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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第1章 目覚めの王国
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Chapter5-3



ーー『では、此度の作戦について議会を開こう。森の民(エルフ)共と、ドラグ悪魔ネビュラ使徒オールズ蛇人リュートは来ていないのか。』


ーー『あいつらは今の猊下に賛同する気は皆無だ。いつまでも古いリリスの仔であることに執着している。』


暗がりの中、巨大な円卓に様々な異形が座っており席ごとに燭台が置かれている。


ーー『左様。今の『パンドラ』に必要なのは隷属ではなく、戦うこと。それが隷属され、生き殺しに等しい立場に落ちても、喉笛噛みちぎるくらいの気概が必要だ。』


ーー『それを理解せずーー、生きているやもわからぬアレクサンドルの一粒種の生存を信じ奇跡に縋る愚かな連中。粛清するべきだ。』


彼らの言うことは生存。十五年前の戦役で多くの仲間が消えたが彼らの心には種族として断固として戦うことに執着している。

いや、それを提案し推し進めたのが、この円卓の上座に座る主である。


『静まれ、余の前である。』


白熱した皆々に鶴の一声で静めた彼こそ彼らの主人と決めた男だ。


『既に議題からズレている。余は以前言った。余に賛同せぬ同胞は今、関わる必要はないと。そして、各国のそれぞれに密命を与えその途中経過を聞くはずだった。そうだな?』


燭台と円卓、暗がりのせいで全くといいほどに素顔が見えないため全体的な特徴がわからない。

けれど、この男だけは暗がりなのにその形がクッキリと分かる。濡羽色のオールバック、灰色の瞳、軍服を思わせる服。両手を組みその上に顎を乗せてこの事態を静かに見ていたが、彼の言葉はエコーがかかっているように響き彼らの耳に刺さっていた。


けれど、ここにいる彼らは密命を帯びた同胞の報告を聞き、共有するために来ているのだ。


ーー『そうでしたな、ではシェートリンド王国、交易都市ウルマト及び王都アンスンに遊撃の命令を受けたキュリアの途中報告を。』


『続けろ。』


ーー『キュリアは、道中で刻印支配した野生の上位竜・真紅を使い、ウルマトを攻撃。キュリア自体は戦線を離れ王都アンスン攻略に向けて準備中。そしてーー現在ウルマトでは上位竜・真紅相手にシェアト上位冒険者、龍殺しの大半が迎撃に当たっているようです。』


