Chapter4-8
少々、難産で遅くなりました。申し訳ありません。え、リメイク前は何ヶ月も放ってた?耳が痛いですが、応援よろしくお願いします。
暗がりの一室。それぞれの椅子の前にひとつだけ灯されたロウソクだけが輝きを放つ。
部屋は、かなりの広さがあり、中央には円卓が設置され既に7つの席の空きがあることを除けば概ね揃っているというだろう。
そして、ちょうどその部屋にジッドと連れられたエストレア、アグニルが入室する。
見知った顔で言えば、一応同じメンバーに当たるドラン、上位竜・青を倒したことのあるフレニアぐらいだろうか。
席数は大体12。暗がりだから正確な数はわからないがやや多いだろう。
既に座っている人達の後ろには控えるように一人立っている。
「来たか。といってもあと六つ空きがあるな。」
円卓の上座には黒みのある狐の獣人だ。薄暗いが、エストレアの眼を持って見ればここ、冒険者ギルドのエンブレムが刻まれた勲章がつけられている。
ーーギルドマスター…………か。
暗がりと言えども、獣じみた瞳はろうそくの明かりに反射してギラついているように見えるし、わずかに緊張しているようにも見える。
上座がギルドマスターと定義するなら他の席に座る面々を見渡す。
机に足を投げ出して座る女性
となりに杖を持った男
先ほどの女性から一つ開けた席にーー珍しい。妖精だ。宝玉らしき触媒を抱えた体をすっぽり覆うローブが特徴だ。
さらにとなりにはより緑衣を纏った男性。手の張りからしてかなり若い。さらに目を凝らせば精霊と契約しているらしく、先ほどの妖精と同じくかなり珍しい。属性は風と見た。獲物は狩猟弓のようだ。
その反対側にいかにも騎士と言ったチェインメイル着込んだ男。フードのせいで顔は見えないが顎のラインから見ておじさんではない。
そして、一度冒険者ギルドで会ったことのある上位竜・青を倒した女傑、フレニアの姿もある。
「おいおい、いつからこの会議は下っ端も入れるようになったんだよ?ジッドは分かるが、後ろの赤髪は何だぁ?この部屋は最低でもBランク以上じゃねえと入れねえぞ?」
テーブルに足を乗せて行儀悪く座り、エストレアを嘲笑いながらこちらを見てくる。
目で見えた限り、小麦色の髪をウルフカットにした少女で左耳だけイヤリングをつけている。彼女の後ろに鞘に収められた直剣が立てかけられていてよく手入れされているようだ。
その隣には、大きな杖を持っていてその柄頭に、両手を重ねている男で彼女とは逆の耳にイヤリングをつけている。
一瞬だがこちら側を見てくるものの何も喋らない。
なるほど、ジッドが連れてきた意味は分かるがここはおそらく一定以上のランク持ちの冒険者か、パーティーリーダーしか入れないようだ。
「ジッド、私は外に出ていよう。彼の言う通り、まだFランクだからな。何、軽く施設内の格技場を使わせてもらうさ。」
「あーあ、ネロが冷たくするから。冷たいこと言わない。レンも兄貴なんだから妹くらいなんとかしなさいよ。ほら、座って。どうせ何人かは来ないんだから。」
同伴していたアグニルに促され、空いている席に誘導されるが背後から音もなく近づいてきて
ギュムッッ
背後を振り返る暇もなく抱きつかれる。後頭部に当たる自分より倍、いや三倍はあるソレ。
一体何を食えばこうなるのか。
いや、この柔らかい物体Xについては自分も女だ。前世では男で、その記憶も、経験も残ってる。
故にそれがなんなのかは分かっているのだがーーー
息が出来ない。
「ーーー!!ーーーーー!!!」
「やん、可愛い!!お人形さんみたいねっ!!」
バタバタともがくが、むしろさらに柔らかく包まれていくだけで、むしろ悪化していく。
「おい、リムやめてやれよ!?溺れてんぞ!?」
「えーーっ!!こんなに可愛いんだよ?!やだーー!!」
駄々をこね、リムと呼ばれた女性、はエストレアをさらに抱きしめてくる。当然、エストレア自身にとってはもっと身動きが取れなくなってしまった。
「もがっ!!だ、抱きつ………な!息が………息が………!!」
もう、無理かもしれない。百合の趣味はないが、肉の海に溺れるとは。
「ねえ、マスターこの子持ち帰りしていい!?いいよね!?」
「………いいわけないだろうが。他人の趣味に口出しするつもりはないが今回の集まりを忘れたわけではあるまい?さっさと座れリム・カタール。それとも私の大斧でその無駄にでかい脂肪の塊、切り落としてやろうか?」
むーー、と不満げな顔をしながら静々と席に座る。お陰で落ちる前に脱出することができた。
ーーああ、空気が美味しい………。
●●●
「災難だったね、エレン。」
「うう、ひどい目にあった………。別の意味で、この肉の塊に憎悪したことはない。」
今でも、というよりはさっきやられた感触がまだ生々しく残っていて前世ならご褒美だろうが、同性の身ではただ鬱陶しいことこの上なかった。
