↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第1章 目覚めの王国
36/229

chapter4-10ーchapter end

多分、リメイク前でも一番多く書いたと思う。


◯竜を落とす作戦





「しっかし、まああの新人もなかなか思い切った作戦たてたなぁ。避難させたとはいえ、住宅エリアを使ってゲリラ戦、追い立てて所定のエリアから狙撃。それを俺に任せるとは。」


手には彼の2倍の丈を持つ巨大な弓。備え付けられているとは別に倉庫で眠っていた大型弩(バリスタ)を無理やり急改造した大弓を手に迷彩の外套を包み込んでチャンスを待つ。


オルスト・レヴァン


精霊契約者で、城塞都市シェアトの誇る竜殺しの一人。

そして、狙撃の名手でもあるーー


「さて、奴さんは気づいてねえか。そろそろ合図が…………。」


飛び回る上位竜に既にいくつかの区間が焼かれてはいるがその範囲は広い割りにそれほど燃えてはいない。そろそろか、そう感じさせる頃にこの場所以外の場所に配置された兵士が、鐘を鳴らす。



カラーーン、カラーーン


それが合図。


「よぅし、やるか。」


「『我が契約せし風の精霊に請い願う。ただ一つの迷いなく乱れることのない必中の矢をーーー届けたまえ。』」


ギリギリギリ…………

鎖の弦が己の手首に食い込み、赤く痛い。手に持つ矢も大型弩(バリスタ)の装填用の槍の如き大きな大矢。矢だけでも大きさゆえに片手では少々重い。


その目に映るのは飛んではいるが、滞空したままそれを維持したーー竜である。


風が、穏やかになり絶好の射撃、後は射抜くだけだ。そのあまりにも大きい大弓から弦を離し槍のように大きな矢が放たれるーー



●●●





遡ること数時間前ーー





「住民の避難が完全に終わったよ、北にある領主別館に避難することが決まってる。で、最後の組みが出発したところよ。」

「おう、つーことはだ。いま、ウルマトにゃ俺らと騎士らしかいねえわけだな。」


兵舎の中、粗末な木の机と椅子が並べられた会議室で、街の全体図がデカデカと貼られ作戦会議である。

アンナとリムによる避難誘導が終了し、その知らせが届いたところであった。元々、魔物、魔獣が押し寄せているという情報により既に街の人々の殆どは隣の村々に避難していて街にいたのはごく僅か。

それが終わったことで今ウルマトにはエストレア含む竜殺し達と、魔物が襲いかかろうとする方角以外から来た増援の冒険者達、ウルマト常駐の騎士達のみである。


全体図には既に市民を表すマーカーが取り外され、どのようにして動くか、を思案中だ。


全体図を見てみれば、ウルマトという街は中央の円形の広場を中心にそれぞれ東西南北に向けた大通りがありいくつかの路地裏や十字路があるものの街の作りとしては単純なものだ。

今回の魔物達がくる方角は南側であり、他の門は火事場泥棒等にならぬように見張りが最低限配置されている。

そして、それぞれの大通りに面した町の外に通じる門と、見張り台、時刻を知らせる鐘楼の塔がありエストレア達冒険者は狙撃ポイント候補として鐘楼の塔を選んだ。

何故ならば鐘楼の塔は街全体を見渡せるほどの高さがあり、来たるタイミングの射撃まで隠せる螺旋階段、町を起こした際にドワーフの鍛えた魔法防護が塔に施されているのだ。

おそらくは上位竜の炎のブレスさえ耐えることは可能だ。


「あとは………意図的に魔物どもが来ている方角の門を開けて、魔物と竜を誘うってわけか。死中に活を求めるとは言うけどな………無茶だろ、寧ろ竜を視認できてんだから矢を射るなりして誘い込めば良いじゃねえか。」

「ネロ、おそらくは竜に矢による警戒心を持たせてはいけない作戦だろう。魔物どもを率いていると言ってもいい奴が竜なんだ。竜種どもの生態的に必ず自ら攻撃に出る。」


誘い方は確かにネロの言う通りでもあるが、狙撃による墜落を狙いたいエストレアにとっては矢による挑発は良くないと言おうとするが………そこをフォローしたのは放浪の騎士バイドだ。