ーー『それはそれは。ウルマトは囮でアンスンを本命で潰すつもりかな?彼女はたしか………。』

ーー『死霊系統の魔法に長けていたはずだ。後、死体を媒体としたゴーレム術もな。』

ーー『なるほど、時間稼ぎしつつ触媒作りか。忙しいなあやつ。』


円卓に座る一人が水晶の玉には密命を受けた夢魔族の女が死体を集めつつ、黒い穴に放り込んでいく様が写っていた。


そして、場面が切り替わりウルマトが映し出されると高起動な戦闘をする竜殺し達が地形を利用しながら戦う場面が写っていた。



ーーー

ーー


●●●







「嘘だろ‥‥‥、後どんだけ来るんだよ‥‥。」


絶えることなく押し寄せて来る魔物の群れ。Aランクの冒険者が何名かきてくれた上B〜Cランクの冒険者も合流したことで持ちこたえるどころか逆に撃退できると思っていた。


だが現実はどうだ。いくら倒してもまるでその倍で補うように更に押し寄せて来るのだ。

そう、どんな手段を使ってもここを通ると言っているかのようだ。


魔物は、自らの直感には絶対の自信がある。魔物とはいえ大森林に住まう野生の動物とあまり大差はない。


大元はあの上位竜なのであろうが、ではそれ以外の魔物達は何のためにここを襲撃しているのか。何のことはない。


「なるほどね、魅了か。それも複雑な術式。メンドイな………。」


妖精族のニアスは、ポシェットから萌黄色の宝玉を取り出し魔力を注ぎ魔物達の異変について観測する。

結果は、何者かによって魅了の効果で操られておりその術式も先ほど言った通り複雑でかけた本人しか解術出来ないときた。

ニアスは宝玉をしまうと重力操作の術式を起動してゆっくり降下する。

獲物を見つけたとばかりに魔物達が襲いかかるが、淡い膜のような壁が彼女を覆っていて体には傷ひとつない。


「宮廷魔術師にして、研究術師の私がみせてあげる。焼き焦げなさいーーというかまず兵隊さん達退いて。‥‥‥‥いくよ‥、焔の魔手(フレイムバインド)焔環大嵐フレアストーム魔術式合成!魔導術学の深奥よ!『その手はあらゆる敵を引き寄せて、極熱の渦へと誘わん、天壌を焦がす熱の奔流よ現れろ!!』」



ーー『火砕業焔ヘルナ・セプト天の柱(ヴァルグ)



眠け気味な言葉とともに特大な焔の手が彼女の振るう杖より二つの巨大な魔法陣が炎の軌跡を描きながら混じり合いより大きな魔法陣となって発動し群がる魔物達を渦へと引き込み天へと登る火柱に打ち上げる。


「ちょ、危な!!ニアス、私をステーキにする気!?」


フレニアが文句を言うがどこ吹く風で聞こえていない。フレニアは、レンヤに起こされてから直感でニアスのところに行き合流をしていたのだが彼女のことを視野に入れずにニアスは魔法をぶっ放した。


「だったら‥‥‥、射線上に立たないで。焼くよ?」


「うわぁ、怖っ!あんたならやりそう………。」


「ボーッとしてないで。まだ、上位竜がいるんでしょ?だったらこいつら雑魚達を早く掃除して、合流しよう。眠いもん。」


「あんたってホント……『なに?』嫌なんでもない。」


そんなやりとりをしつつ彼女達の背後には炭化してボロボロと崩れる魔物達の残骸が陽に照らされていた。

だが、待ってほしい。魔物は一掃された。しかし、その代償に彼女達のいた南門の一部、西側の約8割が溶け落ちたことに誰も問い正さない。


これが、のちに面倒くさいことになるのだがその時に話そう。


●●●





「オラァッ!!」

「むんっ!!」


ザシュッ、ギン!!!


鉄と鱗がぶつかる音であり、弾かれた音でもある。


ネロとバイドの二人は常に止まることなく屋根の上を駆け抜けて、時に飛び降りては路地を走りあの竜の死角を見つけては飛びかかり切るという、ことを続けていた。

無論、上位竜・真紅とて黙っているわけでもなく、敵がいそうな場所をあたりをつけては火炎を吐き散らしウルマトの街は火の海になりつつある。


「ちぃ、火の手が………!」

「止まんな!『うるせえ、知ってあ!!』」


熱と熱をはらんだ風が二人の体力と気力を削る。路地を走るネロは火が及んでいない道を曲がっては屋根に飛び乗り駆け抜けて時に雷を放って竜をおびき出す。


影が差し込むと同時に横に飛び抜いて躱す。先ほどまでネロがいた場所は挑発に乗った上位竜の脚で踏み抜かれていた。なまじ腕でもかなりの大きさを持つのでその場所の家屋は倒壊する。間一髪躱したネロは二軒隣の家の屋根に立ちその様を眺めていた。躱された上位竜はそのまま鎌首をネロに向けて火球を吐き出してくる。