チラッと見れば本当に何を食えば、どういう成長をすればああなるのか。
リム・カタール。
流れるような金髪、のほほんとした柔らかなサファイアの瞳。そして、何故か修道服を着ているがそれをこれでもかと押し上げる双丘。
獲物はその背中に背負っているようで、長槍らしかった。
視線に気づいたのか、彼女はエストレアをキラキラといや、ギラギラとした視線で全身を舐めるように見てくるのだからランクがどうとか関係なしに居心地が悪かった。
「こほん、結局他の連中は来なかった。よってこのまま進行させるとしよう。全員は既に通達があったと思うが、我が国において交易1、2を争う街ウルマトが近隣の大樹海から発生した魔物の群れ、『暴走』に飲まれようとしている。既に先日、救難の知らせを届けた騎士の一人がこのシェアトに転がり込んで着たのは記憶が新しい筈だ。」
咳払いし、黒い狐耳を揺らしてギルドマスター、ルディナが後ろに控えた秘書から書類を受け取ると辺りを見渡してここ数日の出来事を伝えてくる。
「残念ながら、今冒険者達がウルマトに向けて向かっているようだが到底間に合うまい、という結論が既にでている。仮に間に合ったとしても『上空を陣取っている上位竜・真紅をどうにかしなければどうにもならんのだ。』」
ルディナは目を細めて、再度この場に集っているメンバーを見る。
ここまで来ると、エストレア自身だいたい理解した。
「ははーん、なるほどね。うちらだけここに呼ばれた理由がそれかよ。『竜殺し』を成し遂げた冒険者を集めたってわけか。そこの新米を除けば全員、竜殺しだもんなぁ?」
「そういうことだ。とはいえ、この場で上位竜・真紅を倒したものはいないがな。ネロ、お前は………黄、青だったか。」
「ああ、間違いねえ。」
ネロという少女が交代した通りで、そう、この場にいる冒険者は皆『竜殺し』を成し遂げている猛者ばかり。
つまり、自分が世話になっているパーティーリーダー、ジッドもその一人、というわけだ。
普段、ジッドの依頼をこなす姿を見てないから実力のほどはわからなかったが、これはいい測りになるのではないか。
横目で彼を見ると気づいたのかエストレアの耳元にこっそりと打ち明けて来る。
「(まあ、俺の場合エレンさんのぞいた皆で、手負いの上位竜・灰をとどめ刺しただけなんだけどね。)」
「それでも十二分にすごいことではないか?手負い、といっても曲がりにも竜なのだからかなりの深手を負ったのでは?」
「いや、そうでもーーおっと、そうだ。ついでだからここの連中は初めてだろう?教えてやるよ。」
「そうか?では頼む。いずれ関わることは間違いないだろうし。」
エストレア達が座っているのは席の端側、暗がりを利用してジッドがギルドマスターの話を聞かずにエストレアに出席するメンバーを紹介し始める。
「よっしゃ、任せろ。先ずはお前に退出促したあいつ。ネロ・ジアスティア。バル・クラウディア帝国出身の魔剣使いでな。男勝りな奴だが、根は優しいぞ。
で、次がその隣。ネロの兄貴の、レンヤ・ジアスティア。付与魔法の使い手で、妹の魔剣に更なる属性を付与させて援護に回ることが多いな。
その次、金髪のエロいネーチャンがリム・カタール。元修道女なんだが、職場での嫌がらせに耐えかねてここに来たらしいんだな。まあ、理由は………お察しだ。あれは、二度見必須だな。」
「思い出すだけで、気持ち悪くなってきた。」
「そりゃ、あんな風に抱きつかれたらな。で、だ。異例だが、妖精族のニアス。あんなんでも、宮廷魔術師の資格持ちだ。英雄の一人、大魔法使いズオーの弟子だって噂らしいぞ。
そして、向こうのチェインメイル着込んだ騎士っぽいのが放浪の騎士バイド。何でも折れかけのクレイモア一本で灰の上位竜を倒したんだとか。
その隣、緑衣を纏った精霊契約者がオルスト・レヴァン。風の精霊と契約してて、風の加護のおかげで百発百中なんだとさ。そして、最後になったが上座に座っているのはーーーおわっとぉぉ!?」
ギルドマスター、ルディナの魔力弾が雑談をしていた彼らに向けて射出された。
当然、避けるがただの警告だったらしくそれ以降何もしない。
「うむ、おいそこ、喋るな。後でしろ。はあ、もう一度言うが、ウルマトとここを繋ぐ転移門は機能していない。よって、出撃はーーアレをやるから準備をしておけ。」
「アレ?」
「げっ!?」『なっ!?』
どうした、と訪ねてみればジッドだけではなく他の竜殺しの皆も手がガタガタと震えているのがわかる。
一体、アレとは何なのだろうか。
「げっ、だの、なっ!?、だのは関係ない。時間がないからな。この場にいる皆は屋上に来るように。なに、怖くてもこれなら最短だ。快適な空の旅を楽しめよ?」
………なにをするつもりなのだろうか。
エストレアは、新米ながら先行きが少し不安になったのだった。