折れかけのクレイモア一本で上位竜を倒した冒険者の一人。


「ってことはなんだ?オルスト以外は弓より射程短え、魔法かけても威力ショボい弩で対応すんのか。かったりぃーな。」

「もうすぐだ。兵士たちにお願いして急ピッチで運んでもらっている。」


エストレアは、何も弩を使うとは言っていない。使うのは大型の大弩(バリスタ)だけ。それを少し改造するだけなのだ。

よくよく考えれば、今この場を仕切っているのは作戦を立案したとはいえ冒険者の新米なのだ。なのに、心の底から逆らうという感情や行動が出来ない。


強い扇動力といえばいいのか、いやカリスマというものだろう。


「何の話だ?」


「エレン殿、大急ぎで予備の大型弩を運びました。確認お願いします。」


それに答えようとした時入り口から一人の若い兵士がエストレアを呼び出す。どうやら、大型弩を使って何かするらしいが………。


「来たか。レンヤさん、少し離れるからここを任せても良いだろうか。」

「おう。時間はねえから早く戻ってこい。」


エストレアは退出する兵士を追い、会議室を後にした。








●●●





「これでよろしかったですね?」


目の前にあるのは城塞に取り付けられる、または攻城用大型弩である。

全長5メートル程、翼の幅はおよそ2メートル近く。かなり古いのか巻き上げ式ではなく直接引っ張るタイプのようで弦に当たる鋼線部分にはうっすらと血が付着していて吸血姫たる自分には手に取るように分かってしまう。


とはいえーー


「よ、暇だから来ちまったぜ。」

「…………。」


このようにエストレアの他に何故かジッド、そしてニアスまでついてきていた。とはいえ、見ているだけだから予定通り脳裏に決めていたことを進めることにした。


「ああ、これでいい。早速だが、これを解体して欲しい。技師はいるだろうか?」


「は?解体、ですか?」

「「解体?これを?」」


兵士と、竜殺しの二人は当然何を言い出すのかという顔をする。


「ああ、翼とグリップと弦を残してな。即席の大弓にする。一から作り始める時間もない。」


「いやいや、待て待て待て!?」


「なんだ、ジッド。何かおかしなことでも?」


「普通に考えてもおかしいだろ!?2メイル半近くある弓なんて誰が使うんだよ?!」


何がおかしいのかと思えばなるほど、木材と鉄で出来た大型の弓なんて使う人なんていない、いや扱える人がいないのに、何故それを持ち出すのか、ということらしい。


「安心しろ、こう見えても手先は器用なんだ。ふむ、翼に滑車をつける必要があるか。このままじゃ、人の力じゃ無理だな。」


「話を聞けよ!」

「ジッド、黙る。新米、それはどう見ても人が扱える弓じゃない。トロールとかオーガみたいな巨人とかが持ってるような………。誰に使わせるの?」


妖精族のニアスが、小さな手でジッドの口を黙らせると妖精特有の灰色の瞳がエストレアを見定めるように見つめてくる。


「会議室で行っていた通り、これで狙撃に使うつもりだ。とはいえ、常人じゃまともに扱えないから魔法をレンヤ殿にかけてもらって負荷を軽くし一発、二発程度なら使えるようにしてもらう。奇襲ゆえの一発勝負になるから耐久性なんて考慮しない。」


ーー予想では、二発で木製の翼が限界を迎えるだろうな。


そう言いながら、兵士と一緒に翼と本体の機を取り外し二つの翼を確認する。

長い間、暗い倉庫の中で保管されたせいか埃だけではなくカビまで生えている。

ささくれも目立っており、本当の意味で数回しか持たないだろう。


取り外した弦を確認するがこれも切れかかっており、予備を持ってくる時間もないため鎖を二重に巻くことで弦の代わりにする。

翼には機に取り付けられていた小型の滑車それぞれにつけることで、弦の代わりである鎖の滑りを良くし、グリップ付近にも紐を巻いて耐久度を少しだけ持たせる。

粗造りだが、大方これで良いはずだ。


弦を引っ張り確認する。やや重いが、問題はない。


「矢を。大型弩の矢をくれ。テストする。」


槍のように大きい大型弩の矢を片手に受け取ると流れる仕草で矢を番える。的は、視界に入った鎧。

大きく、なおかつ太いため構えるだけでも視界が限定されるが、問題ない。

三人の見守る中、弦を限界近くまで引きしぼり


「ふぅーーー………………しっ!!」



ドゴンッッッ!!!


