Chapter 1-2
お待たせしました(●´ω`●)今章は冒険寄りになります。
「ぜりゃあああああ!!!!」
「はぁああーーー!!!」
《ピュイィィィィィィィィィィィィ!!!!》
勇ましい掛け声と共に二つの剣閃が魔獣の身体を駆け抜ける。
両手剣と黒の長剣のデュオ。エストレアとジッドの2人による連携によって魔獣はひとたまりもなく地に落ちる。
「なかなかじゃねえか」
「そっちこそ。変わらずの連携だ」
晴れ空の下、商隊の護衛として参加したエストレア達。
その道中は苦もなく不可もなく、と言ったところ。
今回の魔獣退治も道中の障害を取り除く為のものだ。
地面へと墜落した巨神鳥を見ながら、エストレアは大きく息を吐く。
「いやー、相変わらずエレンは強いわね?普通、巨神鳥なんてランクAの魔獣なのよ?うちらだけだとこの倍は手こずるのに」
そう言いながら、手早く解体するのはうさぎの耳が特徴的な女性の獣人、アグニルである。
とある一件にて、距離が縮まった1人であまり他者との関わりに関心がないダークエルフのイルナとイザルナの2人が年相応の態度を取る数少ない友人と言えるだろう。
「俺、出番なかったわ……」
「まぁ、仕方ないじゃなぁい?ドラン、貴方は僧侶だもの。流石に空を飛ぶ魔獣相手に肉弾戦持ち込むのはねぇ?」
「うっせぇぞ、ガペット」
商隊が設営したキャンプで、火おこししながら拗ねるのが僧侶のドランであり、鍋を混ぜているのがオネエ口調のガペット。
2人もジッドのパーディーであり、彼らもエストレアがシェートリンド王国で冒険者として関わりがあった人達だ。
「はい、そこ!無駄口叩かないで、手を動かす!」
そして魔法使いのアンナだ。パーティーの2人めとなる女性で、前衛のジッドの恋人であり魔法使いを兼ねている。
彼女はおこぼれを狙ってやってきた屍舞鴉を追い払いながら、エストレア達が戦いやすいように立ち回っていた。
(相変わらずバランスが取れたパーティーだ。斥候のナッシュがいればさらに盤石だったろうに)
エストレアは今もファンテリム帝国で幼い皇女アンナリーベの無茶振りに振り回されているであろう、彼らの元メンバーのことを思う。
とはいえ、帝国での自分の役割は終わった。別れの挨拶もなく、出ていったから名残がないかと言われれば嘘になるが、いつかは巡り合える。
「ねえねえ!エレン、こいつの肉で、前作ったカラアゲを作ってよ!巨神鳥なら鶏肉みたいなものでしょ?!」
「アグニル、お前な……。分かった。ただし!下処理とかは手伝ってもらうからな!」
よっしゃあ!という彼らの喜ぶ声が木霊する。シェートリンド王国で竜種の一つ、上位竜の真紅個体が商業都市ウルマトを破壊した時、その復興作業で振る舞ったカラアゲが忘れられないのだろう。
この世界、油は高価だ。とはいえど、オリーブ油などの植物油が高価なだけでラードといった動物性の油はわりと庶民で手に入ったりする。
巨神鳥の肉ともなれば、その鳥皮は非常に大きいため、これだけで擬似的な鶏油になるだろう。多分。
「時間かかる?」
「油から確保しないといけないからな。錬金術で頼ってもいいが、食材の一体感があったほうがいい」
「錬金術と聞きまして!」
「ジェシカ、黙っていろ。火傷するぞ」
得意分野の単語を聞きつけてやってきたジェシカの頭を抑え、抱きつこうとする彼女を制止する。隙あらば、セクハラをかましてくるため貞操的危機ならあのアンチクショウなマリウスすら上回る。
しかし、普通に鶏油を抽出していたのでは時間がかかりすぎる。ので、ズルをする。
エストレアの瞳が一瞬光り輝いたと思えば、投入したばかりの巨神鳥の皮から出た油が鍋いっぱいに満たされていく。
「おや、エストレア。時間を操作したのかな?」
「マリウス、お前も退いてろ。油が跳ねても治療はしてやらんぞ」
少々ぞんざいだが、無視して油を出し尽くしたガラとなった皮を切り分けて彼らに提供していく。
「「「「んまっ!!!」」」」
彼らの感想はそれだけ。そこから先は皿からなくなるまで彼らは皿の前に釘付けだった。
肉に関しては、宣言通り、アグニルに下処理を手伝わせていたからここからは何も変わらない普通に揚げていくだけ。
ジュワ〜〜〜という音を立てて、天空の狩人たる巨神鳥の肉は油の海の中で泳いでいる。
「お姉様の手料理……!これだけで、私、舞い上がりそうですの!」
「そうか。跳ねると危ないから商隊の方々と交渉してこい。海にいくから湿度対策は必死だぞ」
ひーん、と半泣きながら去っていくジェシカをよそに興味深そうにピョンピョンと中を見ようとするダークエルフの双子を引き離す。
「味見してくれ」
序でに一番目に入れた肉を取り出して、半分にカット。それを2人に提供する。切った断面から見て、火はしっかり入っているので問題はないだろう。
ちなみにこの瞬間につまみ食いしようとしたマリウスに裏拳を叩き込んで地面に沈めている。
「はぅふはふ……」
「ほっふ、はふ……」
「「姫様。美味しい!」」
