伝えてあるのは心強い。権力者ならば、何かしら対策を講じるだろう。


「そこに書かれていることが今わかっている事実なの。さっき冒険者ギルドから来てね、最大限の警戒を旨とせよと言われたのよ。」


警戒しろ、と言われてもだ。ここは教会兼孤児院。冒険者ギルドから注意するように、と言われても遊びたい年盛りの子供達を閉じ込めることはできない。かといって冒険者に護衛してもらうには無理がありすぎる。武器なんてものを担いで訪れようものなら怖がってしまうだろうなと容易に想像がつく。


ほぼ誘拐事件だというのに解決できないのが孤児院の子供達や浮浪者の子供が対象になっているからだ。何故かというと、孤児院は言うならば人材育成機関のようなものだが孤児院の子供は市民権がない。浮浪者の子供もそう。市民が誘拐されたならば、いなくなったならば市民故に衛兵もそれなりの規模で捜索を開始する。

差別と言われればそれまでだが身寄りがないのが二つに共通で市民権もないのだからいなくなったところで優先事項から排除されてしまう。

たらい回しにされるのがオチであり、ましてや、浮浪者の子供なら誰が誰かもわからない。


そして、院長もエストレアも悟ったのはここは街の郊外。外で遊ぶ子供がいなくなったら一大事だ。何故なら、さっきも言ったがシェアトは冒険者ギルドの総本部がある場所だ。

竜殺しなどの高ランク冒険者や元冒険者の職員など戦いの専門家が多く抱える街で、誘拐事件など起こしたら軽く済む不祥事ではないのは明らか。


「戻ってくるまでの依頼だったけど………ここで追加の依頼頼めるかしら?」


「つまり、件の件で子供達が巻き込まれたら………」


「ええ、救出してほしいの。叶うなら解決してほしいわ。孤児院を運営している身でこれが起きているなら眠れやしないもの。」


まだ、事件は起きていない。それが唯一の救い。けれど彼女からすれば胃が荒れる程のストレスというかなんというか、解決してほしいときた。気持ちはわかるが、ここまで広範囲でおそらく組織的に行われた犯罪だ。


エストレアとアグニルは天を仰いだ。


「「明日、ギルドに行きましょう(行くか)」」


取り敢えず、今日の分の予定は崩せない。アグニルが子供達を、エストレアが施設内の掃除が残っている。

午後は座学があるし、職員復帰するにあたり使用していた部屋の掃除などの明け渡し準備もある。

夕方となれば夕食の仕込みしなければならないし、夜にならないとギルドには赴けないだろう。

そして、ギルドは空いている時間は決まっている。


よって、ギルドに行けるのは予定的にも明日だ。明後日には職員は復帰してくるだろうから明後日でもいいのだがこのような出来事があるならば一日でも早くてもいい。


午前の、昼真上になる前から疲れた気がする。目元をさすって太陽の光を浴びておく。


「よし、今日も一日こなそうか!」



●●●






その後のことはすんなりと進んだ。

誘拐事件のこともあり外で遊ぶ子供達にも気を張っていたが、誰一人いなくなることはなく午後の座学もこなすこともできた。

余った時間で部屋の掃除をして、窓も磨き消耗品を補充する。


気がつけば、既に日は傾き夕食の準備に取り掛からないといけない時間帯のようだ。

アグニルーー、と声をかけようとしたときコンコン、と控えめなノックが。

戸を開ければ、ジェシカがいた。


「お姉様…………。」

「ジェシカ、何の用だ。今掃除しているから後にしてくれると助かるのだが…………。」


「行方不明になっている例の事件のことですわ…………。その、立ち聞きしてしまいましたの……。」


エストレアはジェシカが何を思っているのかなんとなく掴んだ気がした。

ジェシカも年齢を鑑みれば行方不明になっている子供達の年齢域だ。視察ということで訪れているマグスと彼女に何かあればこの孤児院もタダじゃ済まないだろう。いくらマグスが寛容であっても、だ。

ただ、それだけではあるまい。


「私としては何も言えん。冷たいかもしれないがこの孤児院と行方不明事件はいつ関係するかも分からない。まず、君に関わりのないことだ。この事は冒険者、ひいては騎士団に任せてもらいなさい。」


「っ…………!!」


唇を噛みながら俯くジェシカ。彼女もれっきとした正しい貴族であろうとしているのだろう。ノブリスオブリージュ。悪は正さねばならない、栄えあるシェートリンド王国の貴族として。


だが、戦うすべを知らない小娘に何が出来るのか、と問えば否だ。

戦力外どころではない。お荷物で逆に攫われて人質にされるのが目に見えている。


「お父上であるマグス殿には既に話はつけてある。明日には領内に向けて出発するといい。わかったね?」


「…………………………はい。」


すごい間が空いた後に確かにうなづいた。が、彼女の性格を考えれば納得いかないという顔であり、絶対何かやらかすだろうとエストレアではなく紅 諸葉としての経験が教えてくれる。


ーー(見張っている必要があるかな?)























その夜。


「お、ね、え、さ、ま、あ、ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


「ふんっ!」


再び夜這いをしに現れたジェシカをグランドコブラツイストで拘束して形だけ添い寝をしてあげたのだった。

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