難なく躱す。見えているのであれば難しくない。


火球が飛んでくれば、跳躍して建物の壁に張り付く。火球が爆発を起こし、瓦礫を散乱させるのを見ると再び跳躍、空中にある瓦礫に飛び移りながら飛竜に肉薄する。


「デヤヤァァァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァ!!!」


掛け声とともに一閃。深手にはならないが鱗を引き裂き血が吹き出る。


上位竜も飛び回りながら、爪で引き裂こうとしても空を切るばかりで、火球を連続で吐き出しても陽炎のように当たらない。

ネロは今自身の持つ魔力特性である稲妻を使い肉体の電気反応を過敏に強化し身体能力を底上げしている。

後は経験さえあれば、目視でも躱せるようになるため怒りで冷静さを失った今の上位竜なら躱すだけなら問題ないだろう。


例えば、ネロだけに集中するならもう一人に気づかないとか。


「やれ!バイド!!」

「ああ、『スラッシュ』!!」


駆け抜けながらバイドは魔力を練り上げクレイモアに纏わせる。大きく跳躍すると上位竜の背後から大上段から切り裂いた。


「GURAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッッッ!!?」



ズバァンっ!という大きな音を響かせて背中の甲殻ごと切り裂き先ほどとは違い大きな血しぶきをあげて竜は悲鳴をあげる。

上位竜の魔力耐性は放出される魔力に限定されており、剣などにエンチャントされた魔力はその限りではない。

破壊力も増し、大きなダメージを叩き込める。ネロが魔剣を所持しているのにもかかわらずそれをしないのは彼女の持つ魔剣は外部からの補助なしではただ魔力の塊を放出するだけの剣になるためでそれを補うために付与魔術師である兄レンヤと共にいるのだ。