それを見たエストレアは一つ摘んで口に含む。カリッとした外に、ジュワッと肉汁溢れるプルプルの肉のハーモニーに、思わず頬が緩む。
(これなら二度揚げはしなくてもいいな。………が、肉多いんだよな)
チラッと見えた肉の山。流石にこれ全部を揚げるのは無理だ。とりあえず、小腹を満たす程度だけ作って、後は商隊の方々に売ると決めたのだった。
◆◇◆◇
「いやーーー、美味しかったぁ!」
「それは何よりだ」
カラアゲパーティーは大成功。ジッド達も懐かしげに無言で口に運んでいたし、商隊の方々にも振る舞ったら振る舞ったで製法を教えてくれ、だの他の肉でもできるのか、だのと問い詰められたのは記憶に新しい。
「ん。風にしょっぱさが出てきたな」
エストレアが鼻を鳴らす。
森の香りに混じって、どこか懐かしい潮の匂いが漂っていた。
「え?本当?」
アグニルが首を傾げる。
しかし、しばらくしてから彼女も気付いたように鼻をひくつかせた。
「あっ、本当だ!」
「つまり、目的地が近いってことだな」
ジッドが地図を広げながら呟く。
今回の商隊の目的地はシェートリンド王国南西部最大の港湾都市。
海洋交易によって栄える港町――レグナード。
数日後には到着する予定である。海洋連合へ向かうには船が必要なため、ここから船に乗り継ぐのだ。
「冒険者さん達のおかげでだいぶ早く着けました。もう少しだけお願いしますよ」
「合点承知!任せとけっ!」
商隊のリーダーである初老の男性が嬉しそうに呟き、それを聞いたジッドが屈託の笑みを浮かべる。
「海は久しぶりですわね!お父様の出張で来た時以来ですわ!」
「そういえば、私も見るのは久しぶりだ」
貴族令嬢であるジェシカや元がつくものの公爵令嬢だったエストレアも海に関して無知というわけではない。エストレアも転生した身でもあるから、前世での記憶もあることで何ら忌避感もない。
時間が経ちすぎて、かつての前世の海はどうだったかは朧げの向こうになってしまったが。
そうこうしているうちに関所に到着。検閲待ちの他の荷馬車がごった返しになっており、さらにはすでに日はだいぶ傾き始めていた。
「検閲待ちで夜を明かすことになりそうだな」
「となると、野営ね」
「あぁ、それとジッド。あと盗人対策だぞ。こういう場所だと何盗られても、すぐには気づくことはできねえからな」
ジッドとアンナが即座にプランを練り直しを図り、商隊の代表と話をつけに行った。
さらにエストレアはドランの言葉に合点がいく。これほどに物資を運ぶ荷車が集まっているのだから、少し盗られてたとしてもすぐには気づかないだろう、という事実に。
「まあ、こういう護衛依頼に参加すると大抵どこかは被害に遭うんだよねぇ」
そう言うのはアグニルの言。その口調からして、経験からくるものなんだろう。
「でも、あながち間違いではありませんわね。人が多いから盗みは起きないなんてのはまやかしですわ」
「そうなのよぉ。だから、こう言う時は多めに運ぶのよ。予定されている量きっちりだと盗まれたり、破損した時の補填がエグいことになるからねぇ」
「盗まれることを前提に運ぶ、というのもなんか変な話だ」
「変じゃねえよ」
不意に横から声が飛んだ。振り向けば、近くの荷車で酒を飲んでいた年嵩の商人が苦笑している。
「そこの色っぽい男の言う通りさ。ただなんでも多めに運べばいいってもんじゃねえけどな」
商人は酒を一口煽り、肩を竦めた。
「積み過ぎりゃ荷馬が潰れるし、移動速度だって落ちる。そうなりゃ結局は損だ」
「なるほど」
「だから損失を見込んで積む。盗難、破損、雨、魔獣。商人ってのはな、最初から全部計算してんだよ」
その言葉に商隊の代表も苦笑する。
「全くです。儲け話に見えるでしょうが、商売は案外博打なんですよ」
「へぇ……」
アグニルが感心したように耳を揺らした。
「盗まれるって分かってるなら捕まえばいいんじゃないの?」
ダークエルフのイルナの素朴な疑問。だが商人達は顔を見合わせて笑った。
「それができてれば苦労しねえ。第一、現行犯ならともかくいつくるかもわからない盗人よりも納期の方がよっぽど怖えのさ」
そう、商人にとって一番大事なのは信用。盗られるなんてのはこの世界では身近なものだから。
目の前で行われたなら捕まえるが、そうでないなら納期買取等の信用が一番恐ろしいのだから。
───まあ、それでも。
「だってさ、エレ……ン?なにそれ?」
「ちっくしょ、う!離せ、こ、んの、ブス!」
「ハハハ、上手い冗談だ、少年」
掠め取ったらしい果実が地面に落ち、犯人と思われる少年がエストレアによってアイアンクローで宙吊りにされていたのだった。
ただ、そばで見ていたジェシカ曰く。
「あの時のお姉さまは、目が笑っていないのに笑顔でしたわ」と語った。
一方で女性に乱暴な言葉はダメだよ、とはマリウスの言。教訓になったね?と言った途端、彼は犬神家状態となりました。_ _Y_ _ 南無
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