「「「おおっ」」」


放たれた矢は着弾するなり鋼鉄製の鎧は吹き飛び大きな音を立てて崩れ落ちる。

確認のため近寄ると、鎧は大きな風穴が空いていて、放った矢は穂先から折れて貫通している。


目標である上位竜の鱗ないし甲殻は鋼鉄に匹敵、あるいは上回るとされているので最低限はクリアしていることになる。

エストレアとしてのベストは翼膜か、翼の根元を狙い撃ち出来ればいいのだがこればかりは狙撃をお願いするオルストの腕前に期待するしかない。


「一先ず、少し調整して戻るとするか。ーーー何をやっているんだ?」






「ふぅんーーーぬぅーー!!!!だぁーー!!硬え!!半分しか弦引けねえ!あいたぁ!?」

「ファイト、ジッド。」


見れば、ジッドが確認のために念のため置いておいた大弓を引こうとしていた。が、彼を持ってしても半分近くしか引けず、そのうち、腕が攣ってしまったらしい。

そもそもエストレアは軽々と引いていたがそれは吸血鬼としての怪力であり常人の力では先ず引ききることは無理だ。


純粋な力のみでは(・・・・・・・・)、だが。


魔法による加護があれば、引ききれるとエストレアは踏んでいた。それにオルストはジッドから教えてもらったように精霊契約者だ。彼だけではない。レンヤという冒険者も付与魔法の使い手。

うまく噛み合えば、この厄介な大弓も引くことも可能だろう。


「よし。ジッド、ニアスさん。戻ろう。」


「ひゃーー、腕が痛え。」

「ん、わかった。」


分解した大型弩を片付けるとエストレアは皆がいる会議室へ戻るのだった。






(………不思議な人。冒険者駆け出しなはずなのに、どうしてこうも言葉に力があるのか。抗えないのか。闇精霊(バンシー)じゃないのに。まるでーーー『人』じゃない、人の皮を被ったーーそう。滅びた種族みたい。)


彼女、ニアスは先頭を歩く大弓を担いだエレンという冒険者に灰色の瞳を興味を持って写した。



●●●



「お、戻ってきたな。早速だが、数十分前に門前でドンパチ始まっちまった。先にネロとリム、フレニアの三人が門に向かった。場所は当然南側だ。」


部屋に入るなり、出迎えたのはオルストだ。そのほかにはバイド、アンナ、レンヤにあと今追いついたらしい冒険者ら数名。


「もう始まったのか?それにしてはやけに静かなもんだが。」

「そりゃそうさ。ネロの奴、魔剣の力で迫っていた魔物達殺したんだから。いや、スゲェよな。雷を放つ魔剣なんてどこで手に入れたんだか。」


ジッドの疑問に答えたのもオルストだ。彼曰く、狙撃地点の鐘楼の塔から、精霊の眼を持って一部始終見ていたという。

なんでも、剣を天に翳すと1秒もしないうちに迫り来る魔物を雷を落としてすべて黒焦げにしたらしい。落雷ではなく、一度落ちたらあとは、周囲にいる自身が敵と認めたすべてに拡散していく能力なのだとか。


「オルスト殿、これが今回の作戦用の弓だ。レンヤ殿に付与魔法の加護をかけないと多分引きにくい。」

「おお。って、でけえな。まあ、なんとかなるだろ、任せろ。」

「期待している。」


エストレアは背に担いでいる大弓をオルストに預け、矢も数本手渡す。が、それでも重いのか、壁に立てかけて戻ってきた。


「オルスト。それで?竜種はどこにいるのかはわかるの?」

「いや、奴さんは見えねえ。逃げた、ってわけではなさそうだが俺と俺の精霊の眼じゃ捉えきれなかった。」


ニアスも質問をするがこれだけはオルストも分からなかったようで困惑した顔をする。竜は気まぐれだ。なんとなくで蹂躙と破壊を繰り返し、なんとなくで財宝を集め、なんとなくで眠るのだ。誰にも縛られずに自由に生きているのが竜種であり、この世界の生態系の上位に生きている。


だが。今回は違うと言える。上位竜と言えど自由を好む竜種であり、なおかつ群れることを嫌う。なら、上位竜が魔物を引き連れてここを迫るのは本来ありえないことであった。


「!」

「!!」

「どうした?」


ここで、ジッドのパーティーの一人である兎人のアグニルとエストレアは直感のまま叫んだ。

アグニルは種族ゆえの本能的直感。

エストレアは、紅 諸葉の経験を引き継いだ故の直感。


「「来る。」」


ーー今っ!!


『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!』


ここまで響く天地轟かす咆哮。そして、駆け込んで来る兵士。告げられるのは。


「ウルマト上空より上位竜・真紅が出ました!更に魔物により、死傷者多数!」


「お前ら!出るぞ!!」


今を持って火蓋が切って落とされる。









続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。