しかし、いくらエンチャントを施しても上位竜は現代の尺で測る場合、おおよそ15〜19m。翼長25mほど。

おまけに体力も多いため、これでも決め手に欠ける。


「だったら!」


ネロは上位竜の背後に回ると見事なムーンサルトを決めながら竜の背中に飛び乗る。


「オラァッ!!!」


自身の愛剣である魔剣ズツァニッグを突き刺し根元まで押し込まんと力の及ぶ限りに体重をかける。ついでに突き刺しながら放電し、上位竜にダメージを与えていく。


これにはたまらずといった上位竜は背中のネロを振り落とそうと無作為に暴れ始める。


「ち、この…………、って危な!」


ネロは熱を孕んだ槍を視界を収め咄嗟に飛び降りてその上を炎の槍が通過していった。熱の槍は上位竜の背中を焼き苦悶の声を漏らす。


ネロは暴挙を起こしたニアスにそれを抗議し犯人であるニアスは聞き流す。戦いながら、そんな一場面もあったとか。


「おい!ニアス、ウチを殺す気か!?」

「制御めんどい、直感で避ける。」

「フザケンナ!!だいたいこんな状況で火属性の魔法ブッパすんなよ!!!焼け野原ってレベルじゃねえぞ!!」










ーー 一方、戦線を離れたオルストはエストレアから渡された大弓を取りに今はもう竜の火炎弾で炎上している兵舎にようやくたどり着いたところであった。


「くそ、ここまで火の手が………!『オルスト殿ーー!』え、えあ!?」


兵舎は焼け落ちていて大弓も灰燼と化しているはずだ。打つ手なし、項垂れそうになるオルストの背後から声がかかり、驚きのあまり変な声が出た。

見れば、ウルマト駐軍の正規兵でオルストの前で敬礼し始めそのままあらましを教えてくれた。


「上位竜が火を吐き散らしてからここも危険だと判断して兵は地下水道に退去しました!後、例の大弓はあそこの鐘楼の塔内部に五人がかりで運び出しておきました!」


兵士は右を指差しその方向にある大きな塔を示した。塔は鐘楼があり、そして火に晒されても無傷に立っている。それを知ったオルストは顔をかんばせて笑う。


「そうか、ありがとな!!」


「いえ!オルスト殿、ご武運を。作戦の成功に戦いの神バエルの加護がありますように。」


二人は互いの無事を信じ別れる。もう街中にいる魔物は軒並み上位竜の吐く火によってことごとく消し炭になり残るのは必然と上位竜・真紅のみ。


ああ言っていたがあの兵士は取り残された兵士を探しに言ったに違いない。何故なら、彼は火が強い場所へ駆けていったのだから。


「グダグダしたが………俺は俺の仕事をこなすだけだ。日も落ちかけている、チャンスは今しかない……!」


鐘楼の塔内部の螺旋階段を登りながら手にした大弓を担いでいく。ズッシリとした重みが、外の熱と合わさり多量の汗をかいていく。


「こうしてみると、絶好の位置だよな。…………よぉし、いっちょ、やりますか!俺の腕前に惚れろよお前ら。」



●●●





白熱する竜殺しと上位竜との傍ら、エストレアを担いで走るリムは立ち往生を余儀なくされていた。理由は、目の前を塞ぐ人、魔物の焼け死体、倒壊した建物で、道が塞がれているため。


「困ったわ、どうしよう。」


ここに来るまでの間、リムはエストレアを担ぎながら戦闘をしていた。片手に握る槍を豪快に振るって敵をなぎ倒してきた。時にはタリスマンを掲げて着弾と共に弾ける雷球を投げたりもする。


だが、既にタリスマンを振るうには魔力も尽き、槍を振るう体力も少なくなり歩くのが精一杯になるまで戦い、走ってきた。


そうこうしているうちにまだ生き残っていた魔物が彼女らを囲い始め焦りを感じると、魔物の一体にナイフが突き立てられ振り返れば特徴的なウサギ耳。


アグニルだ。彼女はたしか、ネロとリムと一緒に向かったと聞いていたが………服は煤けていて手も煤汚れている。


「何を言いたいかは後よ。取り敢えず、みんなは無事。ジッドはメンバー集めて負傷した兵士を地下水道に誘導してる。後のみんなはあそこにいる、わね。」


アグニルが指差す方向は、エストレアに重傷を負わせた上位竜が火を吐きながら旋回し、その周りを魔法、剣をぶつける姿が。


ただあれではダメだ。目を凝らして鐘楼の塔には既にオルストが大弓を持ってスタンバイしている。今の状態では、狙撃は不可能だ。

だが、それ以前にーー


「リム殿、降ろしてくれ。魔物が集まってきている。私の血に嗅ぎつかれているようだ。」

「ダメよ、まだ歩ける状態じゃーーー、うそ……!?」


そう、既にこちら側に近づく魔物が集まってきているのを感じとり、降ろしてくれと懇願する。懇願しながら降りるエストレアに止めようとしたリムは目を開いた。グチュグチュと音を立てながら急速に塞がる傷口。担ぎ上げた時は立つのもやっとだったのに今ではしっかりと地に足をつけている。


そして、傷は塞がりつつあるがまだ出血が止まらず、手首から滴り落ちる血が意思を持つようにエストレアの手に絡みつきある形を形成する。

それはエストレアにとって無意識に働かせた行動だった。


「何、それ………!」

「わからない、だがなんとなくわかる。もっとイメージを固めて……こう、だ。」


あやふやな形を再定義して横薙ぎに振るった。するとどうだろう、赤黒い剣閃が鞭のように伸び魔物が思うがままに切り倒された。

定義した形はグレートソード。刃渡りは凡そ170cm。刀身は幅広く、黒塗りの刀身がなんとも不気味。

それも、自身の血から出来たとなればなおさらであろう。

それだけではなくこの剣は生きていて、血に飢えている。どうやら、魔剣の類だったようだ。


一閃。それだけでここに集まっていた、いや集まろうとしていたものを含めて全ての魔物が斬り伏せられた。


「成る程、さしずめ私の牙といったところか。」


跳躍。エストレアは二人を置いて今なお暴れる竜種の元へ駆け出した。







「いっちゃった……。」

「追いますよ!あんな体で戦えるわけないじゃない………!」


取り残された二人は、同じようにエストレアを追いかけていくのだった。





ーー続く

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